「目録」とは
「目録、〜を寄贈します」等と学校の卒業式等で耳にしたことがあるでしょう。出会っていないようで、誰もが恐らく一度は耳にしたことがある言葉、目録。では、その目録とはそもそもどういうものなのでしょうか。どういった場面で使う物なのか、どのような書き方をするのか等、目録に関する疑問や書き方、使い方等を紹介します。
①収蔵しているもののリスト
まず目録には2つの意味が存在します。その1つめが、図書館や博物館といった場所に所蔵や展示されている物をリスト化した物です。図書館や博物館等には多くの図書や展示品があります。それらの膨大な物を管理する際に目録があると棚卸しや万が一の紛失や盗難の際にも役に立ち大変便利です。
②贈り物・進物の実物代わりの品物リスト
2つめは冒頭に記したような卒業式や結納の際等に贈る贈り物や進物等を実物の物ではなく品物名をリストとして記した物です。図書館や博物館の目録よりも一般的に触れる機会がある目録がこちらです。日本では正式な場面で何かを贈答する時には必ずと言っていい程目録を付けます。これらの目録の使い方等について紹介しましょう。
目録の種類と書き方
先述した2つめの目録には様々な用途や登場場面、書き方があります。卒業式、結納、財産を記す場面、退職する方に宛てて等、その他にも受賞の記念品や景品を贈る際等たくさんあります。中でも卒業式で目録を述べられている場面は多くの方が見たことがあるでしょう。代表的な目録の使用場面を中心にそれぞれの書き方を紹介します。
卒業記念目録と書き方
まずは卒業式で使用する目録の書き方です。卒業生から学校や先生、在校生に宛てて贈答する物を目録に記します。渡す際は卒業生の代表が学校長に品物名等目録の内容を読み上げながら渡します。卒業をする記念として母校に記念品を残していくということです。その場に用意できない物も多い為、実物ではなく目録としてリスト化した物を渡します。
結納品目録と書き方
次に結納の際の目録の書き方です。婚約したことを示す証として新郎新婦の親同士が贈り合う品物や金品を目録に記します。
結納金は金包という包みに入れます。金包そのものが結納金の意味を示しており、地方によって関東では男性側から渡す際は「御帯料」、関西では「御袖料」、九州、四国地方では「御結納料」と書き方が異なります。又、女性側からの場合は「御袴料」と書きます。
金額の書き方は金包の中にある包みの表側に楷書の漢数字で書き、表書きはここには書きません。そして目録への書き方は品名と数を毛筆で奉書紙に書き、表書きには送り主の姓名は書かず、楷書で「目録」、「壽」と記します。結納品を受け取ったら受け取ったことを示す証として「受書」を受け取った品名を書き記し相手に渡します。
ちなみに結納の品物の数は5、7、9といった奇数の個数にするのがきまりです。夫婦円満や子孫繁栄を表した当て字を品物の名称とし、目録に記します。
目録とのしも品数の1つとして数えられます。目録は品物を記したリストですが、のしはただののしではなく、元々「のしあわび」と呼ばれるアワビを薄く伸ばした物で、不老長寿の象徴とされていました。ですからのしも結納品の品の1つとなります。
品物は家内の繁栄を願う扇子の「末広」、白髪が生えるまで添い遂げるという意味の白い麻糸の「友白髪」、子孫繁栄を願う昆布の「子生婦」、噛む程に味が出る嫁になるようにという意味のするめの「寿留女」、男らしさのシンボルという意味の鰹節の「松魚節」、祝いの酒の「家内喜多留料」です。
財産目録と書き方
次に財産目録の書き方です。企業が所有する土地や建物、預金等と言った物と全ての負債をある決まった時点でリスト化した物です。貸借対照表として使用している場合もあり、その際は毎年度の会計処理の際に必ず作成が必要となります。又、破産や清算の際にも必要です。企業だけではなく、相続等を考え個人の財産を記す際にも使用されます。
退職金記念品目録と書き方
次に退職記念品目録の書き方です。この目録には定年退職等で退職をする人に長年の功労を讃え、第2の人生のスタートを祝う意味として贈る贈答品の内容を記します。退職の記念品は退職が決まってから1〜2週間以内に贈るのが一般的です。又、語呂から苦や死をイメージするくしや手巾から手切れを意味するハンカチはあまり好まれません。
受賞記念・結婚記念・イベント景品など
そしてこの他の目録の書き方に何かを受賞した際の受賞記念や、結婚何周年かの結婚記念日の記念品、イベントの景品等を記す場面等があります。大きさ的に簡単に渡せない景品、旅行のチケット等ある一定の期間にならないと手に入らない景品等、渡す際に何かしらの難点がある景品には目録を贈ると良いでしょう。
目録の書き方テンプレート
目録を使用する場面について理解ができたら次は目録の具体的な作り方、書き方です。書き方には既に決まったテンプレートが存在する為、一度マスターしてしまえば制作する度そのテンプレートを思い出し書くだけです。ここからはそのテンプレートについて紹介します。紹介するテンプレートを読めば、初めての方でも簡単にできます。
