「リビドー」の意味や使い方を詳しく解説!心理学的な5つの発達段階とは?

「リビドー」の意味や使い方を詳しく解説!心理学的な5つの発達段階とは?

聞きなれないリビドーという言葉。その意味や使い方、類義語、対義語を紹介しています。また、リビドーの発達についても紹介しています。リビドーという言葉の意味や使い方を知ることで、心の健康や人間関係など日常生活に活かせるよう詳しく説明します。

記事の目次

  1. 1.「リビドー」の意味
  2. 2.「リビドー」の類義語と意味
  3. 3.「リビドー」の対義語と意味
  4. 4.「リビドー」の使い方と例文
  5. 5.「リビドー」の心理学的5つの発達段階
  6. 6.「リビドー」は強い欲望を意味する

「リビドー」の意味

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「リビドー」という言葉。日常場面での使い方は?と考えると使われることがあまりない言葉になります。「リビドー」とは精神科医のジークムント・フロイトが提唱した概念になります。ですから精神医学や心理学の世界で使われる専門用語になります。

専門用語ではありますが、「リビドー」という言葉の意味や使い方を詳しく知ることで自分の精神的な健康に役立てることができたり、日常生活場面を違った観点から見つめることが出来ることに役立ちます。

心理学や精神医学の専門用語ではありますが、「リビドー」という言葉の意味や使い方を詳しく知り、心の健康や人間関係に役立てたり、日常生活に活かしてみてください。

ラテン語で強い欲望を意味する

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リビドーという言葉のラテン語の意味は簡単にいうと「強い欲望」を意味します。しかし、さらに深く探ってゆくと、もともとはリベットという「好ましい」「気にいる」という意味の言葉になります。

また形容詞であればリベンスで「喜び」や「楽しみ」という意味になります。リベットという言葉からはローマ神話の女神という言葉の元にもなり、「欲望」や「願望」という意味合い持つようになります。そこから「リビドー」の意味が生まれてきたのです。

フロイトが意味した「リビドー」とは

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フロイトはリビドーをただ一般的に私たちが考える「性的欲望」のような意味として捉えた使い方をしていませんでした。もう少し違うエネルギーとして意味づけていたのです。

フロイトはリビドーを例えて「飢餓」状態の時に「とにかく食べたい!食べなければ!」と食べ物を摂取しようとする衝動と同じエネルギーの意味を持つ使い方をするものだと説明しています。それは命を守ろうとする衝動であり本能のエネルギーを意味するのです。

そのような性的エネルギーを指す、と言っています。つまり人間に生まれつき備わった本能のエネルギーをリビドーと捉えました。思春期に突然現れるような性的エネルギーを指すものではないのです。一般的に使われがちな性的欲求という意味ではなく、またそのような使い方をしていないのです。

「リビドー」の類義語と意味

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「リビドー」という言葉の類義語とはどのようなものになるのでしょうか。「リビドー」の類義語として「本能」「衝動」「欲求」という言葉があります。「リビドー」という言葉とはどのように違う意味を持つ類義語になるのでしょうか。くわしく説明します。

①本能

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リビドーの類義語となる本能。本能とは生まれつき人も持っているもので、本能はある行動へと駆り立てる性質をさすとされています。ただ、使う分野によって様々な「本能」があり、意味が変わるのであまり使われなくなってきている概念でもあります。

リビドーは本能の衝動エネルギーのひとつとフロイトは言っているだけで「本能」と「リビドー」はまったく別の類義として捉え使い方も心理学的にも違います。本能はあくまでも類義語であり、まったく別の意味合いを持つものです。

②衝動

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リビドーの類義語の「衝動」という言葉。衝動とは反省やためらいなどで抑えようがない心をつよく突き動かされて行動してしまう、そんな動きを指した意味を持ちます。リビドーとも似た言葉ではありますが、やはり意味は違う類義になります。リビドーは生まれつきにそなわった性的エネルギーであり、本能のエネルギーです。こちらもあくまでも類義語です。

リビドーによって突き動かされて行動する衝動的な行いで問題になると心理的に支障が生じ、精神症状として治療の対象になる、と心理学や精神医学の分野では考えられていました。

現在はこのフロイトの理論を基に様々な理論が打ち立てられ、治療に役立てられています。フロイトの娘であるアンナフロイトも父の理論を基に子供の発達の理論を打ち立てたり、様々な児童精神分析医や精神科医がこの理論をもとに新しい理論を生み出してきました。

③欲求

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欲求は日常的な言葉では「何かを求めること」という意味になります。心理学や精神医学的には人を行動に動かしてゆく肉体的、精神的な要因をさします。たとえば命を保つためには水分が必要で、水分を求める欲求が人には生まれつきあります。人が生物として精神的健康を保つためは、一定の条件が必要です。

欲求はこのように広い意味をもつ言葉でリビドーの類義語ではあっても心理学的にも意味は違います。リビドーとも関わりがある言葉ですが、似たような言葉である類義語でしかなく、リビドーと意味は違うものになります。

