配偶者控除と配偶者特別控除の違いをわかりやすく解説!仕組みや条件は?

配偶者控除と配偶者特別控除の違いをわかりやすく解説!仕組みや条件は?

所得税の控除には配偶者控除と配偶者特別控除がありますが両者の違いはなんでしょうか。これらの制度や違いを知らないと、税制上損をすることもあります。そこで今回は配偶者控除と配偶者特別控除の仕組み、年収などの条件や違いについてわかりやすく解説します。

記事の目次

  1. 1.配偶者控除と配偶者特別控除
  2. 2.所得税の計算の仕組みとは?
  3. 3.配偶者控除の条件と仕組みをわかりやすく
  4. 4.配偶者特別控除の条件と仕組みをわかりやすく
  5. 5.配偶者控除と配偶者特別控除の「壁」
  6. 6.税制改正で損する人と得する人
  7. 7.配偶者控除と配偶者特別控除の条件と仕組みを知ると節税できる場合がある

配偶者控除と配偶者特別控除

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所得税の控除にある配偶者控除と配偶者特別控除の違いはどこにあるのでしょうか。なんとなくこれらの制度を聞いたことがあるけど違いを説明できるという人は多くないかもしれません。そこで今回は配偶者控除と配偶者特別控除の仕組みやその違い、適用を受けるために必要な年収などの条件についてわかりやすく解説します。

配偶者控除とは

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まずは配偶者控除です。配偶者控除は所得税の所得控除の一種であり、配偶者を持つ納税者が一定の要件を満たしたときに、その納税者の所得金額から一定の額を控除することができる税制上の優遇措置です。妻の夫(あるいは夫の妻)に対する内助の功を税制上評価する制度です。

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例えば、主婦である妻が家事を行っても夫は妻に給料等を払うわけではないでしょう。しかし、妻の家事が夫の稼ぎに貢献していると考えて、一定の額を夫の所得から控除するのが配偶者控除です。明らかに、片稼ぎの夫婦世帯を前提とした制度であり、働き方が多様化した現代社会ではその制度の存在意義が問われています。

配偶者特別控除とは

配偶者特別控除も所得税の所得控除の一種であり、配偶者が一定の要件を満たした場合に受けることができる所得税の優遇措置です。その点では配偶者控除と違いはありませんが、両者は適用される場面が異なります。のちほどわかりやすく説明するとして、ここでは配偶者控除と配偶者特別控除は兄弟のような関係であると覚えておきましょう。

所得税の計算の仕組みとは?

以下の説明の理解に資するよう、ここで所得税の計算の仕組みをわかりやすく簡単に紹介します。一般に税金の額は、課税標準額×税率で算出されます。所得税の課税標準額は「1年の所得の金額」です。税率は、所得の多寡に応じて5%~45%と定まっています。

ここで「控除」とは引くことを意味しますが、所得から引く場合を「所得控除」、税金から引く場合を「税額控除」と言って、区別しています。両者は引くタイミングが異なり、節税効果に違いが生じます。

所得と収入との違い

所得とは一般的には「儲け」を意味します。所得は収入から費用を引くことで算出されます。事業をしている人の場合は、費用の額は認識しやすいのですが、給与収入だけのサラリーマンの場合、1年の費用の額を記帳しておくのは稀でしょう。

そこで、給与所得者の場合は、給与収入に応じて一律に一定の額が費用として認められる仕組みになっています。これを「給与所得控除」と言います。

控除にはいろいろ種類がある

所得には事業や不動産譲渡、給料や株の配当などさまざまな種類の所得が存在しています。そして所得の種類に応じて、所得の計算方法には違いがあります。このように異なる方法で計算された所得の合計額から、一定の額を控除することができる仕組みが「所得控除」です。

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所得控除には基礎控除をはじめ、医療費控除や社会保険料控除など全部で14の種類があります。配偶者控除と配偶者特別控除もこの所得控除の一種です。配偶者控除・配偶者特別控除とも控除額は上限38万円ですが、配偶者が70歳以上の老人の場合は配偶者控除の額は上限が48万円です。

適用を受けるには申告が必要

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普通のサラリーマンは会社から払われる給与から所得税が天引きされていて、年末調整で払い過ぎの所得税が還付されることとなります。配偶者控除や配偶者特別控除を受けるには、この年末調整の段階で配偶者控除等の要件を満たしていること等を会社に申告して所得の額を減らしてもらう必要があります。

配偶者控除の条件と仕組みをわかりやすく

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もう少し具体的に配偶者控除の条件と仕組みについて解説していきます。話をわかりやすくするために、夫が主たる稼ぎ手で、その夫にパート収入を得ている妻がいるという設定とします。なお、所得税は個人にかかる税金なので、夫婦がそれぞれに所得があるという場合、夫には夫の、妻には妻の所得税がかかる仕組みであることを理解しましょう。

