「周知する」の意味とは
「周知(しゅうち)する」という言葉は「周知させる」「周知を図る」といった形で使われます。なんとなく「知らせる」ことだと意味がわかっていても、正確な意味を答えられる人は少ないでしょう。
「周知する」は少し堅苦しい感じがする表現なので、日常的に話し言葉で使われることはほとんどありません。しかし、ビジネスシーンにおいてはよく使われているので、目にする機会も多い単語です。
今回は「周知する」とはどういう意味なのか、その使い方や「周知させる」と言った場合の違いを中心にご説明します。似ている意味を持つ類義語、英語表現についても見ていきますので、正しく意味を理解して使えるようにしておきましょう。
意味①あまねく知ること
「周知する」の意味の一つに「あまねく知ること」があります。「周(シュウ)」は「あまねく」とも読み「広く知れ渡っている、もれなくすべてに及んでいる」という意味で「知(チ)」は「知る、知らせる」という意味です。
つまり「周知する」の意味は、知るその内容が「一般に広く知られている」ということになります。例えば「たばこは健康に悪い」や「ゴミをポイ捨てしてはいけない」などの一般常識はよく「周知の事実」と表現されます。
「あまねく知る」という意味では、必ずしも全員が理解しているとは限らないですが「一般常識になっていること」「世の中のほとんどの人に知られていること」と覚えておけば問題はありません。
意味②関係する全員が知る状態にあること
「周知する」のもう一つの意味は「関係する全員が知る状態にあること」です。先に挙げた「あまねく知ること」と基本的な意味は同じですが、内容が知られている範囲が少し違うので確認しておきましょう。
ビジネスシーンにおける例として、会社で社員全員が守るべきルールがあります。この場合は「世間一般に広く知られている」のではなく「会社という範囲内において、関係者全員にもれなく知られているという意味です。
「社内ルールの周知徹底をお願いいたします」のように使われ、これは社内のルールを一人ももれなく、全員にきちっと知らせるように、徹底して努めているということです。「あまねく知ること」とは意味合いが少し異なり、一人残らず全員が知っていることがポイントです。
「周知する」の類義語
「周知する」と同じように「知る」という意味の「知」という字を含んだ類義語はたくさんあるので、どう使い分けたらよいか分からないという人もいるでしょう。
また、言葉の意味だけでなく、話し言葉でよく使われるのか、書き言葉でよく使われるのかを知っておくことも大切です。話し言葉では硬い表現はあまり好まれないので、シーンに合わせて使い分けられるようにしておきましょう。
ここでは「周知」と似ている意味を持つ「報知」「通知」「伝達」の3つの類義語を挙げて、意味と例文をご説明します。いずれも「知らせる」という意味がありますが、それぞれ知る範囲や対象が少し異なるので、使い方を間違わないように確認しておきましょう。
報知
「周知する」の類義語に「報知(ホウチ)」があります。「報知」とは「知らせること、また、その知らせ、通知」という意味です。「報知」の使い方の例として「緊急事態の発生を報知する」「友人が結婚したという報知を聞く」などがあります。
「広く知らせる」という意味の「周知する」とは違い「報知する」は範囲や対象は関係なく、単に「知らせる」ことだけを意味します。「周知する」と同じように、日常的に話し言葉で使われることはほとんどありません。
通知
「周知する」の類義語に「通知(ツウチ)」があります。スマートフォンを使っている人はアプリから通知が届くので、馴染みがある人も多いでしょう。
「通知」とは「告げ知らせること、また、その知らせ」という意味です。先に挙げた「報知」とほぼ同じ意味ですが「通知」の方がより一般的に使われます。通知をよりやさしい言葉に直すとすれば「お知らせ」となります。
「通知」は「入学許可の通知が届く」「総会の日時を通知する」というように、一時的な出来事の内容を、前もって相手に知ってもらう場合によく使われるので「周知する」とは意味が異なります。
伝達
「周知する」の類義語に「伝達(デンタツ)」があります。「知」という字は入っていませんが、意味は似ているので押さえておきましょう。
「伝達」とは「命令・意思・情報などを口頭または書類で相手に伝えること」という意味です。それぞれの漢字の意味は「伝(デン)」が「伝える」という意味で「達(タツ)」が「告げ知らせる」という意味なので、似た意味の言葉から成っている熟語です。
「伝達する」の目的は考えや命令を伝えることです。「周知する」の場合は「広く知らせる」のが目的ですが「伝達する」は特定の相手にさえ伝われば良いという点で「周知する」とは意味が異なります。
「周知する」の使い方
「周知する」という言葉はあまり話し言葉で使われることがないので、どのように使ったら良いのかわからない人もいるでしょう。これまでご説明してきたように「広く知らせる」という意味さえ理解していれば問題はありません。
「周知する」の最も基本的な使い方を、例文を用いながらご説明していきます。ビジネスシーンなどで実際に使えるように、参考にしてください。
最も基本的な使い方
最も基本的な使い方は「周知する」で、これまでご説明してきたように「周りにいる人全員にもれなく知らせる」という意味です。
「周知する」といった場合は能動的な意味になるので、誰かに「周知する」ことを任せるのではなく、自ら「周知する」ことを行います。
「周知する」の例文ですが「社員全員を集めて、会議の決定事項を周知する」という使い方ができます。一人ももれなく内容を伝えるために、社員全員を集めて内容を伝えているので、これは「周知する」という行為です。
「周知する」と周知させるの違い
これまで「周知する」の意味についてご説明してきましたが、「周知」には「周知させる」という使い方もあります。
「周知する」と「周知させる」の違いを簡単に説明すると、自分で「周知する」ことを行うか、誰かに「周知する」ことを任せるかです。「周知させる」の使い方について詳しくみていきましょう。
「周知させる」は誰かに任せる時に使用
「周知する」は自分から周りの人に知らせる時に使いますが「周知させる」といった場合は使役の意味になります。つまり「周知する」ことを自分でするのではなく、誰かに任せるということです。
「周知させる」の例文ですが「問題の改善点を各部署で周知させる」という使い方ができます。ある問題の改善点を自ら各部署に周知するのではなく、各部署に対して「周知する」ことを任せているということです。
「周知する」の英語表現
「周知する」は少し堅苦しいイメージの日本語なので、英語で言った場合どんな表現になるのか気になる人もいるでしょう。
日本語では難しいですが、英語にするととてもシンプルで「well known(よく知られた)」となります。このように、難しい日本語も英単語で分けて見てみると理解しやすくなることは多いです。「周知する」の英語表現を例文を用いながらご説明していきます。
「誰もが知る」という表現
「周知する」を英語にした場合「well known」となります。「well」はよく「known」は「知られる」という意味で、合わせて「よく知られた、誰もが知る」ということなので「周知の」と同じ意味になります。
「well known」の例文として「The song is well known to everybody.(その歌は皆によく知られている。)」という使い方ができます。知らない人は誰もいないといえるほど有名な歌ということです。
ちなみに「well known」に意味が似ている単語に「famous」があります。「famous」は「有名な」という意味ですが、こちらは良い意味で有名な場合に使われます。対して「well known」は良し悪しは関係なく有名な場合に使われ、少しニュアンスが違います。
「周知する」は関係する全員が知る状態
これまで「周知する」の意味や使い方、類義語や英語表現をご説明してきました。話し言葉ではあまり使われず、聞き慣れない単語かもしれませんが、意味はとてもシンプルなので、見たり聞いたりした時にすぐ意味が分かるように押さえておきましょう。