「先方」の意味
先方という言葉は、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。一方で、意味は何となく分かっていても、敬意のレベルや正しく使う場面には詳しくないという方も多い言葉です。先方という言葉は顧客や取引先を指し示すこともあるので、知らずに失礼な使い方をしてしまうとマナー違反をしてしまい常識が疑われてしまうこともあります。
意味と使い方をおさえて、ビジネスパーソンとして1ランク上を目指しましょう。ここでは、先方という言葉の意味と使い方の注意点、類義語や英語での意味や言い換えも解説します。
意味①相手の人
先方の第一の読み方は「せんぽう」です。先方の意味は相手の人、相手方です。先方はもともと向かう先の方角、目的の場所という意味から先方という言葉になりました。それが転じて、向かう先の相手の人という意味の使い方になったのです。
ビジネスシーンで相手の人といえば、取引先や顧客のことを指すので、先方=取引先という使い方が一般的になりました。先方という言葉は社内や身内が第三者を指す使い方をします。
社内の会議でその場にはいない取引先に対して、先方といったり、商談相手のことを話すときに先方を使ったりします。先方は敬語ではなく、そこに上下関係を示唆する意味はありません。単に第三者のことを指して先方と呼びます。
また、仕事上のマナーとして、特に社外での会話で取引先の名前をそのまま出すのは良くありません。そんな場合には先方という言葉でやり取りすると便利な使い方ができる言葉です。
意味②さっき・少し前
また、先方は「さきがた」という読み方もします。さきがたと読むときには、時間的に少し前のことを指します。会話上では、「先方(さきがた)資料をメールで送りました」などのように読み方がさきがたということで意味がわかります。
ただ、文字で表現する書類やメールでは、「先方資料を送りました」と読むと少し前の時間のことなのか、相手がだれかいるのか、混乱を生じかねない意味の使い方になります。このような場合には、「先ほど」「少し前に」などと言った方が伝わりやすい表現になります。
「先方」の読み方
先方はビジネスシーンでよく聞く言葉です。特に相手の人、取引先、顧客などを指すときに、先方と使うことが多いです。先方という言葉は使い方によって二つの意味と読み方を持ちます。先方は意味によって読み方も違います。どちらも仕事上頻繁に使う言葉なので、読み方と一緒にしっかり覚えましょう。
読み方・せんぽう
先方を「せんぽう」と読む場合は、相手の人のことを指す意味の言葉です。例えば、仕事上で取引先に請求書を送ってほしい場合、「先方(せんぽう)に請求書の送付をお願いします」などの読み方をして使います。時間的に少し前の意味を表す先方(さきがた)とは読み方が違うのが注意点です。
また、口頭では「さきがた」は商談などの堅いビジネスシーンでよく使う言葉ですが、書面では「先方」と書くと「せんぽう」の読み方の相手の人というイメージが強く、意味を間違えかねないので、仕事上の注意点となります。
特に相手の関わる言葉や相手を示す言葉は気を付けましょう。自分には悪気がないのに、言葉の誤用のせいで相手に対して失礼な態度や表現をとってしまうのは、とても残念なことです。相手も間違えと理解して笑って受け流してくれるかもしれませんが、信頼感が低くなることもあります。
相手の人、取引先、顧客などの意味を示して話をするとき、また、書面にする時には「せんぽう」という読み方であること、そして、「さきがた」という読み方は違うという点をおさえておきましょう。
「先方」の類義語と意味
先方の類義語にはどのようなものがあるでしょうか?類義語を知れば知るほど、語彙が豊かになり、会議や仕事上で言い換え表現がすんなり出てくるようになります。
いつも同じ言葉を繰り返すより、意味が似た類義語を使いこなすことでちょっとした表現の違いで意味の上で説得力が増すことも多いです。ここでは、先方の類義語を紹介します。ぜひ使い方と注意点を覚えてみてください。
①相手方
先方の類義語として、相手方という言葉があります。先方には敬語の意味はなく、上下関係もありませんので、単なる第三者のことを意味しています。
相手方という言葉も、経緯や上下関係の意味は含みません。類義語として相手方というのは使いやすい言葉となります。相手方というのは相手であれば誰でも意味が合う言葉となるので、使い方を間違えずにそのまま先方と置き換えられる類義語です。
