ホローポイント弾の特徴とは
ホローポイント弾とはどんな弾丸なのか、特徴を見てみましょう。ホローポイント弾は銃や狩猟用のライフルの弾丸として使われますが、どこが他の弾丸と違い、どんな構造や威力をしているのでしょうか。疑問点がいろいろあるとは思いますが、順番に紹介しましょう。
先端に穴が開いている
ホローポイント弾を英語で言うとholllow point bulletですが、このhollowとは、へこみ、くぼみ、穴という意味です。ではホローポイント弾のどこに穴があるのかというと、先端部分です。この穴が構造上非常に大きな意味を持っていて、威力が増すようになっています。
ホローポイント弾の構造と威力については後程別コーナーで詳しく紹介しますが、先端に穴が開いていることで、相手へのダメージが増幅するようになっています。
フルメタルジャケット弾とは目的が違う
フルメタルジャケット弾とは、鉛でできた弾丸の部分を銅で覆った(被覆という、英語ではjacket)構造のものを指します、弾丸と言えば、このフルメタルジャケット弾を思い起こすことが多いでしょうが、滑りがいいので、銃身内を傷つけず、貫通力に優れていると言われています。
フルメタルジャケット弾とホローポイント弾では、目的が違います。フルメタルジャケット弾を使うのは、まず銃へのダメージを必要最小限に抑えるためです。銅で被覆していない弾丸の場合、鉛があらわになっていて、その鉛のカスが銃口につき、不具合が生じることがあります。
しかし、フルメタルジャケット弾なら、滑りがよく、鉛のカスがつかないので、銃が傷みません。そのほか、フルメタルジャケット弾は貫通力がいいので、防弾チョッキをも貫くと言われています。また、相手へ必要以上の苦痛を与えない目的でも使用されます。
一方、ホローポイント弾はフルメタルジャケット弾と違い、体内で弾頭が膨張炸裂します。そのため、敵方へのダメージが非常に大きく、相手に大きな苦痛を与えます。また、体内を貫通することがないので、二次被害を防ぐ目的でも使われます。
弾頭が軽い
ホローポイント弾の弾頭には、ポリマーが含まれている場合があります。このポリマーを使うことで工夫をしているのですが、その分構造上弾頭は軽いです。フルメタルジャケット弾に比べて2割ほど軽量です。そのため、威力は落ち、銃の種類によっては動作が不十分な場合があります。
ホローポイント弾の構造とは
ホローポイント弾の特徴がわかったところで、今度はその構造を見てみましょう。実はホローポイント弾といっても、いくつか種類があります。その種類により構造が少しずつ違うのですが、その点についても解説しましょう。
コアになる鉛とその周りを覆う銅でできている
ホローポイント弾のうち、フルメタルジャケット弾との違いをうまく組み合わせたのがジャケッテッド・ホローホローポイント弾です。ホローポイント弾の中では最も多く流通している弾丸です。
ジャケッテッド・ホローポイント弾の構造は、コア部分が鉛でできていて、その周りを銅で被覆しています。もちろん、先端に穴が開いています。構造のうち銅部分は、銃構内の滑りをよくする働きがあります。一方、鉛部分は着弾後の体内で膨張炸裂し、敵方に大きなダメージを与えます。
セミジャケッテッド・ホローポイント弾の構造
セミジャケッテッド・ホローポイント弾というジャケッテッド・ホローポイント弾に似ている弾丸があります。この弾丸の構造は、先端部分の鉛があらわになっていて、側面部分しか銅に被覆されていません。
この構造により、着弾時の膨張がやや抑えられ、ジャケッテッド・ホローポイント弾より貫通力が増しています。着弾後はマッシュルーミングと呼ばれるキノコ型につぶれる現象が起きます。
セミジャケッテッド・ホローポイント弾は、主にリボルバーで使用され、その用途は護身用となっています。以前はアメリカの警察でも使われていた弾丸です。
レッド・ホローポイント弾の構造
レッド・ホローポイント弾とは、コアの鉛部分が銅で被覆されていないホローポイント弾です。この構造により、着弾時の炸裂スピードが一番早く、貫通力が弱くなっています。主な用途は、対象物に弾丸を貫通させないことです。
急膨張現象が起きるので膨張炸裂する
ホローポイント弾が膨張炸裂するのは、急膨張現象のためだとされています。急膨張現象とは、水分の多い人間や動物などの目標物に弾丸が当たった際に先端の穴が原因となって貫通力が下がり、その穴から急激に膨張して変形する現象のことを言います。
ホローポイント弾の威力とは
ホローポイント弾は、構造上大きなダメージを相手に与えるようになっているので、その威力も大きそうな気がしますが、どれくらいなのでしょうか。いくつかのポイントに分けて、ホローポイント弾の威力を検証してみましょう。
