「諭す」の意味
「諭す」という言葉は、「部下を諭す」「教授に諭される」などのような使い方がよくされますが、その意味を改めて考えてみると、意外にわからないものです。しかし、それではいけないので、詳しく意味を見てみましょう。
①言い聞かせ納得させる
「諭す」という言葉の意味を辞書で調べてみると、2つの意味が載っています。まず、第一の意味から解説しましょう。「諭す」とは、「目下の者にものの道理がわかるように言い聞かせる」ということです。目上ではなく目下という点がポイントです。
また、「納得するように教え導く」という意味でもあります。いずれにしろ、第一の意味は、目下の人を正しく指導するという感じです。
②神仏が啓示・警告し気づかせる
「諭す」の第二の意味は、「神仏が啓示・警告し気づかせる」ということです。この意味で使うことは普段はないでしょうが、意味だけは覚えておく必要があります。宗教に縁がある人には大切な意味です。
第一の意味にしろ第二の意味にしろ、目上から目下へというのが「諭す」の正しい使い方です。目下から目上に「諭す」という言葉は使わないし、もし使えば大変失礼な表現となります。
「諭す」の読み方
「諭す」の意味がわかっても、読み方を知らなければ使えませんから、説明しましょう。諭す」の読み方は「さとす」です。すでに読み方をご存じの人もいるでしょうが、言葉で知っていても漢字で書くと意外に難しいものです。
ちなみに「諭す」の「諭」の読み方は「ゆ」です。音読みの読み方になりますが、その意味は「疑問点を解いて教える」ということです。なお、一つ注意点があって、「諭す」を「愉す」「輸す」などと書かないようにしましょう。このような言葉はありません。
理解させる意味での「諭す」の類語
「諭す」の「言い聞かせ理解させる」という意味の類語を見てみましょう。いくつか類語の例はありますが、ほとんど同じ意味の類語や近い意味の類語などいろいろあります。意外に多くの類語があります。
言い聞かせる
「諭す」の意味は、「言い聞かせ納得させる」であると説明しましたが、この「言い聞かせる」そのものが類語であることは言うまでもありません。「言い聞かせる」とは、「よくわかるように教え聞かせる」ということですが、「諭す」の類語の典型と言えるでしょう。
念を押す
「念を押す」とは、「重ねて注意する」「幾度も確かめる」ということです。「間違いをしないように何度も念を押しておいた」のような使い方をします。この「念を押す」を「諭す」の類語としてもいいでしょう。
指導する
「諭す」には「納得するように教え導く」という意味もあるので、「指導する」も類語です。「生徒を指導する」「教官が指導してくださった」などのような使い方ができます。これらの表現に「諭す」を使った場合、似たような意味になります。
啓発する
啓発セミナーなどの表現でおなじみの「啓発」という言葉ですが、これも「諭す」の類語にしていいでしょう。「啓発」とは、「人が気づかないこと・見逃しがちなことについて教えわからせる」という意味だからです。
「啓発」という言葉はやや難しい部類に入るので、日常会話ではあまり使いません。ビジネスシーンなどのような改まった場面や書き言葉でよく使われます。「先輩の考えに啓発されて」などのような使い方がされます。
念のため「啓発」の読み方を確認しておきましょう。「啓発」と書いて「けいはつ」と読みます。それほど読み方は難しくはないので、ほとんどの人はご存じでしょう。
教化する
「教化」はもともと仏教用語で、「仏教の教えを説いて、信仰に向かわせる」と意味でした。その場合の読み方は、「きょうけ」となります。現代で使われる意味は「教え導き、よい方向に向かわせる」ということで、この場合の読み方は「きょうか」です。
「教化」の「教え導く」という部分が「諭す」の意味と同じです。また、「よい方向に向かわせる」という意味も、「諭す」に含まれていると言えなくもないので、類語であると言って差し支えないでしょう。
啓蒙する
啓蒙主義、啓蒙活動などのような使い方がされる「啓蒙」も「諭す」の類語です。「啓蒙」とは、「新しい知識を教え、理解させ、導く」という意味だからです。なお、「啓蒙」と書いて、読み方は「けいもう」です。
指南する
