給与所得控除とは?引かれる額や計算方法や改正で見直されたポイントを解説

給与所得控除とは?引かれる額や計算方法や改正で見直されたポイントを解説

給与所得控除とは、年末調整の金額計算の際に考慮される項目の一つです。サラリーマンの方が受けられる優遇措置です。今回は、給与所得控除とはどんな制度か、具体的な金額の計算方法はどんな内容になるか、などについて具体的に解説していきます。

記事の目次

  1. 1.給与所得控除とは?
  2. 2.給与所得控除の意義
  3. 3.給与所得控除は所得控除とは違う
  4. 4.給与所得控除額の計算方法
  5. 5.給与所得の対象になる収入
  6. 6.給与所得控除と確定申告の関係性とは?
  7. 7.給与所得控除の見直しと改正の意義とは
  8. 8.給与所得控除の意義から計算方法を理解しておく!

給与所得控除とは?

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サラリーマンの方やOLの方にとっては、毎年の所得税確定申告は所属している会社が年末調整の形で実施してくれるので、給与所得控除などの控除について詳しい仕組みを知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は、企業で働く従業員に適用される給与所得控除とはどんなものか、どのような計算方法がとられているのか、説明していきます。

給与所得控除とは収入から一定額差し引かれる控除

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給与所得控除とは、年末調整の作業の中の一項目です。一年間の所属する会社から受け取った報酬を収入として、課税対象となる所得を計算する際に収入から一定額控除できる金額のことです。これは、サラリーマンやOLだけに用いられるもので、自営業の方や経営者の方には適用されることはありません。収入-給与所得控除=所得という計算式が成り立ちます。

例えば個人事業主の方が確定申告をする際に用いる計算としては、年間の収入から経費を引いた金額が所得となります。給与所得控除とは、確定申告でいうところの経費の意味合いを持ちます。

サラリーマンやOLとして働くには、例えばスーツなど、自己負担でありながら必要となる物品があります。これを購入する費用を一定額で定めて控除することができます。

給与所得控除の意義

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給与所得控除という制度には、どんな意義があるのでしょうか。これには、サラリーマンやOLと、個人事業主との所得税計算上の違いがあることが重要です。個人事業主の場合は、事業を展開する中で発生した費用を経費として処理することができます。幅広い項目が適用され、収入から控除することができます。

これに対し、サラリーマンやOLは確定申告をする必要が原則なく、会社が年末調整の形で所得税計算を行なってくれます。

この際には経費控除をすることができませんが、サラリーマンやOLとして勤務するにあたって最低限必要な費用というものがあります。スーツやネクタイなどが挙げられます。これを経費として考え控除するのが給与所得控除です。

給与所得者の公平性

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給与所得控除という制度には、個人事業主とサラリーマン・OLとの公平性を保つという意義があるとされています。個人事業主が幅広い出費を経費として確定申告の際に処理できるのに対し、サラリーマン・OLはそれがなく、所得金額に大きな差が生じてしまいます。これを均等に保つために導入された制度となっています。

給与所得者の経費計上

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個人事業主における確定申告の際の経費処理に対応する、サラリーマンやOLにとっての経費計上は、実質的にこの給与所得控除の制度ということになります。もちろん、実際に支払った金額とは異なりますが、事務処理の便宜上の都合を考慮して、収入金額によって一律の金額が給与所得控除として取り扱われることになります。

給与所得控除は所得控除とは違う

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給与所得控除と似たような制度に、所得控除というものがあります。これを同じものとして誤って認識している方が結構多いといわれています。所得控除はいろんな事項があり、給与所得控除とは別枠で設定されています。いずれも年間の収入から控除して所得を少なくし、ひいては所得税の負担を抑える効果があるので、もれなく計算するべき事項です。

所得控除とは?

