アイリスとは
アイリスはヨーロッパ南部や日本、東南アジアなどを原産地とするアヤメ科アヤメ属の単子葉植物の総称です。アイリスは4~5月にかけて白色や紫色、青色を中心に様々な色別の鮮やかできれいな花を咲かせ、日本はもちろんのこと欧米諸国でも昔から愛されています。
そのなかでもフランスではアイリスの花が国花とされ、王家の紋章であるfleur de lys(フルール・ド・リス)はアイリスの花がモチーフとなっています。
アヤメ科の植物
アイリスはアヤメ科の植物で、世界中に約200種類も存在しています。数あるアイリスのなかでも日本では9種類のアイリスのみが知られています。アイリスは花の色別や種類別に様々な花言葉を持ち、ポジティブな花言葉が多いことから、プレゼントとしてよく贈られる植物のひとつです。
アイリスは1本の茎にいくつかの花を咲かせるので、花束にするのはもちろんのこと1本だけをプレゼントしても喜ばれます。
花言葉は花の種類や色別によって異なるので、アイリスの花言葉について後ほど種類・色別(青・紫・白)に詳しくご紹介しましょう。
アイリスの名所
様々な色別のアイリスが楽しめる名所が日本にはいくつかあります。有名なアイリスの名所と言えば長野県にあるアイリス園です。
中央アルプスを望む高台で200種類以上のアイリスを楽しむことができます。毎年5月になると5000株以上のアイリスが咲き誇り、とても綺麗な景色が見れます。
その他にも三重県にあるアイリスみぞのパークや群馬県にあるアイリスの丘でも様々な色別のアイリスを楽しむことができます。
アイリスみぞのパークには「ふれあい公園」や「ふれあい広場」があるので家族で行っても1日中楽しむことができます。また、アイリスの丘ではジャーマンアイリスを中心に四季折々の花々が楽しめます。
アイリスの花の由来
「アイリス」という名前の語源は「イリス」で、ギリシア語で「虹」を意味します。虹は希望や吉兆などポジティブなイメージとして用いられることが多く、同じようにアイリスの花言葉にもポジティブな意味を持つ花言葉が多くあります。
ギリシャ語で虹を意味する
アイリスはギリシャ語で虹を意味する「イリス」が語源になっていますが、ここでギリシャ神話を1つ紹介しましょう。
全知全能の神であるゼウスとその妻のヘラに仕えていたイリスは、とても美しくて謙虚な女性でした。妻がいる身でありながらゼウスは何度もイリスに求愛しましたが、イリスは誘いを断りヘラに全てを正直に話しました。
イリスは全てを話し「遠くへいかせてください」とヘラにお願いしたところ、ヘラはイリスの正直さに感銘を受け、すぐに願いを叶えてあげました。
ヘラはイリスへ七色の首飾りを授けて神からの使者となることを申しつけ、神の酒をイリスの頭に振りかけたところ、イリスは大空をわたる虹の女神に変身しました。神の酒の雫が空から地上に落ち、アイリスの花が咲いたという言い伝えがあります。
アイリスの花言葉の意味
アイリスの花言葉はいくつかありますが、どの花言葉もギリシャ神話からきています。今回はいくつかある花言葉のなかから「メッセージ」と「希望」「雄弁」「賢さ」「友情」「信頼」の花言葉の意味について詳しく解説しましょう。
花言葉①メッセージ
アイリスの花言葉で一番有名な花言葉は「メッセージ」です。先程、アイリスの語源となった虹の女神:イリスについて紹介しましたが、イリスは天と地上を結ぶ虹を通って人々に伝令を伝えたと言われており、この言い伝えから「メッセージ」という花言葉はきています。
アイリスの花言葉である「メッセージ」は、「吉報」や「良き便り」という良い意味として用いられます。また、「古代からのメッセージ」という意味も含まれます。
さらにイリスが愛の神:エロスの母親だったことから、「恋のメッセージ」として扱われることも多いです。
花言葉②希望
アイリスの花言葉に「希望」がありますが、希望という花言葉がつけられた理由にはいくつかの説があります。
昔から一部の人の間では、虹は希望や幸せの象徴とされてきました。虹の女神であるイリスと希望の象徴である虹にちなんで「希望」という花言葉がつけられたとされる説があります。
その他にも、虹は雨があがって晴れ間が見えた時に見える現象です。止まない雨はないという希望の光や明るい見通し(希望)という意味で、「希望」という花言葉がつけられたという説もあります。
花言葉③雄弁