ホローポイント弾は敵に重傷を負わせる工夫がされている
ホローポイント弾で撃たれると、体内で弾丸が膨張炸裂します。これはフルメタルジャケット弾と違い、人体に大きなダメージを与えます。ただ弾丸が通ったというだけではなく、変形することで、体内の損傷が非常に大きくなるようになっているのです。
永久空洞と瞬間空洞の違い
ホローポイント弾の威力を知るために、まず永久空洞と瞬間空洞の違いを勉強しておきましょう。弾丸が当たった体には当然空洞ができますが、その空洞の種類に永久空洞と瞬間空洞があります。どのような違いがあるのかですが、特徴が大きく異なっています。
まず、順番が逆になりますが、瞬間空洞とは、簡単に言うと瞬間的に空洞ができ、そのあとそれが縮むことを言います。具体的には、弾丸が体に当たると、その弾丸のサイズよりも大きな穴を開けながら進んでいきますが、そのあとその穴が小さくなる現象を言います。
一方、永久空洞とは、空洞部分が縮まらずにずっと残ることを意味します。弾丸が当たって、その弾丸のエネルギーが強力に伝わると、その部分は小さくならずに空洞のままで、これが永久空洞です。
威力の違い
永久空洞と瞬間空洞の威力の違いですが、永久空洞の場合、弾丸が通った部分は修復されずに完全に破壊されます。それに対して、瞬間空洞では一時的、部分的な損傷にはなりますが、完全破壊というわけではありません。したがって、永久空洞を与える弾丸のほうが威力が強いです。
フルメタルジャケット弾で人体を撃つと、永久空洞も瞬間空洞もあまり大きくはなりません。そういう意味では、威力という点ではやや弱いです。もちろん、銃で撃たれるのですから、威力が弱いといってもそれなりのダメージはありますが、他の弾丸と比較した場合の威力のことです。
では、ホローポイント弾で撃った場合にはどの程度の威力があるのかというと、永久空洞が大きく残ります。それだけ、威力も人体の破壊力も大きいということになります。ホローポイント弾はフルメタルジャケット弾と違い、非常に危険な弾丸と言えるでしょう。
人体ゼリーで見るホローポイント弾の威力
人体ゼリーと呼ばれる実験用の素材があります。人間のように作られたゼリーのことで、これで弾丸の威力を測ることができます。もちろん、単なる実験素材ですから、本物の人間とは違い、正確な測定はできませんが、一応の目安としての判断材料にはなります。
この人体ゼリーにホローポイント弾が命中した時の威力を見てみましょう。まず、着弾の結果、弾丸が体内に侵入し、急激に膨張炸裂します。その時点で瞬間空洞ができますが、ホローポイント弾は貫通することが少ないので、そのまま残って威力を発揮します。
そのために、瞬間空洞が永久空洞に変わり、大きなダメージを人体に与えます。この実験結果を見ればわかるように、ホローポイント弾の威力と破壊力は相当なものです。
硬いものにぶつかると威力が弱まる
ホローポイント弾は柔らかい物体に命中すると、効率的に弾丸が膨張炸裂し、大きなダメージを与えます。しかし、ガラスや木版、石膏ボードのような硬いものが対象だと、先端がつぶれたり、詰まったりして、本来の威力を発揮できなくなります。
ただし、膨張炸裂しなくなった場合は、かえって貫通力が増します。そのため、予想もせぬような二次被害が生じることもあります。
ホローポイント弾を硬いものに撃った具体例を確認してみます。警察官が車のフロントガラス越しに犯人を狙った場合です。この場合は、ガラスにより先端が詰まり、貫通力が増し、犯人の体を通り抜けて、シートや後部座席にまで到達します。
ホローポイント弾とダムダム弾との違いとは
ダムダム弾という弾丸の名称を聞いたことがある人もいるでしょう。このダムダム弾とホローポイント弾にはどのような違いがあるのか見てみましょう。と言っても、違いというほどのことはなく、似たような種類に属します。
ダムダム弾はホローポイント弾の一種
ダムダム弾は、もともとインドのダムダム地方で作られた弾丸であるためこのように呼ばれています。その構造は、先端部分だけ銅による被覆がなく、鉛があらわになっています。この構造により、人体に向かって撃つと、変形炸裂して、威力が大きく増します。
このダムダム弾の先端にくぼみをつければ、ホローポイント弾と全く同じになり、極めて殺傷能力が高くなります。したがって、ダムダム弾をホローポイント弾の一種として扱う場合も多いです。
イギリスの.303British弾に使われた殺傷能力が高い弾丸
ダムダム弾の原型は、イギリスの.303British弾というソフトポイント弾です。ソフトポイント弾とは、先端だけ鉛を露出させた弾丸のことですが、このダムダム弾は相手に当たると、極めて高い確率で殺傷していました。そのために昔は使う人が多かったのです。
