確定申告の扶養控除とは?控除の条件や金額・配偶者控除との違いも解説!

確定申告の扶養控除とは?控除の条件や金額・配偶者控除との違いも解説!

確定申告で気になるのは、扶養控除などの「控除」ですよね。各控除の一定条件を満たすと、支払うべき税金の金額を抑えることができます。そこでこの記事では、扶養控除とは何か、その条件や控除金額、配偶者控除とはどのように違うのかを解説していきます!

記事の目次

  1. 1.確定申告で扶養控除をする意味とは
  2. 2.扶養控除の条件とは
  3. 3.海外にいる親族は扶養控除の対象になる?
  4. 4.扶養控除の金額は扶養親族の年齢で異なる
  5. 5.扶養控除と配偶者控除の違い
  6. 6.確定申告における扶養控除の書き方
  7. 7.フリーランス(個人事業主)の場合の控除申請
  8. 8.節税のために扶養控除を申請しよう

確定申告で扶養控除をする意味とは

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確定申告の際に気になるのが控除です。控除が適用されれば節税効果が高まるので、条件を満たす控除はしっかり受けたいものです。この控除には様々なものが存在していますが、そのなかの一つに「扶養控除」があります。この記事では、一見配偶者控除と混同してしまいがちな扶養控除とは何かについて解説していきます。

扶養控除とは

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扶養控除とは、確定申告をする際、納税者(世帯主)に控除対象となる扶養者がいる場合に適用される控除です。

扶養控除が適用されるには一定の条件があります。そこでまずは、扶養控除の適用条件について詳しく解説していきます。

扶養控除の条件とは

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扶養控除が適用されるには、その年の12月31日時点で以下6つの条件を満たしている必要があります。納税者との関係性はもちろん、対象扶養親族の年齢やその年収など細かい条件が設定されています。一見わかりにくいかもしれませんが、一つひとつの条件は難しくないので、以下で丁寧に見ていきましょう。

配偶者以外の親族である

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扶養控除の対象となるのは、配偶者以外の親族です。配偶者以外の親族とは、「6親等以内の血族」か「3親等以内の姻族」、または「都道府県知事から養育を委託された児童」と「市町村から養護を委託された老人」のことを指します。

1親等から3親等にあたるのは「父母・子ども」「祖父母・兄弟姉妹・孫」「曾祖父母・曾孫・叔父叔母・甥姪」です。いとこや曾祖父母以上の祖父母(高祖父母を呼びます)、曾孫以上の孫(玄孫)、祖父母の兄弟姉妹などが4親等から6親等内に当てはまります。

年齢が16歳以上

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扶養親族の1親等にあたる「子ども」ですが、12月31日時点で16歳に満たない場合は扶養控除の対象外となります。以前は16歳未満の子どもも扶養控除の対象だったので、これは少し意外かもしれません。

この変更は「子ども手当て」によるものです。2010年4月より、15歳までの子どもがいる家庭に給付を行う子ども手当てが導入されました。これに伴い、2011年より16歳以上の子どものみ扶養控除の対象となりました。

生計を一にしている

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生計を一(いつ)にするとは、納税者の収入によってのみ生活が成り立っていたり、納税者と扶養親族がお互いに生活費を出し合って生活をしていたりすることを意味します。

ここで注意すべきは「一緒に暮らしていること」が条件ではないことです。例えば、単身赴任や遠方の学校への進学に伴う下宿、留学などの場合でも、生活費や教育費は世帯主(納税者)が支払っている場合も存在します。

こういった際に、それまでと家計状況は変わらないにも関わらず扶養控除が受けられなければ、家計への負担は大きくなります。そこで、同居でなくても世帯主(納税者)から生活費が支払われている場合は、「生計を一にするに該当する」としているのです。たとえ一緒に暮らしていても、互いが独立して生活している場合はこの条件には当てはまりません。

年収の金額が要件を満たしている

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扶養対象の親族の年収も、扶養控除の適用条件になります。ここでの年収とは「年間の合計所得金額」または「給与収入の金額」です。

ここで注意すべきは、「合計所得金額は年収ではない」ということです。給与所得者(アルバイトやパート)の場合は、給与収入から給与所得控除を引いた金額になります。

年間の合計所得金額が38万円以下

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扶養控除適用にあたり、扶養家族の年間合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は、合計所得金額が48万円以下)であることが条件となります。

合計所得金額とは、様々な所得の合計金額を指します。アルバイトやパート先から支払われる給与(給与所得控除後)以外にも、株式投資やFXで得た収入も含まれます。

なお、株式投資では「源泉徴収あり特定口座」で申告不要制度を利用すると、株式投資で得た利益が合計所得金額に含まれません(確定申告で申告すれば合計所得金額に含むこともできます)。もし、一般口座や源泉徴収なし特定口座であれば必ず含まれるので、注意が必要です。

