専務と常務とは
一般的に常務というと常務取締役を指し、専務というと専務取締役を指すことが多く、また会社上の扱いでは一般社員とは違い、役員として扱われるケースが多いと言えます。会社の組織図をを大きく二つに分けると、経営側の人と、従業員側の人の2つになり、役員は経営側になります。
また、日本の会社法によって、特に常務や専務が必ずいなければならないという法律も、常務や専務の業務内容も定められていないので、これらの理由が専務と常務の違いを難しくしている原因だと考えられます。
しかし、常務と専務という肩書をもった全ての人が役員だとは限りません。この役員である場合と、そうでないケースは後述で詳しく説明します。
専務と常務の違いは分かりづらい
会社法によって明確に常務と専務の違いが記されていない為、専務と常務の違いは分かりづらいものだと言えるでしょう。一般的には常務と専務は社長の補佐役という扱い、または解釈をしている企業が多いようです。従って、常務と専務の業務内容は基本的には社長の補佐役と言えますが、詳しい業務内容は会社によって異なると言えるでしょう。
専務の役割とは
一言に専務と言っても、いろいろなケースが考えられます。ここでは、会社という組織の中で一般社員とは異なる三つの肩書(取締役・執行役・専務執行役員)と会社の経営側の立場か否かという観点から、一般的に認識されている専務という肩書の業務内容などを説明していきます。
専務取締役
取締役という肩書も会社法によって、どのような権限をもっているのか、またはどのような立場なのかが定められていない為、取締役の明確な定義というものは、会社によって異なり、明確にどのような役職なのかという定義を説明するのは非常に困難だと言えるでしょう。
但し、ほとんどのケースに於いて専務取締役は会社の役員であることが多い為、会社の今後の経営方針などを決める役割があり、役員会議において重要なメンバーの一人だと言えます。
専務執行役
つぎに、専務執行役について説明します。ここでも勘違いされやすいのは専務執行役と専務執行役員の違いです。取締役というのは、必ず役員、つまり会社の経営方針などを決める決定機関に含まれますが、専務執行役が役員のメンバーに入っていないケースでは、会社の経営方針などに口を出すことはできません。
それでは専務執行役の業務はどのようなものかというと、指名委員会設置会社の業務を委ねられるケースが多いとされています。指名委員会設置会社とは、取締役会の中に社外取締役が過半数を占める、所謂「コーポレートガバナンス」の形式を採用している会社の業務全般を行います。
専務執行役員
専務執行役員は、前述した専務執行役とは異なり、役員に属する為、名称は非常に似通っていますが、業務内容は全く異なります。専務執行役員は会社の役員であるが故に、会社の業務執行の決定や取締役の職務執行の監督などといった、会社の経営に関わる非常に重要な業務を任されることが多いと言えます。
常務の役割とは
冒頭で説明した通り、常務というのは基本的に常務取締役という会社の役員のメンバーの一人のことを指しますが、その他に常務執行役という役員ではなく、専務執行役のように指名委員会設置会社の業務をメインに扱っている立場もあります。常務が役員の場合、一般的には社長の補佐役などの業務をすることが多いと考えられます。
常務取締役
常務取締役とは、専務取締役同様、常務という肩書の中で最も権限を有している肩書と言えるでしょう。取締役という肩書がある為、常務取締役は会社の経営サイドである、役員のメンバーに入ります。また、常務取締役は、別の名称で執行役常務という肩書が使われるケースもしばしばあります。
常務執行役
専務執行役のケースと同様に、常務執行役は役員ではない為と、常務執行役員と業務は大きく異なります。常務執行役の役割は、専務執行役と同様に、一般的に委員会設置会社で、取締役の会社の重大事項・方針の決定や監督を行い、常務執行役が会社のそれらの業務を執行することになっています。
常務執行役員
常務執行役員は多くの場合で会社の役員のメンバーの一人として、取り締まり会や、役員会議で決められた会社の方針や、決定事項を職務として実施するという役割が業務内容のメインと言えるでしょう。これも専務執行役員と同様に、会社の経営に関わる非常に重要な業務の役割を任されることが多いと言えます。
専務と常務の違い【肩書上どちらが上か】
