浴衣の簡単なたたみ方
夏の花火大会やお祭りなどのお出かけに欠かせない浴衣ですが、いよいよ秋を迎え収納する時期になります。浴衣には収納前のお手入れやたたみ方などがあります。決まったたたみ方を守ることで簡単な収納も可能になります。浴衣はどのような手順でたたむのでしょうか。さっそく紹介したいと思います。
本畳みが簡単でおすすめ
秋が来て、夏に活躍した浴衣は本畳みと言われるたたみ方で収納します。一般的な着物や浴衣を畳むたたみ方です。小紋や紬もおなじ本畳みで収納します。手順も簡単で収納にぴったりのたたみ方になります。シワにならないようポイントをつかんでたたむとうまくいきます。また浴衣も着物もたとう紙と呼ばれる和紙に包んで収納します。
たたんだ浴衣は畳紙に包んで収納
たたみ終わった浴衣は必ず畳紙(たとう紙)に包んで収納します。畳紙は防虫の役目や除湿の役目もある和紙に渋や漆を塗ったものです。着物も必ずこの畳紙に包んで収納します。着物の世界では有名呉服店の銘柄が入っていることで高価な着物という証明にもなります。
浴衣をいためず収納するたとう紙の使い方
また、浴衣を収納するときは必ず「たとう紙(畳紙)」に包んで収納します。関西では「文庫紙」と呼ばれています。たとう紙は和紙で出来ており、通気性がよく除湿効果も高いので着物や浴衣の収納に利用されています。しかし利用する際には注意が必要です。たとう紙を利用するときに3つの注意点があります。
1つ目はたとう紙の中の薄紙はかならず取り除くということ。この薄紙についている糊の成分は虫の大好物で、薄紙と着物に穴をあけられてしまう為です。2つ目は変色したたとう紙はすぐに交換するということです。
3つ目はたとう紙が膨らんだ時は新しいものに取り換えるということ。たとう紙が膨らんだ時は湿気を吸ったサイン。放っておくとカビが生え着物にカビがうつります。たとう紙は簡単で便利に浴衣を守るものですが、注意点をよく把握することが重要です。
浴衣のたたみ方の手順①本畳み
浴衣を収納するときの畳み方は「本畳み」と呼ばれるたたみ方で収納します。「本畳み」は一般的な着物や浴衣のたたみ方になります。紬や小紋、浴衣をたたむのに適したたたみ方と言われているものです。この本畳みをする時に必要なのが浴衣の各部位の名前。その各部位の名前を紹介した後、本畳みのたたみ方について紹介したいと思います。
本畳みの開設に出てくる名称一覧
本畳みをする前に知っておきたいのが「脇線」「袖」「衿」「おくみ線」「おくみ」になります。この名称が着物を構成する各パーツごとにつけられている名前。本畳みをする前に知っておきたい名称はすべて前身ごろの部分にあたります。
「脇線」は言葉のとおり、身体の部位で言うならば脇から下に伸びる縫い目です。袖から下に伸びる後ろ身ごろと前身ごろを縫い合わせてある縫い目です。「袖」は言葉のとおり腕を通す「袖」。腕が長いとこの幅が足りなくなるので「袖幅が短い」と言われたりします。
「衿」は首回りから胸部下あたりまで伸びています。衿は首回りの上部と胸部下まで伸びる下部の二つを縫い合わせて作られています。首回りの上部を「とも衿」胸部下まで伸びている下部を「衿」と言います。「おくみ線」は「とも衿」から脇線に平行して伸びる縫い目。浴衣の「前身ごろ」は「ともえ」と「(前)身ごろ」を縫い合わせて作られているのです。
脇線に沿ってたたむ
まず本畳みをする際の手順は着物を自分に対して左手側に首の衿がある方、右手側に裾がある方を置くことです。浴衣は前身ごろを開いたままで大丈夫。次に自分の手前にある前身ごろの袖の脇から延びている脇線で折りたたみます。普段、浴衣を着ているような感じで折るイメージです。上は身ごろが開いたままです。
たたみこんだ後は脇線から外側へシワを外に逃がすようになでつけ、出来るだけシワが寄らないようにします。シワがよらないように丁寧にシワをのがしながらたたむと収納後も浴衣にシワがよらず、きれいな浴衣を来年の夏も着ることができます。これがたたみ方のポイントです。
おくみ線で折って衿を倒す
次のたたみ方の手順です。自分の手前にある畳んだ前身ごろのおくみ線を見つけます。前から見て襟の首の下あたりから脇線に平行に延びている自分から見ると横一本の縫い目。そのおくみ線にそって外側に折り返し開きます。そうすると浴衣の中側が外側に出ます。首の後ろ部分にくる襟は内側に折り倒します。
この時もおくみ線にそって外側に折り開いたのちはシワを外に逃すようにしてください。折ったりたたんだりする度にシワをのがすことはきれいにたたむたたみ方のコツになります。
衿同士を重ねる