「指南」とは、「教え導く」ということです。「剣術を指南する」と言えば、「剣術を教えて、理解させ、導いていく」という意味になるので、この「指南」も「諭す」の類語です。「指南」という言葉はあまり使う機会はないでしょうが、改まった時に用いられます。
注意・警告する意味での「諭す」の類語
「諭す」には、「よくないところを改善するように注意・警告する」という意味があります。この意味の類語もあるので、見てみましょう。「理解させる」の類語同様にいろいろな種類があり、状況に応じて使い分けるといいでしょう。
警告する
「諭す」には「よくないところを改善するように注意・警告する」という意味があると説明したばかりですが、その説明を見ればわかるように「警告する」自体が類語です。「そんなことをすると危ないよと警告した」は、「諭した」と言い換えることができます。
訓戒する
「訓戒」と書いて、読み方は「くんかい」です。この「訓戒」には2つの意味があり、そのうちの一つは「善悪を言い聞かせ、悪いことしないように注意する」ということです。したがって、「注意・警告」という意味の「諭す」の類語です。
「訓戒」の使い方ですが、「木村君を読んで訓戒した」「生徒に訓戒をたれた」などのようになります。「訓戒」は、「注意する」ということなので、目上が目下に対して使います。
説教する
「さんざん説教されて大変だった」などのような経験がある人もいることでしょうが、この「説教」を「諭す」の類語に加えることもできます。「説教」とは、「注意や小言を言い聞かせる」という意味だからです。
また、「説教」には、「経典や教義をわかりやすく説き、教え導く」という意味もあります。この「教え導く」という部分も「諭す」の意味に似ています。
苦言を呈する
「苦言を呈する」の「苦言」とは、「相手がいい気はしないだろうが、その人のために行う注意や忠告」という意味です。「相手がいい気はしないだろうが」という部分は、「諭す」とは必ずしも一致しませんが、「注意」や「忠告」という意味では類語です。
「苦言を呈する」も目上が目下に使う表現です。「山下君に一言苦言を呈しておいた」などのような使い方がされ、目下から目上に使うことはありません。
戒飭する
かなり難しい言葉を紹介しましょう。「戒飭」という言葉です。おそらくこの言葉を知っている人はいないでしょうから、まず読み方から解説すると「かいちょく」と読みます。読み方だけでも難解ですが、意味は「戒め慎ませる」「謹慎させる」ということです。
難しい言葉である「戒飭」の意味を見ると、「諭す」にどことなく似ていることがわかります。したがって、これも類語と見ていいいでしょう。「謹慎させる」というのは「諭す」よりも厳しいですが、ニュアンスには近いものがあります。
誡める
「誡める」とは、「前もって注意する」「教え諭す」という意味です。「前もって」という部分は「諭す」の意味とは違いますが、「注意する」「教え諭す」という部分は意味が重なります。したがって、「誡める」はかなり「諭す」に近い類語です。
「誡める」は、「悪いことをしないように誡める」「浪費を誡める」などのように使います。なお、読み方は説明するまでもなく「いましめる」です。普段それほど使う言葉ではないでしょうが、意味や使い方を知っておく必要があります。
注意する
「注意する」が「諭す」の類語であることは説明するまでもないでしょう。これまでの説明でおわかりのはずです。ただ、「諭す」は目上が目下に使う表現ですが、「注意する」の場合は使い方によっては目下から目上に対して使えます。
目下が目上に「注意する」を使うのはこのような時です。「危険な場所なので、注意してください」などのように部下が上司に注意喚起する場合などです。
忠告する
「忠告」とは、「相手のことを思い、欠点や過ちなどを改善してもらうように言い聞かせる」という意味です。これは、「よくないところを改善するように注意・警告する」という意味の「諭す」とほぼ同じ意味であり、類語と言えます。
諫言する
「諫言」の意味は、「過失や非を取り上げて、直してもらうように忠告する」ということです。そういう意味では、「諭す」と似ていますが、使い方に大きな違いがあります。まず、「諭す」は目上から目下に使いますが、「諫言」は逆で、目下が目上に使います。
