世界のMBAランキングとは
世界のMBAランキングの前に、MBAについて解説しましょう。MBAとは「Master of Business Administration」の略です。日本では経営学修士号、または経営管理修士号と呼ばれ、経営学の大学院修士課程を修了した人に授与される専門職学位です。MBAは国家資格や業務独占資格等の「資格」と混同されますが、資格ではなく「学位」です。
では、世界のMBAランキングとはどのような基準でどのような大学が選ばれているのでしょうか。また、アジア圏や日本の大学はMBAにランクインしているのでしょうか。
今回は、数あるMBAランキングの中で最も注目されている英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が、同紙のBusiness Educationサイト上で2018年1月27日に発表した「Global MBA Ranking 2018」を元に、世界のMBAランキングについてご紹介していきます。
対象はMBAを取得できる155校
1881年に設立された、アメリカの「ウォートン・スクール」が世界初のビジネススクールで、1908年に設立された「ハーバード・ビジネス・スクール」が現在のMBA課程の基礎をつくったと言われています。2018年度は、ファイナンシャル・タイムズの選考基準を満たす、MBAが取得できる世界のビジネス・スクール155校を対象に調査したものになります。
ちなみに、2019年の世界のMBAランキングは2019年1月27日に発表されており、ファイナンシャル・タイムズの選考基準を満たす、MBAが取得できる世界のビジネス・スクール150校が調査対象となっております。
MBAランキングの審査の基準
MBAランキングの審査基準は「加重平均給料額(20%)」MBA取得後3年での平均年収、「給料増加額(20%)」MBA取得前からの給料増加額、「費用対効果(3%)」現在の給料と授業料など諸費用を比較、「卒業生の推薦度(2%)」「女性スタッフ(2%)」「女子学生(2%)」「女性管理職(1%)」など20項目でランキングしたものです。
世界のMBAランキングTOP20
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した「Global MBA Ranking 2018」には、世界のどの国のビジネス・スクールがランクインしているでしょうか。アジア圏や日本のビジネス・スクールは?ここからは、「Global MBA Ranking 2018」のTOP20とランクインしたスクールについてご紹介していきます。
20位:ESADE(スペイン)
世界のMBAランキング20位は「ESADE(スペイン)」です。ESADE(エサデ)あるいはESADEビジネススクールは、1958年創立された、世界100ヵ国以上60,000人の卒業生を抱える世界有数のビジネススクールです。2014年にESADEを卒業した生徒の3年後の平均年収は14.3万ドル(MBA取得前との昇給比較は119%増)です。
19位:デューク大学フクア・スクール・オブ・ビジネス(アメリカ)
世界のMBAランキング19位は「デューク大学フクア・スクール・オブ・ビジネス(アメリカ)」です。2017年の24位から5ランク上がり、TOP20に仲間入りしました。2014年にデューク大学フクア・スクール・オブ・ビジネスを卒業した生徒の3年後の平均年収は15.6万ドル(MBA取得前との昇給比較は101%増)です。
1924年に設置されたアメリカ合衆国の私立大学で、ビジネススクール以外の大学院も世界トップクラスの高い評価を受けている大学です。2018年までにノーベル賞受賞者13名、チューリング賞受賞者3名を輩出しています。
18位:NUS ビジネス・スクール(シンガポール)
世界のMBAランキング18位は「NUS ビジネス・スクール(シンガポール)」です。NUS(シンガポール国立大学)は1905年に設立され、世界100ヵ国以上からの留学生を迎えています。014年にNUSビジネススクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は14.3万ドル(MBA取得前との昇給比較は134%増)です。
17位:ジョンソン経営大学院(アメリカ)
世界のMBAランキング17位は「ジョンソン経営大学院(アメリカ)」です。2017年の27位からアメリカMBAのうち最もランクを上げています。2014年にジョンソン経営大学院を卒業した生徒の3年後の平均年収は16.1万ドル(MBA取得前との昇給比較は123%増)と、1位のスタンフォード大学経営大学院より昇給率が高いです。
ジョンソン経営大学院は、アメリカニューヨーク州にある「コーネル大学」に属しています。コーネル大学は全米屈指の名門校と知られ、ノーベル賞では全部門で受賞者を輩出している世界でも珍しい半官半民大学です。また、質の良いバラエティに富んだ学食が食べられることでも有名で、「Princeton Review」で全米3位にランクインしたこともあります。
