学資保険とは?
学資保険とは、子どもの教育資金を準備するための貯蓄型の保険のことを指します。貯蓄型ということもあり貯金の代わりとして学資保険に加入する人が多くいますが、年末調整で生命保険料控除の対象となることを知る人は多くありません。そこで今回は、学資保険の年末調整について申告方法や注意点などをご紹介しましょう。
子供の将来の学費の積み立てに役立つ保険
子どもを育てるためにはお金が必要です。その大半は教育資金であり保育園・小学校・中学校・高校での授業料はもちろんのこと、給食費や部活の費用などその他の費用も必要となります。大学へ進学する場合は、より多くのお金が必要となるでしょう。
そういった将来の教育資金のために役立つのが学資保険です。学資保険は子どもの入学時や進学時に祝い金や満期保険金を受け取ることができます。
被保険者が死亡・障害が生じた時に保険金で学費を賄える
学資保険には生命保険としての性質も兼ね備えられており、被保険者(契約者)である親が亡くなった場合や高度障害を生じた場合、それ以降の保険料の支払いが免除され、祝い金や満期保険金を受け取ることが可能です。このように保険料の支払いが出来なくなった場合でも保証が継続される点は学資保険の特徴のひとつと言えます。
学資保険が年末調整に関連する理由
先程も述べたように、学資保険には生命保険としての性質も備えられています。そのため、年末調整の際には「生命保険料控除」の対象となります。「生命保険料控除」は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」に分けられますが、学資保険は「一般生命保険料」に当てはまります。
そもそも年末調整とは?
毎月の給料やボーナスからは所得税が天引きされています。これらは概算で計算されているため、その年(1月1日~12月31日)の収入を対象に所得税を計算し、控除も反映させて所得税の過不足を計算することを「年末調整」と言います。過不足を再度計算して過払いになっていた税金は、ほとんどの場合払い戻されます。
年末調整とは「給料から引かれた税金を個人の状況に合わせて再計算する仕組み」
年末調整では、給料やボーナスから引かれた税金を個人の状況に合わせて再度計算を行います。配偶者特別控除や住宅ローン控除をはじめ、様々な所得控除ならびに税額控除を反映させることで所得税額を減らすことが可能です。原則として、12月の最終支払日に再計算されます。
生命保険の側面があり「生命保険料控除」に適用される
年末調整の際に受けられる控除には、配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、社会保険料控除、障がい者控除、勤労学生控除など様々な控除があります。そのなかでも学資保険は「生命保険料控除」に当てはまります。
学資保険は「一般生命保険料」に分類される
先程も説明した通り、「生命保険料控除」は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つに分類されます。一般的に学資保険は「一般生命保険料」に該当しますが、医療保障の特約が付加されている場合は「介護医療保険料」に当てはまることもあります。
学資保険を年末調整で申請する方法
年末調整で学資保険料の控除を行う方法を説明します。控除を行うためには、「給与所得者の保険料控除申告書」と「生命保険料控除証明書」が必要になります。ただし、未納の保険料がある場合は控除の対象とならないため、未納分の保険料は必ず納めておくようにしましょう。
ステップ①「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入
年末調整で学資保険の控除を行う際に「給与所得者の保険料控除申告書」へ必要事項を記入して提出する必要があります。この申告書は原則勤務先から配布されます。なお、記入に失敗した場合や紛失した場合は、国税庁のホームページから様式をダウンロードすることも可能です。
ステップ②保険会社から送られる「生命保険料控除証明書」を送付して提出する
「給与所得者の保険料控除申告書」とあわせて「生命保険料控除証明書」の提出も必要です。「生命保険料控除証明書」とは保険料を支払ったことを証明する書類で、保険会社から送付されてきます。原本での提出が必須とされておりコピー不可となっているので注意しましょう。