「リビドー」の対義語と意味

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それではフロイトが提唱した「リビドー」に対義語、つまり反対の意味をもつ言葉はあるのでしょうか。リビドーというエネルギーを表しているような言葉。そのリビドーに対義語があるとしたら、どのような言葉になるのでしょうか。

デストルドー

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リビドーの対義語としてよくあげられているのが「デストルドー」という言葉。この言葉は「タナトス」の言い換えであり、正確な対義語ではありません。ただリビドーの対義語として「デストルドー」という言葉があげられていることも多いです。なぜ対義語としてあげられるのでしょうか。

リビドーの正しい対義語とは

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フロイトの理論は経過と共に変化してゆくのですが、最初の頃の意味合いとしてはリビドーは対象、つまり何かに向かっていくエネルギー。対義語としては「自我欲動」簡単に言うと自己に向かうエネルギーとして捉えていました。次に説明する生のエネルギーの意味するエロスと死のエネルギーを意味するタナトスに通じてゆく概念です。

「リビドー」と「エロス」と「タナトス」

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エロスとタナトスという言葉は映画などでもテーマになっています。エロスと聞くと「性」というイメージなので、リビドーに結びつき、デストルドー(タナトス)という言葉が対義語と誤解されやすいのかもしれません。しかし、実際は「生の本能」「死の本能」といわれるものになります。エロス=リビドーでもなくデストルドーは対義語ではありません。

生の本能は生きるエネルギー。物事を成長させ大きく発展させるような生のエネルギーです。死の本能は自己破壊のエネルギー。お互いが対義語です。この概念をフロイトが考え出した当時、世界は第一次世界大戦中で、人の破壊的な力を痛烈に感じていました。

フロイトは自己破壊する本能をもつ人を戦争に感じていたのかもしれません。どんなに抗っても人は死から逃れられない。人は成長と発展を遂げようとしながら、それが人を苦しめてもいる社会の人間のありように人の中の生の本能と死の本能をみたのです。

「リビドー」の使い方と例文

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リビドーという言葉ですが、一般的に利用される場合「性的欲求」として使われています。この言葉を考え出したフロイトはそのような意味で使ったわけではなく、生まれつきそなわった性のエネルギーを指す広い意味で捉えていました。

リビドーは生まれつき人の中に存在するものであり、思春期になって突然出現するものではないとフロイトは考えていたのです。生まれたばかりの赤ちゃんは口の部位にリビドーがはたらくと考えていたのも、そのためです。

一般的に「リビドー」という言葉は「性的欲求」として使われるのですが、どのような場面でどのように使われているかを例文をまじえて詳しく説明したいと思います。

①リビドー減退

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この「リビドー減退」という言葉ですが、リビドーが他の単語と組み合わさり作られた言葉になります。「リビドー減退」とは性欲が減ってしまうことを意味します。例文を見てみます。

「仕事が多忙で抑うつ的になりリビドー減退の状態だ。」という文や「副作用でリビドー減退の状態が見られたのは50例中10例だった。」という文が例文になります。

このように「リビドー減退」という言葉が「性欲が減ってしまう」という意味で使われ、医学や研究の分野でよく使われます。やはり一般的にはあまり目にしたり、聞かれる言葉ではありません。

②男性の性的欲望を軽蔑する意味

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「リビドー」という言葉ですが、実は男性の性的な欲望のあり方を軽蔑する言葉としても使われることがああります。

例文をあげてみます。「リビドーのおもむくままに女性を求めながらも、結局、最期には女性に捨てられるというみじめな結末を迎えるのだった。」という文。男性に対する軽蔑のニュアンスが含まれる文です。

フロイトは女性は男性になりたいという願望を持つところから女性へと変化してゆくと理論づけるなど、男性優位な説を立てているとフェミニストには嫌われがちです。そんなフロイトのリビドーという言葉が男性の性的欲望のあり方を蔑視する言葉として使われるようになったのはどこか皮肉なものです。

「リビドー」の心理学的5つの発達段階

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リビドーには5つの発達段階があるとフロイトは考えました。この発達がうまくゆかずとどまってしまうと、様々な精神症状が現れたり、性的な異常が出現すると考えたのです。発達の順番は口唇期、肛門期、男根期、潜在機、性器期の順で発達すると考えられているのです。心理学の世界では有名な理論です。

①口唇期

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誕生から1歳半ぐらいまでを口唇期とフロイトは考えました。この時期の新生児、乳幼児には乳房は命をつなぐ為にも非常に重要な意味をもつ存在。その乳房を吸うことで欲求が充足されます。こうして人にとってはじめての性生活全体の出発点となるのです。そして次の発達の準備もはじまってゆきます。

乳幼児にとって必要な時にいつも乳房を与えられるとは限りません。そんな時に現れるのが指しゃぶりになります。こうして自分の身体の部位に気づくようになり、乳幼児は自分の身体を発見し、次の段階に移ってゆきます。

