50日祭とは
50日祭とは仏教でいうところの49日の法要のようなものです。現代では仏式のお葬式が多く、あまり神道にはなじみのない人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、なじみがないからといってマナーを知らなくていいというものではありません。特にビジネスマンなどは仕事上のお付き合いで50日祭に参加することもあるかもしれなため、きちんと服装や香典のマナーを知っておくといいでしょう。
もちろん自分が喪主として神道のお葬式を出すこともあるかもしれません。その場合には参列者としてではなく喪主として50日祭における服装やマナーを知っておく必要もあります。服装のマナーや香典の包み方、金額の相場やしてはいけない注意点など何もわからないといざという時に困ります。そこで今回は神道の50日祭について詳しく解説していきます。
節目に行われる神道の儀礼
神道の行事というけどそもそも50日祭とは何なのか、詳しいことは分からないという人は多いのではないでしょうか。50日祭とは個人が亡くなってから50日目に行われる、神道における節目に行われる儀礼のことです。
神社ではお祓いや結婚式などの行事は知られていますが、実はお葬式を取り行うこともあります。神葬祭と呼ばれるのですが、神社には神様を祀ってあるため、穢れを持ち込むことができません。そのため神社のお葬式の場合は喪主の自宅か斎場で取り行います。当然50日祭も喪主の自宅で行うか、墓前や霊園で行うことになります。
50日祭で準備すること
神道では人はみな等しく神の子であるという教えがあります。そのため亡くなってから50日間は幽霊のよな霊魂の状態でいて、50日を過ぎると神棚に祀られ家族を見守る守護神となります。その節目に行われる儀礼が50日祭です。
50日祭で準備しなくてはならないものは、参列してほしい方への挨拶状、案内状がまず必要です。さらに祭壇の飾りつけのためのものや神主へのお礼、お返しや香典返しなどです。まったくなじみがない人であれば挨拶状の書き方や神主へのお礼の渡し方や相場などわからないこともあるでしょう。ここでは準備が必要なものについて詳しく解説していきます。
挨拶状・案内状の用意
50日祭の挨拶状や案内状を送る目的としては、参列してほしい方に日時や場所を知らせるというものです。一般的には郵送で送ります。50日祭の出席の可否を書く欄を用意して受け取った側が返信できるようにしておくといいでしょう。
挨拶状や案内状にも書き方のマナーがあります。適当に日時と場所だけ書いておけばいいというものではありません。どのように書くべきなのか、注意点を押さえておくようにしましょう。ちなみに挨拶状・案内状は縦書きにして数字は漢数字にするのが望ましいです。
挨拶状・案内状の出だしは「拝啓」にします。いきなり文章を書きだすとぶしつけになってしまいます。次に時候の挨拶から入ります。また葬儀に参列していた方であれば、お礼などを書き添えます。そのあとに50日祭を行う旨と出席してほしいことを書き、日時と場所を書きます。最後にいつまでに返信してほしいということを書き添えておきます。
祭壇の飾り付け
50日祭当日には祭壇が用意されます。この祭壇には御供え物を置くだけではなく、さまざまな飾りつけが必要になります。
50日祭の飾りつけに使われるものは決まっていて、八足三段の棚、白い布、故人の遺骨・遺影、霊璽、榊立てが2つと立てるための榊、火立てが2つとろうそく2本、御供え物とそれを乗せる紙皿や三方、徳利が2つと水器です。
飾る手順や場所もある程度決まっています。まず八足の三段の棚を設置しましょう。そのあと白い布で覆います。次に一番上の段には故人の遺骨や遺影を置きます。中段の中央には霊璽を置きます。さらに中段の両端に榊を入れた榊立てを置きましょう。下の段の両端にろうそくを立てた火立てを置きます。最後に空いている場所にお供え物を置きます。
神主へのお礼
50日祭の飾りつけの準備が整ったら、神主へのお礼も準備しなくてはなりません。神主へのお礼は白無地の封筒に入れましょう。表書きには「御祭祀料」か「御初穂料」、もしくは「御榊料」と書くようにします。神主の方にご不幸があったわけではないので薄墨は使いません。普通の墨で書くのがマナーです。
50日祭のお返し・香典返し