所得控除とは、ある一定の条件を満たすと適用される控除の制度のことです。様々な項目がありますが、代表的なものとしては、「扶養控除」や「配偶者控除」、「社会保険料控除」、「基礎控除」などが挙げられます。サラリーマンやOLの方でなじみのある所得控除といえば、「保険料控除」ではないでしょうか。

所得控除は、基本的には申告をしないと受けることができません。たとえば扶養控除は、サラリーマンの場合は年末頃に会社で提出を求められる所定書類に記入して提出することで会社側が計算をしてくれて、控除を受けることができます。

基本的には年末調整時に会社から求められる資料を揃えるだけで会社側が計算をしてくれます。したがって自分で確定申告をしない場合はあまり気にすることはありません。

所得控除額の計算例

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所得控除額の計算は、最初はなじみのないことばかりで理解が難しい面もありますが、慣れてしまうとスムーズに計算をすることができます。たとえば、扶養控除の計算では、一人当たり380,000円と定額で設定されています。扶養している子供の人数で算出されます。配偶者は配偶者控除があるため除外します。基礎控除も全員が無条件で適用されます。

保険料控除は、計算が結構面倒です。一般生命保険と介護保険、年金保険の部分を分割して集計していく必要がありますし、制度の改正があった時点を境に、それ以前とそれ以降だと集計を分割するなど、かなり細かい計算が必要になります。

こちらは年末調整の際に自分で所定用紙に記載をして会社に提出する必要があるので注意しましょう。不明な点があれば、会社の総務部門など担当部署に質問しましょう。

基礎控除とは所得控除の1つ

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所得控除の項目の一つに、基礎控除というものがあります。基礎控除とは、一定の条件を満たしたときに適用される所得控除の一つではありますが、実質すべての人が受けられる控除項目になります。基礎控除は金額も一律に定められています。また、基礎控除は、年末調整においては会社側が自動的に計算に入れてくれるので特に申告を要しません。

基礎控除は、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどでも受けることができます。所得税と住民税で基礎控除の金額の設定額には差があります。所得税では380,000円、住民税では350,000円と基礎控除を一律に定められています。

基礎控除額の計算例

例えば、独身で年収400万円のかたの場合の年末調整の計算方法を例示します。年収400万円の場合、給与所得控除は400万×20%+54万=134万円となります。これに加え、基礎控除が一律38万円となっていますので、課税対象となる所得は400万-134万=256万円となります。

ただ、これで計算が終了となるわけではなく、実際は社会保険料控除はたいていのサラリーマンなら適用されますし、生命保険料控除や他の控除項目があるので、それらを忘れず計算に加えて、少しでも税額負担を減らすようにしましょう。

給与所得控除額の計算方法

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給与所得控除の計算方法は、一定の法則に従って行われます。年収の金額によって、乗じるべき控除率が異なってくるので、間違った計算をしていないか、チェックしておく必要があります。基本的には企業の年末調整担当者が計算対応をすることではありますが、知っておいて損はありません。

給与所得控除額は収入が多いほど控除率は低くなる

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給与所得控除の控除率は、年収の金額によって控除率が変わってきますが、基本的に年収額が多くなるにつれて控除率は低くなっていきます。年収が多い方から多くの所得税を徴収するという累進課税の考え方が根底にあります。収入により、税負担の割合を平準化するための措置とされています。

例えば、年収が180万円以下なら、給与所得控除の控除率は収入金額に対して40%となりますが、年収が400万円なら収入金額に対して20%とかなり低くなります。

ただ、この計算で得られた金額に一律54万円を加えることにありますので、給与所得控除自体が単純に半分になったわけではありません。

給与所得控除額の計算例

給与所得控除の金額の計算方法を、具体的な数値で例示してみます。年収400万円という方が受けられる給与所得控除金額は、400万×20%+54万=134万円となります。年収が700万円という方の場合の給与所得控除金額は、700万×10%+120万=190万円となります。

年収金額が上がっていくにつれて控除率は下がっていきますが、年収が1,000万円をこえると、一律220万円となります。収入から控除される金額の割合が少なくなっていく結果となります。収入が多い人から多くの税金を収受するという目的が背景にあり、収入が少ない方への負担を軽減する効果があるとされています。

所得控除額の改正後は計算方法が違う

給与所得控除の計算方法は、2020年度で改正が行われる予定です。この改正により、結果として給与所得控除金額が10万円下がることになります。また、計算における上限額も改正に伴い変更されます。これまで1,000万円だったところが、850万円となります。850万円を年収が超えると、一律金額が算出されるように改正となります。

例えば、400万円の年収の方は、従来だと上記計算の通り給与所得控除額は134万円でしたが、制度改正後の金額は、400万×20%+44万で124万円となります。控除額が10万円下がったことになります。他の年収区分の方も同様に10万円の控除額が減額されます。

