「能動的」の意味
「もっと能動的に行動しなさい!」と、注意をされた経験のある人は多いのではないでしょうか。では「能動的」とはどのような意味なのでしょう。
英語のアクティブと考えた方がイメージしやすいかも知れません。しかし「能動的」の意味を日本語で正しく解釈していないと、間違った使い方をしてしまうかも知れません。
「能動的」の意味を辞書で引くと「自分から他へ積極的に働きかけるさま」「自分から働きかけ他に影響を与えるさま」などと出てきます。
字面(じずら)で解釈すると「能」は「能力」「技能」「効能」などの熟語に使われように「はたらき」「ききめ」「スキル」という意味です。
「能動」を字面直訳すると「能」が動くのですから「はたらきのある動き」「効き目のある行動」となります。
これに接尾辞「的」が付いた「能動的」の意味は「行動に、働きや効き目があるさま」となることから「自分から働きかけ他に影響を与えるさま」の意味が導き出されます。
自分から相手側に積極的に干渉すること
「能動的」の意味をネット等で検索すると、「自分から相手側に積極的に干渉すること」と出てくることがあります。ここで注意しなければならないのは「干渉(かんしょう)」という言葉です。
「干渉」には、水の干渉のように、2種類の波が重なって互いに強め合ったり弱めあったりする効果、という意味があります。この意味では「能動的」の「他に影響を与える」という点で一致しています。
しかし「干渉」にはもう一つの意味「他人のことに立ち入って自分の意思に従わせようとすること」があります。
「能動的」の「他に影響を与える」「積極的に立ち入る」は悪意を持たない前向きの行動です。決して「他に立ち入って意志に従わせる」「無理に立ち入って邪魔をする」ような悪意的な後ろ向きな行動ではありません。
「干渉」の意味を悪意を含んだネガティブな積極性と、本来ポジティブな意味の「積極的に影響を与える」を取違えて誤解すると逆効果となり、とんでもないことになってしまいます。「能動的」の意味を解釈する際には「干渉」という言葉を含めないほうが無難かも知れません。
「能動的」の類語
「能動的」とは、自分から物事に積極的にアプローチをして取り組む姿勢のことです。「能動的」の類語とは、この姿勢と似たような意味を持つ言葉のことです。
類語には似たもの同士の意味や使い方を比べることで、本来の意味がより鮮明に理解できるという効果があります。「能動的」をより深く解釈するためにも、類語を調べる価値があります。
また類語は、少し考えただけでも沢山浮かんできます。自分なりに類語を見つけてみるのも面白いかも知れません。それでは沢山ある類語の中から代表的なものを選んで、意味や使い方、例文も合せて紹介します。
行動的
類語の「行動的」には「すぐに行動に移すさま」「活発に行動すること」「ハツラツと動くさま」などの意味があります。英語の表現では「active(アクティブ)」がこの意味に相当します。
「能動的」の意味には「積極的に行動しよう」という精神的な心の意志も含んでいます。それに対し「行動的」は物理的な動きそのものが、活発で元気ハツラツとしている状態を表現しています。
例文にすると「彼の仕事のスピードの早さは、行動的そのもの」「彼女がスポーツをする時の動きは、いつも行動的で気持ちがよい」のようになります。
この例文の「行動的」の替わりに「能動的」を入れると文章として意味が成立しません。つまり「能動的」は精神的な要素も含んでいるので、動きのさまをストレートに表現している類語の「行動的」とは使い方や意味に若干の違いがあります。
実効的
「能動的」の類語に「実効的」があります。「実効(じっこう)」とは「実行(じっこう)」と読み方が同じで混同しやすいのですが、意味は違います。
「実行」は実際に行動するという意味ですが、「実効」は実際の効果、実際の効き目という意味なので、「実効的」は「実際に効き目のあるさま」という意味になります。
