祝日の定義とは
日本には毎月のように祝日があり、ゴールデンウイークや年末年始以外でも、土日と併せると3連休となることもめずらしくありません。ただ日本の祝日は種類・数も多く、日付ではなく週や曜日で定められている祝日もあり、また年によって変更されることもあるので、祝日の正確な日数、由来や意味をなかなか覚えられない人も多いのではないでしょうか。
国民の祝日に関する法律で定められる
日本の祝日は「国民の祝日に関する法律」(以降、祝日法とします)で定義されています。祝日法第1条では、「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける。」とその趣旨を定義しています。
祝日法は戦後間もない1948年7月に施行されました。祝日法で定義された祝日の日数は年間9日でしたが、1966年に「敬老の日」と「体育の日」が追加され11日となり、その後少しずつ増え、2016年に「山の日」が加えられ年間16日となりました。
また祝日法の第3条では、祝日が日曜日にあたる場合にその日後の最も近い祝日ではない日を休日とする振替休日制度や、その前日及び翌日が祝日である場合にその日を休日とすることが定義されています。
2019年日本の祝日の年間日数は18日
ここからは、日本の祝日について詳しくみていきましょう。まず祝日の日数ですが、実は2019年は天皇交代による皇室慶弔行事が行われることから日数が18日となり、例年とは違う特別な年となっています。具体的には、5月1日に「即位の日」、10月22日に「即位礼正殿の儀」が加わるため、前年より2日多くなります。
しかし、2019年は天皇誕生日が日程上設定できないため、カレンダー上の祝日数は17日であることに注意が必要です。新しい天皇の誕生日が2月23日で即位日の5月1日より前であったため、令和最初の「天皇誕生日」は2020年の2月23日ということになるわけです。
日本は先進国で祝日の日数が多い
2019年の日本の祝日数は18日ですが、世界的にみるとこの水準はどうなのでしょうか。他の主要先進国の祝日数をみると、米国は10日、英国は8日、フランスは11日、ドイツ(ベルリン)9日、イタリア7日となっており、先進国のなかでは群を抜いて多いと言えます。
この背景には、積極的に有給休暇を取りにくい日本の労働事情を配慮して、公的な休日を多くしてきたということがあります。
世界で祝日の日数が多い国
主要先進国のなかでは日本の祝日数が群を抜いて多いことが分かりました。それでは世界ではどうでしょうか。世界で祝日が多い国を確認しておきましょう。
実は日本と同じ数の国が2ヵ国あります。インドとコロンビアでそれぞれ年間18日となっています。それに次いで多いのが韓国、レバノン、タイで年間16日です。
さらに年間15日の国がアルゼンチン、チリ、フィンランド、トルコ、年間14日の国がインドネシア、フィリピン、マレーシア、ロシア、ベネズエラ、モロッコ、スペインという状況です。
アジアの国の祝日の日数
アジア各国の祝日の日数もみておきましょう。世界で祝日の日数が多い国でも出てきた通り、インドの年間日数は18日、タイと韓国は16日、インドネシア、マレーシア、フィリピンは14日、香港と台湾は12日、中国とシンガポールは11日となっています。
このように、アジア主要国の祝日数はほとんどが欧米より上回っています。日本を含めたアジアは世界のなかでも祝日数が多いエリアと言えるでしょう。
日本の有給日数も世界では平均前後
日本は世界でも祝日の日数が多い国であることが分かりましたが、一般的なビジネスパーソンの休日が多いのかどうかをみる場合には、有給休暇の取得日数を合わせてみないと実態はつかめません。
まず有給休暇の年間付与日数ですが、日本は20日となっており世界主要国との比較ではほぼ平均的と言えます。概して多いのは年間30日が付与されるフランス、ドイツ、スペインといった欧州です。一方、北米では米国が14日、カナダが17日、アジアでは韓国とシンガポールが15日、香港と台湾が14日となっており、全体的にやや少なめとなっています。
日本の有給取得率は50%で世界最低水準
日本の有給付与日数は年間20日と世界では平均レベルですが、取得日数は10日となっており取得率は50%です。実は取得率50%は世界最低水準で、欧州各国がほぼ100%を達成し、相対的に低いオーストラリア、米国、インドでさえ70%程度であることを考えると、日本の有給取得率は群を抜いて低いと言えます。
このようにみてくると、日本は祝日数が世界各国に比べて多いにもかかわらず、有給休暇の取得日数と合わせた実質的な休日数は27日となり、同様に40日前後の休日がある欧州各国には遠く及ばない状況です。
日本のビジネスパーソンにとっては、休みを取る機会はあるものの、なかなか休めない、休みづらいという職場環境にあるようで、働き方改革は道半ばという状況です。
日本の祝日【1月~6月】
1948年に施行された「国民の祝日に関する法律」により、日本の祝日は定義されています。施行当初は年間で9日でしたが、徐々に追加・改訂され、2019年には皇室行事の2日が加わり年間18日(カレンダー上は17日)となっています。次からは、2019年に定義されている各祝日の由来や意味について説明します。まずは1月から6月までの9日です。
元日:1月1日
言うまでもありませんが、毎年1月1日が「元日」で、「年のはじめを祝う」日です。祝日法の制定前は慣習的に休日となっていましたが、祝日法により初めて法定の休日と定義されました。昭和前期には四方拝と呼ばれ、四大節(四方拝、紀元節、天長節、明治節)のなかの祝日の一つでしたが、法定の休日ではありませんでした。
成人の日:1月14日
