青色申告承認申請書とは
個人事業主が青色申告をする際、税務署に青色申告承認申請書を事前に提出する必要があります。税務署にいきなり青色確定申告をしても事業実態がわからず、実務上混乱をきたすことは想像に難くないでしょう。
ちなみに青色申告の所得の種類は事業取得、不動産取得、山林取得となり、これらに該当する個人事業者は申告できる対象となります。
青色申告事前申請書とは「青色申告を承認しました」という青色申告の事前手続きの書面という意味合いです。ただ、申請したからといって書面上の不備がないかぎり、所轄の税務署から直接申請者へ連絡がくることはありません。基本的に不備がなければ無ければ、承認されると認識して構わないでしょう。
青色申告は所得税計算上の優遇を受けることができますので、対象者なのに提出しないままでは、所得税控除のメリットをフイにしてしまうため、「もったいない」です。「青色申告申請書 書き方」を紹介していきますので、節税の為にも、ぜひ提出をしておきましょう。
個人事業者が出す必要がある
青色申告承認申請書は個人事業者が提出する必要があります。個人事業者とは法人など設立せずに自ら事業を行っている個人のことです。
個人事業者の職種は多岐に渡ります。大工の一人親方や最近よく聞かれるようになったフリーランスも個人事業者を指します。税理士や社会保険労務士も個人事業者として働いている人も多いです。
個人事業主が青色申告承認申請書を提出しない場合、白色申告の納税者となります。ただ白色申告より青色申告の方が節税のメリットが大きいです。ここは押さえておくべきポイントです。
毎年出す必要はない
青色申告承認申請書は青色申告のように毎年毎年出さなければばいけないのでしょうか。答えはノーで、毎年出す必要はありません。一度承認されれば、青色申告であるかぎり初回申請以降出す必要はありません。
ただ、青色申告から白色申告に変更することになり、再度青色申告をする対象になったり、個人事業を廃業し、被雇用者となり、再度個人事業者となった場合は、再度青色申告承認申請書を提出する必要があります。
青色申告承認申請書の書き方
次に青色申告承認申請書の書き方をご紹介いたします。各項目は一般的なことだけで、小難しい計算式や創業計画書などの事業計画などを書く必要はありません。いたってシンプルで簡単です。A4判片面程度の情報量で、所定の項目に○をしたり、記入したりするだけです。
では具体的にどういう内容になるのか。その書面をどこで入手できるのか。これから個人事業者として青色申告承認申請書をご検討の方は、事前に知っておくと実際の手続きがスムーズになります。書き方は簡単ですので、気軽に目を通しておいてください。
書き方①申請書の準備
「青色申告承認申請書 書き方」として準備から触れていきましょう。まず青色申告承認申請書は所轄の税務署や国税庁の『[手続名]所得税の青色申告承認申請手続』からダウンロードが可能です。
うっかり記入ミスなどがあることも考えて、身近に出力環境がない場合は、余分に1~2枚、申請書を取っておくのもおすすめです。
上記の他は印鑑(実印でなくても可)、ボールペンなどの筆記用具などの文房具と、あとは郵送の場合はA4判の申請書が入る角2程度の大きさの封筒、送り先税務署の住所情報を調べておけばベターです。
書き方②申請者の情報
書き方その2として、申請者の情報が初めに記入する内容の紹介です。現住所と事業所の住所を確認、特に郵便番号などは事前に調べておけば、書いてる途中、立ち止まることもなくスムーズです。納税地の住所欄がありますが住所地か居所地か事業所等かを選択する形式になっております。簡単に言えば、自宅または事業所の住所を記入すればOKです。
個人事業者の場合、自宅と事業所が同じという方も多いと思いますが、その場合は住所地と事業所等にマークすればOKです。
上記の他は事業の屋号および住所 (自宅と同じ場合は自宅住所)、青色申告を始めたい年などを所定の記入欄に記入していきます。
書き方③申請内容詳細
書き方その3として、申請者情報のあとに、所得の種類(事業所得、山林所得、不動産所得)、いままでに青色申告承認の取り消しまたは取りやめをしたことの有無、1月16日以後新たに業務を開始した場合の開始年月日、相続による事業承継の有無、を記入していきます。
これらは事実に即して記入もしくは有無のどちらかに○をつけていくので、事業者本人であれば自分の身辺のことをなので迷うことはないはずです。
次が大切になってくるポイントです。青色申告承認申請所の6、の項目である「その他の参考項目」の欄です。
青色申告の一番の特典は、65万円の特別控除のメリットです。この65万円という控除額は、所得から65万円控除され、その差し引きの所得で申告ができるため、少ない納税額で済む可能性がある大きなメリットのある特典です。
6、「その他の参考項目」の欄はこの65万円の控除の要件と関わっている項目です。その選択項目である「簿記方式」を次にご紹介していきます。
簿記方式での書き方