「雄弁」という言葉には、説得力を持って力強く話すことや、そのさまのことを指します。アイリスの花言葉にも「雄弁」があり、意味合いとしては「状況や気持ちをはっきりと表す」という意味になります。
花言葉④賢さ
アイリスの花言葉として「賢さ」が挙げられます。この「賢さ」という花言葉には、「正しいと思うことを信じて、行動を起こす」という意味が込められています。
古代エジプトでは、アイリスの花びらは知恵のシンボルとして崇められていたという歴史もあります。
花言葉⑤友情
アイリスの花言葉には「友情」があり、この場合の「友情」は友達間だけではなく家族や人間全体を包み込む情愛のことを意味します。そのため「男女問わず相手を信頼する」ということを意図したものです。
この「友情」という花言葉は虹の女神・イリスがとても信頼できる人だったことに由来しているとされています。
花言葉⑥信頼
「信頼」もアイリスの花言葉のひとつですが、「友情」と同じように虹の女神・イリスが神々から絶対的な信頼を置かれていた人だったことに由来していると言われています。
「信頼」と「友情」は主に海外でよく言われるアイリスの花言葉であり、海外の花言葉のほとんどがギリシャ神話に由来したものです。
アイリスの色別の花言葉
アイリスの花は種類によって様々な色の花を咲かせます。例えば、日本でもよく知られているハナショウブはアイリスのひとつで青色や紫色のきれいな花です。
アイリスの花の多くは白色・青色・紫色の花を咲かせ、花の色別で花言葉も異なります。そこで続いてはアイリスの色別の花言葉をみていきましょう。
白のアイリス
アイリスには白色の花を持つ種類がたくさんありますが、白色のアイリスには「純粋」や「思いやり」「友情」「便り」という色別の花言葉があります。また、「あなたを大切にします」という花言葉もあり、プロポーズの時にプレゼントするのに適した花です。
また、白色のアイリスには相手に対する感謝や親愛を伝えるメッセージが込められているので、女性だけではなく普段からお世話になっている身近な人に贈る花としても好まれています。
青のアイリス
青色のアイリスには「強い希望」や「大きな志」「信念」といった色別の花言葉があります。物事を正しい方向へ導くという意味合いが込められており、目標に向かって頑張っている人への贈り物として好まれています。
紫のアイリス
紫色のアイリスには「知恵」や「雄弁」「叡智」といった色別の花言葉があります。アイリスはアヤメ科の植物ですが、アヤメ科の植物の大半が紫色の花を咲かせます。
「知恵」や「叡智」といった花言葉は、アイリスの語源となった虹の女神・イリスが美貌だけではなくとても賢い女性だったことからきています。お世話になった方や年上の方に贈る場合は紫色のアイリスがおすすめです。
また、紫色のアイリスは青色のアイリスと同じように、物事を正しい方向に導くという意味合いが込められています。
アイリスの種類別の花言葉と特徴
先程も紹介したようにアイリスは世界中に約200種類以上もの種類が存在します。そしてアイリスの種類や色別によって特徴や花言葉もそれぞれ異なってきます。
今回は、日本でもよく知られている「アヤメ」や「カキツバタ」「キショウブ」「ハナショウブ」「イチハツ」「ジャーマンアリス」「ダッチアイリス」「シャガ」「コアヤメ」をピックアップして、それぞれの特徴と花言葉について詳しく解説しましょう。
アヤメ
4月中旬から5月中旬にかけて深い青紫色や白色の花を咲かせるアヤメは、日本で一番有名なアイリスで日本名は「文目(あやめ)」と書きます。花びらの真ん中にある網目模様が特徴で、この特徴から「アヤメ」という名前がつけられました。
アヤメは日本の野生種でもあり、日当たりの良い所を好むので山野の草地に生息しています。日本以外では中国北朝部や朝鮮半島、シベリアが原産国となっています。花が似ているため、現在はカキツバタやハナショウブもアヤメと呼ぶことがあります。
網目模様が特徴的なアヤメには、「気まぐれ」や「優雅」「良い知らせ」「メッセージ」といった花言葉があります。何か良い知らせを送る時には、アヤメを添えて送ってみるのも良いでしょう。
カキツバタ
アイリスのひとつである「カキツバタ」は紫色や白色、青紫色の花を咲かせ、花びらに白~淡黄色の斑点があるのが特徴です。アヤメと同様、日本の野生種であり5~6月にかけて色鮮やかな花を咲かせます。