奉納紙を使って目録用紙作る
目録を作成する為には普通のコピー用紙等の紙ではなく、「奉書紙」という紙を使用します。目録は卒業式や結納の場等、普通のプレゼント交換とは違い、格式のあるかしこまった場所で使用する物です。普通の紙でも十分に制作可能ですが、格式のある場ではそれ相応の物を使用することが望まれます。
奉納紙とは
ではそもそも、その「奉書紙」とはどういうものでしょうか。奉書紙というのは楮を原料としその中に白土等を混ぜ作った和紙を指します。現在ではパルプが原料となったしっかりとした素材の和紙のことも同じく奉書紙として見なします。昔から公文書等の作成時に使用されており、現代では祝儀袋やのし等にも使用されている紙です。
目録用紙作成の手順
それではここからは奉書紙で作成する目録用紙の作成方法を紹介しましょう。今から述べるのは目録の書き方そのものではなく、目録用紙の折り方を示した作り方です。奉書紙を横長の長方形になる形で置き、そのまま細長くなるように下から上へ2つ折りにし、次に辺の短い方から横に右から折る面が上になるように3つ折りにすれば完成です。
目録の書き方手順
では次に目録に品目名等を書き記す書き方です。目録を使用する卒業式や結納等格式のある場面だけでなく、賞品や景品の贈呈の際にも使用できるテンプレートですので、様々な場面で書くようして下さい。目録は1つのテンプレートを覚えておくだけでどんな場面でも使用可能な為、とても簡単で便利です。
①右欄に表題
まずは3つに折った目録の右側に「目録」や「贈呈」と書きます。この面にはそれらの文字しか記入しませんので、真ん中に大きめの字で目立つように書いてください。
これが表題となります。賞品や景品の際にもそのまま賞品や景品と書くのではなく、「目録」や「贈呈」等と記すようにしましょう。
②中央欄に品名
次に中央の面です。ここには贈呈する品目、何故この品目を贈るのかといった説明書き、そして贈呈する日の日付を記載します。
品目を記す際は、品物名の前に「一、」と書きその後に品物名を続けます。2つめ以降も品目の前は「二、」や「三、」ではなく「一、」です。品目名の下にそれぞれ贈呈する数量を漢数字で記載します。
その後、「右、〜として贈呈いたします。」と書きます。「〜」の部分には「卒業記念品として」や「退職記念品として」等、どういう経緯で渡す物なのかを書いて下さい。景品や記念品の場合も「抽選の景品として」等と書くようにします。最後に贈呈する日の日付を書きますが、西暦ではなく、令和等の和暦で書くのが望ましいです。
説明を書く際に文章を締める言葉をそれぞれの場面によって変えましょう。卒業記念品の場合は、卒業記念品として「寄贈致します」、長寿祝いには、米寿のお祝い品として「お贈りします」、退職の場合は、退職記念品として「贈呈いたします」等です。結納の場合は「御受納下さい」等と記します。
③左欄に宛名
最後に左面には、中央に紙の1番上から宛名、そして右端には文字の終わりが紙の1番下になるように「卒業生一同」や会社名等の送り主の名称を記します。敬称を書く際は「山田太郎校長様」とするのではなく、「北第一中学校長 山田太郎様」と書くようにしましょう。中央の面、左の面は場合によっては文字数が多くなる為、バランスには気を付けて下さい。
パソコンで印字・一般的な和紙の場合
手書きではなく、パソコンで印字する場合も手書きの時と同じようなテンプレートで作成します。又、奉書紙ではない一般的な紙で書く場合もテンプレートとしては同じです。
「目録」や「贈呈」等の表題は1番初めに右の方に書きます。次に行を空けて品目を「一、グランドピアノ一台」等と記し、締めには「卒業記念品として」や「退職記念品として」等とどういう経緯での贈呈なのかを記します。
その次に贈呈する日付を和暦で書きます。最後に送り主と宛名を入力していきます。送り主はパソコンであれば下寄せに設定し、文字の終わりが紙の1番下になるように入力して下さい。宛名は文字の始まりが紙の1番上になるように上寄せを設定し入力します。このように、パソコンであっても手書きであっても書き方のテンプレートに違いはありません。
目録を入れる袋
目録が完成したら目録を入れる封筒のような袋が必要となります。では目録を入れるのに適した袋は一体どれなのでしょうか。手紙のように封筒に入れても構わないのでしょうか。目録は割と大きくなる物も多い為、封筒に入れるのであれば、大きめの封筒を用意しなければいけません。ですが、封筒以外の物が好ましいのであれば何に入れれば良いのでしょうか。
封筒よりのし袋
