真摯とはどんな意味?言葉の語源や使い方の例文などをまとめてチェック!

真摯とはどんな意味?言葉の語源や使い方の例文などをまとめてチェック!

普段よく聞く「真摯(しんし)」とはどんな意味なのでしょうか。真摯の語源とは何かを探り、真摯の類義語もご紹介します。いくつかの例文とともに使い方を考えていきます。より適切な状況で適切な使い方ができるよう真摯にご説明いたします。

記事の目次

  1. 1.真摯の意味とは
  2. 2.真摯の語源とは
  3. 3.現代中国語で真摯とは
  4. 4.真摯の類義語とは
  5. 5.真摯の対義語とは
  6. 6.真摯の使い方とは
  7. 7.真摯を使った例文とは
  8. 8.真摯の英語表現とは
  9. 9.真摯とは真面目で1つの物事に取り組むこと

真摯の意味とは

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これから仕事や日常でも、またメディアなどでもよく使われる「真摯」とはどんな意味か、どんな文脈または状況で使うのが適切な使い方なのかを考えます。ポジティブな響きのあるこの「真摯」という言葉には基本的にどんな意味合いが込められているのでしょうか。

この記事では最初に「真摯」という言葉とそれに伴う類義語と対義語を可能であれば語源を探りつつ、よりいっそう「真摯」のイメージを膨らませることを目標にします。

さらに「真摯」を使った例文を織り交ぜながら「真摯」の適切な使い方を考えます。加えて最後のほうでは英語での使い方もご紹介します。適切な使い方を意識していただきビジネスシーンなどをはじめ、さまざまな機会にこの情報を活用していただければ幸いです。

真面目で1つの物事に取り組むこと

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最初に「真摯」とは何か、基本的な意味合いをつかみましょう。基本的には「真面目で1つの物事に取り組むこと」という意味があります。

この言葉には「真剣」の「真」という語があることからイメージできるように、「一生懸命」「ひたむきに」「真面目に」物事に取り組むという意味です。そのように真剣に物事に取り組む姿勢を画像などを参考にイメージできるでしょうか。さらに語源を考えましょう。

真摯の語源とは

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真剣の「真」という漢字から容易に伝わるイメージをもとに考えましたが、さらにこの真摯を「真」と「摯」に分けて説明します。この二つの漢字のもともとの意外な語源を知るならばとても興味深い発見がありますし、イメージを膨らませることができます。

ほとんどの漢字には語源が分かっており、辞書によってはその漢字の詳しい成り立ちと今の形とは異なる古い形が載っています。「真摯」に関しても「真」と「摯」それぞれの漢字の語源を知るならば、もっとイメージしやすくなることでしょう。余談ですが漢字の語源については白川静さんの漢字学の本が参考になります。「字通」などが有名です。

2つの漢字から「まことをつかむ」

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「真理」や「真実」などポジティブな使い方の多い「真」ですが、本来は怖い意味合いがあるとする説があります。この漢字の古い形は「眞」で、この漢字のもともとの意味とは、なんと「死んだ人」と「倒れた首」の組み合わせで「野垂れ死にした人」だというのです。

つまり不慮の事故や災難などで行き倒れた人をさしてこの漢字はできたのです。成り立ちについてはもちろん他にも説があります。しかしながらこの「死者が語源」説はなかなか説得力があります。

人間にとって「死」とはいつの時代でも、どこに住んでいてもそして身分が高いか低いか関係なく確実で、だれも偽れないまさに無言の「事実」「真実」なので、後ほど意味が転化して「まこと」になったと考えられています。

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次に真摯の「摯」の語源に移ります。攻撃の「撃」に似ていますが、意味も読み方も違います。「摯」は上に「幸」と「丸」というポジティブな語があり、下に「手」があります。このことから連想できるのは何か価値あるものをつかんでいるというイメージです。それでこの漢字は「手厚い」とか「真面目」という意味合いがあります。

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それでこれらの「真」と「摯」というそれぞれが興味深い語源をもつ2つの漢字が組み合わさって「まことをつかむ」という基本的なイメージが出来上がりました。語源を考えると「真摯」とは1つの物事を真剣に一生懸命にそしてひたむきに取り組む様子を意味するようになったことが分かります。

現代中国語で真摯とは

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「真摯」の語源を探って考えてきました。漢字の起源はおよそ3000年前の古代中国殷王朝にさかのぼるといわれています。漢字の成り立ちには、物質が氾濫して世俗化したこの現代の日本に住むわたしたちにはなかなか理解しがたい古代の中国人特有の発想や考え方が反映しているのです。成り立ちには怖いものも少なくありません。