16位:Tuckビジネススクール(アメリカ)
世界のMBAランキング16位は「Tuckビジネススクール(アメリカ)」です。ダートマス大学は1769年に設置されたアメリカ合衆国の私立大学です。そのビジネススクールであるタック・スクール・オブ・ビジネスは1900年に設立され、全米で最も古いグラジュエイト・ビジネス・スクールです。一学年240人と少数制などの特徴があります。
Tuckビジネススクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は17.0万ドル(MBA取得前との昇給比較は110%増)です。
15位:イェール大学マネジメントスクール(アメリカ)
世界のMBAランキング15位は「イェール大学マネジメントスクール(アメリカ)」です。イェール大学は1999年にMBAの学位授与を開始し、現在のプログラムは学生4~8人の小規模の学習グループをベースとした統合カリキュラムが中心です。
イェール大学マネジメントスクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は16.6万ドル(MBA取得前との昇給比較は114%増)です。
14位:商学院・HKUST(中国)
世界のMBAランキング14位は「商学院・HKUST(中国)」HKUSTビジネススクールは1991年に設立され、急成長を遂げているアジア屈指のビジネススクールです。長年アジアNo1のビジネススクールとしてランクインしてましたが、2017年より中欧国際工商学院にその座を奪われています。
を卒業した生徒の3年後の平均年収は16.6万ドル(MBA取得前との昇給比較は114%増)です。
13位:ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール(イギリス)
世界のMBAランキング13位は「ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール(イギリス)」です。ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクールはケンブリッジ大学のビジネススクールです。ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は16.6万ドル(MBA取得前との昇給比較は114%増)です。
12位:ケロッグ経営大学院(アメリカ)
世界のMBAランキング12位は「ケロッグ経営大学院(アメリカ)」です。ケロッグ経営大学院はノースウェスタン大学のビジネススクールで、ケロッグ・スクール、または単にケロッグとも呼ばれています。ケロッグ経営大学院を卒業した生徒の3年後の平均年収は16.8万ドル(MBA取得前との昇給比較は103%増)です。
11位:IESE(スペイン)
世界のMBAランキング11位は「IESE(スペイン)」です。IESE(イエセ)は、スペインで世界トップランクのビジネススクールです。欧州で初めて2年制MBAを導入し世界50ヵ国以上から学生が集まっています。IESEを卒業した生徒の3年後の平均年収は14.8万ドル(MBA取得前との昇給比較は126%増)です。
10位:ハース・ビジネススクール(アメリカ)
世界のMBAランキング10位は「ハース・ビジネススクール(アメリカ)」です。アメリカ合衆国のカリフォルニア大学バークレー校のビジネススクールであるハース・ビジネススクールは、1955年からMBAプログラムが開始されたビジネススクールです。
1989年にリーバイスのCEOを務めたウォルター・A・ハースの基金が新校舎設立のために多額の寄付を行い、ハース・ビジネススクールと名称変更されました。ハース・ビジネススクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は17.6万ドル(MBA取得前との昇給比較は104%増)です。
9位:スローン経営学大学院(アメリカ)
世界のMBAランキング9位はスローン経営学大学院(アメリカ)です。スローン経営学大学院は、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるマサチューセッツ工科大学のビジネススクールです。名古屋商科大学ビジネススクールは、MITスローン経営大学院の短期のEMBAへの参加を支援している大学です。
スローン経営学大学院を卒業した生徒の3年後の平均年収は17.3万ドル(MBA取得前との昇給比較は98%増)です。
8位:中欧国際工商学院・CEIBS(中国)
世界のMBAランキング8位は中欧国際工商学院・CEIBS(中国)」です。アジアMBAのNo1となった中欧国際工商学院・CEIBS(セイブス)は、は中国上海市の浦東新区にある国際ビジネススクールです。2014年に中欧国際工商学院を卒業した生徒の3年後の平均年収は16.2万ドル(MBA取得前との昇給比較は168%増)です。
