年末調整とは?
1年間の税金(所得税)の支払いが不足していたり支払い過ぎていたことが分かる年末に、過不足分を調整(清算)する手続きのことを「年末調整」といいます。正規従業委員として勤務している人は過不足分は会社が直接国に納税を行うため、個人で年末調整する必要がありません。不足分は会社から徴収され、支払い杉の場合は還付(払い戻し)されます。
アルバイト・パート年末調整対象者
では、アルバイトやパートなど非正規従業員の場合、年末調整の対象となるのはどのような条件に当てはまる人でしょうか。年末調整の計算には、従業員が提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が必要になります。ここからは、アルバイトやパートが年末調整の対象となる従業員の条件についてご紹介していきます。
①1年を通じて勤務をしている
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件、1つめは「1年を通じて勤務をしている」です。1年を通じて継続してアルバイトやパートなどの非正規従業員として勤務している場合は、年末調整の対象者となります。「1年を通じて勤務しているアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。
②年の途中で就職して年末まで勤務
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件、2つめは「年の途中で就職して年末まで勤務」です。年末調整の対象期間は、毎年1月~12月の1年間で区切られます。年の途中から年末調整を行う12月まで勤務している場合は、年末調整の対象者となります。たとえば6月に就職して12月まで勤務している場合は、この条件に当てはまります。
「年の途中で就職して年末まで勤務しているアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。
③年の途中で退職した人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件、3つめは「年の途中で退職した人」です。年の途中で退職した人は5つの条件に分かれます。
「死亡により退職した人」「心身の障害により本年中に再就職が難しい人」「12月中に支給期の給与を受けて退職した人」「給与の総額が103万円以下の人」「海外転勤の理由により非居住者となった人」この5つの条件についてご紹介していきます。
1.死亡により退職した人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件:年の途中で退職した人、1つめは「死亡により退職した人」です。不慮の事故や病気などで年の途中に死亡により退職した人は、年末調整の対象者となります。「死亡により年の途中で退職したアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。
2.心身の障害により本年中に再就職が難しい人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件:年の途中で退職した人、2つめは「心身の障害により本年中に再就職が難しい人」です。著しい心身の障害を理由に退職した人で、その退職当年中に再就職ができないと見込まれる人は、年末調整の対象者となります。
「心身の障害のため年の途中で退職し、退職した当年中に再就職ができないと見込まれるアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。
3.12月中に支給期の給与を受けて退職した人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件:年の途中で退職した人、3つめは「12月中に支給期の給与を受けて退職した人」です。12月中に支給期の給与の支払いを受けた後に年の途中で退職した人は、年末調整の対象者となります。
「12月中に支給期の給与の支払いを受けた後に年の途中で退職したアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。
4.給与の総額が103万円以下の人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件:年の途中で退職した人、4つめは「給与の総額が103万円以下の人」です。アルバイトやパートとして勤務している人が年の途中で退職した時点で、当年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下の人は、年末調整の対象者となります。
「年の途中で退職し、当年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下のアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。退職後当年中にほかの働き先などから給与の支払いを受ける見込みがある場合は対象外となります。
5.海外転勤の理由により非居住者となった人
アルバイトやパートが年末調整の対象となる条件:年の途中で退職した人、5つめは「海外転勤の理由により非居住者となった人」です。退職ではなく、年の途中で海外の支店などへ転勤したなどの理由により非居住者となった人は、年末調整の対象者となります。
「年の途中で、海外の支店などへ転勤したなどの理由により非居住者となったアルバイトやパートは、年末調整の対象者である」と覚えておきましょう。非居住者とは、国内に住所を有しない、または1年以上住居を有しない個人のことです。
アルバイト・パート年末調整非対象者
アルバイトやパートなど非正規従業員の場合、年末調整の対象とならない従業員もいます。年末調整の対象とならない従業員とは、どのような条件に当てはまる従業員でしょうか。ここからは、アルバイトやパートで年末調整の対象とならない従業員の条件について6つご紹介していきます。
アルバイト・パート年末調整非対象者の条件
アルバイトやパートが年末調整の対象とならない1つめの条件は「年末調整の対象となる人の条件に合う人のうち、当年中のメイン給与の収入金額が2,000万円を超える人」です。2つめの条件は「年末調整の対象となる人の条件に合う人のうち、災害減免法で当年中の給与に対する源泉所得税や復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人」です。
3つめの条件は「アルバイトやパートなど、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務し給与の支払いを受けている人で、ほかのの給与支払者に扶養控除等申告書を提出している人や、年末調整を行うときまでに扶養控除等申告書を提出していない人」です。
4つめの条件は「年の中途で退職した人で、年末調整の対象となる人の条件【3.12月中に支給期の給与を受けて退職した人】に該当しない人」です。5つめの条件は「非居住者」です。6つめの条件は「継続して同一の雇用主に雇用されない人、日雇い労働者など」です。
年末調整はいつ行う?
