償却とはどんな意味?不動産の敷引きや会計用語の減価償却についても解説!

償却とはどんな意味?不動産の敷引きや会計用語の減価償却についても解説!

償却とは、どういった意味があるのでしょうか。償却の言葉の使い方を、会計分野、不動産分野で使用する際の意味の違いや、減価償却費用の計算方法などもあわせてご紹介し、償却とは何か、の答えを余すところなく、わかりやすくご紹介していきます。

記事の目次

  1. 1.償却とはどんな意味?
  2. 2.不動産用語における償却について
  3. 3.会計用語の減価償却とはどんな意味?
  4. 4.会計の減価償却の計算方法
  5. 5.減価償却を計算する際のポイント
  6. 6.その他の償却
  7. 7.償却の意味を理解して節税に繋げよう

償却とはどんな意味?

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「償却」という言葉自体は、日常生活ではあまり使うシーンが無く、意味が良く分からない方も多いのではないでしょうか。償却とは、「償う」と言う漢字と、「却」という漢字の組み合わせから分かる様に、シンプルに表すと「返す」という意味合いを含むという事は想像できます。

この「償却」という言葉ですが、簿記や会計の分野では「減価償却」という用語として、頻繁に使われているのです。

ここからは、この様な知る人ぞ知っている言葉である償却とは、というテーマについて、言葉そのものの意味や、会計で使用されるシーンや計算方法だけでなく、償却が良く使用される不動産分野での使い方など、余すことなくご紹介して行きます。

借金などを返す意味がある

冒頭にも触れましたが、償却の言葉のそのものの意味として、借金などを「返す」という意味があります。企業での経済活動を記録するために、貸借対照表や損益計算書をはじめ、様々な会計文書がありますが、そのような会計文書で「お金などを返す」というアクションを記録する用語として、「償却」が使われるのです。

例えば、「借金(負債)を償却する。」や、「超過分を償却する。」といったかたちで使われています。これは、会計分野では一般的な用語として使われていますので、是非覚えておきましょう。

償却とは不動産でも使う

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また償却とは、不動産の業界でも良く使用されます。この不動産用語としての償却とは、単に「返す」という意味合いではありません。この不動産用語としての「償却」の意味が若干ややこしくなりますので、ここからは、一般的に間違えやすい違いのところに注意し、償却の言葉の意味をご紹介して行きます。

不動産用語における償却について

上記にも述べましたが、償却とは、不動産用語では、必ずしも「返す」事を意味している訳ではありません。不動産用語しての償却とは、一言で言うと「戻ってこないお金」の事を言うのです。漢字自体に「返す」意味を含んでいながら不動産用語になると全くの逆の意味合いになってしまうのです。

ここからは、不動産業界で良く使われる「償却」をさらに詳しくご紹介して行きます。日常生活においてはあまり使う事も無いですが、部屋を借りる場合など、契約する際の文言として良く使われるため、しっかり把握しておきましょう。

不動産のアパート・マンションにおける減価償却とは?

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不動産業界の企業は、土地や建物を売買し経済活動を行いますが、不動産である建物は年月が経つと劣化し、資産価値が目減りして行きます。この様に時間と共に資産価値が下がっていく事を「減価償却」と言います。

前提として、土地は時間が経っても劣化する事はないため、減価償却の対象ではありません。あくまでも減価償却が発生するのは建物に対してのみ、となります。

不動産の賃貸における償却とは?

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また、賃貸契約にて不動産の取引を行う際には、「償却金」という項目があります。ここで注意が必要な事は、この「償却金」は基本的には戻ってこないお金に対して使われています。つまり、不動産の賃貸契約には、入居の際には敷金や保証金など、退去時に返還される項目がありますが、こと「償却金」に関しては、退去時に戻ってこないお金なのです。

上記の「敷金」については仕組みがややこしく、戻ってくるお金なのか戻ってこないお金なのか不動産業者によってまちまちだったりします。このため良くトラブルに発展しているケースがあり、注意が必要となります。

その上、九州や関西圏などの西日本の商習慣として「敷引き」という用語も存在し、非常にややこしいです。この「敷引き」については詳しくは後述して行きます。

不動産における家賃償却とは?