②向こう
先方は敬語表現ではなく、上下関係も意味として含まれないので、単に向こうといっても類義語となります。ただし、注意点として向こうというのは、ややぶっきらぼうで会話表現に近く、マナーの点から使い方には気をつけたい言葉です。
カジュアルな話の中では向こうという言葉を意味が似た類義語として使えますが、会議中や上司への報告などでは避けた方がよいかもしれません。
③取引先
先方という意味は相手の人、相手先ということなので、それが取引をしている相手であれば、取引先という言葉を類義語として使うことができます。この場合は単なる第三者ではなく、取引をしている相手という特定の意味を持つので、マナー上、使い方に少し気を付ける必要があるのが注意点です。
また、ここには上下関係は意味として含まれません。注意点としてフラットな関係として報告や話をするときに使える類義語として覚えましょう。
「先方」の敬語表現
先方という言葉は上下関係の意味を含まず、敬語表現でもありません。主に身内で使う第三者を指し示す言葉なので、特にマナーを考えずに事実を伝える使い方をする意味の言葉となります。
一方で、先方に上下関係をつけて、敬語として使いたい場面をビジネスシーンでは出てきます。例えば、複数社の人が出席している会議で第三者のことを話すときや取引先との打ち合わせで、取引先の協力会社について話をするときなどは、マナーを考えて、先方に敬意をつけた意味の使い方ができる言葉を使いたいです。どのような言葉があるでしょうか?
敬語表現は先様
先方の敬語表現は、先様(さきさま)です。様という敬称をつけて上下関係を表します。この時の注意点は、先方様とはならないことです。
先方は身内の間で第三者を指し示す言葉なので、そのまま様と敬称をつけるのはマナー上、不適切な意味の言葉です。先方を上にあげて上下関係を表す場合には先様を使うようにしましょう。
例えば、A社と自分で打ち合わせをしており、A社の関連会社のB社にも伝える事案がある場合、A社の人に「先方にもこの事案をお伝えください」というよりは、「先様にもこの事案をお伝えください」という方がより適切な意味の使い方となります。
「先方」の使い方と例文
先方という言葉は第三者を指し示す、主に身内での会話や報告で使う意味の言葉です。身内や部内での会話と社外や相手先がその場にいる場合の会話には言葉の違いがあるのはよくあることですね。実際にはどのような使い方をするのでしょうか?現実での使い方を見てみるとより理解がしやすいです。ここでは、先方という言葉の使い方と例文を見てみましょう。
①先方にメールを送る
第三者にメールを送ったことを社内で伝える時には、先方にメールを送るという意味の使い方をします。例えば、取引先に資料をメールで送るように上司に言われて送った後に上司に報告するような場合「先方に件の資料をメールで送付しましたのでご報告します」などのような意味の使い方ができます。
②自社内で相手先を呼ぶ際に使用
自社内で身内との会話の際、相手先を呼ぶ意味で指示語として、先方を使います。例えば、上司に商談の報告をしている時に「先方としては、この金額に納得しているようです」「先方はもう少し時間が必要と言ってきています」というような意味の使い方をします。
ここでの注意点は、あくまで第三者のことを指し示している意味の言葉であるということです。
先方である取引先と直接話していたり、取引先を交えて会議をしている場合には、そこにいる当事者となりますので、マナーの上でも先方という言い方はしません。自社内で相手先を指し示す使い方が適切ということを確認しましょう。
③相手先での使用は控える
相手先がいる場合には、先方という言葉を使うのはマナーとして適切ではありません。先方という言葉の使い方が合わなくなり、相手に対してもやや失礼な意味の表現になりかねません。
相手先がいる場合には、相手に呼びかける「貴社」や「御社」を使うようにしましょう。例えば、「貴社はこの金額にご納得いただけますか?」「御社はもう少し時間が必要とおっしゃっていますね?」というような言い方になります。
また、ここでの注意点は、貴社、御社は上下関係の意味が含まれ、相手を敬う敬語となるので、文章の他の部分も敬語でそろえなくてはならないことです。「貴社」と使えば「ご納得いただく」という動詞を使います。
また「御社」には「おっしゃっています」と尊敬語を使います。先方という言葉は身内が第三者を指して使う言葉であり、上下関係の意味は含まれないことを再確認しましょう。
