世界幸福度ランキングとは
私たちは世界の中で、どのくらいの順位で幸せなのでしょうか?そんな疑問を調査している機関がいくつかあります。その中でも代表的なのが、国連が2012年から毎年3月20日に発表している「世界幸福度報告」、いわゆる世界幸福度ランキングです。国連の世界幸福度ランキングは、156か国を調査してランキングしたものです。
国民がどれだけ幸せと感じているか
でも世界の幸せをどのようにランク付けしているのでしょうか?それは、国連が幸福であるために必要な基準を決め、それについてのアンケートを156か国それぞれの国民にとって、その結果をもとにランキングしています。
この国連の質問内容に、国連が考える幸せであるために必要だと思われる内容を含めて質問し、その解答内容で、各国の国民がどれだけ幸せと感じているかを数値化して、ランキングしたものが世界幸福度ランキングです。
国連が毎年3月20日に発表
この世界幸福度ランキングは、2012年以来毎年、3月20日に国連によって発表されます。(2014年のみ発表なし)調査方法は、各国の1000人からアンケートを取り、数値化して順位を付けて発表されています。
この世界幸福度ランキングが発表される3月20日は、2012年に国連が定めた「国際幸福デー」です。この国際幸福デーは、「本当の幸せを追求する」をテーマに定められました。国連が考える本当の幸せとは、物質的な成長だけではなく、人類の持続可能な発展や、貧困の撲滅、本当の幸せ追求を最優先と考えます。
この考え方は、ブータンの提唱によるもので、国民総生産(GNP)よりも国民総幸福量(GNH)を重要とする考え方です。
国民総幸福量(GNH)とは
この国民の幸せの基準として重要視している、国民総幸福量(GNH)とは、ヒマラヤ王国のブータン政府がもともとは国家のスローガンとして提唱したものです。国民の幸せは、国内総生産量のような経済発展ではなく、国民の精神的な豊かさ、環境や伝統文化を保持し増大ていくことが大事だという考え方です。
国民総幸福量は、①持続可能で公平な社会・経済②自然環境の保護③伝統的な文化の保護と発展④よりよい統治の考え方を柱にしたものです。
世界幸福度ランキング・3つの調査方法
世界幸福度ランキングは、「世界で幸福な国」で調べると、色々な調査方法でのランキングが出てきます。その訳は、色々なところで色々な調査方法でランキングを付けているためです。そのため、色々な順位がランキングとして発表されています。その中でも、ここでは代表的な3つの調査方法をご紹介していきます。
①世界幸福度報告
まず1つめの調査方法は、世界幸福度報告です。世界幸福度報告は、国連が公表している一番代表的な世界幸福度ランキングです。世界幸福度ランキングは、2012年から始まり、2014年を除いて毎年3月20日に発表されています。
調査方法の基準は、①GDP②困った時に頼ることが出来る人がいるか③健康寿命④人生を選択する自由度⓹他者への寛容さ⑥汚職のない社会を基準にアンケート形式で各国民に質問をして、それをポイント化し点数を付けて各国の幸福度をランキングして、これらの基準で各国の幸福度を説明しようとしているものです。
②地球幸福度指数・HPI
次にご紹介する調査方法は、地球幸福度指数・HPIです。この地球幸福度指数は、イギリスのニュー・エコノミクス財団(NEF)が調査し公表している幸福度ランキングです。
地球幸福度指数は、それぞれ調査国の平均寿命・健康指標・健康格差に加え、エコロジカル・フットプリントのデータを使って各国を評価し、幸福度を調査しています。
このエコロジカル・フットプリントとは、地球の環境容量を表している指標です。各国の経済活動の規模をヘクタールに換算し、その面積を各国の人口で割って、1人当たりの経済活動の規模を算出します。このエコロジカル・フットプリントを使っての幸福度の調査方法をとっているのが、地球幸福度指数・HPIです。
③幸福度調査
3つめにご紹介する調査方法は、幸福度調査です。幸福度調査とは、スイスのWIN/Gallup Internationalという調査機関が調査している世界の「純粋幸福度」を調べたものです。調査国数は、55か国です。
この純粋幸福度の調査方法は5段階評価になっています。調査基準は、5とても幸せ・4幸せ・3幸せでも不幸でもない・2不幸・1とても不幸の5つでの調査基準です。各国民にはアンケートに答えてこの5段階の評価で答えてもらい、それらを集計して、計算をして基準としています。
計算方法は、5とても幸せ・4幸せと答えた人数から2不幸・1とても不幸と答えた人数を引いて、算出した数値が純粋幸福度となります。
世界幸福度ランキング・調査基準