給与のみの場合は給与収入の金額が103万円以下

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扶養親族にアルバイトやパートなどでの収入がある場合、その給与収入(年収)は103万円以下でなければなりません。これは2020年分以降も変わりません。

なぜ103万円なのでしょうか?これは年間の給与所得(年収)に伴う「給与所得控除」が発生するからです。給与所得控除とは、勤務先から支払われた給与にかかる税金の負担を軽減する役割があります。

仮に、扶養親族(例えば大学生の子ども)がアルバイトで年間103万円を稼いだ場合、その給与所得控除は65万円になるので、103万円-65万円=38万円が合計所得控除となります。

青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていない

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フリーランス(個人事業主)の場合、年末調整がなく自ら確定申告し、納税する必要があります。このとき、「青色申告者」と「白色申告者」に分かれます。青色申告には面倒な手続きや事務作業がありますが、その分受けられる優遇も大きいため、半数以上の個人事業主が青色申告をしています。

青色申告者の事業専従者とは

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青色申告とは、一定の水準による記帳に基づいた申告をする場合に適用できる制度です。この制度を利用するには事前承認申請と正規の簿記原則による帳簿作成等が求められます。

青色申告にはコストや手間がかかる分、税制上受けられるメリットが増えます。その一つが「青色事業専従者給与の経費算入」です。

青色申告の事業主と生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族が、その事業に年間6か月以上従事している場合が「青色申告者の事業専従者」に当たります。この専従者に支払う給与は必要経費に算入することができるため、納税者の所得税が軽減されます。このように、扶養控除を受けなくても所得税が軽減されるため、扶養控除の対象外となります。

白色申告者の事業専従者でない

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白色申告者とは、個人による確定申告の際に青色申告以外での申告を行う人を指します。青色申告よりも帳簿への記帳などの事務作業負担が軽減されます。(2014年からは、白色申告者であっても記帳と帳簿書類の保存が義務付けられています)しかし、その分受けられるメリットも少なくなります。

白色申告者の事業専従者とは

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これは、青色申告者の事業専従者と同じです。白色申告をしている事業主の生計を一にする配偶者や15歳以上の親族で、年間6か月以上その事業に従事している者を指します。白色申告者の事業専従者の場合、扶養控除を受けることはできません。その代わりに、「事業専従者控除」を受けることができます。

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海外にいる親族は扶養控除の対象になる?

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子どもが16歳(高校生)以上になれば、一般的には扶養控除の対象となります。最近では、高校生や大学生での留学が増えています。では、「大学生の子どもが留学で海外に行ってしまった」というような場合、扶養控除の対象となるのでしょうか?海外に住む親族における扶養控除の条件を見ていきましょう。

海外にいる親族も扶養控除できる

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留学などを含め、海外にいる親族も扶養控除の対象になります。しかし、控除適用には一定の条件が課せられています。それは「親族関係書類」と「送金関係書類」という2種類の書類の提出です。特に注意すべきは「送金関係書類」です。

例えば、現金を手渡しで渡している場合、送金関係書類はありません。こういった場合は、控除の対象外となってしまいます。海外に住む親族の生活費や教育費のために支払いを行ったことを証明する書類が必要になる点だけ、注意する必要があります。

扶養控除の金額は扶養親族の年齢で異なる

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扶養控除の対象になるのは16歳以上の親族でした。これは、その扶養親族分の生活費を納税者が負担している分の控除と言えますが、それぞれにかかる生活費(教育費を含む)は年齢によって変わります。そこで、実際に控除を受ける場合も対象となる親族の年齢によって控除金額が変わります。

70歳以上

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70歳以上の扶養親族は「老人扶養親族」に分類されます。老人扶養親族の控除金額は、同居の有無によって異なります。同居している場合は「同居老親等」となり、控除額は58万円になります。一方、老人ホームなどへ入所していると同居とはみなされず、「同居老親等以外の者」として控除額は48万円になります。

19歳以上23歳未満

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19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養親族」となります。高校を卒業した後、専門学校や短期大学、大学に進学して収入がない、または収入の低い(生活を一にする)子どもがこれに当たります。特定扶養親族は学費などにかかる金額も大きいためか、控除される金額が最も高く、63万円が控除されます。

16歳以上で上記以外の年齢

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16歳以上19歳以下、または23歳以上70歳未満は「控除対象扶養親族」です。この場合の控除金額は最も低く、38万円となっています。

どの扶養親族であっても、複数人で1人を扶養している場合は納税者1人しか扶養控除を受けることができません。一方、扶養親族が複数人の場合は、人数分の控除を受けることができます。

扶養控除と配偶者控除の違い

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確定申告の際、様々な控除がありますが、多くの人が混同するのが「配偶者控除」と「扶養控除」の違いです。配偶者も扶養家族の一人と言えますが、配偶者には扶養控除は適用されません。ここでは、「配偶者控除とは何か」を解説した上で、両者の違いについて見ていきます。