ここで、特に会社勤めではない方々の多くが疑問に感じている、「専務と常務は肩書上どちらの立場が上なのか。」という事実に関して説明します。先述した通り、日本の会社法には、専務と常務の立場の上下関係などが明確に示されていません。しかし、一般的には専務の方が、常務よりも立場が上だと認識されています。
一般的な違いは「専務」の方が立場は上
ここで一度、一般的な日本の企業の肩書の序列を整理してみましょう。但し、一般社員はここには含みません。まずトップにいるのが社長で、その次が副社長、そしてその次が専務で、最後に常務という序列を一般的だと解釈している企業が日本ではほとんどだと言えます。また、会社によっては、社長の上に会長がいたりするケースもあります。
専務と常務の仕事内容の違い
専務と常務の仕事内容の違いについて、明確な違いを定義するのは非常に困難だと言えるでしょう。詳しい業務内容も、会社によって異なりますが、一般的には専務と常務は社長の補佐役として存在し、専務は主に会社の管理や監督業務を行い、専務は日常的に一般社員に対し業務執行などを行うと捉えている会社が多いようです。
専務と常務は法律上の違いはあるか
会社を経営するにあたり基本的に、会社法という法律に基づいて組織を構成する必要があります。例として取締役や執行役といった役職には法律的根拠があると言えます。しかし、専務や常務という肩書については法律的根拠が一切ないので、各会社の規則に則って肩書を決めるケースがほとんどです。
極端な話、常務の方が専務より上の立場に設定しても全く問題ありませんし、比較的規模の小さい中小企業などでは専務や常務という肩書が存在しない会社も多くあります。
取締役とは
つぎに、取締役について説明します。取締役は、専務や常務などの肩書とは異なり、会社法によって株式会社には取締役が必ず存在しなければならないという法律があります。取締役の役割は会社法によってかなり明確に記されており、取締役には様々な権限を行使したり、何かあった場合の責任を取るという役割があります。
取締役の責任で重要なものは、例として会社法429条にある、「重大な過失により、取引先など第三者に損害を与えた場合は、取締役個人として賠償責任を問われる」というものがあります。取締役は会社の方針や人事権の行使の権限があるのと同時に、例え一般社員が起こした取引先への損害などの責任を負う義務があるのです。
会社の意思決定を決める機関
会社の業務執行における意思決定を定める役割をする機関として取締役会というものがあります。但し、上場企業を除いて、全ての会社が取締役会を必ず行わなければならないという法律はありません。取締役会が正式な取締役会とみなされる為には、取締役三名以上と、その他に監査役もしくは会計参与も参加する義務があります。
当然、取締役が三名以上いない小さな会社もたくさんありますし、仮に一般的な中小企業でも、取締役会を開く為に、監査役を特別に雇わなければならないので費用が掛かります。そのような理由から取締役会を行わない会社も多数存在します。
専務・常務と取締役の関係とは
ここで再度確認する必要があることとして、取締役や役員は役職ではなく、会社の業務執行における意思決定を定める「機関」であるということです。基本的に大企業になると、専務取締役や常務取締役といった、その企業の役員であるケースが多いのですが、そうでない場合専務や常務は先ずステップアップとして役員になることが目標になります。
役員にまで昇格した場合は、役員メンバーの一員として認められ、役員会議や取締役会に出席することができて、それは今後の会社の業務執行における意思決定を定める「一票」を持つ権利に繋がります。当然役員になるからには、それなりの人格と責任が問われます。
役員の定義とは
ここまでで何度か「役員」という言葉が出てきましたが、会社の役員の定義を今一度説明します。会社の役員と言うのは、会社法により明確な定義が定められています。会社法における役員の定義は、取締役、会計参与次、そして監査役の三種類に分けられます。監査役に関しては、会社の会計上の不正防止の為、外部役員として参加します。
また、繰り返しになりますが役員というものは、あくまで会社の「機関」の役割であって役職ではないということを理解する必要があります。つまり、株主総会や取締役会といった役割と同じ位置付けにあるということになります。この辺りの誤解から、常務や専務は役員であるというイメージが定着してしまっていると考えられると言えるでしょう。
英語での「専務」と「常務」