「いずれアヤメかカキツバタ」という慣用句があるくらい花がアヤメと似ていることからアヤメと呼ばれることもありますが、カキツバタは花に網目模様が無く、アヤメとは違って水中や湿った場所に生息しています。
カキツバタは「書付け花」という意味で、花汁を布に染めることから名前が付けられました。染料としても用いられ、万葉集など古書にも登場して昔から人々に親しまれていた植物のひとつです。
カキツバタの花言葉は「幸せは必ず来る」「幸せはあなたのもの」「贈り物」で、これらはカキツバタの花が幸せを運ぶツバメに似ていることからきています。
キショウブ
アイリスのひとつであるキショウブは別名「イエロー・アイリス」と言い、名前の通り黄色い花が特徴で5~6月頃が見頃です。元々はヨーロッパからアジア西部が原産地ですが、明治時代頃に日本に入ってきて根付きました。
日本全国の湿地や水辺に生息しているキショウブは生命力が強く森林などにも拡大する懸念があるため、環境省は要注意外来生物のひとつとして生態系への影響や侵略性が高いと言われています。
キショウブの花言葉は「幸福」「友情」「便り」「幸せをつかむ」「私は燃えている」などが挙げられます。キショウブの特徴のひとつである黄色は幸福を表す色であることから「幸福」「幸せをつかむ」という花言葉がきています。
アイリスの花言葉には良い意味の花言葉が多いですが、キショウブには「復讐」という花言葉もあります。
ハナショウブ
ハナショウブは花びらにある黄色の目型模様が特徴的なアイリスです。日本の野生種であるノハナショウブを品種改良して作られた種類で、葉がショウブに似て綺麗な花を咲かせることからハナショウブという名前が付けられました。
湿った土地を好むハナショウブは6月頃に白色や紫色、青色、ピンク色、黄色などのきれいな花を咲かせ、梅雨時期の代表的な花のひとつです。アヤメの種類の中でも花の色が多彩なのは、品種改良されて誕生した種類だからと言われています。
ハナショウブの花言葉は「嬉しい知らせ」「優雅」「優しい心」「心意気」です。「優しい心」と「優雅」は、まっすぐ立った菊の上に垂れ下がるように優美で凛と咲く花姿からきています。
また、「心意気」という花言葉はハナショウブが5月5日の端午の節句に飾られることに由来しています。
イチハツ
イチハツは青紫色や白色の花を咲かせるアイリスで、外花破片の付け根に白いとさか状の突起があるのが特徴です。見頃は4月下旬~5月中旬とアヤメ属の植物のなかでは一番先に花を咲かせることから「一初(いちはつ)」という名前がつけられています。
原産地は中国で、室町時代に日本にきてからは観賞用として親しまれ、昔は農家の茅葺屋根の上にイチハツを植える風習がありました。また、イチハツの根茎は昔から鳶尾根として吐剤や下剤として使用されています。
イチハツの花言葉は「知恵」「付き合い上手」「火の用心」「使者」などです。昔はイチハツが火災や嵐などの自然災害から守ってくれると言われ、茅葺屋根の上に植えられていたことから「火の用心」という花言葉はきています。
ジャーマンアイリス
ジャーマンアイリスは花びらにひげのように見える部分があるのが特徴で、「ひげアイリス」とも呼ばれています。また、青色や紫色、赤色、ピンク色、オレンジ色、黄色など様々な色の花を咲かせることから「レインボーフラワー」という別名がついています。
また、アイリスの種類のなかでも一番華やかな花を咲かせ、匂いも良いのがジャーマンアイリスの特徴でもあります。イチハツと間違えられることも多々ありますが、ジャーマンアイリスはドイツを原産としてイリス・ゲルマニカを品種改良したアイリスです。
ジャーマンアイリスの花言葉には「情熱」「燃えるような愛」「素晴らしい出会い」「恋の便り」「エキゾチック」など、愛と関連する花言葉が多くあります。
少し強めの愛を意味する花言葉なので、異性にジャーマンアイリスを贈る際には少し注意が必要でしょう。
ダッチアイリス
ダッチアイリスはスパニッシュアイリスを品種改良したアイリスで別名「オランダアイリス」や「球根アイリス」とも呼ばれています。外側の花びらの綺麗な曲線がダッチアイリスの特徴のひとつで、青色や紫色、黄色、白色、オレンジ色などの花を咲かせます。
