「おっしゃる通り」の正しい敬語の使い方
誰かが何かを言った時に「おっしゃる通り」という言い方をして同意をすることがありますが、「おっしゃる通り」という言い方は敬語としてOKなのかどうかが分からないという人も少なくありません。
「おっしゃる通り」という言い方を目上の人に対して使ってはいけないと思っている人が結構いますが、「おっしゃる通り」は敬語なのでしょうか。
「おっしゃる通り」は目上の人などに対しても使うことができるのかどうか、「おっしゃる通り」の正しい敬語の使い方についてご紹介しましょう。
おっしゃる通りは目上の人にも使える
「おっしゃる通り」の「おっしゃる」は「言う」の敬語表現で、「通り」は相手に対して同意する場合や同調する場合に使う言葉ですので、「おっしゃる通り」は正しい敬語表現だと言えます。
そのため「おっしゃる通り」を目上の人に対して使うのは間違った敬語の使い方にはならず、目上の人に対しても「おっしゃる通り」を使うことができます。
目上の人から言われた意見などに対して同意する場合、「おっしゃる通りです」というように返事をすると、ちゃんとした敬語表現になります。
目上の人に使う時の注意点
「おっしゃる通り」という言い方は敬語表現ですので目上の人に対して使うことができますが。目上の人に「おっしゃる通り」と言う場合には注意点もあります。それは「ね」をつけてはいけないということです。
「おっしゃる通りです」なら目上の人に言っても良いですが、「おっしゃる通りですね」というように「ね」をつけると失礼になります。
「ね」は自分の意見を主張したい場合に文末につけるので、目上の人に対して「おっしゃる通りですね」というのは相手に対して失礼に当たります。
「おっしゃる通り」を目上の人に対して使う場合には「ね」をつけてはいけないというのが「おっしゃる通り」の注意点です。
おっしゃるは漢字表記するべきなのか
「おっしゃる通り」の「おっしゃる」は漢字表記すると「仰る」になりますが、「おっしゃる通り」は平仮名表記されることの方が多く、漢字表記はあまりされません。
漢字が多く堅い印象の文章が並んでいる新聞でさえ、「おっしゃる」は平仮名表記されることの方が多いです。
「おっしゃる通り」を「仰る通り」と漢字表記しても間違いではありませんが、「おっしゃる通り」というように平仮名表記されることの方が一般的ですので、平仮名で書く方が良いでしょう。
「おっしゃる通り」の例文
「おっしゃる通り」の正しい敬語の使い方についてご紹介しましたので、次は「おっしゃる通り」を使った例文についてご紹介します。「おっしゃる通り」は敬語ですので、目上の人に対して使うことができます。
ですが、「おっしゃる通り」をその一言だけで使ってしまうと逆に失礼になってしまうという場合もあります。
目上の相手から何か意見などを言われた時に、「おっしゃる通りです」と言っておけばそれで良いというわけではないということです。
「おっしゃる通り」を実際にどのように使えば良いのか、「おっしゃる通り」の例文についてご紹介しましょう。
上司からの指摘に対しての例文
「おっしゃる通り」の例文の一つ目は、上司からの指摘に対しての例文です。上司から「ここ間違ってたよ」などと指摘された場合にも「おっしゃる通り」は使えますが、使い方には注意が必要です。
上司からの指摘に対して「おっしゃる通り」を使う場合には、「おっしゃる通りです。申し訳ありません。今後注意いたします」という例文が挙げられます。
上司から何か指摘されたときに単に「おっしゃる通りです」と言うだけだと、上司は「反省が感じられない」などと思ってしまいます。
そのためこのような場合には「おっしゃる通りです」の後に反省と今後心掛けることを表す文章を続けます。
誰かの言葉を借りる時の例文
「おっしゃる通り」の例文の二つ目は、誰かの言葉を借りる時の例文です。誰かの言葉を借りる時の例文として「課長のおっしゃる通り、事務員でも営業的な役割を果たすべきであると考えます」という例文が挙げられます。
これは先に課長が「事務員でも営業的な役割を果たすべきだ」と言ったことを引用する使い方での「おっしゃる通り」で、課長に対する同意を表すと同時に、その言葉を借りるといった使い方です。