次に専務や常務、または常務取締役といった会社の役職に関する言葉を英語で言い換えるとどのように表現するのかを説明します。しかし、注意が必要なのは欧米では、会社組織の構造が基本的に日本とは異なる部分が多いので、専務や常務という言葉を全く同じ表現で英語に言い換えることは難しいので、なるべくニュアンスが近い表現について説明します。
常務取締役の英語表現
常務取締役の英語表現として考えられるものは主に三つあります。まず「Managing Director」という英語ですが、これは非常に曖昧な表現であり、常務取締役とも表現できますが、同時に、業務執行取締役、最高業務責任者という意味もあります。従ってニュアンスとして伝える分には問題ありませんが、正式な場では控えた方が無難だと言えるでしょう。
次に「Executive Vice President」という意味ですが、「Executive」を除いた「Vice Prisident」という英語は、「副社長」や「副大統領」の意味としてよく知られています。そこに「Executive」という、会社の重役や幹部として使われる単語を足すことによって常務取締役に少し近いニュアンスにあると言えるでしょう。
「Executive Director」という英語がありますが、この表現が最も常務取締役に近い表現だと言えるでしょう。他の二つは意味としてかなり上の経営者クラスの役職を表す英語なので、少し控えめに表現する分には問題ないので、常務取締役を英語で表現するには「Executive Director」が適切だと言えるでしょう。
常務執行役および常務執行役員の英語表現
常務執行役および常務執行役員の英語表現として、「Managing Executive Officer」と「Associate Senior Corporate Executive Officer」といった英語がそれぞれ常務執行役と常務執行役員にニュアンスが近いと言えるでしょう。但し、「役員」を英語で表現するには「Officer」より「Board Member」の方が意味が近いと言えます。
従って、「Officer」の部分を「Board Member」に変えて表現しても、問題ないと言えるでしょう。もっとシンプルに「会社の幹部・役員」というようなニュアンスで伝えたければ、「Board Member」が最も適していると言えます。
専務取締役の英語表現
専務取締役の表現方法はほとんど、常務取締役の英語表現と変わらないと言っていいでしょう。そもそも英語には「専務」や「常務」といった単語は存在しません。これも先程と同じように控えめに「Executive Director」と表現するのが無難だと言えるでしょう。加えて役員であることを伝える為には、次のような例文が考えられます。
「I'm like an Executive Director and, also one of the Board Member as well」(私の役職は専務取締役で、尚且つこの会社の役員です。)のような例文が考えられます。
専務執行役および専務執行役員の英語表現
もし仮に専務執行役および専務執行役員を英語で表現するとしたら、それぞれ「Managing Executive Officer」と「Senior Corporate Executive Officer」が適切だと言えるでしょう。これらは一目見れば英語の構成から「Senior Corporate Executive Officer」の方が立場が上だということが分かってもらえると言っていいでしょう。
「専務」と「常務」英語ではどちらが上か
英語表現の説明では、専務取締役も常務取締役も同じ「Executive Director」を使って表現した方が無難だと説明しましたが、実際には「専務」という英語も、「常務」という英語も存在しないという理由から、どちらの立場が上と説明するには、別の英語を補足して表現するしかないと言えるでしょう。例として次のようなものが考えられます。
実際に日本では専務の方が立場がうえだと一般的に認識されている為、常務取締役を「Executive Director」、そして専務取締役を「Executive Senior Director」のように表現すれば、聞き手は「専務取締役の方が立場が上」ということが理解できます。
専務と常務の違いは会社によって異なる
ここまで、専務と常務の違いについていろいろと説明しましたが、如何でしたでしょうか?やはりポイントは、専務と常務は全てが役員とは限らないこと、また専務と常務という立場や役職に法的な縛りはないこと、そして、一般的には専務の立場の方が上だと認識されていることが、重要なポイントとして挙げられると言えるでしょう。