英ファイナンシャル・タイムズが発表している「Global MBA Ranking」では、2016年度17位、2017年度11位、2018年度8位、2019年度は5位と毎年ランキングを上げ続けており、1994年の開校より10年余りでアジアNo1ビジネススクールとして高い評価を受けています。
中欧国際工商学院の授業はすべて英語で行われており、中国語の授業には英語の通訳がつきます。学生の約7割が中国人で、残りの約3割が外国人です。
7位:コロンビア・ビジネス・スクール(アメリカ)
世界のMBAランキング7位は「コロンビア・ビジネス・スクール(アメリカ)」です。コロンビア大学のビジネススクールであるコロンビア・ビジネス・スクールは、1916年に設立されています。ファイナンスの授業が充実しており、大企業幹部による講演会が開かれることも多いです。
コロンビア・ビジネス・スクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は17.7万ドル(MBA取得前との昇給比較は103%増)です。
6位:シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス(アメリカ)
世界のMBAランキング6位は「シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス(アメリカ)」です。シカゴ大学のビジネススクールであるシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスは、常に各種ランキングで高い評価を受けており、多方面で活躍している日本人卒業生も多いです。
シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスを卒業した生徒の3年後の平均年収は17.4万ドル(MBA取得前との昇給比較は118%増)です。
5位:ハーバード・ビジネス・スクール(アメリカ)
世界のMBAランキング5位は「ハーバード・ビジネス・スクール(アメリカ)」です。ハーバード大学のビジネススクールであるハーバード・ビジネス・スクールは、最も伝統的なビジネススクールのひとつです。2017年では4位でしたが、2018年は5位に後退しました。
2017年に発表された英国の世界大学評価機関Quacquarelli Symonds(QS)の「QS Global MBA Rankings 2018」では世界1位に輝いています。ハーバード・ビジネス・スクール」を卒業した生徒の3年後の平均年収は19.2万ドル(MBA取得前との昇給比較は102%増)です。
4位:ロンドン・ビジネス・スクール(イギリス)
世界のMBAランキング4位は「ロンドン・ビジネス・スクール(イギリス)」です。ロンドン・ビジネス・スクールはイギリスで最も高い評価を受けているビジネススクールで、世界でも最高位の評価を受けています。世界109ヵ国合計2,200人の学生が8つのプログラムで学び、卒業生は世界155ヵ国に42000人以上います。
ロンドン・ビジネス・スクール」を卒業した生徒の3年後の平均年収は16.7万ドル(MBA取得前との昇給比較は109%増)です。
3位:ウォートン・スクール(アメリカ)
世界のMBAランキング3位は「ウォートン・スクール(アメリカ)」です。ペンシルベニア大学のビジネススクールであるウォートン・スクールは、ウォートンやウォートン校とも呼ばれています。世界的に最も高い評価を受けているビジネススクールのひとつで、米国最古のビジネススクールです。2008年まで9年連続で1位を獲得したビジネススクールです。
ウォートン・スクールを卒業した生徒の3年後の平均年収は19.0万ドル(MBA取得前との昇給比較は96%増)です。
2位:Insead(フランス・シンガポール)
世界のMBAランキング2位はInsead(フランス・シンガポール)」です。INSEAD(インシアード)は、フランスとシンガポール・アブダビにキャンパスを持つビジネススクールです。2017年現在、MBAには約80ヵ国から1000名ほどの生徒が在籍しており、MBAプログラムは1年制です。2016年、2017年とMBA1位にランキングされていました。
Inseadを卒業した生徒の3年後の平均年収は17.7万ドル(MBA取得前との昇給比較は105%増)です。
1位:スタンフォード大学経営大学院(アメリカ)
世界のMBAランキング1位は「スタンフォード大学経営大学院(アメリカ)」です。2017年の2位からランクを上げ、6年ぶりに1位となりました。2014年にスタンフォード大学経営大学院を卒業した生徒の3年後の平均年収は21.4万ドル(MBA取得前との昇給比較は114%増)と155校中一番高い数値です。
卒業生による評価は2位、キャリアアップは4位、学術刊行物(「Econometrica」や「Academy of Management Journal」など)に卒業生の論文や記事が掲載された回数は5位です。
スタンフォード大学経営大学院は、全米で最も選抜が厳しい大学院としても有名で、合格率はわずか7.1%です。
世界のMBAランキングの順位の変動