次のたたみ方の手順は衿を重ねること。自分の上側にある身ごろの衿と手前の衿を重ね合わせます。この時、身ごろはだぶつきますが、気にしなくて大丈夫です。きれいに衿と衿を上から下までを重ね合わせるのがポイントです。衿の一番上と一番下をつまんでピンとさせ、シワがよらないように注意して重ね合わせてください。
おくみ同士を重ねる
次に身ごろを畳み合わせる最初の手順のたたみ方にうつります。身ごろはおくみ線をたたみ合わせ、次に脇線どうしをたたみ合わせる手順になります。先に手前の身ごろのおくみ線で折り開いたところに自分の上部にあたるおくみ線を重ねてゆきます。
自分の手前の身ごろはちょうどおくみ線で折り開かれて、内側が外に見えます。これからたたむ上部は浴衣の外側に見えているおくみ線を見ます。下部の折り開かれている折り目(おくみ線)に沿って上部の身ごろのおくみ線(こちらは外側に見える線)を重ねてゆくのです。簡単でうまくゆくたたみ方のポイントは裾から衿に向かって合わせてゆくことです。
こうして衿が重なり、おくみ線が重なる形になります。ちょうど袖の脇下に(袖が縫い合わされているところ)衿の終わりがきているような感じで浴衣が重なるたたみ方になります。
脇線同士を重ねる
つぎの手順です。上部の脇線を下部の脇線に重ねます。横向きの浴衣を背骨の線で半分に折り倒すイメージになります。たたみ方は上部の身ごろの脇線を持ち、下部の身ごろの脇線に自分の手前に折って重ねてゆきます。重ねるときは浴衣の裾から重ねてゆくと簡単でうまくゆきます。
シワを伸ばし整える
次のたたみ方の手順として大切なのが重ねた浴衣のシワを伸ばしてぴったりと重なるように整えること。この手順で手間を省くと次の年に浴衣を出したときシワがひどい、ということになりかねません。折り重なった浴衣のシワを丁寧に伸ばし、ぴったり重なるよう整えておきます。
袖をたたむ
次のたたみ方の手順は袖をたたむということ。脇線で半分にたたまれた浴衣。脇線で折って重ねて上になっている身ごろの袖を袖の縫い目にそって身ごろの上に折り返します。この手順でもシワを外に逃すようにして手の力を抜き、手でアイロンをかけるように空気を逃すようにしてシワをのがしてゆきます。
浴衣を半分にたたむ
次のたたみ方の手順は浴衣を半分にたたむという手順になります。たたみ方は上へ折り返した袖の上に身ごろの裾をもって折り重ねます。この時、衿の一番下の衿下あたりを折り目にして身ごろを袖の上に重ねるのです。折り目がシワにならないように丁寧に裾から折り重ねます。重ねたのちは手でアイロンをかけるようにシワを伸ばします。
袖をかぶせる
次のたたみ方の手順はたたみこんだ浴衣を持ち上げ裏返すこと。持ち上げるときに袖の縫い目の一番上と一番下を持ち浴衣を持ち上げ裏返すとうまくいきます。自分の手前にあった袖は裏返すことで手前から反対側にかわります。そして袖を身ごろの上にかぶせます。これで本畳のたたみ方の一通りの手順が終わります。
浴衣の衿のたたみ方
おくみ線に沿って畳むとき浴衣の衿を内側に折り畳みますが、この折り畳みがうまく出来ないとシワになり来年の夏に浴衣を出した時、がっかりしてしまいます。浴衣の衿を内側にたたむときのポイントを紹介します。
首の後ろ側にあたる部位の衿を内側にたたみます。その時、きれいな台形が自分からみて縦むきに出来るイメージ。内側に折り込んだ時にたたみ込んだ折山と衿の先を両手で引いて伸ばしシワが寄らないようにします。そして衿と衿をきれいに重ね合わせてたたんでゆくのがポイントです。
浴衣のたたみ方の手順②小さくたたむ
本畳みは出来たけれど、タンスに収納できない、収納ケースに入らない、ということもあります。そんな時に本畳みからさらに小さくたたむ必要があります。いったいどうやって小さくたたむのでしょうか。袖のところで折り目を作ってしまうと余計な折り目やシワとなるので袖の下でたたむようにします。
本畳みから小さくするむたたみ方
最後の手順は浴衣を収納するタンスや収納ケースの大きさに小さくたたむことです。ポイントは袖のところで折って折り目をつけてしまわないこと。シワになり来年の夏に浴衣を着るのが大変になります。本畳みまで終わったら、袖の下の身ごろで収納する大きさに合わせて折ってたたむようにします。袖の上に身ごろを折りたたみます。
すると袖丈の大きさまでコンパクトにして収納することが可能になります。最後はきれいにシワを伸ばしてたたみ終わりになります。
浴衣をたたむ前のお手入れ
浴衣を収納するために本畳みしますが、その前に必要なお手入れがあります。それはシミや汚れがないか調べ、きちんと洗濯するというお手入れです。これらをきちんと行わないと次の年の夏に浴衣を出した時、ひどいシミが出来ていたり、変色してしまったりと浴衣をいためてしまいます。浴衣をたたむ前のお手入れについて紹介します。