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では、この「償却金」が戻ってこないお金とするならば、逆に戻ってくるお金を意味する言葉は「敷金」が使われます。つまり、敷金は、退去時の部屋の原状回復に発生する費用に使われ、余った分は基本的には帰ってくるお金で、一方「償却金」は必ずしも原状回復に使用されず、償却金が返ってくることはありません。

この帰ってくるはずの敷金から返さない返さない金額が設定されたものを「敷引き」といいます。言い換えると、敷金から原状回復の為に要した費用の金額とも言えます。この金額が「償却金」と言われているのです。

不動産の敷金では「敷引き」や「償還率」と呼ぶ

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この様に「敷金」と「償却金」は似た性質を持っていますが、意味合いは反対となるのです。使い方としては、「敷金〇〇万円のうち、償却金〇万円」といった様に、敷金を初めに払い込む段階で返さないお金をあらかじめ設定しておく目的で良く使用されます。

この返さないお金を、「敷引き」と呼ばれ、西日本の古くからの商習慣として、今なお残っているのです。また、この「敷引き」と同じ意味合いで割合で表現したものは「償却率」と表現されます。

敷引きあれこれ

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昔からの商習慣である「敷引き」は現在では少なくなりましたが、関西地方をはじめ、いまだ根強く残っている会社も数多くあります。敷金からあらかじめ管理会社の取り分を確保しておくための特約であり、返す前提のお金である敷金ですが、敷引き分のお金は帰ってくることはありません。

賃貸契約を結ぶ際には、不動産屋と締結する「賃貸借契約書」には、余すことなくしっかりと目を通すようにしましょう。特に、文言に「敷引特約」が記載されている時には敷き引きが契約に盛り込まれているため、しっかりと注意して確認する事が大切です。

敷引きの落とし穴

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この様に、賃貸契約のシーンでは敷引きを注意すべき単語としてしましたが、この敷引きと同じ意味を持つ言葉も存在します。つまり言い換える事が可能なのです。それは「保証金」といいます。賃貸借契約書に目を通す際、敷引きのみに注意していると、うっかり落とし穴にはまってしまう恐れがあるため、注意しましょう。

その上、上記の保証金と敷引きは全く同じものを表しているわけではありません。つまり、「敷き引き、保証金セット」との表記で売られている物件は、先に仮払いを行う保証金から、敷引き分の金額が引かれた額が実際に戻ってくるお金となります。

会計用語の減価償却とはどんな意味?

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以上は不動産業界においての「償却」の意味となりますが、償却とは、もう一つの会計現場でも良く使われる用語なのです。ここからは、この会計用語としての「償却」をご紹介して行きます。

この場合の償却とは、「減価償却」の略称となります。これは、企業が所有している建物や備品などの物品が、経年劣化によって資産価値が低下した分の金額を表しています。

例えば、企業が備品として社用車を新品で購入しても、走行を繰り返すうちに新車だった車は劣化し、資産価値が下がっていきます。これを、減価償却と言います。

会計における減価償却費は経費として計上

会計分野では、企業が購入した建物や備品などは、資産として計上されます。つまり、減価償却された備品などは資産価値の低下として処理でき、確定申告などの際には経費計上が可能なのです。

この様に、会計分野における償却とは目減りした資産を表していると言えます。前述の不動産業界で使われる償却の意味とは全く異なるものになるため、注意が必要となります。

減価償却費の具体例

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ここで、この「減価償却」について、もうすこし深堀りしていきましょう。例えば、300万円の自動車を購入し、1年間使用した後の仕分けの際には、購入時には300万円の価値を持っていた自動車も1年間使用したことにより減価償却が発生します。

仮に償却率を10%として計上するのであれば、減価償却費は30万円になり、この自動車の1年後の資産価値は270万円となります。

会計の減価償却の計算方法

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上記では仮に償却率を10%としましたが、この減価償却費の算出にもあらかじめ定められた計算方法があり、そのガイドラインに沿って、減価償却費が算出されます。

ここからは、実際に減価償却費を算出する際の計算方法をご紹介して行きます。個人で事業を立ち上げる際などに、この計算方法は重宝しますので、しっかりとチェックしておきましょう。

減価償却の計算方法は2種類

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減価償却費の計算方法として、大きく分けると二通りの計算方法があります。それらはそれぞれ、「定額法」と「定率法」に分けられます。この両者の違いは、減価償却が発生する物品の違いによって分けられます。