ハーグ陸戦条約によりダムダム弾は禁止されている
ダムダム弾の先端の鉛には被覆がなく、切れ込みが入っていることも多く、体内に侵入すると鉛がつぶれて、傘のように広がります。そのため、極めて殺傷能力が高いのですが、残虐性があるということで、1899年に制定されたハーグ陸戦条約で禁止されました。
ハーグ陸戦条約とは、戦争や戦闘のやり方について取り決めた国際条約で、その中にダムダム弾についての条項があります。これはドイツの抗議により定められたもので、現在は世界中の軍隊がこの取り決めを守っています。
ダムダム弾の威力を知るために体内でどうなるかもう少し詳しく検証してみましょう。ターゲットに命中したダムダム弾はつぶれて、平らに変形します。それだけでは済まず、そのまま回転を続け、傷口を大きく深くするのです。そのため、銃傷を負った人の治療は非常に困難になります。
鉛中毒にもなる
ダムダム弾は体内に入ると、ばらばらになる場合があり、取り出しが非常に難しいケースもあります。それだけでも人体によくないですが、もう一つの問題として被覆していない鉛により中毒を起こすことがあるのです。それによって、さらに症状が悪化します。
今でもダムダム弾は使われている?
ダムダム弾はハーグ陸戦条約で禁止されましたが、この条約の対象はあくまでも戦争や戦闘行為です。つまり、軍隊が使うことを禁じているのです。したがって、それ以外の目的では今でも使われています。
例えば、世界の警察の中には現在もダムダム弾の変形型のエクスパンディング弾を使用しているところがあります。戦争や戦闘行為が目的ではないということなのでしょう。また、狩猟用に用いる人も多いです。
アメリカでは、個人が所有する拳銃にエクスパンディング弾を使うケースがあります。護身用としての用途になりますが、これも戦争や戦闘行為とは関係がないために許されています。
ちなみに日本の警察が使用している弾丸はフルメタルジャケット弾です。そういう意味では、殺傷能力はダムダム弾よりは劣りますが、銃であることには変わりありません。したがって、悪いことをして、警察官に銃で撃たれるようなことがないようにしましょう。
他の弾丸との違いも見ておこう
ホローポイント弾とダムダム弾の違いをわかりやすく解説しましたが、ついでにホローポイント弾と他の弾丸の特徴や構造の違いも確認しておきましょう。一般の日本人が日本国内で銃や弾丸を使うことはありませんが、何かの参考にはなるでしょう。
職業柄、銃や弾丸の知識が必要という人もいます。すでに情報収集はしているでしょうが、再確認の意味でも役に立つ記事をお届けします。
マグナム弾とは
マグナム弾は、火薬量を20%ほど増やした弾丸のことで、それだけ威力が強くなります。リボルバーやライフルで使われる弾丸です。マグナム弾は、大型動物を仕留める目的や護身用に主に用いられますが、大口径のマグナム弾は対戦車用になる場合もあります。
亜音速弾とは
銃を発砲すると、大きな銃声がしますが、それはサイレンサーで抑えることができます。しかし、銃弾が音速を超えていると、いまいち効果が出にくくなります。そのような場合に亜音速弾というものが使われます。
亜音速弾とは名称が示すように弾丸の速度を亜音速域まで落としたものです。そのため火薬量が少なくなっていますが、その分発射に伴う音も減っています。
リード弾とは
リード弾(レッド弾ともいう)のリードとは、英語のleadのことで、鉛を意味します。つまり、リード弾は、弾丸のすべての部分が鉛むき出しとなっています。被覆部分が全くないのです。このリード弾は値段が安いですが、いろいろなデメリットがあります。
そのデメリットとは、貫通力が非常に弱いこと、有効射程が短いこと、銃口に鉛がついて射撃精度が著しく下がることなどです。それでも、殺傷能力は強いので、けん銃用、散弾用、訓練用としては用いられています。
レッド・ラウンドノーズ弾とは
レッド・ラウンドノーズ弾もリード弾(レッド弾)の一種で、鉛だけでできています。では、どこが違うのかというと、先端部分がラウンド(丸くなっていること)なのです。値段は安いですが、命中精度が高いことから比較的人気があります。
ただ、リード弾の一種ということもあり、ライフリングに鉛が付着することも多く、手入れや掃除が少し大変です。
アーマーピアッシング弾(AP弾)とは
アーマーピアッシング弾とは、アーマー(armor)、つまり装甲に貫通させるための弾丸です。小口径用のものでは、弾丸の中心が鉄やタングステンなどの硬い金属で作られています。ホローポイント弾などとは違い、着弾時に変形はしないので、貫通力が特に優れています。