「生命保険料控除証明書」は10月から12月の間に送られてくる
「生命保険料控除証明書」は一般的に10月~12月の間に送付されてきます。年末調整の時期まで少し期間があるため、無くさないようにしっかりと保管しておきましょう。もし証明書を紛失した場合は、すぐに保険会社に連絡して再発行の手続きを行う必要があります。また、届かない場合も保険会社に連絡をして年末調整までに入手してください。
学資保険を「給与所得者の保険料控除申告書」に記入【書き方】
学資保険の年末調整の際に必要な「給与所得者の保険料控除申告書」には、自身で必要事項を記入する必要があります。学資保険は「一般の生命保険料」に当てはまるため、この欄に保険料の金額等の必要事項を記載します。
以前は「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」という名称でしたが、平成30年以降は兼用様式が廃止となっています。書式の様式が変更される時もありますので、都度書き方には注意してください。
「生命保険料控除証明書」の情報をそのまま記入
「給与所得者の保険料控除申告書」は、基本的に保険会社から送付されてくる「生命保険料控除証明書」の情報をそのまま書き写すだけで作成することができます。書き方について難しいことはありませんので安心してください。ただし、記載する際に新契約・旧契約に関する記載欄があるので間違えないよう気を付けましょう。
申告書の書き方の注意点
「給与所得者の保険料控除申告書」を作成するときには注意点がいくつかあります。記入ミスのないよう、しっかりと注意・確認しましょう。申告書は会社から配布されますが、国税庁のホームページからも様式がダウンロードできますので、万が一記入を間違えた際には活用してください。
保険会社等の名称は省略しても大丈夫
「給与所得者の保険料控除申告書」には「保険会社等の名称」の記載欄があります。記載する際、保険会社名が長い場合は正式名称ではなく略称を記載しても問題ありません。また、保険会社名ではない場合もありますが(例:かんぽ、JA共済等)、同じ欄に記載すれば大丈夫です。
本年度に払った保険料の金額には証明書の「参考額」を記入
「給与所得者の保険料控除申告書」の「あなたが本年中に支払った保険料の金額」の欄には、保険料の金額を記載します。「生命保険料控除証明書」には「証明額」と「参考額(申告額・予定額)」の2つの金額が記載されているので、「参考額(申告額・予定額)」を記載してください。
年末調整で学資保険の控除を受ける際の注意点
年末調整で学資保険の控除を申請する際には注意点がいくつかあります。保険期間によっては控除が受けられない可能性もありますので、しっかりと確認をしておきましょう。また、先ほども述べたように未納の保険料がある場合は控除が受けられませんので注意してください。
5年未満の保険期間の場合は控除対象にならないことも
年末調整で生命保険料の控除をする際の注意点として、保険期間が挙げられます。保険期間が5年に達しない場合や5年未満の契約の場合は控除の対象とはなりません。学資保険は基本的に長期契約のものが多いのであまり問題はありませんが、保険期間が5年以上になっているか事前に確認をしておくようにしましょう。
妻名義の契約だったとしても夫の所得から控除が可能
学資保険を専業主婦である妻が契約している場合でも、夫の所得から控除することができます。契約者である妻に所得が無いため控除できないと思われがちですが、契約者が妻もしくは夫のどちらであっても控除は可能です。
また、妻がパートとして働き収入がある場合でも年収が103万円以下であれば所得税がかからないので控除されても意味がありません。このような場合でも、夫の所得から控除をすることができます。
学資保険の年末調整での控除額を計算
学資保険の控除額の計算方法は、加入した時期によって異なります。税制の改正に伴い、2011年12月31日より前に加入した場合は「旧方式」の計算方法、2012年1月1日以降に加入した場合は「新方式」の計算方法で行います。旧方式と新方式で申告書への書き方も異なりますので注意しましょう。
契約が2011年12月31日以前である場合は【旧方式】の計算方法