「諭す」と「諫言」では使い方が違うので、完全な類語ではありません、ただ、意味上は似ているので、あえて類語に含めてみました。なお、「諫言」の読み方ですが、「かんげん」と読みます。
「諫言」と同じ意味の言葉に「諌める」があります。読み方は「いさめる」ですが、その使い方は全く同じです。目下が目上に対して悪い点を直してもらうように忠告する場合に使います。
意見する
「意見」とは「人の考え」という意味ですが、「意見する」となると少しニュアンスが違います。この場合は、「よくないことをやめるように注意する」という意味です。その意味では、「諭す」の類語と言えるでしょう。
「意見する」と言った場合、普通は目上が目下にします。では、目下から目上に「意見する」ことはできないのかというと、不可能というわけではありません。ただ、目下が目上に「意見する」のはよほどの場合で、普通はしないほうが無難です。
咎める
「咎める」は、「悪いこと・よくないこととして注意する・責める」という意味です。「注意する」という意味では「諭す」の類語ですが、「諭す」よりもかなり強い表現です。なぜかというと、「非難する」「なじる」という意味が入っているからです。
「部下の失敗を咎める」と言えば、かなりきつく言い聞かせていることになります。したがって、この言葉をそのまま「諭す」と言い換えるのは難しいでしょう。
叱る
「諭す」と「叱る」の違いについては後程詳しく取り上げますが、意味は少し近いです。ただ、「咎める」と同様「叱る」もかなりきつい表現になるので、厳密な意味での類語とは言えないかもしれません。
「諭す」の使い方・理解させる意味での例文
「諭す」の2つの意味の類語を学んだところで、今度は使い方や例文を見てみましょう。まず、「理解させる」意味での例文です。例文はいくつも考えられますが、実際にも使えるような例文を紹介しましょう。
例文①
まず、最初の「諭す」の例文は、「田中君に諭すように語りかけた」です。この場合は、「田中君に理解させるように語りかけた」という意味になります。このような語りかけをされた田中君もしっかり理解したはずです。
例文➁
普通「諭す」相手は人間で、目上の人が目下に使うのですが、動物に対して使おうと思えば使えないことはありません。その場合の例文は、「馬に向かって諭してみたが、効果があったかどうか」です。
この例文の場合、「馬が理解できるように言って聞かせた」という意味です。人間に当てはめると、飼い主が目上で、馬が目下ということになるでしょうか。いずれにしろ、どんな動物にも使える表現です。
例文③
親子の間でも「諭す」という言葉を使えます。例文は、「母は子供に諭すように話しかけたので、子供もきっとわかったことでしょう」です。その意味は、「子供に理解させるように話しかけた」ということであり、優しい母親の姿が浮かんできます。
同じような例文に「上司は部下に諭すように話しかけたので、部下も意味がわかったことでしょう」があります。この場合も、「理解させるように話しかけた」ということであり、丁寧に説明している上司の様子が手に取るようにわかる例文です。
例文④
次のような例文もあります。「小林君に噛んで含めるように諭したので、さすがにもう大丈夫だろう」です。「噛んで含める」とは、「よくわかるように言って聞かせる」という意味なので、「諭す」と同じ意味ですが、これも懇切丁寧な様子が感じられる表現です。
例文⑤
同じように「諭す」を「理解させる」という意味で使っても、それがうまく行かない場合もあります。その場合の例文は、「彼にわかりやすく諭してみたが、一向に理解が進まないようであった」です。せっかく丁寧に諭しても、いい結果が生じないこともあります。
似たような例文を挙げてみましょう。「一方的に諭されたので、かえって意味がわからなくなってしまった」です。この場合は、「理解せる」という行為が少し強引すぎて、相手の理解を得られなかったのでしょう。
例文⑥
「教え諭す」という表現があります。意味は、「理解させるように教え導く」ということです。その表現を使った例文を見てみましょう。「先生は山下君に諄々と教え諭したので、もう心配ないだろう」です。「諄諄」とは、「わかるようによく言い聞かせる」ことです。
この例文も先生の親切ぶりが感じられます。このように教え諭されれば、大概の生徒は納得がいくでしょう。暖かい先生は、生徒を正しい方向に導きます。