「能動的」の類語としては、少し異質な感じがあります。確かに「能動的」には「他に影響を与える」という一面があるので、影響を与えた結果で効果がある、または行動そのものに実効があるとも言えますが、「能動的」とは関連性が少し薄い類語ではないでしょうか。
積極的
類語の「積極的」とは「物事を自ら進んで行う様子」という意味で、能動的と非常に良く似ています。
例文では「彼女の仕事に取組む姿勢は、いつも積極的で素晴らしい」「彼の積極的な態度は、見ていて気持ちがいい」「積極的な行動のお陰で、輝かしい成果が得られた」のような使い方をします。
例文の中の「積極的」を「能動的」に置換えても文章に違和感はありません。ただ能動的には「他に働きかける」「他に影響を与える」という面があります。「積極的」にはこの要素が少し欠けているかも知れません。
これまで3つの類語を紹介しました。類語の意味や使い方を「能動的」と比べることで、本来の意味が少し深まったのではないでしょうか。
類語はこの他に「自発的」「主体的」「活動的」など色々とあります。参考になることや新しい発見があるかも知れません。積極的に、類語を調べることにトライしてみて下さい。
「能動的」の対義語
対義語とは反対の意味を持つ言葉のことです。「能動的」とは、自ら進んで働きかけ、積極的に行動すること、また働きかけることにより何らかの影響を与えるさまです。
「能動的」の対義語は積極的の反対の意味を持つことです。つまり受身の行動や待受ける態勢を表現する言葉になるので、「消極的」や「受動的」などが対義語に相当します。
対義語には類語と同様に、元となる言葉本来の意味を際立たせる効果があります。濃い茶色の紙に黒い文字を書いても目立ちません。白地に黒で文字を書いたほうが際立ってハッキリと読めます。
対義語とは白紙に黒い墨で文字を書いたようなものです。対義語という反対の意味の言葉を知ることで、「能動的」本来の意味がハッキリと浮き出てきます。対義語を知ることの重要性はそこにあります。
意味を紹介する記事に、類語と対義語の解説が合せて出てくるのは、理解を助ける対比の効果を狙っているからです。それでは「能動的」の対義語の意味と使い方を紹介します。
受動的
「受動的」という対義語の意味は、自分の意志ではなく「相手の意志、または何らかの働きかけによって動くこと」です。
例えば健康の話題によく出てくる「受動喫煙」というフレーズがあります。「受動喫煙」とは、自分ではタバコを吸わないけれど、周りの人が吸ったタバコの煙を受動的に吸ってしまうことです。
会社で上司の命令や指示で仕方なく行う仕事は、ほとんどの場合自分の意志ではないので受動的と言えます。
また仲間とお昼を食べに行ってメニューを選ぶとき、自分は決めかねていたけれど皆んなが「ラーメンにしよう」と言ったので自分もラーメンに決めた場合も、他の動きに合せた行動なので「受動的」と言えます。
しかしこの場合でも「ラーメンにしてよかった、美味しかった」と言う自分がどこかにいるのではないでしょうか。上司の命令でする仕事でも全くやる気が出ないわけではありません。
受動喫煙でも。タバコが嫌いなら、その場所に行かなければ良いだけです。つまり完全な「受動」はあり得ないのかも知れません。
自分は「受動的」で「消極的」だと悩んでいる方がいるとすれば、ポジティブに「完全な受動的はないはず」「受身の自分にも少しは能動的な部分があるはず」「ゲームをしてる時はあれだけ集中して積極的にやっているじゃないか」と前向きに考えることで、悩みは薄れるかも知れません。
「能動的」の使い方
「能動的」の意味は理解できても、使い方が分からなければ実際の行動には繫がりません。では「能動的」という言葉は、どのような場合にどのように使えば良いのでしょう。
まず使う場面と使う対象を考えることが大切です。例えば自分の同僚の中で、いつも仕事に前向きで積極的な発言をするので、スゴイと感じる人がいたならば「彼は能動的な発言をするので、私はいつも元気づけられる」「彼女の行動はいつも能動的なので、私もやらなきゃという勇気をもらいます」のような使い方をします。
自発的に行動できる人に対して使う
