「ノマド」の意味とは
近年はインターネットの普及によって人々の生活の仕方が大きく変わりました。そして働き方もより自由になり、時間と場所にとらわれない「ノマドワーカー」と呼ばれる人たちが増えてきています。
今回の記事では、「そもそもノマドワーカーとは?」という人に向けてその意味、メリットやデメリットなどについてお伝えしていきます。
本来は遊牧民や放浪者を意味する
まず現代の「ノマドワーカー」について解説していく前に、「ノマド」という単語の元々の意味についてここで補足しておきます。
ノマドというのは英語で「nomad」という綴りで、本来は「遊牧民」や「放浪者」という意味を持つ言葉です。もともと人類が定住する前は常に移動しながら暮らしていたため、そういった居住地を固定しない生活スタイルのことを指すのが「ノマド」という単語です。
そこから転じて近年では、時間や場所などにとらわれずに働く人やそのような働き方に対して「ノマド」という言葉が使われるようになりました。ノマドという言葉自体はこのように古くから存在していたものですが、ノマド的な働き方が注目されたのはここ10年ほどです。
ノマドワーカーの働き方
そんなノマドワーカーの働き方について、ここからさらに掘り下げてお伝えしていきます。ノマドワーカーは一般的な会社員とは異なり特定の職場を持たないため、基本的には常に移動しながら仕事をします。
ノマドワーカーといってもその実態は様々で、会社に一応オフィスやデスクはあるもののそこに縛られずに仕事をするという働き方の人もいれば、全くオフィスやデスクも持たない人、会社員としての身分も持たない自営業的なスタイルの働き方の人などがいます。
時間や場所を気にせず働く人を意味する
それらのノマドワーカに共通することは、「時間や場所を気にせず働く」という点です。ノマドワーカーはインターネットのおかげで特定の場所や時間に集まらなくても仕事が成立するようになったのです。
そのため、例えば旅行先などで仕事をしたり、育児や家事の合間に家で仕事をしたりと多様な働き方が可能になりました。いわば働き方のパラダイムシフトが起きた結果がノマドワーカーと呼ばれる人の誕生なのです。
もちろん、仕事量が減るわけではないので総合での労働時間は変わるわけではありませんが、プライベートとの時間を柔軟に調節することによってより効率的なライフスタイルを確立することがノマドワーカーは可能になりました。
時には旅をしながらその片手間で仕事をするようなノマドワーカーもかなりたくさんいます。ノマドワーカーであれば時差も関係ないため、海外でも問題なく仕事を行うことが可能です。
以前はワーキングホリデーなどと称して旅行先で簡単な仕事を見つけて滞在費を稼ぐというスタイルが一般的でしたが、インターネットの普及によってわざわざ現地で仕事を探さなくても済む時代になりました。ノマドワーカーの中には、旅行ブログを書いて生計を立てている人もいるくらいです。
クラウドソーシングの影響
ノマドワーカー的な働き方が普及した要因として、「クラウドソーシング」と呼ばれるものがあります。クラウドソーシングというのは、オンライン上で仕事の募集をかけて求人をする掲示板のようなものです。
クラウドソーシングの仕事の内容のほとんどはオンライン上で完結するもので、仕事の受注者が自分が気に入ったものだけを選んで応募をかけることができるというのが特徴です。
したがって、クラウドソーシングのサービスを利用することで自分のスキルやライフスタイルに合った仕事の仕方を自分が好きな場所、時間で行いやすくなりノマドワーカー的な働き方をする人が急激に増えているのです。
ノマドワーカーのメリット
時間や場所に縛られないことは働き方を考える上で非常に大きな特徴です。そのため、ノマドワーカーのメリットは細かいところまで挙げていくと非常に数多くあります。
ここではそんなノマドワーカのメリットの中で代表的な「場所にとらわれない」「通勤のストレスがない」「自分のペースで仕事が可能」の3点について紹介していきます。
場所にとらわれない