配偶者控除・5つの条件

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配偶者控除を受けるには5つの条件をクリアする必要があります。そのうち4つは妻(配偶者)に係る条件であり、あとの1つは夫(本人)に係る条件です。また所得税の計算期間は1月1日から12月31日までであるので、これら要件は12月31日時点で満たしている必要があります。以下、具体的にどういう条件を満たす必要があるのか、わかりやすく解説します。

民法の規定による配偶者であること

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民法の規定による配偶者とは、「法律婚」であるということを意味します。「法律婚」とそうでない結婚の違いは、「婚姻届」を役所に提出しているかどうかです。これを行っていない、いわゆる「内縁」や「事実婚」の妻では配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることができません。

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年の中途で結婚し12月31日時点で夫婦であれば、その年の所得税で全額の配偶者控除を受けることができます。月割り計算で控除されるのではありません。逆に年の中途で離婚した場合は、いっさい配偶者控除を受けることはありません。なお、例外的に配偶者が死亡した場合は、死亡した日の現況で評価され、適用の可否が決まります。

夫(納税者)と生計を同一にしていること

生計が同一であるとは、わかりやすく言うと同じサイフで生活しているということです。通常、同居の場合は特段の事情がなければ同じサイフであると推測されますが、別居の場合でも一方からの送金等を受けて生活をしている場合は同じサイフです。つまり別居していても必ずしも生計が異なることにはなりません。

妻(配偶者)の年間の合計所得金額が38万円以下であること

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わかりやすく例えると、「妻が稼ぎすぎていない」という条件です。専業主婦の夫婦に対する優遇措置だからです。その基準は年間の合計所得金額38万円です。収入ベースで言うと、給与収入のみであれば年収103万円になります。いわゆる「103万円の壁」の103万円はここからきています。

事業専従者として給与をもらっていないこと

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配偶者控除は主婦を専業としていることを前提としています。夫が自営業で、妻が手伝いをしている場合は、従業員としての性格が強くなり、専業主婦ではなくなります。この場合、「事業専従者」という条件を満たせば「青色事業専従者給与」(青色申告者の場合)や「事業専従者控除」(白色申告者の場合)の特例を受けることができます。

つまり、別の控除制度で優遇を受けることができるので、この場合には配偶者控除を受けることができません。

夫(納税者)の合計所得金額が1,000万円を超えないこと

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これは「夫が稼ぎすぎていない」という条件です。夫が高額所得者である場合は配偶者控除を受けることができません。この基準は、年の合計所得金額が1,000万円、収入ベースでいうと年収1,220万円です。

配偶者控除が妻の無償労働(内助の功)を評価するものであれば、夫の年収は直接関係がなさそうなものです。むしろ夫の年収が大きければ大きいほど、妻の貢献度も大きい場合があるでしょう。実際、最近までは夫の年収は関係なく配偶者控除を受けることができました。

しかし、人材不足や女性の就業機会の確保が叫ばれる中、配偶者控除の廃止は税制上の検討課題とされてきました。そして平成29年度の税制改正で、納税者本人の年収次第で配偶者控除を受けられないか、受ける額が減少するという改正がなされ、平成30年分の所得税から適用されています。

税制改正に伴う違い・納税者本人の年収

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このように夫の年収が高額だと配偶者控除を受けることはできません。その額は年収ベースで給与収入1,220万円です。ただし1,220万円を基準にスパッと適用がなくなるのではなく、1,220万円に至るまでに段階的に控除額が減っていく仕組みがとられています。

具体的には、給与年収が1,120万円以下までであれば上限38万円を控除することができ、1,120万円超1,170万円以下は26万円、1,170万円超1,220万円以下は13万円という形で、夫の年収に応じて配偶者控除の額は減少していき、1,220万円を超えるとゼロになる仕組みです。

配偶者特別控除の条件と仕組みをわかりやすく

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次に配偶者特別控除の条件と仕組みを解説します。配偶者控除との違いは、妻の年収です。もし年収103万円以下であれば配偶者控除が全額認められる一方、103万円を超えた途端いっさい控除が認められないとなると、103万円を基準に夫婦の手取りが一気に減少してしまうおそれがあります。(いわゆる「103万円の壁」)

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そこで妻の年収が103万円を超えても、その年収に応じて一定の額の控除を段階的に認めることで、収入に応じた税負担となるよう調整する必要があります。その役割を果たすのが配偶者特別控除です。

なお、配偶者特別控除は配偶者控除を補完する役割を果たすものであり、高額所得者(年収1,220万円超)にはいっさい適用がありません。

税制改正の影響が大きい配偶者特別控除

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従来、配偶者特別控除は、妻の年収が103万円~141万円までの場合に認められる所得控除でした。この103万円~141万円までの部分は、徐々に控除額が減っていきながら控除が認められていました。平成29年度の税制改正で、この段階的に控除が認められる部分の年収が大きく引き上げられることとなりました。

配偶者の合計所得が引き上げに

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同改正では、配偶者の合計所得が引き上げになり、年収ベースで配偶者の給与収入150~201万円までであれば、配偶者特別控除を受けることができるようになりました。女性に就業してもらって、少しでも年収を稼いでもらうことを税制面からも後押しする措置であるといえます。