アヤメやカキツバタに形が似ていて目立ちますが、ジャーマンアイリスと比べると少し控えめな印象があり、色鮮やかで花束などにもよく用いられています。ダッチアイリスの見頃は4~5月頃で、少し乾燥した場所を好んで生息します。
ダッチアイリスの花言葉には「吉報」「優しい心」「使命」「伝令」などが挙げられます。アイリスの語源となった虹の女神・イリスが忠実な女性であったことから「使命」「伝令」という花言葉が付けられました。
シャガ
シャガは中国原産のアイリスで、かなり昔に日本に渡ってきたと言われています。4月下旬から5月中旬頃に見頃をむかえ、淡い青紫色の花びらに濃い紫と黄色の模様があるのが特徴です。
半日陰のやや湿った場所を好み、人家近くの森林の木陰にシャガはよく咲いています。シャガは人為的影響の少ない場所には自生しないと言われているので、森林にシャガが咲いていた場合、かつては人間が住んでいた場所であると考えられます。
シャガの花言葉は「決心」や「私を認めて」「反抗」「友人が多い」などです。「反抗」はシャガの葉に光沢があり剣のように見えることと日陰で花を咲かせることからきています。
また、「友人が多い」という花言葉はシャガは種子が無く根茎を伸ばして群落を作っていくことに由来すると言われています。
アイリスが描かれた作品
アイリスが描かれた作品のなかで一番有名なのが1889年にヴィンセント・ヴァン・ゴッホが描いた油彩作品「アイリス」です。
この油彩作品「アイリス」は、ゴッホがフランスのサン・ミレ修道院のサン・ポール・ドゥ・モウソーレ病院に入院し、療養しているときに描かれた作品のひとつです。
この作品は1889年5月にパリで行われたアンデパンダン展に出品され、現在はロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館が所有しています。ゴッホはアイリスをテーマとした作品をいくつか描いていますが、この作品が本作品と言われています。
ゴッホに愛された花
ゴッホはアイリスをテーマとしていくつかの作品を描いていますが、作品に描かれているアイリスは入院している病院の庭に自然と咲いていたアイリスです。ゴッホが好んで作品にしていた題材のひとつがアイリスと言われています。
「アイリス」という同じ題名の作品をいくつか描き、どの作品も青色の花びらや緑色の葉の美しさが特徴的な作品になっています。
ゴッホは作品で率直に感情を表現し大胆な色使いをすることからポスト印象派を代表する画家の一人ですが、この「アイリス」の作品にはそのような傾向はほとんど見られない珍しい作品です。
ゴッホとアイリスの関係
ゴッホは生涯を通じて水彩画約150点、油絵約860点、素描約1030点の作品を生み出しました。しかしゴッホは作品を作り続けることで、自身が精神的におかしくなっていると感じるようになります。
入院し療養しているときに、病院の庭に咲いているアイリスを描いていましたが、このときにはその症状が軽くなると感じ、ゴッホはアイリスのことを「私の病を軽くなるように導いてくれる指揮者」としています。また、「アイリス」の作品のことを「病気の避雷針」とも呼んでいました。
その他のアイリスが描かれた作品
ゴッホの「アイリス」以外にも、アイリスが描かれた作品がいくつかあります。例えば有名な画家の一人、クロード・モネの代表的な作品のひとつ「モネの家の庭、アイリス」があります。
この作品は1900年頃にモネが積極的に造園していた自宅の庭に咲いているアイリスの花を描いたものです。モネが自宅の庭を描いた作品は他にもいくつかありますが、「モネの家の庭、アイリス」が代表作で多くの人に親しまれています。
モネは「私は花のおかげで画家になれたのであろう」と話し、花の自然な美しさを作品に描いています。
アイリスの花言葉はポジティブなものが多い!
アイリスは日本でも馴染みのあるアヤメやカキツバタ、ハナショウブ、ジャーマンアイリスなどの植物の総称のことを言い、どの種類も紫色や青色、白色を中心に綺麗な花を咲かせ、昔から親しまれてきました。
虹の女神・イリスが語源になっていることから花言葉もギリシャ神話からきているものが多く、ポジティブな意味を持つ花言葉がたくさんあり、プレゼントなどでもよくアイリスの花は用いられています。
アイリスの花の色別や種類別でも花言葉が異なるので、もし誰かに花束を贈るときには相手に合った花言葉を持つアイリスの花を贈ってみてはいかがでしょうか。