まずノマドワーカーの一つ目のメリットは「場所にとらわれない」というものです。基本的にノマドの仕事とはインターネットを使えばその中で完結できるものが多いため、わざわざオフィスやデスクに出向いて仕事をしなくともよいのです。
そのため、例えばカフェであったり自宅であったりと、ネット環境がある場所であれば好きな場所で仕事を行うことが可能です。日によって違う場所で仕事をして気分転換をするということもできます。
したがって、毎日同じ場所で同じ人たちと顔を合わせて仕事をすることに対してマンネリ感や嫌気を感じる人はノマドワーカー的な働き方がおすすめできます。
通勤のストレスがない
ノマドワーカーの二つ目のメリットは、「通勤のストレスがない」という点です。場所や時間の制約がないということは無理に通勤ラッシュの時間帯に移動をする必要もないのです。
もちろん、自宅だと仕事に集中できないという人はカフェなどに移動することはあるでしょうが、その移動する時間帯や場所も自由に選べるというメリットを享受できるのがノマドワーカーなのです。
したがって、日々の通勤ラッシュの中で消耗して嫌気がさしているという方にもノマドの働き方はおすすめすることができます。
自分のペースで仕事が可能
ノマドワーカーの三つ目のメリットは「自分のペースで仕事が可能」という点です。もちろんノマドワーカーと言えど社会人で仕事をしているわけなので納期などを守るということはありますが、働く時間や場所自体は自由です。
そのため、例えば育児などがある場合はその時間の前後で仕事をすることが可能です。また、朝にどうしても弱いという人でも無理して早起きする必要はなく、少し仕事の時間を遅めにずらせばいいだけなのです。
ノマドワーカーのデメリット
ここまで説明してきたようにメリットがたくさんあるノマドワーカーの働き方ですが、デメリットが決してないわけではありません。そのため、ノマドワーカーの働き方が向いていない人というのも実は存在します。
ノマドワーカー的な働き方が注目されるようになり以前よりも広まった現在でもなお、レガシーな正社員的な働き方が依然として圧倒的に多いのはそのデメリットによるところがあります。
ここではそんなノマドワーカーのデメリットの中で「寂しい」「自分で自分を律する」「税金関係を全て自分でやる」の三つを紹介していきます。
寂しい
まずノマドワーカーのデメリットの一つ目は「寂しい」という点です。ノマドワーカーは働く場所も時間も自由な分、逆に言えばそれだけ他の上司や同僚とも顔を合わせて会う機会が減るということになるのです。
したがって、普通の会社員のようにオフィスやデスクに行けば必ず誰かしらがいるといった安心感をノマドワーカーは感じにくいのです。もちろんノマドワーカーも人脈や人とのつながりは仕事上あるのですが、すぐ隣に同僚がいる安心感には到底届きえないものがあります。
このデメリットを克服するためにノマドワーカーによっては、フリーの人同士で集まるコミュニティを持っている人もいます。しかし同じ目標や仕事を共有できる人は少ないため、やや寂しさは残るかもしれません。
また、人とのつながりが感じにくいというところで言うと単に寂しいというだけでなく人脈を作るのにも一工夫いるという点もあります。
会社員であれば大体の組織像さえ分かっていれば自分からコンタクトを取るのも簡単で、また必要に応じて人を紹介してもらいやすい側面がありました。しかしノマドワーカーで中々顔を合わせる機会がないという場合はうまく工夫していかないと人脈も広がらないというのが大変なところです。
幸いなことに今はSNSがあるので、そういった仕事以外での自己発信などもノマドワーカーとして求められる資質とも言えます。
自分で自分を律する
ノマドワーカーの二つ目のデメリットは、「自分で自分を律する」必要があるという点です。ノマドワーカーはとにかく場所的にも時間的にも自由ですが、それでも仕事をしなくてよいということはありません。つまり、自分をセルフコントロールして仕事をすることが必須なのです。
会社員であれば嫌でも定時にオフィスに出勤してデスクで打刻するのが日課であるため、そこで仕事のスイッチを入れやすい側面があります。しかしノマドワーカーは周りに同僚や上司もいないため自分で集中できる環境を作る必要があるのです。
