「考える」とは
「考える」という行為は、普段何気なく行っています。ビジネスシーンでも、相手の意見や意向を聞いたうえで、考えるというのはよくあることです。
しかし、ビジネスでは、ただ相手に「考えます」と伝えるのは適さず、相手に応じて「謙譲語」や「尊敬語」などといった「敬語」で言い換える必要があります。
今回は、誰もが行う「考える」ということを、類語や謙譲語、尊敬語へ言い換えた場合、どのように表現するといいのかご紹介していきましょう。
また、「考える」を英語で表現する場合、謙譲語や尊敬語といった敬語の表現はなく、相手を思い測るニュアンスでの「考える」のかどうかによって、表現の方法が異なります。その点も注目して解説していくのでぜひ参考にしてください。
まずは、「考える」という意味についてきちんと理解しておきましょう。「考える」という行為はどういったことなのか、あえて言葉で表現すると意外と難しいものです。意味や類語を解説していきます。
「考える」の意味
「考える」という言葉に、あらためてどういう意味があるのか確認をしていきましょう。「考える」という行為自体は、誰もが自然に意識をしないで行っていますが、意味としては「論理的に道筋を立てて答えを出す行為」をいいます。
また、別の表現では「感情やなんらかの評価を持つこと」「結論・判断をしようとすること」などといった意味もあります。「考える」という行為の意味を言葉で表現すると、難しく思ってしまうでしょう。それもまた「考える」という意味に含まれるのです。
「考える」の類語
「考える」の類語は、「考察する」「企てる」「考慮する」「熟慮する・熟考する」などたくさんあります。しかし、同じ類語であっても、それぞれ使うシーンが異なるので、意味も含めて解説しましょう。
特にビジネスでは「考える」の類語上手に使い分けができないと、意味が通じなかったり、相手に悪い印象を与えてしまうこともあります。そうならないためにも、例文や類語を使った例文の英語表現をご紹介するのでぜひ参考にしましょう。
問題などについて考える場合の類語「思案する」
物事や問題について考え答えを出す場合の類語として「思案(シアン)する」があります。意味は、考えをめぐらすことをいい、「この計画について十分に思案する(Think enough about this plan)」などといったような使い方をします。
問題について答えを出す場合の類語としては、「考え抜く」「構想する」「考察する」などがあるので覚えておきましょう。特にビジネスシーンでは、物事をわかりやすくするために考える」という意味で「考察する」という言葉を使うので注目です。
計画を立てる意味の類語「たくらむ」
「企(くわだ)てる」ときくと、どうしても悪い印象を持ちますが、何かを計画したり意図する意味で「考える」の類語になります。「企てる」には何かを始める前に、順序だてて考えたり手順を考えるという意味があります。
「この企画を企てたのは誰ですか?(Who planned this project?)」などといったように使うシーンも多いでしょう。この他にも、「考える」と同じような類語で「算段する」という言葉を使うこともあります。
「算段する」を覚えておけば、「このプレゼンで他社に勝てるかどうか算段する(Calculate whether you can beat other companies in this presentation)」などといった言い方もできます。
さまざまな要因を考える意味の類語「考慮する」
「考える」の類語には、「考慮する」という言葉もあります。「考慮する」は、いろいろな条件や状況を踏まえて考えるという意味で、ビジネスシーンでは「その意見も考慮して検討しよう(Consider that opinion)」などといった使い方がされます。
よく出てくる言葉なので意味をきちんと把握しておきましょう。また、「consider」については、後述の「考えるのビジネスでの英語表現」で詳しく解説するのでそちらも参考にしてください。
十分に考えるという意味の類語「熟慮する・熟考する」