例文⑦
柔らかく「諭す」態度が上手に表現できている例文もあります。たとえば、「木村さんは微笑みながら諭してくれるので、みんなから尊敬されている」です。同じ「諭す」という行為でも、このようにする人は好意的に見られます。
理解させるという意味には思いやりが込められている
「諭す」を「理解させる」「教え導く」という意味で使う場合は、どの例文を見ればわかるように目上の人の深い思いやりが込められています。それだけ「諭す」相手は、目上の人にとっても大切な相手なのです。
「諭す」の使い方・注意・警告の意味での例文
続いて、注意・警告の意味での「諭す」の例文を見てみましょう。この場合の例文はかなりあります。「諭す」は、目上の人が目下に言ってきかすという意味ですが、その意味には注意や警告が含まれていることが多いです。
例文①
注意・警告という意味の最初の「諭す」の例文は、「不真面な態度の部下に懇々と諭してみたが、一向に態度が改まらなかった」です。目上の人が真面目でない部下に丁寧に言って聞かせ、少しでも改善してくれればと思ったのでしょうが、うまく行かなかったようです。
「懇々と諭す」という言い方を使って、別な例文を考えてみましょう。「日ごろからうるさい隣人に思い切って懇々と諭してみたところ、静かになった」です。この場合は、諭したことが功を奏して、いい結果が出た例です。
例文➁
先生と生徒の間では、「理解させる」という意味での「諭す」の使い方もありますが、注意と警告のために使う場合もあります。例文を挙げると、「授業中によく騒ぐ川口君に対して、先生は厳しく諭した」です。
この例文の場合、先生がややきつい口調で注意・警告している感じがします。したがって、「理解させる」という意味ではありません。この段階で生徒が態度を改めてくれれば、厳しく諭したことが成功したことになります。
例文③
学生の中には、先輩と後輩の関係がありますが、その間柄でも「諭す」を使えます。例文は、「クラブの最中の後輩の態度が気になったのか、先輩は河合君を呼んで、諭していた」です。先輩から見て、見逃せないわがままな態度でもあったのでしょうか。
「諭す」は、目上が目下に使うものですが、この例文の場合、先輩が目上で、後輩が目下になります。目上目下と言った場合、学生にも当てはまり、同じように「諭す」を使います。
例文④
親子関係では、「諭す」を「理解させる」という意味で使う場合もありますが、「注意・警告」という意味で使う例文がないわけではありません。たとえば、「いたずらばかりしているわが子を諭した」のような例文です。
この例文の場合、「理解させた」という意味で解釈するとおかしくなります。当然、「態度を改めるように注意・警告した」という意味です。ただ、親から諭された段階でいたずらをやめればいいですが、そうならない場合は「叱る」へ移ります。
「いたずらばかりしている子を叱る」ということになると、「諭す」よりもだいぶ厳しくなります。「叱る」という言葉にはそれだけ強い意味があります。
例文⑤
「諭す」相手は我が子ばかりとは限りません。他人の子供が対象となる場合もあります。その場合の例文は、「公園で他人の迷惑を考えずにはしゃいでいる子供を見て、諄諄と諭した」です。他人の子供といえども「諭す」必要がある場合もあります。
他人の子供を諭した場合、言うことを聞いてくれればいいですが、素直に従わない場合があります。そのような場合もやはり「叱る」というケースになることもありますが、他人の子供を「叱る」というの結構勇気が要ります。
例文⑥
仕事の進め方や内容について上司が部下に「諭す」、つまり「注意する」場合があります。その場合は、こんな言い方になるでしょう。「坂本君の仕事ぶりに気になるところが多かったので、少しでも改善してくれるように諭してみた」です。
部下としては、仕事ぶりにケチがつけられたような気分になるかもしれませんが、「諭す」という行為は「叱る」と違い、まだ温かみがあるので、この段階で改善しておいたほうがいいです。
例文⑦
刑事が犯罪者を「諭す」例を見てみましょう。こんな例文が考えられます。「刑事は何度も軽犯罪で警察にやってくる男を諭してやった」です。この場合は、「言い聞かせた」という意味と「注意・警告した」という意味が半々でしょう。
「諭す」と「叱る」の違いとは?