「成人の日」は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日として祝日に定められました。祝日法制定時から1999年までは、小正月に由来し1月15日に定められていましたが、2000年以降は月曜固定祝日制度により1月第2月曜日となりました。
なお、第2月曜日は年によって8日から14日の間で動くため、元来の1月15日となる可能性はなくなっています。
建国記念日:2月11日
世界で建国記念の日を祝日とする国は多くありますが、何をもって建国日とするかは国によって異なります。日本の場合、実際の建国日が明確ではないため、日本神話に登場し初代天皇とされる神武天皇の即位日を「建国記念の日」と定義しました。
「建国記念の日」はかつての「紀元節」で、明治初期から昭和初期まで祝日でしたが、戦後は1966年に制定、1967年から適用され「建国をしのび、国を愛する心を養う」日として再び祝日に定められました。
春分の日:3月21日
「春分の日」は、宮中祭祀のひとつであるかつての春季皇霊祭に由来し、昼と夜の時間が等しいとされる春分日を「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として祝日法制定時から祝日に定められました。日にちは3月19日から3月22日の間となり、国立天文台「暦像年表」に基づき前年2月1日頃に官報で暦要項として公告されます。
昭和の日:4月29日
昭和天皇の誕生日に由来し、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日として祝日に定められました。
祝日法の制定時から1988年までは文字通り「天皇誕生日」でしたが、昭和天皇の崩御(1989年1月7日)により、1989年からは昭和天皇が自然を愛していたことに由来し「みどりの日」と改称し祝日となっていましたが、2007年に新設された5月4日の祝日が「みどりの日」の名称を引き継いだため、4月29日は「昭和の日」と改名されました。
即位の日:5月1日
皇室関係の慶弔行事が行われる場合は、その年に限りそれが実施される日を特別に休日として定める当年限りの法律が作られます。2019年は新しい天皇が即位した5月1日が「即位の日」として「天皇の即位の日及び即位礼正殿の行われる日を休日とする法律」によって祝日扱いの休日と定められました。
5月1日が「即位の日」として祝日扱いの休日と定められたことにより、祝日法第3条の「その前日及び翌日が祝日である日は休日とする」という規定で4月30日と5月2日も休日となったため、2019年のゴールデンウイークが10連休になったことは記憶に新しいところです。
憲法記念日:5月3日
1947年5月3日に施行された日本国憲法を記念して、祝日法の制定時から「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」日として「憲法記念日」が祝日に定められました。因みに、日本国憲法に由来する祝日としては他にも、日本国憲法が公布された11月3日の「文化の日」があります。
みどりの日:5月4日
「憲法記念日」と「こどもの日」に挟まれたこの日が、「みどりの日」として正式に祝日に定められたのは2007年からです。1988年から2006年までは祝日法第3条のいわゆる振替休日もしくは「その前日及び翌日が祝日である日は休日とする」との規定により「国民の休日」となっていました。
もともと4月29日であった「みどりの日」が2007年に「昭和の日」と改名されたことにより、同年から5月4日に新設される祝日名とされました。「みどりの日」は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」日として祝日に定められています。
こどもの日:5月5日
「こどもの日」は祝日法の制定時から「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日として祝日に定められています。「端午の節句」又は「菖蒲の節句」ということもあります。
因みに節句とは中国由来の暦で、伝統的な年中行事を行う季節の五つの節目(五節句)を意味します。五節句は、1月7日の「七草の節句」、3月3日の「桃の節句」、5月5日の菖蒲の節句(漢名が端午の節句)5月5日)、7月7日の「七夕」、9月9日の「菊の節句」。
日本の祝日【7月~12月】
前述の通り、2019年に設定されている祝日は皇室行事の2日が加わり年間18日(カレンダー上は17日)となっています。次からは各祝日の由来や意味について説明する後半です。7月から12月までの8日について説明し、最後に2020年2月23日からスタートする「天皇誕生日」についても説明します。
海の日:7月15日
「海の日」は海の記念日に由来し、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」日として1996年から祝日に定められました。1996年から2002年までは7月20日としていましたが、月曜固定祝日制度により2003年から7月第3月曜日に移行されました。なお、2020年は東京オリンピックの開会式の前日である7月23日に変更されます。
山の日:8月11日
「山の日」はお盆前の祝日として2016年に設定されましたが、山に関する明確な由来はなく、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日として祝日に定められました。当初案は8月12日でしたが、日航機墜落事故と同日になるため、前日の8月11日とされました。なお、2020年は東京オリンピックの閉会式の翌日である8月10日に変更されます。
