「重畳」の意味・読み方
「重畳」という言葉の意味をご存じでしょうか。現在の普段の生活の中では、意識していないとなかなかお目にかかれないかも知れません。しかし、この熟語自体は、古くから常用されている熟語で、実は意味も幅広くありますので、知っておくと大変便利な熟語なのです。
今回はこの「重畳」という言葉の使い方や読み方から、例文を交えた実際の使い方や類義語、また英語での読み方、使い方など、余すことなくご紹介して行きます。
幾重にも重なること
「重畳」というこの言葉の意味の一つに、「幾重にも重なる事」の意味があります。この熟語を分解すると、「重ねる」と、「畳」に分解するとこの意味は理解しやすいものとなります。また、現在は余り畳を見る事は少なくなりましたが、当時は城内などにおいて、身分の高い人の座る場所として、畳を重ねて使用する事が一般的でした。
なぜ身分の高い人が畳を重ねた場所を居場所としていたかと言うと、当時、畳は製造にも手間がかかり、非常に高価なものであったためです。
この上なく満足なこと・喜ばしいこと
もう一つの「重畳」の意味として、「この上なく満足なこと・喜ばしいこと」という意味があります。こちらも、「畳」を「重ねる」という読み方からわかる様に、非常に高価なものである畳を重ねておける事は、庶民にとっては憧れだったと言っても過言ではないでしょう。
つまり、畳を重ねて置くことが出来る事は名声も経済力も持ち合わせていないと難しいため、非常に喜ばしい、満足である。と言った意味で使われるようになったそうです。
「重畳」の読み方
ここまで、ざっくりと重畳の言葉の意味をご紹介して来ましたが、ところでこの「重畳」は、読み方はどの様になるのでしょうか。これは、ずばり「ちょうじょう」と読みます。「畳」は音読みで「ジョウ」という読み方をします。畳を数える際は、「1畳、2畳」と数えるので、これは想像に難くないのではないでしょうか。
続いて、「重」ですが、これは「ジュウ」という読み方が一般的ですが、この熟語では「チョウ」と言う読み方をするのです。同じ「チョウ」の読み方をする熟語には、「重複」がありますが、これは「ジュウ」とも「チョウ」とも読み方ができます。
「重畳」の語源
ところで、この「重畳」ですが、どの様な語源でこの言葉が生まれたのでしょうか。これには、昔々の日本の人々の暮らしに密接に結びついているのです。こういった語源にも理解を深める事で、より頭に残り忘れにくくなるでしょう。何かの機会でこの熟語を使う可能性がありますので、この機会にしっかりと理解しておきましょう。
どちらも「重ねる」という意味を持つ語
前述にも若干触れましたが、「重」と「畳」には、どちらも「重ねる」という意味を持つという共通点があるのです。つまり、前者の「重」は文字通り重ねる事を意味していますし、後者の「畳」では、現代では余り想像出来ないかも知れませんが、重ねて使用する事は一般的な使い方としてあります。
畳がとても高級品だったこと
前述したとおり、畳は当時高級品としての使い方が普通でした。具体的には平安時代~室町時代の頃です。この頃の畳は、朝廷をはじめ一部の高貴な身分の方や、その方々のもてなしの為に使用されていました。
ここから、日本の建築技術の発展と共に畳は建築資材としての一面を持ち始め、江戸時代の頃には、数寄屋造りや、茶道の発展によって、一般庶民にも親しまれる建材となっていったのです。
日本文化と畳
日本においての畳の歴史は非常に古く、最古の文献は、古事記に登場します。夏は蒸し暑く、冬は凍える寒さにもなる日本の気候では、吸湿、保温効果の高い畳はなくてはならない存在であり、当時の人々と密接な関係があるのです。
「重畳」という言葉が生まれた背景には、この様な日本の風土にも関わりがあり、はるか昔から「重畳」という言葉が一般的に使われていたことが想像できます。
「重畳」の類義語
ここまで、「重畳」の意味や「重畳」の言葉が出現した背景をご紹介していき、この言葉の背景に対して理解を深められたところで、ここからは「重畳」とよく似た、類義語をご紹介して行きます。
ある程度類義語を把握しておくことで、言い回しに使い分けが可能になり、文章を書いたり誰かに向けて発言する際に非常に役に立ちます。是非合わせて覚えておきましょう。
度々
一つ目のとして、「度々」をご紹介して行きます。これは、「重畳」の意味でも、一つ目に挙げた「幾重にも重なる」事に対する類義語となります。