下段の「その他の参考事項」の (1)の「簿記方式」の項目ですが、「複式簿記」「簡易簿記」とあります。この2つの簿記はどういうもので違いはなんなのか、その書き方を交えてご紹介いたします。
「複式簿記」は簡単に言えば1つの取引を分解して「借方」と「貸方」をそれぞれ、左、右に分けて記入していく方式です。資産・負債・資本の増減、費用の発生と消滅などの場合に仕訳のルールに沿って(借方)左側に(貸方)右側に科目と金額を記入していきます。左右は同じ金額になるのが原則です。
たとえば銀行から100万円借り入れた場合は現金が増えたので借方に100万円記帳し、逆に負債が増えたので100万円を貸方に記帳するといった仕訳になります。
上記の流れを1日ごとに簿記に記入していき、それを合計して一覧にしたものが「貸借対照表」です。これを一見すれば、資産、負債、純資産といった財政状況がわかります。
「簡易簿記」はいわゆる「家計簿」のようなもので、現金出納帳であれば、現金の増減とその要因を記録していきます。帳簿としては、上記の他に買掛帳、経費帳、固定資産台帳などがあります。
「複式簿記」は65万円の特別控除のメリットを受ける対象となり、「簡易簿記」は10万円の控除対象となります。「複式簿記」は仕訳という作業があり、最初は戸惑い、覚えるのに時間がかかるかもしれませんが、毎年申告する際、後々控除面で優遇されるメリットがありますので、事業の性質や経営規模などをじっくり勘案して決定していけばいいでしょう。
備付帳簿名での書き方
備付帳簿名の項目では、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、預金出納帳、手形記入帳、債権債務記入帳、総勘定元帳、仕訳帳、入金伝票、振替伝票、現金式簡易帳簿、その他の計15項目並んでいます。どれを選択すべきか、初見の方はまず迷うし、わからないところです。
これらの帳簿はあくまで「使う可能性があるもの」として並んでいるので、ズラっと並べられております。しかし、優先順位がわからないものです。そこで、「複式簿記」、「簡易簿記」希望に分けて選択していきます。
「複式簿記」希望の場合は「総勘定元帳」「仕訳帳」を選択しましょう。この2つは「主要簿」とよばれ、「複式簿記」の記帳づけで必要になってきます。その他は「補助簿」と呼ばれ、「主要簿」である2つの帳簿を補完する役割となります。
「簡易簿記」希望の場合は、先述した「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」の5つの簡易帳簿を選択しておきましょう。
以上のように「複式簿記」「簡易簿記」では、帳簿づけ自体の性質が異なるため、税制での優遇されるメリットにも差が生まれておりますので、是非、選択の際のポイントとしてご留意ください。
青色申告承認申請書の提出期限
青色申告承認申請書の内容について一通りご紹介いたしました。次は手続き面として青色承認申請書をいつ、どこに提出すればいいのかを見ていきます。提出期限が設けられておりますし、提出場所も決まっております。提出期限は条件によって変わることもあるので注意が必要になります。
青色申告書を申告する3月15日まで
青色申告承認申請書は原則、青色申告書を申告する年の3月15日まで申請する必要があります。また、新しく起業する方は起業した日から2ヶ月以内までに申請書を提出する必要があります。
例えば、2018年まで毎年、毎年白色申告をしていた方が、2019年から青色申告に切り替えたい場合は、2019年3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、2020年3月15日まで提出期限の2019年確定申告を青色申告で行うことができます。
また、2018年4月1日に起業した方が、青色申告を2019年からしたい場合は、2018年6月1日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。新たに起業した方は起業から2ヶ月しか提出猶予はありません。開業届けだけではなく、2ヶ月以内の青色申告承認申請書のご提出をお忘れのないようにしてください。
税務署に提出する
申請書は納税地を管轄する税務署へ提出いたします。「どこの税務署が自分が居住する納税地を管轄しているのか」いまいちわからない方は、国税庁ホームページの「税務署の所在地などを知りたい方」で住所を入力すれば、管轄の税務署の情報がわかります。
税務署は青色申告の提出先だけではなく、確定申告などの税申告の際、記入の不明点などもお電話や直接会って説明してもらえますので、普段の会計の素朴な疑問点などがありましたら、気軽に連絡してみましょう。
申請が間に合わなかった場合
申請が間に合わなかった場合どうすればよろしいでしょうか。毎年白色申告していたが、「青色申告の存在を知らなかった」「知っていたが提出期限が過ぎてしまっていた」などの場合は、残念ながら、その年の申告は白色申告で申請することになり、最大65万円の控除のメリットを受けられなくなります。