浴衣にシミ・汚れはないか
収納する前に浴衣にシミや汚れがないか細かくチェックしましょう。暑い夏に着る浴衣。どうしても汗ジミがつきやすく避けることができません。またお祭りなどで食べ物や飲み物のシミをつけてしまった、ということもあるかもしれません。時間がたつと落ちにくいので、しっかり確認します。
浴衣は洗濯済みか
浴衣を洗濯しないまま収納してしまうと、来年の夏に浴衣を出したときに「カビが生えてる!」ということになりかねません。浴衣は収納する前に必ず洗濯するようにします。浴衣をいためることなく着ることができます。夏の間に着る浴衣。収納する前の洗濯はもちろんですが、浴衣を着て汗をかいて汚れたら、出来るだけすぐに洗濯するようにします。
浴衣の洗濯のコツ・注意点
洗濯をする前に必ず確認するのは洗濯表示。自宅で洗濯が可能なのか必ずチェックします。高価な浴衣や麻の浴衣は着物はクリーニングに出します。麻素材は自宅で洗濯すると縮んでしまい、絞り浴衣だと絞りが浅くなる可能性があるため、クリーニングがおススメです。
自宅で洗濯する場合、色落ちしないか必ず調べます。水に濡らした白いタオルを色がある浴衣の目立たない部位をたたき色落ちがないか調べます。次に型崩れを防ぐために衿部分にしつけをします
浴衣を洗濯する時はお水で中性洗剤を使って手洗いします。その後、洗濯機で1分ほど脱水。干す時はシワにならないよう物干竿に浴衣の袖を通し、形を整えて干します。そして半渇きのときにアイロンをかけて浴衣にシワが残らないようにします。半渇きの時のアイロンがけは簡単に済むので便利です。
浴衣のシミ抜きのコツ
浴衣にシミがあった場合、どのようにシミ抜きをしたらよいのでしょうか。シミはどんなシミかによってシミ抜きの仕方が変わります。共通しているのは必ずシミ抜きを行う前に色落ちしないか調べること。白い布に利用する洗剤をつけ、浴衣の目立たないところをたたいて色落ちしないかを調べます。
色落ちした場合は迷わずクリーニング店にシミ抜きをお願いします。色落ちがなければ、自宅でシミ抜きが可能です。化粧品、食品、泥汚れのシミ抜きのコツについて紹介します。
化粧品のシミ抜き
シミ抜きを行う前に必ず色落ちをチェックしてからはじめてください。口紅やファンデーションなどが浴衣についていることが分かったとき、シミぬきはどのように行えばよいのでしょうか?まずシミの部位に直接化粧落としをつけます。そしてシミの部位をやさしく一定方向に歯ブラシでこすります。シミがぬけてきたらすすぎます。
この時のお手入れで大切なのはハブラシは一定方向に優しくこするということ。力を入れてゴシゴシこするようなお手入れは決してしないでください。
食べこぼしのシミ抜き
ソースやケチャップ、お茶やジュースなど食べこぼしによるシミは食器洗い洗剤で落としてゆきます。こちらもシミ抜きをする前に必ず色落ちしないかを確認してください。色落ちがなければシミ抜きの手入れをはじめることができます。まず、シミの部位に食器洗い洗剤を直接つけます。
そして化粧品のシミと同様、ハブラシを一定方向にやさしくこすります。けしてゴシゴシとこすることはしないでください。シミ抜きのお手入れの大切なポイントが「ゴシゴシこすらない」です。
泥汚れのシミ抜き
泥汚れ。雨上がりの足元が悪い中の浴衣のお出かけなどで裾に泥汚れを見つけてしまった、ということも決して少なくありません。そんな泥汚れのシミ。どのようにシミ抜きをしたらよいのでしょうか。泥汚れを落とす時に使うのは固形せっけん。かならず色落ちしないかを確認してください。
まず泥汚れを見つけたら、ドライヤーで完全に泥を乾かします。その後、ハブラシで泥を払い落とします。そののちに固形石鹸で汚れをおとし、すすぎます。
いずれのシミ抜きも実際に行って、うまくいかなかった場合はクリーニング店に持ち込むことをおススメします。というのも、強い漂白剤などを使って色落ちなどしたら大変だからです。
浴衣の簡単なたたみ方を実践しよう!
浴衣を収納する際にはぜひ簡単な本畳みを実践してください。なんだか難しそう、と思われがちですが、こうして浴衣をたたむことで浴衣のつくりも分かり、着る際にも作りが分かることで着やすくなってゆきます。浴衣も着物も基本的には長方形のパーツで一着が作られています。慣れればどんどんきれいにたためるようにもなります。
本畳みは簡単な上に収納する場所のサイズに合わせることができる畳み方。最初は少し慣れなくて手順が進まないかもしれませんが、すぐに慣れますので、ぜひ本畳みを実践してください。