敬老の日:9月16日
「敬老の日」は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日として1966年に祝日に定められました。「敬老の日」は兵庫県野間谷村の「敬老会」に由来し、1966年から2002年までは9月15日とされていましたが、月曜固定祝日制度により2003年から9月第3月曜日に移行されました。
秋分の日:9月23日
「秋分の日」は、かつての秋季皇霊祭に由来し、春分の日と同様、昼と夜の時間が等しいとされる秋分日を「祖先を敬い、なくなった人々をしのぶ」日として祝日法制定時から祝日に定められました。日にちは9月22日から24日の間で、国立天文台「暦像年表」に基づき前年2月1日頃に官報で歴要項として公告されます。
体育の日:10月14日
「体育の日」は、1964年の東京オリンピックに由来し、その開会式の日が「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」日として1966年に祝日に定められました。1999年までは開会式の日付である10月10日でしたが、月曜固定祝日制度により2000年から10月第2月曜日に移行されました。
2回目の東京オリンピックが開催される2020年は、開会式当日に当たる7月24日に日付が変更され、名称も「スポーツの日」に変更されます。
即位礼正殿の儀:10月22日
「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日も、5月1日の「即位の日」と同様に、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」によって祝日扱いの休日と定められました。「即位礼正殿の儀」は、即位の礼の中心であり、即位した天皇が日本の内外に即したことを宣明する儀式です。
文化の日:11月3日
「文化の日」は、日本国憲法の交付日に由来し、日本国憲法が平和と文化を重視していることから、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日として祝日法制定時に祝日と定められました。11月3日は明治天皇の誕生日であったため、明治時代は「天長節」、昭和時代の初期(戦前)は「明治節」として、祝日法施行以前も休日となっていました。
勤労感謝の日:11月23日
「勤労感謝の日」は、かつての宮中祭祀である「新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)」に由来し、「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日として、祝日法制定時より祝日と定められました。
「新嘗祭」は収穫物に感謝する大事な行事として飛鳥時代の皇極天皇の時代に始まったとされています。11月23日という日付に深い意味はなく、旧暦の時代から11月の2回目の卯の日に行うとされていました。新暦が導入された1873年は11月23日がたまたま2回目の卯の日であったため、その日が固定化され「勤労感謝の日」に引き継がれました。
天皇誕生日:2020年2月23日
最後に、日程上の関係から2019年には設定することができなかった「天皇誕生日」について説明します。「天皇誕生日」は、文字通り今上天皇の誕生日を「天皇の誕生日を祝う」日として祝日に定めたもので、日本の「国家の日(ナショナル・デー)」でもあります。令和の今上天皇の誕生日は2月23日となります。
因みに、明治以降の天皇誕生日は、明治天皇が11月3日、大正天皇が8月31日、昭和天皇が4月29日、上皇(平成天皇)が12月23日です。このうち、明治天皇と昭和天皇の誕生日は、それぞれ「文化の日」、「昭和の日」と名称を変え現在も祝日に定められています。
祝日と祭日の意味の違いはある?
ここまで日本の祝日について説明してきましたが、「祝日」のことを「祭日」とか「祝祭日」と呼ぶ人もいらっしゃるかもしれません。実は1948年に祝日法が施行されて以降は、「祝日」もしくは「国民の祝日」というのが正しい呼び方です。「祭日」もしくは「祝祭日」と混同されるのは、明治後期から昭和初期にかけての「皇室祭祀令」の名残りです。
「祝日」と「祭日」はその意味に違いがあるのか、次では「祭日」の定義や意味について説明します。
「祭日」は皇室を中心とする神道のお祭りの日
「祭日」とは、本来宗教において重要となる祭祀(儀礼・儀式)を行う日のことを意味し、日本では1947年に廃止された皇室祭祀令によって定められた「祭日」と定義されます。これらの中には、「四方拝」、「紀元節際」、「春季皇霊祭」、「天長節際」、「秋季皇霊祭」、「新嘗祭」など、祝日法施行以降に「祝日」となった日が多くあります。
このように、かつて休日だった「祭日」が戦後の祝日法施行以降に「祝日」として引き継がれたことから、特に高齢の方で「祝日」と「祭日」の意味を混同したり、「祝祭日」と一緒にして呼んだりする人が多い理由となっています。
「祭日」の呼び名は戦前まで
前述の通り、「祭日」と「祝日」はその意味・定義が異なります。かつて「祭日」を定義していた皇室祭祀令は1947年に廃止されたため、現在は日本に法定の「祭日」は存在せず、以降は「宮中祭祀」に踏襲され行われています。「祭日」の呼び名は、厳密には戦前までということになります。
日本の祝日の日数は世界では多い!
日本の祝日は日本の伝統と歴史、戦後の復興と経済成長における労働事情などを背景に増えてきており、現在では、その日数の多さで日本は世界でも指折りの国となりました。しかしながら、有給休暇の取得率が低いため、実際の休暇日数は世界の中で決して多いわけではないことに留意しましょう。