例外として、事業承継の場合、青色申告をしていた事業主の親が亡くなり、子に事業を相続をする場合においては、相続開始日が1月~8月の場合は、4ヶ月以内、相続開始日が9月~10月の場合はその年の12月31日まで、相続開始日が11月〜12月の場合は、その翌年の2月15日までと若干長い猶予が設けられております。
上記の場合、相続開始日は相続人がお亡くなりになった日になり、その日が土日・祝日の場合は、翌平日が相続開始日となります。
青色申告承認申請書の必要性・メリット
青色申告承認申請書の必要性・メリットはどこにあるのでしょうか。個人事業者が青色申告者になると、毎年確定申告時に「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与控除」「事業損失の3年間繰越控除」などの税制上の優遇措置を受けることが可能です。では順を追ってそれぞれの特徴をご紹介いたします。
青色申告特別控除の対象になる
「青色申告特別控除」は、65万円または 10万円の控除を受けることができる制度で、65万円の控除を受けるためには、複式簿記以外に不動産所得又は 事業所得に該当する事業を営む青色申告者であること、現金主義でないこと、を満たす必要があります。
現金主義とは現金や預金の入出金があって初めて取引が成立になる会計主義ですが財務会計上問題があります。
この会計の仕方ですと、前払いの際、商品やサービスを提供し、対価を受けるまでの期間がまだ先だった場合に、費用として計上しなければならず、また後払いの際、先に商品・サービスの提供を受けても、対価が支払われるのが先の場合に費用が計上できないというタイムラグが発生してしまいます。
上記の問題があるので、金銭とやりとりがなくても、取引が発生した時点で費用と収益を計上できる発生主義が要件として必要になってきます。
家族への給料も経費計上できる
「青色事業専従者給与控除」は青色申告者が「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、同じ生計の配偶者と親族の給与分を全額必要経費とすることができる控除制度です。
ただし、提出期限が設けれており、「青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日」「その年の1月16日以後に事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内」上記どちらかに所轄の税務署に届け出る必要があります。
純損失の繰越控除を使える
「事業損失の3年間繰越控除」とはその年の赤字を確定申告で損失申告することによって、その赤字を向こう3年以内に出る所得と差し引くことができるも控除制度です。「開業して最初の2~3年間は赤字が出たが、その後は黒字に転じた」という場合本制度を活用することで黒字年の青色申告の所得控除ができます。
また、逆に前年も青色申告をしており黒字だったが、本年度に赤字が出た場合は、本年度の損失額を前年の所得金額から差し引いて「前年分の所得税の還付」を受けることも可能です。還付というのは簡単に言うと「払い過ぎた税金が戻ってくること」です。
青色申告承認申請書が受理されない条件
最後に青色承認承認申請書が受理されない場合についてです。青色申告は適正は記帳と申告を目的としていることから、その義務を怠れば、承認は取り消されてしまいます。毎年事業を運営し、毎年確定申告をしていくにあたって、承認が受理されず取り消されてしまったという最悪な場合を事前に知っておき、リスク回避に役立ててください。
期限内に申告がなかった
個人事業主が毎年3月15日までに確定申告しなければならないのは周知の事実ですが、その期限内に2期連続で申告できなかった場合、または無申告だった場合は取り消し処分となります。無申告とは正当な理由なく期限内に確定申告していない状態を指します。いづれにしても本来の納税額に加え、延滞税や無申告加算税が課されてしまいます。
内容が間違っていた・虚偽があった
事業の財務内容を不正に間違い、偽ったりすることも取り消される対象です。隠蔽、仮装、などが税務調査で判明し、申告すべき額と実際の申告額におおきな金額差があったりすると悪質性があるとみなされます。
上記の場合、指摘された年の青色承認が取り消されるだけではなく、その事実があった事業年までさかのぼって、追加で税金を払わなければならない可能性も生じます。
青色申告承認申請書は期限内に出す必要がある
以上「青色申告承認申請書 」をご紹介してきました。申請書自体は事業の細かな運営を記載する性質のものではないので、すんなり受理されるイメージで差し支えありません。ただし、提出期限を把握していないと、来年も「白色申告」になってしまうなど、青色申告のメリットを享受できなくなってしまいますので、ご注意ください。
また、申請書を直接税務署へ持参する時間がなく郵送する場合、あくまで「消印有効」で、到着日は考えなくてよいのでご留意ください。