配偶者控除と配偶者特別控除
所得税の控除にある配偶者控除と配偶者特別控除の違いはどこにあるのでしょうか。なんとなくこれらの制度を聞いたことがあるけど違いを説明できるという人は多くないかもしれません。そこで今回は配偶者控除と配偶者特別控除の仕組みやその違い、適用を受けるために必要な年収などの条件についてわかりやすく解説します。
配偶者控除とは
まずは配偶者控除です。配偶者控除は所得税の所得控除の一種であり、配偶者を持つ納税者が一定の要件を満たしたときに、その納税者の所得金額から一定の額を控除することができる税制上の優遇措置です。妻の夫(あるいは夫の妻)に対する内助の功を税制上評価する制度です。
例えば、主婦である妻が家事を行っても夫は妻に給料等を払うわけではないでしょう。しかし、妻の家事が夫の稼ぎに貢献していると考えて、一定の額を夫の所得から控除するのが配偶者控除です。明らかに、片稼ぎの夫婦世帯を前提とした制度であり、働き方が多様化した現代社会ではその制度の存在意義が問われています。
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除も所得税の所得控除の一種であり、配偶者が一定の要件を満たした場合に受けることができる所得税の優遇措置です。その点では配偶者控除と違いはありませんが、両者は適用される場面が異なります。のちほどわかりやすく説明するとして、ここでは配偶者控除と配偶者特別控除は兄弟のような関係であると覚えておきましょう。
所得税の計算の仕組みとは?
以下の説明の理解に資するよう、ここで所得税の計算の仕組みをわかりやすく簡単に紹介します。一般に税金の額は、課税標準額×税率で算出されます。所得税の課税標準額は「1年の所得の金額」です。税率は、所得の多寡に応じて5%~45%と定まっています。
ここで「控除」とは引くことを意味しますが、所得から引く場合を「所得控除」、税金から引く場合を「税額控除」と言って、区別しています。両者は引くタイミングが異なり、節税効果に違いが生じます。
所得と収入との違い
所得とは一般的には「儲け」を意味します。所得は収入から費用を引くことで算出されます。事業をしている人の場合は、費用の額は認識しやすいのですが、給与収入だけのサラリーマンの場合、1年の費用の額を記帳しておくのは稀でしょう。
そこで、給与所得者の場合は、給与収入に応じて一律に一定の額が費用として認められる仕組みになっています。これを「給与所得控除」と言います。
控除にはいろいろ種類がある
所得には事業や不動産譲渡、給料や株の配当などさまざまな種類の所得が存在しています。そして所得の種類に応じて、所得の計算方法には違いがあります。このように異なる方法で計算された所得の合計額から、一定の額を控除することができる仕組みが「所得控除」です。
所得控除には基礎控除をはじめ、医療費控除や社会保険料控除など全部で14の種類があります。配偶者控除と配偶者特別控除もこの所得控除の一種です。配偶者控除・配偶者特別控除とも控除額は上限38万円ですが、配偶者が70歳以上の老人の場合は配偶者控除の額は上限が48万円です。
適用を受けるには申告が必要
普通のサラリーマンは会社から払われる給与から所得税が天引きされていて、年末調整で払い過ぎの所得税が還付されることとなります。配偶者控除や配偶者特別控除を受けるには、この年末調整の段階で配偶者控除等の要件を満たしていること等を会社に申告して所得の額を減らしてもらう必要があります。
配偶者控除の条件と仕組みをわかりやすく
もう少し具体的に配偶者控除の条件と仕組みについて解説していきます。話をわかりやすくするために、夫が主たる稼ぎ手で、その夫にパート収入を得ている妻がいるという設定とします。なお、所得税は個人にかかる税金なので、夫婦がそれぞれに所得があるという場合、夫には夫の、妻には妻の所得税がかかる仕組みであることを理解しましょう。