配偶者控除とは

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配偶者控除とは、扶養家族の中でも配偶者にのみ適用される控除です。これは、事実婚などには適用されず、民法上で婚姻関係にある配偶者の場合のみ当てはまります。納税者と生計を一にしていることや年間合計所得金額などの条件は、扶養控除と同じです。

また2018年分より、配偶者控除の適用条件として「納税者の収入」が加わりました。納税者の合計所得金額が1000万円以上になる場合、配偶者控除を受けることができません。しかし、合計所得金額が1000万円超えるのは、サラリーマンであれば額面での年収が1220万円以上の場合になります。

年収が1000万円を超えるのは日本でも4.5%ほどだと言われているので、多くの人には影響はありません。実は、これ以上に多くの人に影響があるのは、「配偶者特別控除」です。

配偶者控除の金額は?

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配偶者控除には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」が存在しています。これは、対象となる配偶者の所得(合計所得金額)によって変わります。

配偶者控除は、配偶者の収入がない、または配偶者の所得が103万円以下の場合に適用される控除です。適用されることで、納税者は38万円の控除を受けることができます。

2018年分から変更になったのが「配偶者特別控除」です。2018年分より、年収103万円から年収150万円の配偶者がいる場合でも、配偶者控除と同額の38万円を控除されることができるようになりました。

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確定申告における扶養控除の書き方

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確定申告の際、扶養控除を適用するためには必要書類への記入が必要となります。必要書類とは、年末調整の際に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のB欄「控除対象扶養親族(16歳以上)」に必要事項を記入します。記入する内容は「氏名」「マイナンバー」「納税者との続柄」「生年月日」「その年における所得の見積額」「住所」が主な事項になっています。

またそれ以外にも、控除対象親族が「老人扶養親族」の場合、同居していれば「同居老親等」に、同居していなければ「その他」にチェックを入れます。控除対象親族が「特定扶養親族」の場合はその欄にチェックを入れます。このチェックにより控除金額が変わるため、漏れなく記入する必要があります。

控除証明書は必ず必要

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確定申告には、扶養控除以外にも様々な控除があります。その中でも「社会保険料控除」「生命保険控除」などは、申請にあたり「控除証明書」が必要になります。この証明書は、毎年10月以降に発行されます。控除の申請には必ず必要な書類になりますので、必ず保管するようにしましょう。

また、海外に扶養親族がいる場合は、「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要になります。この「送金関係書類」は金融機関の書類またはその写しやクレジットカード発行会社の書類またはその写しが相当します。

控除証明書がない場合は領収書でもOK

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控除証明書が届いてから申告にあたって提出するまで、少し期間があきます。そのため、控除証明書を紛失してしまうということも起こりえます。この場合、各保険会社等に申請すれば再発行をしてもらうことができます。

また、海外にいる扶養親族の扶養控除を申請する際に提出する「送金関係書類」は、クレジットカードの利用明細でそれに代えることができます。

社会保険料控除欄に保険料の金額を記入

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社会保険料控除についても注意が必要です。生計を一にする親族の社会保険料を支払った場合、支払った人の社会保険料が控除されます。例えば、夫が妻や子どもの国民年金保険料を支払った場合がこれに当たります。

家族分の社会保険料控除を受けるには、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に記入が必要です。記入内容は「社会保険料の種類」「支払先」「社会保険料を負担した人の氏名・続柄」「支払った保険料の金額」です。この書類と一緒に、支払いを証明できる書類を提出することで、社会保険料控除を受けることができます。

フリーランス(個人事業主)の場合の控除申請

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近年では、フリーランスのように会社に属さず仕事をする人も増えています。サラリーマンであれば、年末に会社から配布される「年末調整書類」に記載をすれば、各種控除を申請することができました。一方、フリーランス(個人事業主)の場合は、年末調整ではなく確定申告を行う必要があります。

フリーランスの確定申告は、1月から12月までの収入からその年の所得税を算出し、翌年の2月から3月までに申告・納税をします。

ただし、年度の途中でそれまで勤めていた会社を退社してフリーランスになった場合は、1月から退社した月までの源泉徴収票を受け取り、フリーランスになってからかかる所得税とサラリーマン時代に支払った分の差額を納める必要があります。

節税のために扶養控除を申請しよう

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この記事では、扶養控除とは何か、その条件や金額、配偶者控除とはどのように違うのかを見ていきました。ここ数年で変化したところや、年収や居住など意外と見落としがちな条件などもあるので、正しい知識を持っていなければ「知っていたら控除を受けられたのに!」という事態になりかねません。ぜひ正しい知識を知って、節税効果を高めていきましょう!

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ライター

y01co

コーヒーと温泉が好きです。つい笑いを取ろうとしてしまうのがクセです。自由でゆったりとした毎日を送るため、日々奮闘中です。わかりやすく、学びある情報をお伝えできるようにがんばります!

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