現在ではこの意味で「重畳」を使う機会はほとんどなく、非常にかしこまった表現になります。友人との会話や、日常のシーンにおいて、あえて無理をして度々の類義語として「重畳」を使用すると、違和感を感じてしまうでしょう。
再三
次に「再三」という熟語をご紹介いたします。この熟語は、上記の「度々」の類義語にもあたるもので、二度も三度も、といった意味があります。この様な「何度も」という意味において、例文を作る際には数多くの類義語があります。
例えば、後ろに「再四」を付けた「再三再四」という言葉や、他には「重ね重ね」や「幾重にも」、「返す返す」などがあります。
めでたい
上記に対して、重畳の二つ目の意味にあたる「この上なく満足、喜ばしい」という意味の類義語は、どの様なものなのでしょうか。
すぐに思い浮かぶものは、「めでたい」があります。これは、類義語というより、意味を表しているとも言えます。この「めでたい」意味で重畳を使うことは現代では、あまり一般的ではありませんが、時代劇や時代小説などでは、比較的によく使われており、当時は一般的に使用されていた事が想像出来ます。
慶事
続いて「慶事」をご紹介します。慶事とは「めでたい事」や、「祝いの行事」という意味があります。「重畳」では、比較的に状態を表す形容詞的な使い方や、感動詞的な使い方をするのに対し、「慶事」は名詞として使用されるのが一般的です。
この様に、類義語としては数多くあり、現在ではどちらの意味でも、重畳はあまり使われず、類義語の方が良く使われています。
「重畳」の言い回し
ここからは、「重畳」の言い回し、つまり、「重畳」の熟語を使用した例文を代表的なものをいくつかご紹介して行きます。例文を知っておくことで、実際に「重畳」を使用するシーンなどが把握できます。この際に合わせてチェックして行きましょう。
「重畳」には、前述した通り名詞的にも、状態を表す形容詞的にも使用でき、幅広く使うことが出来ます。例文中に使われている「重畳」の言葉が名詞なのか、形容詞、形容動詞なのかも考えてみましょう。
重畳たる
先ずは、言い回しとして最もシンプルである、「重畳たる」の表現をご紹介します。「重畳」は、幾重にも重なっている様を表し、その後ろに「たる」という断定の言葉を付け加えている形です。
これらを合わせると、前部分の「重畳」が強調された表現になり、高く積まれている様を表現することが出来ます。主に山岳などの景色、景観に対して良く使用されます。
重畳の至り
次に「重畳の至り」という表現をご紹介します。上記に対して、こちらは2つ目の意味である、深く感動している際の表現になります。
現代での表現では一般的ではなく、時代劇や時代小説などでよく見られるように、少々古臭い言い回しであると言えます。主に階級が高い人に対して使われ、似たような表現に「恐悦至極」があり、非常に大きな喜びを表現する際に、よく見られます。
そいつは重畳だ
次に「そいつは重畳だ」という言い回しです。これは、主にセリフとしての言い回しである表現になります。こちらも、「重畳」の意味では2つめにあたる、深く感動している様を表しています。
前部分の「そいつは」というのは状況を表しており、部下からの報告などがあった場合に、首尾よく事が運んでいる様な状況であったり、自身にとって大変都合の良い報告を受けた際などに、良く使用されます。
重畳の理
ここで、これまでとは少し違う例外的な表現をご紹介します。それが、「重畳の理」です。これは、電気回路での計算に利用される方程式を表す言葉になります。複数電源がある回路上で、任意の場所の電流を求める際に、それぞれの電源からの電流をひとつひとつ個別に計算し、最後に合わせて電流の値を求める方法となります。
「重畳」の使い方・例文
ここからは、実際に「重畳」を使用した例文をご紹介します、言い回しだけでなく、例文も合わせて把握する事で、「重畳」の表現方法をより深く理解する事ができます。「重畳」には、2通りの意味がありますので、それぞれのケースに分け、代表的なものとしての例文をご紹介していきましょう。
重ね重ねの意味
先ず、一つ目の意味にあたる「幾重にも重なっている表現」を表す場合の例文をご紹介していきます。こちらの方の表現は、もう一方に比べ現在でも使用する表現となります。したがって、先ずはこちらの方からしっかりと覚えるようにしていきましょう。こちらの例文では、代表的な例文を2つ、ご紹介します。
例文:前回の資料と一部重畳している
ひとつめは、「前回の資料と一部重畳している」という例文です。ここでは、重畳しているのは資料の内容を表しており、資料に記載されている内容の一部が、前回の資料と被っている。という意味になる例文になります。