「先方」の注意点
先方という言葉は相手先であったり第三者を示す便利な言葉です。一方で、使い方を間違えるとおかしな意味になったり、マナーを考えると失礼な意味の表現になったりすることもあります。微妙な違いでも失礼な態度と受け取られるのは不本意です。ここでは、先方という言葉の注意点を解説します。
①先方様は意味や表現がおかしい
先方様という言い方はできません。先方というのは、第三者という意味です。そこに敬称である様をつけると意味としてバランスが悪くなります。第三者という普通の言葉に上下関係を含む様をつけるとマナーの上で表現の意味がおかしいので、控えるようにしましょう。
頻繁に使う先方という言葉なので、様をつければ簡単に敬語になると勘違いして間違った使い方をしてしまいがちです。
先方には様はつけないと覚えましょう。また、先方の敬語は先様(さきさま)です。敬語として意味をもたせて先方を使いたい場合には先様を使うようにしましょう。
②先方の方も二重表現となる
相手の方という使い方があるので、つい先方の方と言ってしまうこともあります。しかし、字を見て直観でわかる通り、先の方の方というように方が二重表現となり、この意味の使い方は不適切です。
先方は第三者のことであり、先方にいる人たち、先方の関係者、先方の社員など、第三者内の個人を言いたい場合には、マナーを考えて適切な言葉に置き換えましょう。
自分のことを言う場合にはどのような言葉の使い方があるでしょうか?
先方は第三者のことを指し示す意味の言葉です。それでは、自分のことは先方に相対してなんといえばよいでしょうか?先方の反対に自分のことを指し示す言葉には、当方(とうほう)があります。当方とはまさにこちらの方、つまり自分のことを指します。
ただし、使い方には注意点があります。社内や身内では、自分のことは私といえば良いので、わざわざ当方という言葉を使うのはやや大げさな印象になります。また、ビジネス文書で自分たちのことを表すには、会社の文書なので、当社という言葉が適切です。
ビジネス文書においては、当方という言葉はほとんど使われません。自分のことを述べている時には、当方の方が適切のように見える時もあるかもしれませんが、ビジネス上のコミュニケーションでは、自分は会社の代表という気持ちで文書を作成しましょう。
当方という言葉は例えば打ち合わせの日時を先方と決めている会話などで、「当方は明日の午後であれば打ち合わせに参加できます」などという使い方ができます。
先方とは英語でなんというでしょうか?
先方を英語で表現するとどのような言葉が使えるでしょうか?英語には日本語のような敬語という概念はありません。言い回しや言葉の置き換えで相手を敬う表現を用いたりします。また、ビジネス上で必要以上に敬語を使わなければならないというビジネスルールも一般的にはないです。ここでは、先方とは英語でどういうかをご紹介します。
①the other party
先方を直訳するとthe other partyとなります。partyは関係者、関係するグループというような意味です。the otherということで、明確に第三者、今話している人たち以外のもう一つのグループや会社やチームという意味が明確になります。英語は主語や指し示す対象を日本語より明確にする言語です。先方の直訳英語も誰を指しているかはっきりさせます。
②they
ビジネス英語では、先方という言葉にそれほど上下関係や敬語の意味を持たせることは少ないです。特に社内や身内での打ち合わせや会議では、指し示すものの意味が明確に分かればいいので、単にtheyとして、話をすすめる場合が多いです。その場合も、前提として指し示す相手が明確に全員理解しているということになります。
「先方」は相手先を意味する言葉
先方という言葉は相手先を意味する言葉です。特に身内や社内で第三者を指し示すときに使います。先方という言葉には、尊敬語の意味合いはなく、単に第三者を表現する使い方となります。
第三者を指す使い方ですので、その当事者がいる時には、目の前で先方とは呼びません。また、先方の敬語である先様も使いません。相手がその場にいる時には貴社、御社と呼びかけます。
企業名や名前を直接言わずに第三者のことを示す使い方ができる意味の言葉が先方です。マナーの上でも気を配った使い方ができます。商談や打ち合わせなどで頻繁に使うので、意味と類義語はしっかり覚えましょう。