それでは、国連が調査している、世界幸福度ランキングの調査基準を詳しくご紹介していきます。世界幸福度ランキングの調査基準は、国民一人当たりの国内総生産、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由度、寛容度、腐敗さの認識を基準に各国民にアンケートを取ります。
このアンケートの各項目に0~10のスコアを各自で付けて、そのデータをもとにランキングを付けて調査をしていきます。世界幸福度ランキングは、各国の幸福度をこれらの調査基準を使って、説明しようとしています。
①国民一人当たりの国内総生産
ではまず1つめの国連の調査基準が、国民一人当たりの国内総生産です。国内総生産は略してGDPとも言います。国内総生産とは、国の経済活動や景気動向を表す指標です。
また国内総生産とは、国内で一定期間内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額のことをいいます。経済活動が活発であるということは、人類の幸福の1つであると国連は考え評価基準にしています。
②社会的支援
2つ目の国連の調査基準は、社会的支援です。社会的支援とは、国民が周囲の人から受けられる物質的・心理的支援のことです。お友達や国からの支援など心や体の支えがいるか、あるかどうかのことです。
社会的支援があるということは、精神的に追い詰められている時、身体的に自立が困難な状態な時でも周りからの支援があって、生活に支障なく生活することができるということです。国連の調査基準の1つに社会的支援があるということは、国民の幸せにとって必要なことであるという国連の認識から、調査基準の1つとして入っています。
③健康寿命
3つ目の国連の調査基準は、健康寿命です。健康寿命とは、日常生活が制限されずに暮らせる期間のことをいいます。健康寿命とは、命の長さのことではなく、日常的に介護を必要とせずに、自立した生活を送ることができる年数のことをいいます。
健康寿命は「ピンピンコロリ」ともよく言われます。病気に苦しむことなく、元気に長生きし、寝たきりになることなく最期まで元気に活動して死ぬということは、人類の幸福のひとつです。この健康寿命も人類の幸福基準に入っています。
④人生の選択の自由度
そして、4つ目の国連の調査基準は、人生の選択の自由度です。人生の選択の自由度とは、自分の人生の選択を自己決定で出来ているかどうかということです。
人が幸せと感じるかどうかは、所得や学歴よりも、自分の人生の選択を「自己決定」ができているかどうかが、幸福度を感じているかどうかに強く影響を与えています。
⓹寛容度
5つ目の国連の調査基準は、寛容度です。寛容度とは、自分と異なる意見・人種・宗教の人を受け入れられる度合のことです。
自分と違う意見や考え、主張、行動をする人を受け入れられる寛容度の高さは、4つ目の調査基準、人生の選択の自由度に繋がる部分もあります。
もし自分が、不特定多数の人たちと違う意見や行動をした時に、周りから受け入れてもらえない状況であれば、人は人生・思想の選択の自由度を失うことにもなり兼ねません。人類の幸福度は経済活動だけではなく、生きやすさ、心身ともに健康であることが大事だということにも国連は注目しています。
⑥腐敗さの認識
最後6つ目の国連の調査基準は、腐敗さの認識です。この腐敗さとは、政治的腐敗の認識のことです。この政治的に腐敗している国家は、政治としての働きを失い、国家・経済の安定を失ってしまいます。
また政治的に腐敗している国は、経済機会や経済成長、公正・公平さを失い、社会的支出や持続可能な開発への投資が失われる可能性が出てきます。
政治的腐敗は、社会的規範が崩れ、国民の価値観も歪み、健全な国家とは言えない状況になります。この状況は、国民が健全で幸福な状況だとは言えないと国連は考え、世界幸福度ランキングの評価基準に入っています。
世界幸福度ランキング2019年
ここまで、世界幸福度ランキングの評価方法・基準について説明してきました。では日本の世界幸福度ランキングはいったい何位なのでしょうか?この後は、2019年の世界幸福度ランキングの順位をご紹介していきます。
では、2019年の世界幸福度ランキングです。2019年世界幸福度ランキングを1位からご紹介していきます。
1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はノルウェー、4位はアイスランド、5位はオランダ、6位はスイス、7位はスウェーデン、8位はニュージーランド、9位はカナダ、10位はオーストリアです。
2019年世界幸福度ランキングワースト10