神道における50日祭では、仏教の49日と同じように引き出物を参列者に渡すのがマナーです。金額の目安としては参列者からいただいた香典や御供え物の3割~半額相当のものをお返しします。お返しの品物はお菓子やお茶、コーヒーなどの消え物やタオルや洗剤といった使いやすい日用品がよいでしょう。
50日祭で参列の際に用意するもの
50日祭を取り行う側が用意するものは先ほどご紹介しましたが、それでは参列する側は何も用意する必要はないのでしょうか。もちろん用意するものがないなどということはありません。
参列者が準備するものも大体決まっています。とはいえ取り行う方とは違ってそこまでたくさんのものを準備する必要はありません。参列者が準備するものはお供え物か香典です。それぞれきちんとしたマナーがあります。特に香典には水引きの選び方から表書きや裏書の書き方、金額の相場まで細かくマナーが決まっているため、注意が必要です。
お供え物
お供え物として持参するものは、故人の好物が一般的です。基本的には果物やお菓子、海産物やお米などの食べ物が多いです。近年では物ではなくお金を持参することもあります。
お供え物を準備するときには受け取る側のことも考えましょう。海産物でも生ものではなく干物や加工品でできるだけ長持ちをするものにしましょう。また、果物などはお供えしやすいように盛り合わせになっているものにするのが一般的です。おかしも個別包装のしてある、できるだけ消費期限が長く長持ちするものにすると喜ばれます。
香典
仏教の49日と同じように神道の50日祭でも香典を準備する必要があります。とはいえ香典というのは仏教での用語であるため、神道では「玉串料」や「弔慰金」という呼び方になるので、呼び方を間違えないようにしましょう。また、呼び方だけでなく使用する水引きや表書きなども仏教とは異なるため、50日祭に参列するときには注意が必要です。
香典袋・のしの表書き
神道の50日祭に参列するときに使用する香典袋は、実は仏教と同じもので構いません。しかし注意点もあり、蓮の花が入っているものは仏式専用で、十字架が入っているものはキリスト教専用になるため、50日祭に参列するときには使用しないように注意が必要です。
のしの表書きも間違えないように気を付けます。神道の50日祭の場合には香典の表書きには「御玉串料」や「玉串料」、もしくは「御神前」と書くようにします。神道では「御霊前」というのもありますが、神葬祭で故人が霊になってから50日祭で祀られるまでの間に使うものであって、守護神となる50日祭では使わないので気を付けましょう。
水引の種類
水引きの種類もいくつかありますが色や結び方にもマナーがあるため、選ぶときにはマナーを守るようにします。水引きの色は黒白にするのが一般的ですが、神道の場合は黄白でも問題ありません。水引きの結い方は結びきりか淡路結びのものを選びます。これはどちらの結い方にも不幸が繰り返されないことを願うという意味があるためです。
香典の金額相場
香典に包む金額には相場というものがあります。相場より少なすぎても多すぎてもよくありません。相場に適した金額を入れるのがマナーです。50日祭に参列するときに持参する香典の相場は、故人との関係によります。
親族は関係性によって細かく相場があります。故人が自身や配偶者の親であれば5万円~10万円が相場になります。兄弟や姉妹の場合は3万円~5万円、祖父母であれば1万円~3万円程度です。血縁関係がある親族は少々高めになります。
湯人や知人などは大体5千円~1万円程度であり、親しい間柄であれば高めに、ちょっとした知りあいやあいさつ程度のお付き合いの御近所の方などであれば5千円程度が相場です。とはいえ、50日祭の場合には儀礼後に行われる直会とよばれる会食が重要な意味を持つために、会食代として相場に加え1万円~2万円多く包むのがマナーとされています。
50日祭でのマナー
50日祭において気を付けなくてはならないマナーとは、どのようなものがあるのでしょうか。基本的に覚えておかなくてはならないマナーは服装、挨拶、御榊の扱い方の3つになります。事前に覚えておくといざという時に慌てなくても済みます。また特に服装は男女の違いもあり、マナーに則っていなくては悪い意味で注目を集めてしまうので注意が必要です。
服装
服装には特に気を付ける必要があります。特に男性の服装と女性の服装ではマナーも違ってくるため、事前にきちんと準備をしておくことが必要になります。