「おっしゃる通り」という言い方は相手の言ったことに同意する使い方をしますが、単に同意するだけではなく誰かの言葉を借りる場合にも使えるということです。
取引先との商談の例文
「おっしゃる通り」の例文の三つ目は、取引先との商談の例文です。取引先から製品の値上げなどについて「予算的に値上げは困るよ」などと言われた場合にも「おっしゃる通り」という言葉を使うことができます。
こういった場合には「おっしゃる通りです。申し訳ございません。ですが消費増税によって原料の値上げもあり、どうしても製品の値上げも避けることができません」といった答え方ができます。
「おっしゃる通り」は相手の意見に同意する使い方をしますが、その後にどのような文章を続けるのかが大切です。
相手の意見通りにしてあげることができなくても、まずは「おっしゃる通り」と言うのが、取引先への気持ちを表します。
「おっしゃる通り」を使う時の注意点
「おっしゃる通り」の例文についてご紹介しましたので、次は「おっしゃる通り」を使う時の注意点についてご紹介します。「おっしゃる通り」は敬語表現で相手に同意する言い方ですが、注意点もあります。
日本語の敬語は実はかなり使い方が難しく、正しい敬語表現を完全にマスターしているという人は意外に少ないです。
そのため「おっしゃる通り」という敬語も、正しい使い方で使えていないという人も少なくありません。
「おっしゃる通り」を使う時にはどのような点に注意すれば良いのか、「おっしゃる通り」を使う時の注意点についてご紹介しましょう。
社外の人には使えない
「おっしゃる通り」を使う時の注意点の一つ目は、社外の人には使えないという点です。社外の人の意見に同意する場合には使えますが、社内の人間が言ったことを参照するような場合には社外の人には使えません。
例えば自社の部長が言った言葉を借りて何かを言う場合、社外の人に「部長のおっしゃる通り」といった言い方をしてはいけません。
社外の人に対して、社内の人間の方を立てるような言い方になりますので、社外の人に対して自分の上司などが言った言葉を借りて何か言う場合に「おっしゃる通り」と言うのは間違いですので注意しましょう。
言葉を続けるのはNG
「おっしゃる通り」を使う時の注意点の二つ目は、言葉を続けるのはNGということです。「おっしゃる通りです」と言ったら、まずは謝罪の言葉を続けて言わなければなりません。
「おっしゃる通りです」の後すぐに「ですが」と言ってしまうと、本当に「おっしゃる通り」だと思っているのかどうか疑わしいと相手に思われてしまいます。
何か言われたときに「おっしゃる通りです」と言ったらまずは謝罪や反省の言葉を続け、何か反論があるならその後に述べましょう。
「おっしゃる通りです」の後は謝罪の言葉や反省の言葉を続けるのが大切ですので、覚えておきましょう。
「おっしゃる通り」の類語・言い換え表現
「おっしゃる通り」を使う時の注意点についてご紹介しましたので、次は「おっしゃる通り」の類語や言い換えについてご紹介します。「おっしゃる通り」という言葉にはいくつかの類語や言い換えがあります。
「おっしゃる通り」は敬語表現ですので、「おっしゃる通り」の類語や言い換えも敬語表現の言葉になります。
「おっしゃる通り」の類語や言い換えにはどのような言葉があるのか、「おっしゃる通り」の類語や言い換えやその意味についてご紹介しましょう。
仰せの通りの意味と使い方
「おっしゃる通り」の類語や言い換えとその意味の一つ目は、「仰せの通り」の意味と使い方です。「仰せの通り」というのは、時代劇などの中でとても身分の高い人に対して使われる言葉として知られています。
「仰せの通り」は意味的には「おっしゃる通り」とほぼ同じで「あなたの言う通り」という意味になりますが、かなりの身分差がないと使われません。
そのためビジネスシーンなどでは「仰せの通り」などという言い方はしませんので、「仰せの通り」は「おっしゃる通り」の類語ではありますが「おっしゃる通り」の言い換えにはならないと言えます。
お伝えするの意味と使い方
「おっしゃる通り」の類語や言い換えとその意味の二つ目は、「お伝えする」の意味と使い方です。取引先から電話がかかってきたときなどに目的の相手が不在だった場合「お伝えしておきます」などと言います。
