エビデンスの意味とは?
「エビデンス」とは、「証拠」という意味です。英語の「evidence」が語源となっています。それならば「証拠」と表現すれば済みそうなものですが、日本の場合「証拠」というと警察や裁判でいうところの「証拠」のイメージが強いのが特徴です。
本質的には「エビデンス」と「証拠」は同じ意味であるのですが、ビジネスの業界で使われる「エビデンス」とは、証拠、根拠、証言、形跡などを意味し、一般用語として「エビデンス」が使われることはほとんどありません。「エビデンス」は、ビジネスの業界ごとに、学術用語や業界用語としてそれぞれに異なる意味を持って使われるのが実情です。
エビデンスの類義語
「エビデンス」が「証拠」という意味ですから、「エビデンス」の類義語は「証拠」の類義語が該当すると考えておけば間違いはありません。それぞれが指す意味は概ね同じ意味であり、ただ使われる業界が異なったりして射程圏が多少異なると理解しておけば十分です。以下では「エビデンス」の類義語の意味を確認しておきます。
類義語①証拠の意味
「証拠」とは、ある命題の真偽や存否を判断する根拠となるものを意味します。例えば、「Aは成人である」ということの証拠とは何でしょうか。一般的には、戸籍謄本や運転免許証などの公的機関が発行した書類が証拠となるでしょう。
「証拠」は刑事事件などのドラマで警察官や裁判官がよく使用する言葉であり、あまり日常では使われない言葉です。「証拠を見せて」というと少しキツい印象を与えます。したがって、日常では次に紹介する「根拠」を使うのが一般的です。
ちなみに、刑事裁判で使われる「証拠」ですが、これを細かく見てみると、「証拠書類」「証拠物」「人証(証人、鑑定人)」に分かれています。「書類」「人」「物」ですが、ビジネスの業界で使われる場合は、「書類」が多いのが特徴です。
類義語②根拠の意味
「根拠」とは「ある言動のよりどころ」を意味します。こちらも「エビデンス」の類義語に当たります。では、「証拠」と「根拠」の違いは何なのでしょうか。「証拠」があれば「ある命題が正しいか否か」「存在しているかどうか」がはっきりするわけですから、「証拠」は強力な存在であると言わざるをえません。
それに対し、「根拠」は「物事の拠り所、理由」です。つまり、「証拠」ほど強力ではありません。
例えば「Aが成人であることの根拠は何か」と問われたときに、運転免許証の記載が20歳になっていたというのは「根拠」であり「証拠」ですが、「Aが飲酒していた」のは「根拠」にはなっても「証拠」にはならないといえます。
類義語③証言の意味
「証言」とは「言葉である事実を証明すること。また、その言葉」を意味します。「証言」は「証拠」の一つの種類だと覚えておけばよいでしょう。「目撃者の証言が決め手となって容疑者逮捕につながった」などのニュースを聞くことがよくあるはずです。
「エビデンス」は、「証拠」となるものの種類を限定していませんので、人の言葉ももちろん「エビデンス」に該当しうるところですが、ビジネスで使われる「エビデンス」の意味はどちらかというと書類であったり物であったり、データであったりします。
人の言葉が信用されていないわけではないのでしょうが、ビジネスではより目に見える形でのよりどころが好まれる傾向にあるのでしょう。
類義語④物証の意味
「物証」とは「物的証拠」の略であり、「エビデンス(証拠)」のうち「物」に当たるものを意味します。証拠自体が主に警察や裁判等の業界で使用されるものであるので、「物証」もこれらの業界でもっぱら使用され、日常やビジネスで使用されることはそれほど多くありません。
なお、「証拠」のうち「物証」が最も重要で強力であるとされています。例えば「証言」は人の記憶によることがあるので、時の経過とともに変わる可能性がありますが、「物証」はそれがありません。
よく刑事事件で、「物証がないのに有罪にした」と報道されるのは、そのような確実な証拠がないのに有罪と判断したことを是非を問いかけるものであるといえます。
類義語⑤証明の意味
「証明」とは「ある事柄が事実又は審理であることを、理由や根拠に基づいて証拠立てること」を意味する類義語です。証明は特定の業界で使われるのではなく、日常でもビジネスの世界でも使用される言葉です。
ある事柄が正しいかどうかは主観的な評価が入る可能性がありますので、理由や根拠を持ちだすことによって正しいことを明らかにする必要があります。例えば、ある申請を行う際、要件に満たしていることを示す証明書類を添付させるケースがそれです。