物事に対して、十分に考え検討し答えを出すことを「熟慮する・熟考する」と言います。例えば、相手から意見などを伝えられた場合、「熟慮させていただきます(I will consider)」などといったように、考えて検討するではなく意見を踏まえてよく考えますという意味で伝えることができます。
考えて検討するといった比較的浅いメージよりも、深く物事を考えるときなどに用いることが多い類語なので、覚えておきましょう。
徹底的に考えをめぐらせる意味の類語「突き詰める」
「考える」の類語で「突き詰める」があります。物事を奥底まで考えることを「突き詰める」と表現します。簡単に言えば、ひとつのことを徹底的に考え抜くことをいい、「もっと突き詰めて考えろ」などといったように、ビジネスによっては注意や促しとして使われることもある類語です。
「もっと突き詰めないとお客様におすすめできない(I can't recommend it to customers unless I think more deeply)」といったような表現をすることが可能です。
「考える」の敬語表現【尊敬語】
「考える」の敬語は、たくさんあるのでシーンに応じて使い分けることは大切です。特に、ビジネスでは敬語を使って、先輩や上司、取引先など相手を立てる話し方をしなくてはいけません。
その相手を立てるためにする敬語の表現として、「尊敬語」があります。後述で解説する「謙譲語」や「丁寧語」の敬語とはまた意味の違う言葉になるので、注意をしましょう。
ここでは、「考える」の敬語表現である「尊敬語」についてご紹介します。「考える」を尊敬語で話をすると、どういった言い回しになるのか、確認していきます。
尊敬語「お考えになる」「ご高察くださる」
「尊敬語」は、簡単そうに見えて敬語の中でも実は間違えやすい言葉でもあります。使い方を間違えると、ビジネスシーンでは特に恥ずかしい思いをするので、理解しておくことが大切です。
「考える」の尊敬語として「お考えになる」「ご高察くださる」という言い回しがあります。ちょっと堅苦しく感じますが、目上の人が「考える」場合に使う敬語なので確認しておきましょう。
「考えてください」は敬語として使わない
自分の意見などに対し、相手に考えてほしい場合「考えてください」という言葉を使う人がいます。「~ください」という丁寧に感じる表現なので敬語にも感じ、自然と使ってしまうという人もいますが、それは間違いです。
「~ください」という表現は、そもそも命令に近い表現になります。そのため、「考えてください」という表現は、相手に対し命令をするものになります。特に目上の人やお客様に対し「考えてください」という表現をすると、大変失礼な言葉遣いになるので注意しましょう。
尊敬語「お考えになる」「ご高察くださる」の使い方・例文
「考える」の尊敬語である「お考えになる」「ご高察くださる」を使う場合、例文としては、「この技法について、部長のお考えをお聞かせいただけますか」「当社の企画をご高察いただき、ご返答いただければと思います」といった使い方をします。
特に「ご高察くださる」という敬語は、取引先などに対して、自分たちの事情を考慮してくださいなど、「考えて理解してほしい」というお願いの意味の敬語としてもよく使われます。ビジネスでは、他社とやり取りをする文書でもよく出てくる敬語なので、覚えておくといいでしょう。
「考える」の敬語表現【謙譲語】
敬語のなかでも尊敬語とよく混合しがちなのが、「謙譲語」です。謙譲語は、自分をへりくだって表現する言葉で、自分を相手より下げて表現することで相手を立てる言い方になり、日本独特ともいえます。
それに対し、尊敬語はその言葉だけで相手を立てることができます。「尊敬語」と「謙譲語」の違いを一言でいえば、相手の立て方にあります。
「考える」を謙譲語で表現すると、「拝察する」「愚考する」という言い回しがよく使われます。解説していきましょう。
謙譲語「拝察する」「愚考する」
「謙譲語」は先述したように、自分を下げて表現するので「考える」という行為をするのは、「自分」です。そのため、「拝察する」「愚考する」といった敬語を使います。