次にご紹介するのは、2019年世界幸福度ランキングワースト10です。ワースト1位は南スーダン、2位は中央アフリカ共和国、3位はアフガニスタン、4位はタンザニア、5位はルワンダ、6位はイエメン、7位はマラウィ、8位はシリア、9位はボツワナ、10位はハイチになっています。
日本の順位:58位
では2019年世界幸福度ランキングの日本の順位はいったい何位なのでしょうか?2019年世界幸福度ランキングの日本の順位は58位でした。
世界幸福度ランキングの日本の順位は、実はあまり高くありません。日本の幸福度ランキングは、2016年で53位、次の年は51位と少しだけ順位を上げて、しかし2018年で54位と更に順位を下げ、そして2019年、その順位を更に下げて58位となりました。
2019年世界幸福度ランキング日本の評価の内容
ではなぜ、2019年日本の世界幸福度ランキングが58位なのか、評価の内容を見ていきます。2019年世界幸福度ランキングの健康寿命の順位はなんと2位で、続いて国民総生産の順位は24位とかなり上位ではありますが、人生の選択の自由度が64位、寛容さが92位と大きく下がり、総合順位に大きく影響し、順位を下げた結果となりました。
世界幸福度ランキング2018年
では、2018年の世界幸福度ランキングはどうだったのでしょうか?この後は2018年世界幸福度ランキングをご紹介していきます。
世界幸福度ランキング2018年の1位はフィンランド、2位はノルウェー、3位はデンマーク、4位はアイスランド、5位はスイス、6位はオランダ、7位はカナダ、8位はニュージーランド、9位はスウェーデン、10位はオーストラリアです。順位上位国は、2018年も2019年もあまり変わっていません。
2018年世界幸福度ランキングワースト10
次は、2018年世界幸福度ランキングワースト10です。2018年の世界幸福度ランキングワーストランキング1位はブルンジ、2位は中央アフリカ共和国、3位は南スーダン、4位はタンザニア、5位はイエメン、6位はルワンダ、7位はシリア、8位はリベリア、9位はハイチ、10位はマラウイです。
2018年世界幸福度ランキングのワーストもトップ10と変わらず、2019年の世界幸福度ランキングと似たような顔ぶれになっています。
日本の順位:54位
では2018年の世界幸福度ランキングは何位だったのでしょうか?2018年の順位は、2019年より若干順位が良いだけで、54位でした。
2018年世界幸福度ランキングの日本の評価の内容は、2019年とあまり変わらず、やはり健康寿命の順位と国民総生産の順位が高く、しかし人生の選択の自由度の順位が低く、また寛容度の順位も低いという結果でした。
世界幸福度ランキングの順位が低い日本
2012年から毎年発表されている世界幸福度ランキングですが、国民総生産や健康寿命の順位が高いのに総合ランキングが低いのは、評価基準の人生の選択度の自由と寛容度の順位がものすごく低いために大きく順位を落としています。先進国としては、かなり順位が低い状態となっています。
人生の選択度の自由と寛容度が低い日本
寛容度の基準の中に、先月寄付をしたか?という項目で日本は得点を大きく下げています。日本には頻繁に寄付をしたり、募金をしたりする習慣がありません。
また自分と異なる意見や行動をする人に対する寛容度が低いと感じている日本人は多く、少数意見や周りと違う行動をする人は、排除しようとしたり、差別したりされると感じている人が多いです。
ネットやワイドショーなどで炎上したりするのも、寛容度の低さの現れだと感じている人が多いです。その結果、人と違う行動をすることにためらいを感じたり、極力周りと同じ行動をしようとする傾向が強く、その結果、人生の選択の自由度も順位が低くなっています。
世界幸福度ランキングは各人の自己評価によって大きく変わる
世界幸福度ランキングは、各国のアンケートによって決まってきます。つまり個人の感じ方、自己評価で大きく評価が変わってきてしまいます。
ですので、楽観的な国民性の国では、評価が高く順位が上がってくる仕組みになっています。日本のような、謙遜することを美徳とする文化を持つ国民性では、なかなか自己評価を高くは付けません。そうするとおのずと世界幸福度ランキングの順位は低くなってしまうのです。
それぞれの幸せ
そもそも国連の画一的な調査方法で、日本人の幸福度を測ることが出来るものなのでしょうか?世界の中で日本の幸福度は本当に58位なのでしょうか?自分にとっての幸せは、誰かの価値観で測ることができるものではありません。
周りから見ると幸せな人でも、本人にとっては不幸なこともあるし、逆もあります。自分の人生を有意義に生きることが出来る、生きていると感じることが出来たなら、その人は幸せな人生を歩んでいると言えるでしょう。