現代中国語でも真摯は真摯

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「手紙」は現代中国語では「トイレットペーパー」を表すそうで、「工作」は「働くこと」だそうです。日本語と中国語では同じ漢字を使っても意味合いが異なる言葉がいくつかありますが、日本語の「真摯」は中国語でも「真摯」。意味は一緒で、「ひたむきで、真心がこもっていること」です。発音も似ています。

真摯の類義語とは

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「真摯」とはどんな意味合いかを語源をもとに考えてきました。語源を探ることによってもっとこの語の持つ真剣かつポジティブなイメージをつかめてきました。これから「真摯」の類義語を考えていきます。類義語に関しても可能な範囲で語源を探ることでさらに「真摯」の意味合いを真摯に深めていきます。

①真面目

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真摯の類義語の「まじめ」を漢字で「真面目」と書くのは「当て字」です。最初の「まじ」はしきりにまばたきをする様子を表しています。この語は緊張してしきりにまばたきをしている目ということで、本気であることや誠実である様子を伝えます。

「まじまじと見る」という表現とも関連があります。例文としては「真面目な性格の持ち主」「彼は真面目な学生だ」などがありますが、本来のポジティブな意味合いから少しそれて「面白みのない」というネガティブなイメージがあるのが残念なところです。

「真面目」の類義語としては「律儀」とか「堅気」などがあります。やはり「面白みに欠ける」とか「近寄りがたい」という負のイメージはありますが、いつでも信頼でき、仕事はきっちりですからやはりこういう人は大切にしたいものです。

②真剣

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真摯の類義語「真剣」とは「いい加減」とは対極にある言葉で、木刀や竹刀ではなく本物の刀ということです。「真剣勝負」というように、木刀ではなく真の刀での勝負であれば、少しでも油断したら命がないというイメージが伝わってきます。

まさに1つの物事に集中しなければならないという点で真摯のふさわしい類義語といえます。「真剣」の類義語ですが、「本気」「一心不乱」「死に物狂い」などがあげられます。まさに何かと闘っているイメージが脳裏に浮かびます。

③懸命

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まず「懸命」の「懸」の語源を考えます。これも先ほど説明した「眞」と同じ怖い成り立ちがあります。注目したいのは「懸」にも「眞」にも「県」が含まれていることです。

この「県」にはもともと「木にひもで首がさかさまにぶら下がっている姿」を意味していたそうです。現代人には理解できない発想です。木に首がぶら下がっているので後になって「かける」という意味合いが出てきました。

そのことから、「懸命」には何かに命をかけるというイメージです。例文によく出る「一生懸命」はもともと「一所懸命」で鎌倉時代の武士が先祖伝来の土地を命がけで守ったことに由来します。真摯の類義語ですがその持つイメージはさらに強烈です。

④熱心

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熱心も真摯の類義語で「物事に真摯に取り組む」を「熱心に取り組む」と言い換えることができます。しかしもっと物事に「熱中して」いて、専心の度合いももっと強いイメージがあります。

「熱心に読書に励みます」と表現しますが、「真摯に読書に励みます」という表現はあまり聞きません。「真摯に反省する」とは言えても「熱心に反省する」というのは、意味はつうじてもあまり使い方としては適切とはいえません。

「真摯」と「熱心」というこの2つは類義語ではあっても交換可能かどうかは文脈にもよりますし、人によって判断が異なるでしょう。

⑤一途

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「一途(いちず)な思い」などの使い方にあるように恋愛に使われることの多い「一途」ですが、これは「1つのことにただひたすら専念する」ということで、「真摯」のイメージとぴったりといえます。

真摯よりももっとわき目もふらずに物事に取り組む姿勢も感じられます。「途」という漢字の語源である「どこまでもずっと伸びている道」を意識すると「一途」をもっとイメージしやすくなります。

「一途」の類義語として「ひと筋」「一本気」などをあげることができます。やはり「1つのものに集中する」イメージが伝わってきます。

真摯の対義語とは

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真摯のいくつかの類義語を考えてきましたが、類義語を考えることで物事にどのように取り組むべきかも感じられたことでしょう。これから真摯の対義語を考えていきます。

対義語を考えることで、今度は物事に取り組む際にどんな考え方や態度、姿勢を避けるべきかを感じ取れることでしょう。可能な範囲で例文も取り上げながら説明していきます。負のイメージも考えることで「真摯」という言葉の全体像を把握できます。

①不真面目

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「真摯」の類義語「真面目」の否定形で、読んで字のごとく「真面目さが欠けている」ことです。「真面目」の「緊張しながらまばたきをして物事を見る」という意味合いを理解していれば、「不真面目」とは成すべき物事から目をそらしている様子が感じられます。