ホローポイント弾とEFMJ弾の違いとは
EFMJ弾(エクスパンディング・フルメタルジャケット弾)とは、どんな物体に当たっても弾丸が拡張(expand)するようになっているフルメタルジャケット弾です。その点はホローポイント弾と似ていますが、ホローポイント弾は柔らかいものが対象でないと効果が出にくいです。
障害物貫通力が違う
EFMJ弾には先端部分にポリマーが使われています。ポリマーは鉛よりも変形拡張しやすくなっています。また弾丸の先端部分には穴ではなく切り込みが入っています。その両方の構造により、ガラスや木片などの硬い物体が相手でも拡張していくのです。
そのため、障害物貫通力は弱く、体内で強い威力を発揮します。一方、ホローポイント弾はすでに説明したように硬い物体が相手だと膨張炸裂せず、貫通してしまう場合があります。
ホローポイント弾の種類とは
ホローポイント弾にもいろいろな種類があります。種類ごとに特徴や用途は異なっているし、販売している会社も違います。そこで、それぞれのホローポイント弾について詳しく解説しましょう。種類ごとの特徴がわかれば、どれを選べばいいかも決まってきます。
RIP
RIP弾は、アメリカのG2リサーチ社が発売している弾丸です。ホローポイント弾の一種ですが、単に先端にくぼみがあるだけでなく、8つの深い切れ込みが入っています。この両方の構造により、ターゲットに命中すると、すぐに炸裂して8つの破片が人体に大きな損傷を与えます。
英語の正式名称はRadically Invasive Projectileとなっていて、この省略語がRIPです。これを直訳すると、過激に侵入する投射物です。RIPを小文字にしたripには、切り裂く、引き裂くという意味もありますが、どちらにせよかなり強力な弾丸であることは間違いありません。
RIP弾はダムダム弾ではないのかと疑問に思う人がいるかもしれませんが、特徴が大きく異なっています。ダムダム弾の場合は、ランダムに破片が変形しますが、RIP弾では詳細な設計に基づいて破片化し、安定した作用でダメージを与えます。
ハイドラショック
次に紹介するホローポイント弾は、ハイドラショックです。この弾丸は、アメリカのフェデラル社が販売しています。その構造上の特徴ですが、先端のくぼみの中に小さな突起物があります。
これにより、コアの進行がスムーズに行われるとともに布などが先端に挟まっても、膨張するようになっています。特に服を貫通した後に、ターゲット内で膨張するので、ホローポイント弾としての威力を発揮しやすくなっています。
そのため、ターゲットから貫通して、次の対象物に当たるということはありません。二次被害を防ぐという意味では有効な弾丸です。ハイドラショックは、主にセルフディフェンス用に用いられ、民間人だけでなく警察で使用している例もあります。
エクスパンディング・フルメタルジャケット
エキスパンディング・フルメタルジャケット弾(EFMJ弾)については、「ホローポイント弾とEFMJ弾の違いとは」というコーナーで解説済みですが。正確に言うとホローポイント弾ではありません。でも、似ている弾丸なので、ここで改めて説明しましょう。
エキスパンディング・フルメタルジャケット弾の先端にはホローポイント弾のようなくぼみはありませんが、対象物に命中すると、変形拡張します。それによって、大きなダメージを与えます。
ただ、エキスパンディング・フルメタルジャケット弾の場合は弾頭にくぼみがないので、異物が詰まるということはありません。そのために、どんな対象物にも威力を発揮します。また、弾頭にポリマー樹脂を使うことで、変形拡張が起こりやすくなっています。
ブラックタロン
ブラックタロンとは黒い鉤爪という意味ですが、弾頭に黒い被覆がされていることからこのように呼ばれています。さらに弾頭には6つのスリットも入っていて、ターゲットに当たると、裂けることで大きなダメージを与えます。
ブラックタロンを製造販売していたのはウィンチェスター社ですが、現在は販売されていません。それは、1993年の乱射事件で使われたことにより、悪い評判が立ったためです。2000年以降は完全に姿を消しました。
ただ、ブラックタロン自体は違法ではないので、黒い被覆でコーティングしていないレンジャーSXTやレンジャータロンという弾丸が発売されています。
ホローポイント弾とは殺傷能力が高い弾丸
ここまで、ホローポイント弾の特徴、構造、威力、他の弾丸との違いなどについて解説しました。ホローポイント弾は弾頭にくぼみ(穴)をつけることで、威力を増しています。殺傷能力は非常に高く、危険な弾丸と言えるでしょう。