つまり「能動的」の対象になる人とは、「自発的な行動で何らかの影響を他に与える人」のことです。
また次のようなケースがあります。自分が困っているときに、そっと脇からサポートしてくれる人がいます。「そっと脇から助言やサポートをする」とは、自らの意志で自発的に行動することで、結果として相手に影響を与えることになり「能動的」といえます。
このような場合は「彼女のサポートはいつも能動的なので、大いに私は助けられています」「彼はいつも自発的に助言をしてくれるので、能動的な人だと思います」のように使います。このように「能動的」という言葉は「自発的に行動できる人」に対して多く使われる言葉です。
能動的と主体的の違い
「能動的」と非常によく似た意味を持つ類語に「主体的」があります。「主体的」には「能動的」と使い方や意味に違いがあるのでしょうか。
どちらの言葉も「自ら進んで積極的に行動するさま」を表していることから同じような使い方をして混同しがちですが、実際には根本的な違いがあります。それでは、その違いを本来の正しい意味や使い方から検証してみましょう。
主体的の意味とは
「主体的」の意味を「自ら進んで積極的に行動するさま」と表現すると「能動的」と全く変らないのですが、「主体的」の場合「進んで行う行動や思考」が他のものによって導き出されたものでなく、自分の意志や判断による行動であることに重きが置かれています。
つまり思考や行動の中心には「常に自分の存在」があるところが「能動的」と違う点です。「能動的」の場合は行動の中心が「自分」であることよりも「行動に対する姿勢や意欲」に重点が置かれています。一方「主体的」は「自分」の行動が中心(原動力)であることを強調している言葉です。
活動等をする時に主体となって働くこと
例えば「今回のプロジェクトは、彼が主体となって進行している」「このチームが試合で勝ち進んでいる要因は、彼女が主体的な原動力になっているのが大きい」のように、行動の中心になっている対象や人に対して使われます。つまり「主体的に行動する」とは「活動等をする時に主体(中心)となって働くこと」です。
能動的に行動するためにやるべきこと
「もっと能動的に主体的に行動しなさい」とは会社や学校でよく注意される言葉です。また能動的な人は会社の中では重視されます。プライベートでも能動的な人は頼りにされます。
もっと能動的に、主体的に行動したいと思う人は多いのではないでしょうか。能動的に行動するためには、一体どんなことをすれば良いのでしょう。そんな行動のキッカケになる具体的な「やるべきこと」を紹介します。
自分の頭で考える
「自分の頭で考える」とは、簡単なようで実は非常に難しいことです。人から言われた通りに動くことは、多少嫌なことでも心理的には非常に楽です。何故なら責任は、指示した人にあるからです。
だから大抵の場合は自分で考えずに、指示した人の意見に従うことが多いのです。ところが自分の頭で考え、自分の意志で行動した場合には、成功すれば賞賛されるけれど失敗すれば叩かれます。責任は全て自分にかかってくるので臆病になってしまいます。
臆病を克服するためには、指示された仕事や意見を鵜呑みにして行動する前に、何故この仕事が与えられたのか、この仕事にはどんな意味があるのかを、自分の中で考えてから行動に移す習慣をつけることです。
それを繰返すうちに自発的なアイデアや考えが次第に生まれるようになって行きます。言われた通りに行動する前に「自分の頭で考える」習慣を付けることが「能動的」な行動に繫がるキッカケになります。
先読み
次にやるべきことは「先読み」です。能動的に行動するためには「先読み」は重要な要素になります。例えば社内会議が開かれた場合、その会議が何の目的のために開催されたのかを理解していなければ、能動的な意見は出てきません。
会議の目的のために、どのような意見が出て結論をどこへ導くのがベストかを、予想することが「先読み」です。この「先読み」力を付けるには、常日頃から相手の話の内容を良く聞き、何を伝えたいかを理解する習慣をつけることです。先読み力が付いてくると、予想される展開に先に手を打つ意見を発進できるようになり、能動的な人という評価が得られます。