年間の支払い保険料によっても計算方法は異なります。年間の支払い保険料が25,000円以下の場合は年間の支払い保険料の全額、25,000円超~50,000円以下は「支払保険料等×1/2+12,500円」の額、50,000円超~100,000円以下は「支払保険料等×1/4+25,000円」の額、100,000円を超えると一律50,000円が控除となります。
80,000×1/4+25,000=45,000円【年間保険料8万円の場合】
では、実際に金額を当てはめて計算してみましょう。年間の支払い保険料が80,000円であった場合、計算式に当てはめると「80,000×1/4+25,000」となり控除額は45,000円になります。申告書の「計算式Ⅱ(旧保険料等用)に当てはめて計算した金額」の欄に45,000円と記載してください。
契約が2012年1月1日以後である場合は【新方式】の計算方法
新方式で計算する場合も旧方式同様、年間の支払い保険料によって計算方法が異なります。年間の支払い保険料が20,000円以下の場合は全額、20,000円超~40,000円以下は「支払保険料等×1/2+1万円」の額、40,000円超~80,000円以下は「支払保険料等×1/4+2万円」の額、80,000円を超えると一律40,000円の控除となります。
80,000×1/4+20,000=40,000円【年間保険料8万円の場合】
年間の支払い保険料が80,000円だった場合、計算式に当てはめると「80,000×1/4+20,000」となり控除額は40,000円になります。「計算式Ⅰ(新保険料等用)に当てはめて計算した金額」には40,000円と記載しましょう。学資保険の場合は一般的に保険料が8万円を超えていることが多いため、控除額は40,000円になることがほとんどです。
学資保険を年末調整に申請し忘れてしまった場合の対処法
学資保険が年末調整で控除できることを知らなくてそもそも控除申請をしていなかった、もしくは申請するのをうっかり忘れてしまったという場合はどうしたらよいのでしょうか。控除申請を忘れてしまった時の対処法として自身で確定申告をする、もしくは還付申告をする方法が挙げられます。
申告期間は翌年の1月1日から5年間
年末調整に提出するのを忘れてしまっても、慌てる必要はありません。学資保険の控除は遡って申告することが可能です。申告期間は保険料を支払った年の1月1日から5年間となっています。もしくは、少し面倒にはなりますが税務署またはネットから自身で確定申告を行うことも可能です。
後からでも落ち着いて「還付申告」できる
先程も述べたように、年末調整に申請を忘れてしまった場合でも5年間は還付申告をすることが可能です。還付申告は年末調整、確定申告のどちらでも5年以内であれば申告できます。自身で手続きを行う必要がありますが、難しい手続きではありませんのでしっかりと申告書の書き方、必要書類を確認し手続きを行いましょう。
年末調整の修正方法
年末調整の申告書の書き方を間違えてしまったり修正が必要になった場合、年末調整の修正が可能です。年末調整のやり直しが出来る期間は翌年の1月31日までとなっているため、1月31日より前に修正する場合と後に修正する場合では修正方法が異なります。1月31日の前と後に分けて修正方法をご紹介します。
1月31日より前に修正する方法
年末調整の再調整ができる1月31日までに修正する場合は、勤めている会社の経理など担当部署に依頼する必要があります。ただし、会社によっては修正依頼を受け付けていない場合もあるので気を付けましょう。なお、単純に申告書への書き方を間違えてしまいまだ手元に申請書がある場合は、二重線と訂正印で修正が可能です。
1月31日より後の修正方法
1月31日を過ぎてしまった場合や会社に修正依頼をしたが断られてしまったという場合は、自分で確定申告をして修正することが可能です。確定申告をする場合は管轄の税務署にて手続きを行うもしくは必要書類を郵送する方法とe-Taxを用いてネットから手続きを行う方法があります。
学資保険を年末調整で申告して節税しよう!
お子さんの将来のために役に立つ学資保険は、ご紹介したように年末調整で控除申告することが可能です。学資保険に加入している人は年末調整をして税金を少しでも節約できるようにしましょう。年末調整をする際にはいくつか注意点があるのでしっかりと把握し、正しく申請するようにしてください。