さらには、余計な事柄に気を散らされて、本来なすべきことに集中できない様子や無関心な態度も感じとれます。「不真面目」の類義語としては「浮いた」「上っ調子」などがあります。

②不誠実

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これも読んで字のごとく「誠実さの欠けている」人をさしてよく用いられます。不誠実な人は「平気でうそをつく」「約束を守らない」「時間に遅れる」などの例文から分かるように、真実さやなすべき物事から目をそらしています。

また「不誠実な人は自分には甘く、他の人の心を平気で踏みにじる」などという使い方をされることもあります。「不誠実」の類義語として「不正直」「気まぐれ」などがあり、真摯の類義語「真剣」の対極にあるといえるでしょう。

③無責任

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「責任感がある」の正反対で「自分の言動に責任をもたないこと」です。無責任な人は「自分の言動に責任をとらない」ので自分勝手で、真実の裏付けのない主張を平気で繰り広げます。ネット上の掲示板などでいいかげんな発言をする人もこのたぐいに入るでしょう。

「無責任」の類義語としては「人任せ」「おんぶに抱っこ」などがあります。真摯の類義語「懸命」のまさに対極にある態度といえます。

④怠惰

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「怠惰」に関してはまず「怠」と「惰」それぞれの漢字の語源を考えてみましょう。「怠」は「心がたるんでいるさま」で「惰」は「心がゆるんでしまりがないさま」を意味しています。どちらもネガティブなイメージです。

どちらも「心」が関係しており、怠惰な人は内面に欠陥があることがわかります。内面に緊張感がなく「ゆるんで、たるんで」いるので、なすべきことに取り組みません。怠惰の類義語には「無精」「横着」などがあります。

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余談ですが、動物のナマケモノは決して「怠けて」いるのではありません。筋肉の量が限られているので、身震いして体を温めることができません。それで体温を上げるために日中、高い木の上で日向ぼっこをすることで体温を上げているのです。

また木にぶらさがることで空から、また地上からの天敵から自分を守ってもいます。また大けがをしてもすぐに治る驚異的な免疫力もあるそうで、ナマケモノの免疫系についての理解が進めば医学の向上にも役立つといわれています。ナマケモノから学べる点は多そうです。

⑤軽薄

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「軽薄な人」は言動が軽くて、思慮が浅い人をさして用いられることがあります。「流行にすぐに左右される軽薄な男」などという例文から分かるように、意識すべき価値基準に欠けており、周りに影響されやすいことも特徴です。

さらには「軽薄」と「短小」が組み合わさって「軽薄短小」というありがたくない4字熟語もあります。スマートフォンなら「軽くて薄くて小さい」方が良いのでしょうが、人となりに関して人格が薄っぺらくて中身がないと思われては困ります。

「軽薄」の類義語としては「そそっかしい」「向こう見ず」「無分別」などがあります。知性の欠如というよりも人の話をきちんと聞かない高慢で思慮の浅い人を連想します。

真摯の使い方とは

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これまで「真摯」という言葉の意味について、語源を考えながら基本的なイメージを考えました。類義語と対義語の意味を少しの例文や使い方をとおして考えることで「真摯」の意味についてイメージを膨らませることができたのではないでしょうか。これからは真摯の適切な使い方について説明していきます。

人の行動について言い表す

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真摯はこれまで考えたいくつかの類義語と交換可能な言葉です。さらに「忠実」「誠意」といったことばとも関連します。しかし真摯はポジティブな意味合いはあるものの、どちらかというと改まった固い印象を与える表現です。

そのため、フォーマルなシーンやビジネスシーンで、また親しい友人との間ではなく、公の場で使うことが一般的です。また目上の人に対して使うことが適切で、それ以外だと皮肉っぽく聞こえてしまう可能性もあります。

とくに顧客に対する謝罪など、また目上の人の発言に関して自分の行動や発言を律してひたむきに改善、前進していく決意とともに真摯という言葉を用いるなら、多くの場合好意的に受け止めていただけます。

真摯を使った例文とは

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どんなシーンでだれに対して「真摯」を使うことが適切なのかを考えましたので、これからは具体的な例文をとおして「真摯」の使い方を説明していきます。「真摯」のもつポジティブかつフォーマルで改まったイメージを意識しながら考えてみてください。

さらに自分をその状況に置いてみたり、相手の立場になって考えてもみます。例文はあくまでも参考であって、暗記して用いるのではなくその趣旨や要点をつかんで、自分の言葉で表現することが大切です。