「定額」と「定率」という言葉から分かる様に、前者は毎年定額での減価償却がなされ、後者では、その物の現在の資産価値に対しての割合によって減価償却費を算出します。

計算方法①定額法

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先ず定額法の計算方法をご紹介して行きます。こちらは計算方法としては非常にシンプルなものであり、購入時の価格から、その商品を何年で消費するかの目星を付け、その設定した耐用年数で割ったものが、1年間の減価償却費となります。

主に社内で使用するソフトウェアに代表される無形資産に対して良く使われており、昔から存在する計算方法となります。

この定額法は、減価償却費が毎回決められた額のため、残存価格の算出が容易であるというメリットがあります。減価償却費や残存価格が把握しやすく、シンプルに会計処理を行うことが可能です。

計算方法②定率法

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もう一方は定率法、という計算方法です。言葉の意味の違いの通り、こちらは率、つまり割合に対しての計算方法となります。特徴としては、現在の価値に対しての割合で減価償却費が算出されるため、2年目以降では、初め1年で減価償却した額が引かれた状態からの割合で算出するため、こちらの減価償却費は年々減少してきます。

前者に比べて計算はややこしくなってしまいますが、減価償却費を確実に減価させることが出来、より精密にその物の資産価値がわかるようになります。

減価償却を計算する際のポイント

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上記のどちらの計算方法を採るにしても、減価償却費を算出するためには、必要となる情報がいくつかあります。ここからは、この必要となる情報である「取得原価」、「耐用年数」、「残存価値」の3つに分け、それぞれの言葉の持つ意味と共に、計算方法なども合わせてご紹介して行きます。

計算ポイント①取得原価

先ずひとつめのポイントとして、「取得原価」があります。それはそのままその商品を取得した際に発生した費用を表します。主に備品などの購入金額となる場合が多いです。この取得原価から、定額又は定率によって初年度の減価償却費が算出され、この減価償却費を費用、つまり経費として処理し、資産の減少を申請します。

計算ポイント②耐用年数

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次にポイントとなるのが、「耐用年数」です。この耐用年数はもちろん物によって様々ありますが、ほどんどの備品は確定申告での計算方法を統一させる目的として、国税庁からあらかじめ耐用年数が決められています。

例えば、自転車は2年で自動車は6年ですが、小型やダンプカーは4年と設定されています。この例で言うと、自転車は2年で会計上の資産価値がゼロ円になり、小型車は4年となります。

計算ポイント③残存価額

最後に「残存価値」をご紹介します。これは、その物の資産価値から減価償却費を差し引いた金額になります。定額法での計算方法だと、この残存価値は毎年、同じ金額だけ減価償却されます。定率法においてはこの残存価額から決められた割合での減価償却費が算出される、といった具合になります。

上記の3ポイントによって、減価償却費を算出する事が出来ます。ただし、耐用年数は比較的頻繁に更新、変更されるため、こまめに気にしておく必要があります。

その他の償却

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ここまで、不動産業界における償却や会計上の処理における償却をご紹介してきましたが、「償却」という意味自体には上記2つの意味合いと似た意味を持ちながらも、微妙にニュアンスが変えられ使用されている償却があります。ここで、簡単に他のマイナーな償却が使われるシーンをご紹介して行きます。

債権償却

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先ず、「債権償却」をご紹介します。これは、文字通り債券市場で良く使用され、倒産などの理由により、回収が不可能となってしまった債券についての、回収が不可能とされる金額を表し、損失計上する処理を表します。

この債権償却には2通りの処理が可能で、それぞれ「直接償却」と「間接償却」と言います。前者は、不良債権をそのまま切り離し、費用として処理してしまう方法で、後者では将来不良債権化が見込まれる債権をあらかじめ貸倒引当金として費用計上しておく方法になります。

債権償却は、会社の経営が詰まるなどの非常事態でないと使われませんが、景気悪化などの外的要因によってよく使われるような期間があったりします。

償却の意味を理解して節税に繋げよう

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この様に会計分野での減価償却は、確定申告における経費の申請においては必ず必要になるものとなります。企業活動で使用される様々な物品は減価償却によって資産価値が下がっていきます。このことに十分注意を払い、申請漏れによって余分に税金を払うことなく上手にお金を回していく事が、企業活動におけるひとつのポイントとなるのです。

建人
ライター

建人

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