男性の場合には、仏教などの葬儀と一緒で黒系ですべて統一するといいでしょう。黒いスーツに黒いネクタイ、黒い靴下に黒い靴などです。特に光物などの装飾品はマナー違反ですので、必ず外しておくようにしましょう。唯一結婚指輪だけは問題ありません。
女性の場合にモダン性の服装と同じように黒系統で統一するといいでしょう。黒いワンピースかスーツ、黒いストキングに黒い靴です。また、やはり光物の装飾品などはマナー違反になります。ただし結婚指輪と、女性の場合は真珠のネックレスであればそこまで目立たないものを一つだけつけていくことができます。真珠は一つならマナー違反にはなりません。
そのほか服装の注意点
そのほか気を付けたいことに数珠があります。葬儀や49日で服装には気を使いブラックフォーマルを用意したときなど、ついつい数珠も用意しがちではないでしょうか。しかし50日祭は似ている行事であっても仏教ではなく神道の儀式です。そのため数珠やそれに類する装飾品は避けるのがマナーです。持っていかないように注意しましょう。
挨拶
神道で行う神葬祭というといったいどのような挨拶がマナーに則った適当なものであるのか疑問に思うことはありませんか。特に喪主ともなれば挨拶のマナーを間違うわけにはいきません。
しかし神道の挨拶などしたことのない方も多いのではないでしょうか。実は神道における神葬祭の挨拶はさほど難しいものではありません。故人の弔いにわざわざ集まってくださった方々に感謝の気持ちと近況報告を手短に述べるといいでしょう。
挨拶の内容はわかってもタイミングがよくわからないということもあるでしょう。挨拶は会食の前後が最も望ましいです。会食の前にあいさつをするのであれば前述の挨拶の内容に、食事を楽しんでいってほしいという趣旨を入れ込むといいでしょう。また食事のあとであれば時間になったのでお開きにすることを入れ込みましょう。
御榊の扱い方
50日祭における御榊とはどのようなものかをご存じでしょうか。そもそも扱い方ってどういうことと疑問に思う人もいるのではないでしょうか。50日祭の御榊とはもっとも重要な儀式といえます。そのためきちんとマナーを守って御榊を扱いましょう。
仏教における葬式の際には、お焼香をします。しかしお焼香は仏式のため、神道の儀礼である50日祭では必要がありません。では50日祭では何もしなくてよいのかといえば、そのお焼香に当たる儀式が御榊の扱いなのです。
50日祭では故人に御榊を手向けます。まずは御榊を受け取りましょう。受け取ったら必ず両手を添えて持ちます。ここで片手で受とったり適当に扱ったりするのは厳禁です。マナー以前にありえない行為です。決して片手で受け取らないように注意しましょう。御榊は神道関連の行事には必ず使う必要があるため、覚えておくと便利です。
御榊を手向ける
御榊はまず両手で受け取ります。そのまま両手を添えて持ち並びましょう。手向けるときになれば御榊の上下をひっくり返して両手を添えてテーブルに置くようにします。イメージとしてはハサミを他者に渡すときのようにします。ハサミは刃が危なくないように持ち手を相手に向けて渡すのがマナーです。ハサミのように御榊もひっくり返す必要があります。
50日祭の1日の流れ
これまで50日祭のマナーや準備について解説してきましたが、ここらへんで50日祭の1日の流れを把握しておくのもいいのではないでしょう。50日祭の1日にはさまざまな行事が詰め込まれています。まずは50日祭の細かい内容と1日の流れをきちんと把握したうえでマナーや相場などをもう一度、見直してみてはいかがでしょうか。
献饌
まずは献餞という儀礼があります。これは(けんせん)と読みます。少し難しい言葉のように感じる人もいるかもしれませんが、要は故人の方のお供えをささげるものです。お供え物は米や酒、お魚などの食べ物であることが多いですが、基本的には故人が好きだったものになります。そのため食べ物であることにはこだわりはありません。
祝詞奏上
次に祝詞奏上を行います。祝詞奏上は神職の方、主に神主さんによって行われます。お寺の和尚さんが読経を読むのと同じことです。祝詞は神職の方が神様に申し上げるという形になり、内容としては神様を尊敬してご利益などを願い奉るというものになります。そのためこの儀礼は非常に重要であり、遮ることのないよう注意しましょう。
玉串奉奠