「拝察する」は、ビジネスシーンや、式典などでの挨拶、お礼状などかしこまった席で使われることが多い謙譲語です。「愚考する」は、自分の考えを上司など目上の人に述べる場合に使う敬語になり、同じ謙譲語でも使い方の違いを確認しておきましょう。
謙譲語「拝察する」「愚考する」の使い方・例文
「考える」の謙譲語である「拝察する」「愚考する」の例文としては次のようになるので確認していきましょう。
「御社からの貴重なご提案について、拝察させていただきます」「皆様、ご多忙のことと拝察申し上げます」「この案件について愚考したところ、そのような結論ではまだ不十分かと思います」
「愚考します」は「僭越ながら」などといった言葉と似た使い方をするケースが多いです。上司に対して「経験の足りないとは知っているものの自分なりに考える」という意味合いで使われることが多いです。
「拝察する」は、相手の立場や気持ちを考えるもしくは察するニュアンスで使われることが多く、例文のように相手を気遣う場合に用いられるケースが多いのが特徴です。
相手に不幸があった場合や、多忙な時期に送る挨拶文としても使われることが多い「考える」の謙譲語になります。
「考える」の敬語表現【丁寧語】
例えば、ビジネスシーンで先輩から指示を受け「考える」と返事をする場合、相手によってはここまでご紹介した敬語の「謙譲語」や「尊敬語」ではなく、「丁寧語」で返事をする方が、関係が円滑になる場合があります。
「丁寧語」とは、会話の相手に対して丁寧に述べる、返答する場合に使う敬語です。一般的に、「~です」「~ます」「~でございます」などといったこと場を文末につけることで、丁寧語を表現することが可能です。一番使いやすい表現方法でもあります。
「丁寧語」はビジネスシーンでは、先輩など目上の人や接客相手に使うことが多く、日常生活でも近しい間柄ではない人に対し、話の内容を問わず用いられることが多いので覚えておきましょう。
また、同じ敬語でも「謙譲語」や「尊敬語」に比べ、「丁寧語」は堅苦しく感じずどちらかというとフランクに近いイメージがあります。ビジネスにおいても相手との壁が感じにくくなるという効果も期待できますが、使う相手はきちんと見極めることが大切です。
丁寧語「考えます」「検討します」
「考える」を丁寧語で表現すると、「考えます」「検討します」といった表現になります。「考えます」はストレートに「考える」に「~ます」をつけた丁寧語です。ここまでご紹介した「考える」の敬語に比べると、とても使いやすいのがわかります。
「検討します」は、「考える」よりももっと深く物事を考える場合に使われる言葉なので、「考えます」とは少々ニュアンスが異なります。とはいえ、ビジネスシーンではよく使われる言葉であり、覚えておかなくてはいけない敬語になります。
丁寧語「考えます」「検討します」の使い方・例文
「考えます」の例文としては、「その件については、もう少し考えさせてください」「先ほどのお話は、もう少し考えます」などといった使い方をします。
ビジネスシーンでは、先輩や同僚などを相手にした場合に使われることが多いですが、部長や社長などはるかに目上の人に対しては、敬語のなかでも「丁寧語」ではなく先に解説した「謙譲語」や「尊敬語」を使う方がいいでしょう。
「検討します」の例文としては、「その案件については、もっと調査が必要なので検討させてください」「いいお返事ができるよう、前向きに検討させていただきます」などといった表現になります。
「検討します」は、もう少し調べて返事をしなくてはいけない場合や、考えをまとめるのに時間がかかる場合などに用いられることが多いので覚えておきましょう。
先述でもふれましたが、敬語の中でも「丁寧語」は、比較的使用しやすく「謙譲語」や「尊敬語」に比べて同僚とのコミュニケーションを取りやすい表現です。しかし、一方では「丁寧語」では相手に失礼になることもあるので注意して敬語を使い分けましょう。
「考える」の尊敬語「お考えになる」は二重敬語?