目録を袋に入れる時は封筒ではなく、のし袋や奉書紙や和紙で作成した目録袋を使用します。結納等の格式ある場面で普通の封筒を使うのはマナーとして良くありません。封筒にもデザインの美しい物等良い封筒が多くありますが、それでも封筒よりものし袋等を使うことが望まれます。そののし袋の注意点、そして奉書紙等で作る袋の作成方法を紹介します。
水引のあるのし袋の場合
水引を使用したのし袋には水引の端が上を向き下には何も出ない結び方の「結びきり」とプレゼントや靴ひも等日常よくする蝶々結びのような結び方をした「蝶結び」とがあります。実はこれらにはそれぞれ意味があり、水引の結び方によって使用する場面を選びます。間違ってしまうと渡す相手に失礼になる為、次に記す注意を理解し気を付けましょう。
結びきり
まず「結びきり」は一度結んだら結び目が簡単にほどけない構造になっていることから、一度だけであってほしい出来事の際に使用します。例えば、結婚祝いやお見舞い、快気祝い等がそれにあたります。又、今述べた物は紅白の水引で作られた結びきりの場合ですが、黒白や金白の結びきりは香典や法要のお供え物の際に使用します。
蝶結び
次に「蝶結び」は、簡単にほどけ何度も結び直すこともできることから何度繰り返しても良い祝い事等の場面で使用します。
例えば出産祝いや長寿祝い、お食い初めや七五三等といった子供の成長を祝う場面で使用します。又その他にも、お中元やお歳暮、それらのお返しの内祝いにも蝶結びの水引が付いたのし袋やのし紙を使用します。
「蝶結び」は新築や開店祝い等でも使用できる様々なお祝い事の場面で重宝しますが、「結びきり」を使用する結婚やお見舞い等は何度もあっても良い祝い事ではない為、そういった場面で「蝶結び」の水引を使用すると失礼にあたります。祝い事は何でも蝶結びで良いだろうと思っていると大変なマナー違反となる為、十分に気を付けましょう。
奉納紙や和紙で目録袋を作る場合
奉書紙や和紙を使用して目録袋を作成するにはこれから紹介するような手順で折り、袋を作成します。
まず奉書紙や和紙を裏向きにし横長の長方形になるように置きます。次に辺の短い方から2つ折りに折り折り目を付け、折り目の左側に折り目の線に沿って既に作成した目録を置きます。その目録を包む形で余った左面を目録側に折ります。
そして右面を左に折り目に沿って折り、目録を包んでいきます。少し余った橋の部分はそのまま目録の紙の形に後ろ側へ折り込んで下さい。最後に上下の余った部分を目録の形になるように折り、正面に「目録」と記せば完成です。ちなみにのし袋を使用する際この部分は目録の他に「御祝」や「壽」と記しても構いません。
現金を送る場合のマナー
目録に現金を贈る方も多いでしょう。現金を何にも包まずそのまま渡す方はまずいませんが、大切な現金を適当な袋や封筒に入れて渡すのもマナーとしてよくありません。渡す相手のお祝や敬意を表す為の現金の目録ですから、しっかりマナーを守って現金も渡すことを心掛けましょう。この方法は現金だけでなく商品券やギフトカードにも使用できます。
金包を使う
目録に現金や商品券等を贈る時は「金包」を使用します。金包とは所謂祝儀袋等ののし袋のことで、現金を包む袋のことを指します。のし袋は今では100円ショップ等でも手軽に購入できる袋ですが、もしなかった場合でも紙があれば自宅で折って作ることが可能です。折り方も簡単な為、覚えておいて損はありません。
金包は「たとう」が手軽な折形
現金を包む金包みには「たとう」という折り方が一般的です。折った物に場面に合った水引をかけるだけでのし袋と同じく現金を包む立派な袋になります。
お祝い事の際には奉書紙、結婚式の場合は厚手の和紙である檀紙を使用します。弔辞の際には白い紙を1枚使用して折ります。奉書紙等の紙を裏面にし、縦長の長方形の形になるよう置きます。そして縦に3つ折りができるような幅で左から一度折ります。
次に右からも同じように左から折った面に被さるように折ります。その時にきっちり被せて折るのではなく、端が5mm程ずれるように折るのがポイントです。祝い事の場合はここで右から折ってきた紙の端に幅25mm程の紅紙を裏側から2mm程見えるようにあてます。最後に後ろに向かって上下の余りになる部分を折り返し水引をかけて完成です。
最後の余りの上下の部分を折り返す際に、お祝いの際は幸せを受け止めるという意味で上部から折り、下部をその上に被せるように折るとされています。又、弔事の際には瞼が閉じているようなイメージや悲しみが流れていくようにとの意味から下部から折り、その上に上部を被せて折ります。これは割と新しいたとうのルールですが覚えておくと便利です。
目録はマナーを知って正しく書こう!
目録は格式のある場面から日常生活の身近な場面まで様々な場面で使用できます。ですが、それぞれの書き方はごくごく簡単で1つのテンプレートを覚えておけば誰もが書き方に悩まず作成できる物です。テンプレートに沿った書き方に加え、それぞれにあるちょっとしたマナーを理解し、様々な場面で有効活用して下さい。