「重なっている様」を表す表現のため、「重複する」とよく似た使い方をしています。この例文では、主にビジネスシーンでの使用が想像出来ます。したがって、どこかで耳にする機会に遭遇する可能性が高い例文であると言えます。
例文:夏空に木々の葉が重畳している
次に、「夏空に木々の葉が重畳している」という例文をご紹介します。この様に、自然の風景を表す表現としても使う事が出来ます。
四季のなかでも、夏は最も緑が生い茂る季節であり、木にから生えている葉っぱが多く茂っているため、下から見上げると葉っぱが幾重にも重なっている様に見える。と言ったような表現の例文となります。
この上なく喜ばしいの意味
これらに対して、次は「重畳」の2つ目の意味である、「この上なく喜ばしい」事を表す表現においての例文をご紹介します。
こちらの意味では、時代劇や時代小説などでの、古風な表現となりますが、現在でも使用する事が出来るシーンは数多くあります。ですので、現在でも使用できるような代表的な例文を2つ、ご紹介していきます。
例文:無事に下山できたことが何より重畳
一つ目に、「無事に下山できたことが何よりも重畳」という例文になります。この様に、先ず文の前半部分で、重畳である根拠となる状況を表し、その状況に対し「重畳だ」の言葉を活用させて、文末につけます。
「山」に関連させての例文には、山頂である「頂上」と掛ける事が出来ますので、上手く「重畳」の言葉を使えるとセンスの良い言い回しが可能となります。
例文:困難を乗り越え結婚出来て重畳だ
次に、「困難を乗り越え結婚出来て重畳だ」という例文になります。この例文も前半部分に重畳である根拠となる状況を表し、文末に「重畳だ」をつけています。
この様に、古い表現ではありますが、現在においても使用できるシーンは数多くあり、この国ならではの味のある表現ですので、文語調での文章などを作る際には、一度「重畳」の表現が使えるのかどうか検討してみるのも面白いでしょう。
「重畳」の英語表現
続いては、「重畳」の英語表現をご紹介します。現在では、日本語でもなかなか使われない表現ですが、はたして英語ではどの様に言うのでしょうか。
また日本語での使い方に対して、英語表現では何か違いはあるのでしょうか。英語表現も合わせておさえておくと、より記憶に残り、忘れにくくなる言われていますので、この際に一緒にチェックしておきましょう。
superposition
まずは、「重ね合わせている」という表現の「superposition」をご紹介します。この英単語は、「重ね合わせ」、「重層」といった名詞での表現になります。
「重ね合わせ」の意味の通り、前述の電流の法則を意味する際にも使用されますし、すでにあるものの上に重ねられている状態にも使用でき、土地の地層に対しても使われる英語表現となります。
superpose
続いて、「superpose」をご紹介します。ひとつめの「superposition」とよく似ている単語で、意味合いもほぼ同じものです。しかし、こちらの「superpose」では、「重ね合わせる」の動作自体を表現した動詞として使用されます。
これらは、比較対象である2つのものを比べる目的で、相違が無いかどうかを確認するために重ね合わせてを行う、といった場合にも使用されます。
happy
続いて、「重畳」のもう一つの意味である、幸せな状態であることをあらわす「happy」をご紹介します。言わずと知れたこの英語表現ですが、微妙なニュアンスまで掘り下げていくと、「happy」には、深い幸せを感じていながらも、言動や態度に分かりやすく表れている訳ではない状態を表現する英語になります。
satisfied
満足である状態を表す英語表現として、「satisfied」があります。こちらも英語では非常に良く使われている表現で、動詞である「satisfy」を、過去分詞形に変換し、「満足している、満ち足りている」という状態を表す際に使用される英語表現です。「satisfied」自体には形容詞として使われるため、後ろに名詞をくっつけて使用します。
「重畳」はこの上なく喜ばしいという意味を持つ!
以上が「重畳」の意味と例文、類義語と英語表現になります。日本では、非常に古くから使われていた表現ですが、現在においても、日常的に使用できるシーンが数多くありますので、高く連なっている山々を表現する際などには、ピッタリな表現となります。同時に、英語表現においても一般的に使われる語句ですので、是非覚えておきましょう。