「お伝えする」は一見すると「おっしゃる通り」とは全く違う言葉ですが、使われる場面などが似ていることから、「お伝えする」も「おっしゃる通り」の類語と言えます。
「あなたの言う通りに伝えます」といった意味で使われますので、「お伝えする」も「おっしゃる通り」の類語に分類されています
言われるの意味と使い方
「おっしゃる通り」の類語や言い換えとその意味の三つ目は、「言われる」の意味と使い方です。「おっしゃる」は「言う」の敬語表現ですが、「言われる」も「言う」の敬語表現です。
そのため「言われる」も「おっしゃる通り」の類語と言えますが、「言われる」だけでは「おっしゃる通り」の言い換えにはなりません。
「言われる通り」というように「言われる」の後に「通り」をつければ、「言われる」は「おっしゃる通り」の類語になり、言い換えることもできます。
ですが「言われる」よりも「おっしゃる」の方が一段上の敬語表現になりますので、「おっしゃる通り」の方が良く使われます。
おっしゃるの英語表現
「おっしゃる通り」の類語や言い換えとその意味の四つ目は、「おっしゃる」の英語表現です。「おっしゃる」だけではなく日本語には英語に翻訳することが難しい敬語表現がいくつもあります。
「おっしゃる通り」を英語表現したくても、「おっしゃる」に当たる英語はありません。それは、英語には謙譲語などというものがないからです。
そのため「おっしゃる」を英語表現する場合には単純に「say」や「talk」といった「言う」「話す」を表す英語を使います。
「おっしゃる通り」を敢えて英語で言うなら「As you say」となりますが、これは「あなたの言う通り」の直訳です。
「おっしゃる通り」と間違いやすい表現
「おっしゃる通り」の類語や言い換えとその意味についてご紹介しましたので、次は「おっしゃる通り」と間違いやすい表現についてご紹介します。「おっしゃる通り」は敬語ですが、意外に間違って使われやすいです。
「おっしゃる」は「言う」の敬語表現ですので、ストレートにそのまま使えば良いのですが、「もっと丁寧に」と余計な気を回してしまうと、間違った使い方をしてしまう場合も多いです。
「おっしゃる通り」の間違いやすい表現とはどのようなものなのか、「おっしゃる通り」と間違いやすい表現についてもご紹介しましょう。
おっしゃられるでは2重敬語になってしまう
「おっしゃる通り」と間違いやすい表現の一つ目は、「おっしゃられる」です。これは「おっしゃる」に「られる」をつけることによって、より敬語らしくしようとして間違うことのある表現です。
「おっしゃる」だけでも敬語なのに、これに「られる」をつけると2重敬語になってしまうのですが、意外にこの間違い方をしている人は多いです。
少しでも丁寧な言い方をしようと頑張るのは良いのですが、2重敬語は間違った使い方ですので、「おっしゃられる通り」と言ってはいけません。
使い慣れない敬語を頑張って使った結果、いらない恥をかくことになりますので、2重敬語には注意が必要です。
おっしゃりましたは誤用
「おっしゃる通り」と間違いやすい表現の二つ目は、「おっしゃりました」です。「おっしゃる通り」を「おっしゃりました通り」などと言う人もいますが、これも完全に間違った言い方です。
「おっしゃる」に「ました」をつける場合には「おっしゃりました」ではなく「おっしゃいました」が正しいです。
単純に「おっしゃる」に「ました」をつければ良いと思っている人は「おっしゃりました」というような間違いをしてしまいますが、これは誤用ですので気をつけましょう。
偉い人などを前にして敬語を使おうと頑張ってしまった結果、間違った敬語の使い方をする人は結構いますので注意が必要です。
「おっしゃる通り」は正しい敬語なので目上にも使える
「おっしゃる通り」の正しい敬語の使い方や「おっしゃる通り」を使った例文、「おっしゃる通り」の類語や言い換えなどについて色々とご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。
「おっしゃる通り」は正しい敬語ですので目上の人にも使えますし、そのまま使うなら使い方はとても簡単ですが、頑張りすぎて2重敬語などの間違った使い方をしないよう、「おっしゃる通り」を正しく使いましょう。