「考える」の尊敬語に「お考えになる」という表現があります。この尊敬語を使って、上司の考えを訪ねる場合に二重敬語で訪ねてしまうケースが少なくないので、注目しましょう。
特にビジネスでは、「考える」に限らず言葉の使い方を間違えるだけで「常識を知らない人」「優秀ではない?」などといったような印象を持たれかねないので注意が必要です。よくある間違いとして、「考える」の尊敬語「お考えになる」の使い方について解説しましょう。
間違った使い方
「考える」の敬語として、「どうお考えになられますか?」という使い方を聞いて、違和感を感じない人は要注意です。「お考えになられる」という表現は、「お考えになる」と「~られる」の二重敬語になっています。
「お考えになられる」というのは、時代劇などでも耳にしそうなフレーズではありますが、敬語としては間違いなので覚えておきましょう。「お考えになる」という敬語を使う場合は、次の例文のようなシンプルな言い回わしになります。
「部長は、先ほどの件についてどうお考えですか(でしょうか)?」「部長のお考えを教えていただけますか」などといった形になるので参考にしましょう。けして、「部長は先ほどの件についてどうお考えになられますか?」とは聞かないようにしてください。
「考える」のビジネスでの英語表現
ビジネスのシーンでは、時に英語で相手の考えを聞いたり、検討する時間が欲しいと伝えるなど「考える」という英語表現を必要とすることもあるでしょう。
ただし、英語は日本語とは違って自分をへりくだる言い方はありませんし、敬語表現もありません。丁寧な言い回し方はありますが、日本のように尊敬語などといった敬語はないのです。
しかし、「考える」を英語で表現する場合は、敬語かどうかは関係なく、「何に対して考える」なのか、伝えたい意味合いによって英語の表現が変わるので覚えておきましょう。そこで、ビジネスシーンで使用できる英語での表現について例文と共に解説していくので、ぜひ参考にしてください。
consider
「考える」を、簡単な英語表現にする場合「think」を使うと思う人も多いですが、ビジネスシーンでは「think」はあまり使用しません。「think」のニュアンスとしては、自分を主体として感じたことをストレートに表現する場合に使われる英語です。
しかしビジネスシーンは、ストレートに考えを伝えるよりも、深く考えたうえでの発言が多く「consider」を使用します。「consider」のニュアンスとしては「検討する」という意味合いが強いものになります。
ビジネスでは、不確かな考えでモノを発言すると、悪い印象を与えてしまうこともあります。そのため、深く検討したうえで発言していることを伝えるため、「think」よりも深く考える「consider」で表現することが多いのです。
たとえば、先にお話しした「検討する」を用いた例文である「いいお返事ができるよう、前向きに検討させていただきます」を英語表現にするのであれば、「I will consider it positively so that I can get a good reply」となります。
また、相手によく考えて答えをほしいと伝える場合も、「Would you consider this matter well?(この件についてよくご検討いただけますか?)」などといった英語表現をすることもあります。
先述した例文を用いると、「How does the director consider this?(部長はこの件についてどうお考えですか?)」といった表現が使われるので覚えておきましょう。
sympathize
日本語では「考える」という行為には、相手の気持ちを思い測ることも含まれます。しかし、英語で相手の気持ちを思い測る場合、ここまでご紹介した「consider」とは違う「sympathize」などといった表現方法を用いるケースが多いです。
「考える」の謙譲語である「拝察する」を用いた、「皆様の悲しみ、拝察申し上げます」という例文では「I sympathize with your sorrow」といった英語で表現をします。また「I sympathize with being busy(ご多忙のことと拝察します)」といった表現も可能です。
このように、英語には謙譲語や尊敬語といった敬語はないものの、相手を思いやる意味での「考える」なのか、それとも深く「考える」かどうかによって、「sympathize」もしくは「consider」を使うのか表現方法が変わります。そのため、「考える」の意味を理解して表現方法には注意が必要です。
「考える」の英語表現としては他にも、「consider」の類語として「deem(考える)」、「sympathize」の類語としては「feel(感じる)」や「suppose(思う)」といった表現を使うこともあります。いずれも同じく「考える」の意味合いによって使い方が異なるので覚えておきましょう。
「考える」の敬語表現を正しく使おう!
いかがでしたか。ここまで、普段何気なく行っている「考える」という行為について、謙譲語や尊敬語、英語での表現など解説してきました。
ビジネスでは、相手に考えてもらうことや、考える時間が欲しいなどといった場面は多くあります。しかし、ストレートに「考える」では、失礼に当たることもあるので、適切な表現方法を知り活用することはとても大切です。
特に、どんな相手に「考える」ということを伝えたいのかが重要になります。この記事を参考に「考える」の敬語や類語を身につけてぜひ活用してください。