①真摯に受け止める

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「真摯に受け止めます」とは仕事上でミスをしたときや顧客からクレームが来たときなどに用いられます。相手に対して自分の真剣なお詫びの気持ちや反省の意思を伝えられます。同時に、失敗から何らかの教訓を学んで今後物事に真面目に取り組む決意や姿勢も相手に対して伝えることができます。

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口頭でまたは電話やメールでこの表現を使うことができます。相手に対して単に「お詫びします」とか「反省しております」だけでは、今後どうして行きたいのかがうまく伝わりませんが、「真摯に受け止めます」はこれ以降改善して行く決意も伝わりますので、相手の荒立った感情を鎮める効果も期待できます。

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ですから、だれかに謝罪する際は「頂いたご指摘を真摯に受け止めて、今後改善に努めてまいります」などのように明確に表現するようにいたしましょう。

特に自分より目上の人が、何らかの点を指摘してくれる場合は怒っているというよりはむしろ自分の今後の成長を願って、善意の気持ちから述べてくれることが少なくありません。

ですから多少厳しい言葉で指摘されたとしても相手の善意を信じて誠実に「ご指摘ありがとうございます。真摯に受け止めて、改善に努めてまいります」と述べてその後は真剣に言葉と行動で改善に取り組む姿勢を見せるなら相手との信頼関係は大いに増していくはずです。

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以下に「真摯に受け止める」の使い方を例文とともにご紹介します。基本的には「この度はたいへん貴重なご忠告をいただきました。真摯に受け止め再発防止に努めてまいります」と述べれば相手は安心するでしょう。

さらに「今後、同様の不祥事が生じぬよう頂戴したご指摘を真摯に受け止めて、皆が周知徹底するよう努力いたします」とか「真摯に受け止めて、関係部署内でも情報を共有いたします」と述べれば相手は自分の指摘がもっと大勢に役に立つと感じてくれるはずです。

何らかの損害を相手に与えたのであれば、「この度はわたしどものミスにより、多大なご迷惑をおかけしてしまいましたことを真摯に受け止めて、至急代品を手配いたします」と述べてすぐに行動で誠意をしましましょう。

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いくつか例文とともに「真摯に受け止める」の使い方をご紹介しましたが、例文を暗記するのではなく相手の気持ち、意見、感情をまず「真摯に受け止める」姿勢をはっきり示すことです。ピンチはチャンスでもあります。クレームや指摘は信頼回復のチャンスで場合によってはさらなる信頼関係を築けるチャンスであることを「真摯に」受け止めましょう。

②真摯な姿勢

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「真摯に受け止めます」の使い方が基本ですが、真摯にを用いた敬語表現はほかにもあります。「真摯な姿勢」ですが、これは自分だけではなく相手に対しても用いることができ、上手な用い方をするならばビジネスシーンにおける信頼関係を促進するといえます。以下に例文とともに使い方をご紹介しましょう。

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ミスをした相手が「真摯に受け止め、改善に努めてまいります」と述べた後、実際に言葉と行動で誠意をみせているならば素直にその誠実さを誉めてあげましょう。「貴社の真摯な姿勢に、感銘を受けました。ぜひとも今後もよろしくお願いいたします」などの表現は相手に励みを与えます。

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さらに「このたびのクリーム対応で見せていただいた真摯な姿勢に、心を打たれました。それで来年も弊社とお付き合いいただければ幸いです」などの使い方はどうでしょうか。こちら側も謙虚で真摯な姿勢を見せれば、きっと相手も自分たちの努力が認められたことに感銘を受けて仕事のパフォーマンスをさらに上げようという気持ちになることでしょう。

③真摯な対応

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「真摯な対応」は前述の「真摯な姿勢」と同じく「真面目に取り組む」ニュアンスがあることは似ています。「真摯な姿勢」での例文同様に「この度の御社の真摯な対応に、感銘を受けました」などと用いることができます。

しかし「真摯な対応」の方は「真摯な姿勢」と比べると「真摯な対応をしていただき、嬉しく思います」という例文が示すとおり具体的に「対応する」行動面を強調する点が異なるといえます。

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たとえばネットオークションで落札した商品が自宅に送られてきました。わくわくしながら開封します。ところが残念なことに目の前にある商品は明らかな欠陥品です。

このとき商品を送ってきた相手に対する例文としては「迅速な発送には満足していますが、明らかに欠陥品です。(詳細を述べて)出品者様の真摯な対応を求めます」と連絡できます。相手に返品と返金という具体的な対応を丁寧かつはっきりと求めることができます。

同じようにビジネスシーンでも「今回の案件に関して、御社の真摯な対応を求めます。この度生じた損害の補償および代案の提出を求めます」という例文を用いるなら、相手は具体的な行動が求められていることを理解できます。