世界のMBAランキングの順位は毎年変動しています。MBAランキングの審査の基準の項でもご紹介したように、英ファイナンシャル・タイムズ(FT)独自の基準を設けてビジネススクールを厳選しています。2018年度のランキングではMBAを修了してから3年後に卒業生を調査するため、2014年以降設立されたビジネススクールは対象外となります。
アメリカの学校が多い
アメリカでは、現在500以上の大学や教育機関がMBA課程を設立しています。英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングTOP100を国別に見ていくと、上位3ヵ国はアメリカ51校、イギリス11校、中国6校となっています。アメリカが半数を占めていることがわかります。
ハーバード・ビジネス・スクールは順位を下げた
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングTOP20に12校がランクインしたアメリカのビジネススクールで、唯一順位を下げたのがハーバード・ビジネス・スクールです。6年ぶりに1位に返り咲いたスタンフォード大学経営大学院を含む7校が順位を上げる結果となっています。
世界のMBAランキングに初登場した大学
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングでは、初登場した大学があります。それは、どこの国のビジネススクールでどのような特徴があるのでしょうか。また、アジアや日本のビジネススクールのランキングについてもご紹介していきます。
シンガポール李光前商学院の特徴
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングで初登場した大学は「シンガポール李光前商学院」で、49位にランクインしました。シンガポール李光前商学院はシンガポールにある6つの公立大学のひとつです。2000年に設立されたばかりの大学です。
アジアは少なく日本はランキング外
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングでは、TOP100にランキングしたアジアの国は、中国6校、インド4校、シンガポール3校、韓国1校となっております。100校中14校と、世界的に見てアジアの国は少なく、日本はランキング外の結果が出ております。
日本のMBAランキング
先ほどの項でもご紹介したように、残念ならが日本のビジネススクールはランキング外となっています。
日本からのMBAの留学先も、2006年に入学した人はアメリカのビジネススクール93名、アジアのビジネススクールは12名です。日本だけでなく、アジア全体がアメリカに圧倒されている結果が出ています。しかし、2016にはアメリカのビジネススクール70名、アジアのビジネススクール47名と増加傾向にあることがわかりました。
世界のMBAランキング8位にランクインしたアジアNo1の中欧国際工商学院・CEIBSには、日本から9名が合格しているそうです。
世界のMBAランキングから圏外になった大学
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が2018年に発表した世界のMBAランキングでは、TOP20から圏外になった大学が2校ありました。圏外になった大学2校は「HEC経営大学院」と「スターン・スクール」です。2校はどのようなビジネススクールなのでしょうか。ここからは、世界のMBAランキングから圏外になった大学についてご紹介していきます。
HEC経営大学院
世界のMBAランキングから圏外になった大学、1つめは「HEC経営大学院」です。HEC経営大学院は2018年21位、2017年20位、2016年15位と年々順を下げています。フランスのグランゼコールの中でも名門校のひとつで、1881年にパリ商工会議所によって建学されたビジネススクールです。
スターン・スクール
世界のMBAランキングから圏外になった大学、2つめは「スターン・スクール」です。スターン・スクールは2018年23位、2017年19位、2016年19位と4ポイント順位を下げています。スターン・スクールはニューヨーク大学のビジネススクールで、1900年に設立された世界最古のビジネススクールのひとつで、現在は全米TOP10として知られています。
世界のMBAランキングは年々変動している
英ファイナンシャル・タイムズ(FT)が毎年発表している「Global MBA Ranking 」世界のMBAランキングは、MBAを修了してから3年後に卒業生を調査するため、3年間の間に新設されたビジネススクールについては対象外となっております。また、学生からの調査も審査の対象となっているため、規定数集まらなかったビジネススクールも対象外です。
その他、審査基準20項目からランキングされているため毎年変動しています。英ファイナンシャル・タイムズ(FT)以外にもさまざまなMBAランキングが発表されているので、興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。