年末調整はいつ行うのでしょうか。年末調整は、通常12月に行います。しかし、条件によりその都度行う必要があります。その都度行う必要がある場合は「③年の途中で退職した人」の項でご紹介した5つの条件に当てはまる人が対象となります。
具体的には、「死亡により年の途中で退職した人」「心身の障害により年の途中で退職し本年中に再就職が難しい人」「12月中に支給期の給与を受けて退職した人」「年の途中で退職し給与の総額が103万円以下の人」「海外転勤の理由により非居住者となった人」この条件に当てはまる人がいる場合、給与支払者はその都度年末調整を行う必要があります。
アルバイト・パート掛け持ちの年末調整
アルバイトやパートなど、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務し給与の支払いを受けている人もいるでしょう。同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務している場合、年末調整はどうすればよいのでしょうか。ここからは、アルバイトやパートを同時に2ヶ所以上掛け持ちしている場合の年末調整についてご紹介していきます。
メインの働き先は本人が決定
アルバイトやパートなど、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務し給与の支払いを受けている場合、年末調整を行うメインの働き先は従業員本人が決定する必要があります。言い換えると、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務している場合でも、扶養控除等申告書を2ヶ所以上提出する必要がないということです。
では、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務している人はなぜ年末調整を2ヶ所以上同時提出する事はないのでしょうか。同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務している場合、同時提出する事はない理由をご紹介していきます。
2ヶ所以上同時提出する事はない
アルバイトやパートを掛け持ちしている場合の年末調整は、扶養控除等申告書を2ヶ所以上同時に提出する事はありません。年末調整は、転職などで前職の給与データを引き継ぐ場合を除き、2ヶ所以上で勤務していてもメインの勤務先の給与だけで計算します。よって、扶養控除等申告書が必要なのはメインの勤務先だけとなります。
2ヶ所以上掛け持ちでアルバイトやパート勤務をしている場合、扶養控除等申告書はメインの勤務先1ヶ所を勤務者本人が決め提出すると覚えておきましょう。
アルバイト・パート扶養控除等申告書の書き方
アルバイトやパートなど非正規従業員が年末調整の対象となった場合、扶養控除等申告書が必要になります。扶養控除等申告書は、アルバイトやパートで勤務している本人が記入する書類になります。書類には記入する箇所がたくさんあるため、書き方がわからないという人も多いです。アルバイトやパートで勤務している場合の書き方は?
ここからは、年末調整の対象となったアルバイトやパートが勤務先へ提出する扶養控除等申告書の書き方についてご紹介していきます。
本人やその扶養親族の状況に応じて記載
アルバイトやパートなど非正規従業員が記入する扶養控除申告書の書き方は、扶養控除のほかに労学生控除や障害者控除など、本人やその扶養親族の状況に応じて記載する必要があります。扶養の範囲内でアルバイトやパートで勤務している場合、本人の住所や生年月日などの基礎データを記載すれば十分です。
扶養控除等申告書の「あなたの個人番号」の部分の書き方は従業員のマイナンバーを記入します。すでに従業員のマイナンバーを会社側が取得している場合、扶養控除等申告書の「あなたの個人番号」の部分の書き方は会社と従業員の合意があれば省略することができます。
省略した場合の書き方は、扶養控除等申告書の余白部分に「給与支払者に提出済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」などと記載しましょう。
アルバイト・パート年末調整しないとどうなる?
アルバイトやパートを雇っている人数が多くて手が回らない、手続きが面倒そう、勝手に必要がないと判断したなどの理由で、年末調整を怠った場合はどうなるのでしょうか。ここからは、アルバイトやパートの年末調整をしないとどううなるかについてご紹介していきます。
年末調整は必ずする必要がある
年末調整は、給与支払者の義務となります。アルバイトやパートに限らず、年末調整の対象となる人すべてにおいて必ずする必要があります。扶養の範囲内で給与の総額が103万円以下のアルバイトやパート勤務の場合、年末調整は必要ないと思っている給与支払者もいるようです。
給与支払者は、アルバイトやパートに限らず、年末調整の対象となる人すべてにおいて、年末調整をする義務があると覚えておきましょう。
納付が無ければ罰則規定の条件も
アルバイトやパートの場合に限らず年末調整を怠り納付しなければ、罰則規定があります。具体的には、最大で10年以下の懲役、または、200万円以下の罰金が科せられます。これらは裁判による判決になるので、非常に悪質なものでなければ対象外となる可能性が高いです。しかし、税務署からの指導などを受け加算税の対象となるので注意しましょう。
アルバイト・パート年末調整の注意点
アルバイトやパートなど、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務し給与の支払いを受けている人は、年末調整を行うメインの働き先は従業員本人が決定する必要があります。決定したメインの働き先に扶養控除等申告書を提出することで年末調整を受けられます。では、メインの働き先でない別の働き先の年末調整はどのように行えばよいのでしょうか。
ここからは、アルバイトやパートなど、同時に2ヶ所以上掛け持ちで勤務し給与の支払いを受けている人の年末調整の注意点についてご紹介していきます。
副業の場合には自分で確定申告を!
メインの働き先は、扶養控除等申告書を提出することで年末調整を受けられます。しかし、メインの働き先以外の働き先では年末調整ができず、納税するために確定申告をする必要があります。確定申告には、掛け持ちしているすべての働き先からの源泉徴収票が必要になります。源泉徴収票を準備し、自分で確定申告を行いましょう。
メインの働き先以外の支払いを受ける給与の総額が20万円を超えない場合は、確定申告をする必要がありません。
災害などによる所得税の軽減免除などを受けたり、医療費控除の適用を受けるための還付申告を行う場合は、メインの働き先以外の支払いを受ける給与の総額が20万円を超えない場合でも確定申告をする必要があります。
アルバイト・パートでも年末調整が必要な場合もあるので注意
アルバイトやパートなどの非正規従業員でも、年末調整の対象となる条件に当てはまれば、給与支払者は年末調整を行う義務があると理解していただけたでしょうか。年末調整の対象となる条件、年末調整の対象とならない条件、年末調整を行う時期なども参考にし、きちんと年末調整を行う義務を果たしましょう。
また、非正規従業員として勤務している人には、年末調整に必要な扶養控除等申告書の書き方や掛け持ちしている場合の注意点など参考にしてください。