納税者本人の年収も関与

配偶者特別控除は、配偶者の年収だけでなく、納税者本人の年収が基礎となって控除額が決まる仕組みです。夫の給与収入については、「1,120万円以下」「1,120万円~1,170万円以下」「1,170万円~1,220万円以下」の3区分があり、それぞれの区分について妻の給与年収に応じて配偶者特別控除の額が決まります。

妻の給与年収は「150万円以下」「~155万円以下」「~160万円以下」「~167万円以下」「~175万円以下」「~183万円以下」「~190万円以下」「~197万円以下」「~201万円以下」の9つの区分があります。

配偶者控除と配偶者特別控除の「壁」

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今までの説明でわかるとおり、配偶者控除と配偶者特別控除には壁が存在しています。壁のこちら側では控除の適用が受けることができるのに対し、壁を超えると控除の適用を受けることができず、金銭的な負担が増します。損得にかかわる問題であり、どこに壁があるのかを知っておきましょう。

配偶者控除の103万円の壁は変わらない

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配偶者控除の壁は103万円です。これは平成29年度の税制改正でも変わりませんでした。しかし、この103万円の壁には配偶者控除とは別の意味があります。

上述のとおり、103万円を超えても配偶者特別控除があるため、夫婦を含めた手取りは減少することがなく、その意味では壁はないといえそうです。むしろ注意しないといけないのは、103万円を超えると配偶者本人にも所得税の負担が掛かってくることです。

この103万円は、給与所得控除65万円(年収65万円以下は給与所得控除で全額控除される)に、だれでも受けられる基礎控除38万円を足した額です。つまり、妻であれ誰であれ、年収103万円までのサラリーパーソンは所得税が無税なのです。

配偶者特別控除は新たな壁が

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配偶者特別控除には新たな壁が生まれました。従来は配偶者特別控除が受けられなくなる部分にだけ壁があったのが、平成30年分の所得税からは、配偶者特別控除の額満額(38万円)が受けられなくなる部分にも壁が発生しました。すなわち配偶者特別控除には2つの壁があることになります。

150万円の壁とは

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実は、配偶者の給与年収が103万円を超えたからといって節税効果が減少することにはなりません。給与年収1,120万円以下の人(=配偶者控除を全額受けられる人)の場合、配偶者の年収が103万円を超えても150万円までであれば、配偶者控除と同じ38万円の配偶者特別控除を受けることができます。

これが150万円の壁といわれるものです。納税者本人からすると、配偶者控除に関する103万円の壁が150万円に移動したと考えたほうが理解しやすいでしょう。

201万円の壁とは

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配偶者の年収が201万円を超えると、納税者本人の年収がどうであれ配偶者特別控除を受けることができなくなります。これが201万円の壁です。改正前には141万円の部分にあった壁が201万円の部分に移動したものと考えてもらえばよいでしょう。

なお、配偶者特別控除の額は段階的に減少しているのであって、配偶者の給与年収197万円~201万円の最終の区分の控除額は、納税者本人の年収区分に応じて3万円~1万円にすぎません。このように201万円の壁は小さな壁であると理解することができます。

税制改正で損する人と得する人

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以上のとおり、税金上の制度だけに関していえば、配偶者控除や配偶者特別控除の壁はなくなったと考えられます。しかし、配偶者控除・配偶者特別控除の改正は、一定の人に損得をもたらす改正でした。以下、どういった人が増税になってしまい、一方で減税効果を受けることができたのか、おさらいもかねて紹介します。

税制改正で損をする人

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給与年収が1,120万円を超える人(高額所得者)で、妻の年収が給与収入103万円以内であった人は損をしています。この部分の人は、改正により配偶者控除が受けられないか、配偶者控除の額が減少した人たちです。

また、給与年収が1,120万円~1,220万円の人で、妻の年収が103万円を少しだけ超えてしまった人は、従前は33万円全額の配偶者特別控除を受けることができたのに、改正後は22万円または11万円の配偶者特別控除しか受けることができなくなりました。これらの人も税制改正で損をした人たちです。

税制改正で得をする人

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妻の年収が141万円~201万円までの人は得をします。この区分に該当する人は新たに配偶者特別控除を受けることができるようになったからです。また、妻の年収が103万円~141万円の人も納税者本人の年収が1,120万円以下の場合は控除額が拡大されており、得をしているといえます。

配偶者控除と配偶者特別控除の条件と仕組みを知ると節税できる場合がある

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今回は、配偶者控除や配偶者特別控除の条件、仕組みや違いについてわかりやすく紹介しました。平成29年度の税制改正で、配偶者の収入が増えても節税効果を得る人が多くなったといえます。

しかし、年収130万円を超えると社会保険料の扶養から外れるなど、社会保険や各種手当を含めた上での夫婦の手取りはまた別の問題です。これらにも注意して、就業計画や人生設計を考えることが大切です。

たけかずや
ライター

たけかずや

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