口唇期を充分に満足できることで、キスなどの行為に快感を得るところに到達します。逆にこの段階に滞りがあると、摂食障害などの問題が起きやすいと考えたのです。

②肛門期

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二歳から四歳ぐらいまでの時期になります。肛門期で大切なのはトイレットトレーニング。排便、排尿がうまくコントロールできると親から非常に褒められます。しかし本人は自分の好きなときにトイレをしたいし、トイレをすることでスッキリする快感を得たいと思っています。自分の欲求と親から求められる規範の間で揺れ動く時期になります。

親の要求に応じないということで排便を出し惜しみするというところから、この時期につまづきがあるとケチになる、などと言われています。

③男根期

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この時期は4歳から6歳くらいまでといわれています。よく聞かれる「エディプスコンプレックス」がおこるエディプス期と言われる時期でもあります。男性と女性の性の違いにはじめて気づき、性欲というよりも純粋に何か気持ちいい感じがする、ということで男の子はとくに性器いじりがはじまる時期になります。

この時期になり人間関係は母と子の二者関係から三者関係へと変化する重要な意味をもつ時期になります。母をめぐり父と争い、女の子は父をめぐり母と争うと言われています。この時期をうまく乗り越えられないとマザコン、ファザコンになると言われています。

④潜在期

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6、7歳から12、3歳までの時期を言います。リビドーは潜伏して隠れているかのように表には出てきません。子どもたちは家庭の外の集団や仲間との関わり合いに興味をもち、参加し、社会的な成長を遂げてゆきます。

もちろんその間にもリビドーは潜伏しつつも、性の気づき、恥じらいなどの成長があります。着替えも男女別にしたくなったり、異性の親と一緒に入浴はイヤになったりします。

⑤性器期

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12、3歳から14、5歳の時期と言われています。思春期と言われる時期です。身体的、精神的発達が著しい時期です。身体と心のバランスも崩しやすい時期でもあります。一般的にいう性に目覚める時期です。同時に両親からの自立がテーマになり、母親、父親から脱し、初恋など異性への愛情へ向かう時期でもあります。

エディプスコンプレックス期のテーマが再度、浮上してきます。反抗期も異性の親への激しい拒否感も全て意味があるものであることが分かります。このような時期を経てはじめて成熟した性愛関係に飛び込む基礎が出来あがる意味がある時期とフロイトは考えました。

転移という人間関係

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この父親や母親と関係がうまくゆかないと人間関係にその支障が現れてくる、という現象を説明するときに使われる「転移」という概念があります。陽性転移と陰性転移という対義語になる転移があります。

幼い頃の重要な存在である人物とどこか似ている人と出逢ったとき、重要な人物との関係が重要人物と似ている人との関係で繰り返されます。フロイト的に言うならば母親との関係に何か支障があるならば繰り返し母親のようなかなり年上の人に恋愛感情を抱いたり、あるいは女性に対し拒否的になってしまう、などです。

好ましい人間関係を繰り返すのなら「陽性転移」、憎しみや怒りなどマイナスな感情に結び付くようなら「陰性転移」です。例えると権威ある人物に必ずくってかかりトラブルになる、というのは陰性転移。母性的な人にうちとけやすいならば陽性転移です。

リビドーの発達理論から児童精神分析理論の流れへ

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このフロイトのリビドー理論はその後の児童精神分析医たちに引き継がれる心理学的にも精神医学的にも意味ある理論でした。そして後世の心に傷をおった子どもたちの治療に役立てられてゆく理論を生み出すという非常に意味あるものだったのです。

末娘のアンナフロイトはフロイトの後継者であり、その理論をさらに発展させます。その弟子たちも同様です。その中のひとりメラニークラインの考えた概念がアニメ「エヴァンゲリオン」にも使われたこともあります。フロイトの時代は性に関してかなり抑圧的な社会だったので、心理学的に合う理論であったことは確かです。

また精神分析を利用した社会分析をこころみたエーリッヒフロムの「自由からの逃走」などもあります。難解な面もある精神分析。しかし様々な面で意味ある理論として引き継がれています。

「リビドー」は強い欲望を意味する

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リビドーは強い欲望、つまり人が生まれつきもつ性を突き動かすエネルギーを意味していました。日常的に聞かれる使い方と心理学や精神医学の分野で使われる使い方とはまったく別の意味をもっていました。本能や衝動や欲望などの類義語も同じ意味のように誤解されがちです。精神分析は性欲を理論の上で重要な位置に置くため支持を得にくい面がありました。

しかし、その後の理論の発展には欠かせない基礎をつみあげました。リビドーの発達は人が人とどう関係を発達させるか、という研究に発展してゆきました。

また、フロイトと決別したユングもリビドーを性だけではなく生のエネルギーととらえ重篤な精神の病いにおかされた患者たちを救う理論に使いました。リビドーという不思議なエネルギー。誰の心の中にも存在しているものです。プラスの力に使ってゆきたいものです。

henagaeru
ライター

henagaeru

読書と散歩と映画と音楽がすきな主婦です。

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