また、ノマドワーカーも人ですから、どうしても仕事をする気になれないほど落ち込んでいるときもあるかと思われます。そんな時でも最低限のパフォーマンスは発揮するために、モチベーションやコンディションを維持する方法はストックしておくのがベターです。
税金関係を全て自分でやる
ノマドワーカーの三つ目のデメリットは、「税金関係を全て自分でやる」必要があるという点です。会社員であれば勝手に給与から天引きされるため税金関係を意識しなくても純粋に専門の仕事だけをしていれば給料は入ってきます。しかし、ノマドワーカーの中でもフリーランスの人の場合はそれらの税金関係のことも仕事のうちなのです。
そのため、ノマドワーカーになって自由な働き方が出来ると思っても意外と雑務が増えてしまうというケースは多々あります。そういった雑務をやりたくないという人は案外会社員の方が向いている可能性は大きいです。
また、ノマドワーカーの中でも何らかの組織に属したり派遣という形で仕事を請け負っている場合は税金等の手続きをやらなくても済む場合があります。さらに、完全にフリーであっても税理士などに外注して煩雑な手続きを自分ではやらないという選択肢もあります。
つまり、税金などの手続きを全て自分でやる必要があるというデメリットに関しては工夫次第で解消することも可能なのです。
ノマドとフリーランスの違い
ノマドが場所や時間に縛られない働き方の文脈でよく話題として挙がるようになりましたが、同じような話の流れで「フリーランス」も自由な働き方として紹介されることの多い単語です。しかし、この両者は言葉の響きは似ているのですが厳密な意味で言えば異なるものです。
また、最近ではノマドという単語は単に働き方を指すだけではなく生き方やライフスタイルそのものも示すようになりました。例えば一か所に定住せずに生活拠点を転々としながら暮らすなど、移動的な生活の仕方全体を指すこともあるようです。
ここではそんなノマドと混同されやすい「フリーランス」という言葉の意味とその働き方について詳しくお伝えしていきます。
フリーランスの意味とは
「フリーランス」という言葉はノマドと混同されやすく、時には同じような意味で使われるケースもあります。しかし厳密には、ノマドの方がより広義でフリーランス以外の働き方も含む概念です。
フリーランスもノマドと同じように場所や時間にとらわれない働き方をしている人が多いですが、それがフリーランスの必要十分条件というわけでは決してありません。フリーランスであっても顧客先のオフィスに行って働いたりと時間や場所的にそれほど自由でないケースもなくはないからです。
意味:会社に属さないで働くこと
フリーランスというのは、どちらかというと「会社に属さないで働く」という雇用形態に関する意味合いの方が強い言葉です。もちろん会社に属さないということはそれだけ場所や時間の制約もなくしやすいですが、そこが元々のフリーランスの意味ではないのです。
フリーランスというのは一昔前のような表現をすれば自営業的な働き方とも言えます。したがって、チェーンでない飲食店やアパレルショップの店長なども言ってしまえばフリーランスとなるのです。そのように店舗やオフィスをフリーランスで構えてしまうと場所的な制約というのはどうしても発生してしまいます。
ただし最近はインターネットの普及によってオンライン上で出来るような仕事、専門職というのは大幅に増えました。そのため、例えばデザイナーなどのクリエイティブ系のフリーランスは結果としてノマド的な働き方をしていると言えます。
「ノマド」は放浪者を意味する言葉
今回の記事ではノマドワーカーの働き方やメリット、デメリット、フリーランスとの違いなどについて解説してきました。
元々ノマドという言葉は放浪者を意味する言葉だったのが転じて時間や場所にとらわれない自由な働き方を指し示す言葉として注目を集めるようになりました。ノマドワーカーというのは自由な分、責任とスキル、要領の良さも求められる働き方です。
そんなノマドワーカーの特性をよく理解したうえで戦略を立てることで、自分の理想に近い働き方をノマドワーカーとして実現することも可能かもしれません。