類義語⑥ソースの意味
「ソース(source)」は「情報の源」という意味です。例えば日常会話では、「○○と△△が結婚したの知ってる?」「ソースはどこ?」「Yahooニュースに出てたよ」という使い方をします。
「エビデンス」と異なるのは、「ソース」はあくまで「ソース」でありそれが正しいかどうかを示すものではありません。一方、「エビデンス」は「証拠」ですから正しいことを示す情報でなければなりません。2人の結婚会見だとか婚姻届が「エビデンス」ということになるでしょう。
ただし、「ソース」自体が「エビデンス」となることもありますので、実際のケースでは両者の意味が微妙な場合もあることに注意が必要です。
エビデンスの使い方・例文
「エビデンス」の類義語の意味が分かったところで、ここからは「エビデンス」の使い方・例文について紹介します。普段使ったことがないと「エビデンス」という言葉を使いづらいかもしれません。ここではいくつか例文を示します。微妙な「エビデンス」の意味の違いにも気を配りつつ、使い方をマスターしてみてください。
例文①「具体的なエビデンスはあるのか?」
この「エビデンス」の使い方は、例えば「A社との共同プロジェクトを開始するという話を聞いたけど具体的なエビデンスはあるの?」「A社との契約書を締結しています」などと使われます。この場合の「エビデンス」は「証拠書類」という意味です。
また、「具体的なエビデンスを提出するようお願いします」という使い方もされます。手続きを行う場合に「証拠書類」とか「根拠書類」を出してくださいという意味です。銀行などの業界などでは、融資の可否を判断するための資料を「エビデンス」と呼んだりしています。
例文②「エビデンスに基づいた診療を行う」
この「エビデンス」の使い方は、主に医学の現場などで使われる例文です。この場合の「エビデンス」は「証拠」という意味よりも「科学的根拠」と理解されています。医学における「エビデンス」は、臨床結果であったり科学的なデータだったりします。それらがないとその治療法が正しいと評価されないからです。
正しくない治療法で治療しても患者が治癒されないかもしれません。場合によっては病気を悪化させてしまう恐れもあるでしょう。医学の世界で「エビデンス」は何より重視されるのはそのためです。
例文③「訪問先にエビデンスをしっかり残すようお願いします」
この「エビデンス」は、営業などの業種で使われる使い方です。このケースでは「証拠」というより「形跡」「痕跡」という意味がぴったりと合います。具体的には名刺を置くとか、書類を届けてくるとか、訪問先に伝言事項を伝えるなどの行為が「エビデンス」に当たります。
特に営業は顔を覚えてもらって、その後人間関係がつながることが大事とされています。営業での「エビデンス」というのはそういった営業先に「跡」を残す行為であると覚えておくとよいでしょう。
例文④「会議でエビデンスできるよう確認しておいてください」
この例文のように「エビデンスする」のような使い方をされる場合は、意味に注意が必要です。例えば「証拠する」のように訳しては一見して意味が通りません。このケースの「エビデンス」は、「証言」とか「証明」の意味で使われます。
ほかにも「エビデンスしてください」のように使われるケースがありますので、どういうことが求められているのか文脈から意味を理解する必要があります。
エビデンスの英語表記
「エビデンス」の英語表記は、最初に紹介したとおり「evidence」です。学校では高校1年生で習う英単語です。基本的には名詞としての「証拠」という意味で使いますが、動詞として「立証する」「証明する」という意味もあります。「明らかな」という意味である「evident」という形容詞もよく使用されます。
エビデンスの漢字
「エビデンス」は、上述のとおり英単語の「evidence」が語源であり、これをカタカナで表記したものです。したがって、「エビデンス」を漢字で表現することはありません。漢字で表現する必要がある場合は、類義語である「証拠」や「根拠」「証拠資料」といった言葉を文脈に応じて使用しましょう。
エビデンスは証拠書類という意味
「エビデンス」について紹介してきましたが、理解できたでしょうか。業界によって指す物や行動が異なるのは少し厄介ですが、基本は「証拠書類」という意味です。具体のシチュエーションに応じて意味を派生させて理解するようにしてみましょう。「エビデンス」を使えるとビジネスマンとして評価されるかもしれませんので、使えるようにしておきましょう。