神職の方の祝詞奏上が終了すると、次は玉串奉奠という儀式に移ります。これは仏式でいうところのご焼香のようなものです。神職の方の導きにしたがって参列者一同が参加します。
そもそも玉串とは何なのかと思ったことはないでしょうか。ここで使われる玉串は榊の枝に紙垂とよばれる紙を取り付けたもので、榊の枝を受け取った後は順番に祭壇にお捧げします。この時に祭壇には榊の枝は根本側を向けてお捧げするのがマナーです。間違っても葉が茂っている方を向けないように注意しましょう。
納骨
納骨は故人のご遺骨を納めるお墓ができているかどうかにもよります。お墓ができているようであれば故人のご遺骨をお墓におさめる納骨も50日祭でしてしまいます。できれば50日祭より前に故人が入ることになるお墓を用意しておくといいでしょう。ご遺骨を納めるときにもう一度ご挨拶をしておきましょう。
合祀祭
50日祭における儀式の一つに合祀祭というものがあります。これは、神道の考え方に葬儀に当たる神葬祭から仏式でいうところの49日に当たる50日祭までの間は、故人は霊魂のままで存在するというものがあります。
しかし50日祭で霊魂のまま漂っていた故人は守護神として祀られる事になります。そのため、この合祀祭で50日祭までの間に仮霊舎に安置していた故人の霊璽を祖霊舎に移して安置することになります。霊璽とは仏教でいうところの位牌のようなものです。
本来であれば、50日祭から100日祭までの間に行われる儀礼なのですが、近年ではあえて別に合祀祭を行うことは少なくなっています。一般的には50日祭に先立って行われるようになりました。そのため50日祭での順番としては、合祀祭を行うときには納骨の儀礼でご遺骨をお墓におさめてから行うようになっています。
清祓いの儀
神道では故人が亡くなった際に神棚に白紙を貼ることになっています。いわゆる忌中を示すものであり、この清祓いの儀で神棚の白紙をはがすことになります。白紙をはがすことによって忌明けであるということを示します。
本来この清祓いの儀も合祀祭と同じように50日祭でする儀礼ではありませんでした。どちらの儀礼も50日祭が終わってから行うもので、清祓いの儀はかつては50日祭の翌日にする儀礼でした。しかし近年では合祀祭と同様に50日祭の当日に合わせて行うことが一般的です。仏式と同じように神式でも儀礼を1日で終わらせることが多くなってきています。
直会
直会とは(なおらい)と読み、50日祭の神道の儀礼が終わった後にする会食のことです。基本的には50日祭の時に祭壇にあったお供え物をおさげして、参列した全員でいただく形になります。
この会食では神様にささげられたものを全員で分かち合っていただくことで、神様のお力をいただくという意味があります。また、参列者が一堂に会して食事をすることになるため、故人の思い出を話したり偲んだりするための一時でもあります。しっかりと話をして故人の思い出を語り合いましょう。
50日祭の参列の注意点
50日祭に参列するときには注意するべきことがあります。もっとも注意しなくてはならないことは50日祭は神道の儀礼だということです。神道と仏教は宗教が全く違います。しかし仏教に慣れ親しんでいる人が多いのも事実です。そのため香典袋や服装のマナーなど、ちょっとしたところに仏教の慣習を持ち込んでいることもあるため注意が必要です。
御供物とは別に玉串料を持参
50日祭に参列する際には気を付けないといけないことがあります。それがお供え物と玉串用は別であるということです。お供えを奮発したから玉串料はいらない、とはならないのです。お供えを相場通りきちんと用意したとしても、玉串料も相場通り用意する必要があります。どちらか片方ではなくどちらも用意するように気を付けましょう。
50日祭はしっかりと事前準備をしておこう!
50日祭はあまりなじみのない人も多い儀礼ではないでしょうか。しかし神道で神葬祭をした時には50日祭をする必要があります。また喪主にはならなくても、招待されることもあります。
突然50日祭の案内状がきても問題がないように事前知識をしっかり身に着け準備をしておくといいでしょう。まったく知識なく準備不足で参列することになれば、マナーにも不安が残りうまくいかないこともあるかもしれません。そうならないためにも服装やしきたりのマナーなどはきちんと把握し、事前準備をしっかりしておくことをお勧めします。