給与所得の対象になる収入

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所得税を計算する際にまず最初に一年間の収入を出さないといけません。給与所得に当たる収入を集計して、そこから各種控除事項の金額を差引いていき、課税対象額を計算することになります。この給与所得に当たる収入とはどんなものがあるのか、どのように確認したらいいのか、解説します。

収入は源泉徴収に記載されている

年末調整により課税対象となる所得を算出する際の根拠となる、給与所得の対象となる収入とは、勤務先から受領する源泉徴収票で確認することができます。

源泉徴収票の中の、「支払金額」という箇所が該当します。通常は、毎月の給与と年に数回の賞与の金額になりますが、その中で通勤手当や旅費手当などは一般的には対象外になります。

また、それ以外にも現物支給などがなされたときは経済的利益とみなされ、給与所得対象の収入に含まれることもあります。宿舎などを通常よりも安い金額で提供されたり、借り入れを通常よりも大幅に低い利率で受け入れた場合などが該当します。その算出は専門的で難しいので、不明な点は勤務先の担当者に問い合わせしてみてください。

給与所得控除と確定申告の関係性とは?

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これまで見てきたように、確定申告が必要になるのは個人事業主などで、サラリーマンやOLなど企業などに所属して給料をもらっている方は勤務先が年末調整をしてくれるので確定申告をする必要は基本的にはありません。ただ、年末調整を勤務先に行なってもらったうえで、確定申告も行なった方がいいケースもあります。

確定申告が必要な場合

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まず、確定申告をしなければならないケースについて紹介します。給与所得者で、年末調整を受けている従業員でも、年間の収入が2,000万円をこえている方や、複数の団体等から給料を受領している方、副業などで給与所得以外に20万円以上の収入がある方がこれに該当します。申告漏れとなると追徴課税を受ける可能性もあるので注意してください。

次に、確定申告をする義務はありませんが、した方が有利になるケースです。まず、住宅ローンを契約した場合は、絶対に確定申告をした方が有利です。借入金控除が受けられ、相当額の負担を軽減できます。

また、年間の医療費が10万円を超えた場合は、医療費控除が受けられます。さらに、年度の中途で退職をして、年内に再就職をしなかった場合もあります。

確定申告が不要な場合

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サラリーマンやOLなど、企業で勤務する方は基本的に確定申告は不要です。年間収入が2,000万円未満で一つの企業に勤務しており、さらに副業などほかの収入源がない方は、勤めている会社で実施される年末調整だけで事足りますので、自分で確定申告をすることは不要となります。

年末調整と確定申告の違いを解説!両方必要な場合の申告方法なども! | クラネオ
年末調整と確定申告、納める税金を算出することだとは分かっているけれど、内容や違いは詳しく知らない人が多いのではないでしょうか。税金を納めすぎて損をしているかも知れません。そんな事態にならないように年末調整と確定申告の違いや申告方法などについて解説します。

給与所得控除の見直しと改正の意義とは

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平成30年度税制改正大綱により、給与所得控除と基礎控除の改正が行われることになりました。税制改正は比較的高い頻度で実施されますが、それぞれ時代の傾向や背景に影響を受け、それぞれに意味の深い改正となるケースが多いです。平成30年度税制改正大綱における給与所得控除改正の意義について解説します。

総合すると最終結果が変わらない方が多い

給与所得控除については、改正により10万円引き下げられることになります。逆に基礎控除は10万円引き上げられる予定になっています。「働き方改革」の観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除の方が引き下げられ、誰にでも適用される基礎控除が引き上げられるという意義があるとされています。

企業に勤務することの優遇性を抑えてあらゆる生活スタイルを容認するという言外の意義があると考えられています。給与所得控除は企業に勤務する方しか適用されないためです。

サラリーマンやOLにとっては、給与所得控除で10万円控除が減り、基礎控除で控除が10万円増えるということで、最終的な結果は同じということになります。

給与所得控除の意義から計算方法を理解しておく!

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ここまで給与所得控除の特徴や給与所得控除の計算方法、意義などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。給与所得控除を実際に計算するといった作業は、通常のサラリーマンの方にはなじみのないものかもしれませんが、概略だけでも知っておくことで自分が負担している税金がどのように算出されているのかを理解できます。

yokatayama
ライター

yokatayama

サラリーマンとして得た知識と経験でわかりやすい記事を提供していきたいです。インターネット上にあふれる情報は信ぴょう性を確認することが難しいですが、可能な限り正確で時節に応じた内容の文章を提供します。

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