真摯の英語表現とは

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英語は語彙の非常に豊かな言語で、英語本来の語に加えて、ラテン語、ギリシャ語、フランス語由来の単語がたくさんあります。ちょうど日本語も日本語本来の大和言葉に加えて、たくさんの漢語や外来語によって豊かな言語になったのと似ています。

日本語で「よみがえる」も「復活する」も意味としては同じですが、微妙にニュアンスが違います。「見る」と「拝見する」では使う文脈が異なります。英語の場合も同じで英語本来の単語を使うと素朴で温かく、フランス語由来の単語を使うと高尚かつ知的なニュアンスが感じられるようです。

たとえばlook up toとrespectはどちらも同じ意味ですが、前者は英語本来の表現で後者はフランス語由来のため日本語で言えば、「うやまう」と「尊敬する」のようなニュアンスの違いがあります。

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前置きが長くなってしまいましたが「真摯」の英語表現を説明する前に、もう少し前提知識についてお伝えします。それは日本語の単語と英語の単語は、ほとんどの場合「1対1の対応」にはならないことです。

たとえば、「かわいい」に対する英単語はcuteといつも決まっているわけではありません。日本人の女性はこの「かわいい」を色々な場面で使いますので、文脈や状況によってprettyやlovelyの方がぴったりくることもあります。

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一方英語に関しても、たとえばrunはいつも「走る」の意味で使われるわけではなく、文脈によっては「経営する」と訳し分けます。専門用語などの場合、特定の単語には1つの意味をあてることが多いですが(たとえばdiabetesは「糖尿病」)ほとんどの単語は「1対1対応」ではないことを知っておく必要があります。

①真摯

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以上の前提知識を念頭に置いてこれから「真摯」に関する英語表現についてご紹介します。この「真摯」という名詞に対する一番感覚的に近い英単語はsincerityで、形容詞はsincereになります。

しかしこのsincerityとsincereは「誠実さ」「誠実な」と訳すことが多く、ひたすら感は伝わるものの「真摯」のもつ「1つの物事に」というイメージは薄いように感じられます。やはり日本語の「真摯」のもつ意味範囲と少しずれている感は否めません。文脈によってはsincereよりもearnest(名詞も形容詞も同じ形。熱心、真剣)の方がよい場合もあります。

「彼は真摯に目標に向けて取り組んでいる」をあえて「真摯」の意味合いを意識して英訳するなら"He makes sincere efforts toward his aim with all his heart.""という少し冗長な感じになります。翻訳することは本当に簡単ではありません。

②真摯な態度で

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「真摯な態度で」は簡潔にwith sincerityと表現できます。「真摯を使った例文とは」の見出しにあった、「真摯な姿勢に感銘を受けました」という例文は英語でどう表現できるでしょうか。「真摯な姿勢」と「真摯な態度」は同じことなので、"I was deeply impressed by the sincerity of  your attitude."と表現できます。メールなどで使えます。

③真摯に受け止める

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最後に前述の「日本語と英語は1対1対応にはならない」例として、「真摯に受け止める」を取り上げます。この場合take sincerelyよりもtake seriouslyとseriouslyを使った方がふさわしいでしょう。誠実に自分の非を認めるだけでなく、事態を深刻に受け止めていることが伝わるからです。

では例文として顧客からクレームを受けた際に使う「ご指摘を真摯に受け止めて、今回の件を周知徹底して改善に努めます」を英語で表現してみます。

たとえば、"I take your concerns seriously. I will share this incident with all staff in order to  improve our services."と表現できます。

真摯とは真面目で1つの物事に取り組むこと

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「真摯」とはどんな意味合いをもつ言葉か考えてきました。「真摯」に対するイメージを膨らませることができましたでしょうか。最初に語源を考えました。特に「真」はもともと「眞」で死者の意味から転化して「まこと」になったことを知りました。意外な歴史的背景からあらためてこの「真」を見て襟を正す気分です。

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さらに「真摯」の類義語と対義語を考えることでいっそう「真摯」の意味合いの理解を広げることができました。単に「真摯」の意味を頭で理解しているだけでなく、「真摯に生きる」とはどういうことか、人生においてどんな考え方や態度を身に着けるべきか、あるいは避けるべきか考えさせられます。

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最後に「真摯」の英語表現を考えることで、「真摯」のもつ意味合いの豊かさにも気づくことができました。「真摯」の基本的な意味は「真面目に1つの物事に取り組むこと」ですが、その真剣さの度合いやひたむきさ、そして純真で一意専心の気持ちなどを実感していただけたら幸いです。

モノクロパレット
ライター

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