行動に移す
能動的な人とは、何事にも自分の意志でアクティブに行動し、ポジティブに挑戦する気力のある人です。能動的な人に近づくための「やるべきこと」第3弾は、失敗を恐れずに「とにかく行動してみる」ことです。
例え失敗しても「失敗は成功のもと」「失敗を糧(かて)にして乗り越えよう」とポジティブに考え落込まないことです。このポジティブ思考が「能動的」な行動をするための近道です。
目標をしっかり持つ
人間は目標を持たないと、なかなかモチベーションが高まりません。「能動的な人になりたい」も目標のひとつです。しかし最初から「能動的な人」と難しい目標を掲げる必要はありません。目標は何でも良いのです。目標を持つ習慣をつけることが大切なのです。
消極的で主体性がないと思っている人でも、好きなことや得意なことは必ず1つはあります。ゲームなら今度は「第4ステージまでクリアしてやる」カラオケが好きな人なら「新曲を1つマスターしてやる」と最初は遊びでも、どんな場合にも目標を持つことです。
「能動的な人になりたい」という目標の場合には、今日は「相手の話を良く聞くようにしよう」「明日までに本を1冊読んでみよう」「少し自分の頭で考えてみよう」と小さな目標を、1つずつ立ててクリアして行くようにすれば良い結果につながります。
自分に自信を持つ
「自分に自信を持つ」ことは「能動的」に行動するための「やるべきこと」の中で最も重要なことです。自分に自信がなければ、能動的な行動や意見は出せません。
これまで紹介してきた「やるべきこと」は全て自信を持つための伏線と言っても過言ではありません。「自分の頭で考え」「先読み力を付け」「目標を持つ」これらを1つずつクリアした時の達成感が、自分に自信を付けることになります。
「能動的」の英語表現
「能動的」を英語ではどのように表現するのでしょう。「能動的」の英語表現を紹介する前に、日本語と英語の表現方法の違いをとらえておきましょう。
日本語には、漢字、カタカナ、平仮名の3種類があり、何千という数の文字で表現します。ところが英語はアルファベットのたった26文字で表現します。文字数の歴然とした差を考えただけで、表現方法に違いがあることが想像できます。
また漢字は象形文字に由来しているので、見ただけで何となく意味が伝わるという長所がありますが、反面同じ発音をする文字が多いため、会話では意味を誤解しやすいという弱点があります。
そのため日本語は「話し言葉」と「書き言葉」では表現がかなり違います。一方英語の場合は、会話でも文章でも発音による誤解はほとんどありません。英語と日本語の表現の違いをふまえた上で「能動的」の英語表現を解釈して下さい。
活発なことを表す英語
「能動的」を英語で表現する場合は「active(アクティブ)」という単語を使います。「active」は「活発な」「積極的な」「意欲的な」などの意味を持った形容詞です。
日本語の「能動的」の意味をすべて表しているとは言い切れませんが、かなり近い表現であることには違いありません。
例文で「She is very active.(彼女はとても活発です)」「I want to be active.(私は活躍したいです)」は活発なことをストレートに表現した言い回しです。
「take an active interest in〜(〜に進んで関わる)」は少し能動的に近い表現になっています。このように日本語の「能動的」を英語では、色々な文節や言い回しでニュアンスを伝えています。この他たくさんの例文があるので調べてみるのも良いでしょう。
「能動的」は自分から相手側に積極的に干渉すること
能動的とは「自分から他へ積極的に働きかけるさま」などの意味があること、また意味の中に含まれる「干渉する」という言葉の解釈と使い方には注意が必要なこと、能動的の類語や対義語の意味と効果、能動的に行動するためにやるべきことなどを紹介した来ました。これらを参考にして「能動的な人」と呼ばれるようにガンバッテ下さい。