「諭す」の類語として「叱る」を挙げましたが、この2つの言葉には明確な違いがあります。意味上の違い、用法上の違いなど注意すべき点があり、うまく使い分けなければいけません。その違いについて詳しくみてみましょう。
「諭す」「叱る」は目上の人に使わない
「諭す」と「叱る」の違いを見る前に共通点を確認しておきましょう。共通点とは、「諭す」も「叱る」も目上の人には使わないことです。どちらも目上の人が目下に対して用いる言葉であり、逆の使い方をすると非常に失礼になります。
例えば、「新藤さんが部長を諭した」「部長を叱った」などのように用いれば、目下が目上に対して行う行為ですが、説明するまでもなく変な使い方です。このような使い方をする人はいないでしょうが、念のために指摘しておきます。
「諭す」は理路整然とした意味
「諭す」と「叱る」の違いを知るためにもう一度「諭す」の意味をおさらいしておきましょう。「諭す」とは、「物事の理非をわかるように言い聞かせること」という意味です。この「言い聞かせる」というところがポイントで、「諭す」には荒っぽい雰囲気はありません。
「諭す」には、「理非やよしあしをわからせる」という意味がありますが、その行為自体は理路整然としたものであり、感情的にはなっていません。どこまでも落ち着いて、相手に諄々と説くという感じです。
「叱る」は感情的な意味をもつ
一方、「叱る」と言った場合、「声を荒げて相手の欠点や至らない点を責める」という意味になります。この場合はかなり感情的になっていて、言葉遣いもきつくなりがちです。冷静に「諭す」のとは大違いです。
「諭す」も「叱る」も目上の人が目下の人に行う行為ですが、それをされる側の気持ちも大きく違います。単に「諭される」場合は、比較的落ち着いて受け止めることができるでしょう。しかし、「叱られる」となると、かなり動揺する場合もあります。
「叱る」という言葉の意味をわかりやすくとらえるために、いくつか例文を挙げておきましょう。まず、よくある例が「わがままばかり言っている子供を叱る」です。親が子供を「叱る」ことはごく普通です。
次の例文は、上司と部下との間での問題です。「仕事を期日までに仕上げられなかった部下を上司が叱った」です。仕事の内容や仕事ぶりについて、上司が部下を「叱る」こともよくあるでしょう。「叱られた」部下は、改めるべき点を改める必要があります。
飼い主が動物を「叱る」こともよくあります。「言うことを聞かない犬を厳しく叱りつけた」などのような例文が思い浮かぶでしょう。「叱る」のもしつけの一環というわけです。
「諭す」の英語表現
「諭す」という言葉を英語にしたらどうなるのか考えてみましょう。意外に「諭す」を英語にするのは難しそうですが、ちょうどいい表現はあるでしょうか。いくつか適切な英語訳を探ってみましょう。
make him understand
日本語の「諭す」には「理解させる」という意味があります。この意味にちょうど合う英語訳は「make him understand」あたりでしょうか。「make」というのは、「させる」という意味の使役動詞です。「understand」の意味は解説するまでもなく「理解する」です。
したがって、「make him understand」で、まさに「理解させる」となります。「make」というのは同じ使役動詞の「let」よりも強制的な意味合いが強いので、目上から目下に「言い聞かせる」というニュアンスが色濃く表れています。
advise
「advise」という英語はすでに日本語になっていますが、意味は「忠告する」「忠言する」ということです。「諭す」には、「悪い点を直すように注意・警告する」という意味があるので、英語の「advise」も似たような意味になります。
ただ、「注意」「警告」と「忠告」では微妙に意味が違うという見方もできます、その場合は、「advise」ではなく、別な英語表現を考える必要が出てきますが、ちょうどいい英語表現があるので紹介しましょう。
admonish
「admonish」の意味を英語の辞書で調べてみると、「give a mild but firm warning or scolding」と出ています。この英語を日本語に訳すと、「ソフトだがしっかりと警告する、叱る」という意味です。
「admonish」には、「忠告する」という意味もありますが、どちらかというと「注意する」「警告する」という感じのほうが強いです。したがって、「諭す」という英語訳に比較的マッチしそうです。
「admonish」を使った例文を示しておきましょう。「I admonished Taro not to talk while eating.」です。この英語文は、「食事をしながらおしゃべりをしないように太郎に諭した」という意味です。
reason
「reason」という英語の名詞上の意味はご存じの人も多いでしょう。「理由」「わけ」という意味です。しかし、この英語を動詞にすると、「理を説く」「説きつける」という意味になります。したがって、「諭す」にかなり近い英語表現になります。
「reason」という英語を使った例文も示しておきましょう。「He reasoned Kenichi into a sensible course of action.」です。この英語を日本語にすると、「彼は健一に分別ある行動をするように諭した」となります。
「諭す」には2つの意味がある
ここまで、「諭す」の意味、読み方、類語、英語表現などについて解説しました。「諭す」という言葉には2つの意味があります。「言い聞かせ納得させる」「神仏が警告し気づかせる」ということです。普通は前者の意味で使うことが多いです。