内省の意味とは?
「内省」するという言葉をよく見聞きしますが、この「内省」という言葉の意味をご存知でしょうか?「内省」とは自分自身の考えや行動を深く鑑みることを意味します。
私たちが生活する日常生活では、「内省」をする場面といえば、どんなシーンが想像できるでしょうか?今回は「内省」という言葉をフォーカスしていき、それがどんな特徴やメリットを持ち、他の似たような言葉とどんな違いがあるかをご紹介していきます。
内省は古くからの概念
「内省」に関する歴史上の記録としては、実は今から約三千年以上前まで遡ります。古代ギリシア時代、デルポイという都市国家(ポリス)のアポロン神殿には、「汝自身を知れ(なんじじしんをしれ)」と刻まれています。
この「汝自身を知れ」という言葉は、普段自分自身が生活する上で、その行為や道徳、資質や気質を理解し、怒りなどの感情をコントロールすることを指しており、「内省」という言葉に通じる格言とみなされています。
現代においても、セルフマネジメント(self-management)、アンガーコントロール(anger-control)などの外来語が日本においても使われてビジネスシーンなどでも広く知られるようになりました。前者の意味は「自己管理能力」後者の意味は「怒りの抑制」になります。
上記の2つの現代用語でもわかるように、「自己の感情」は、現代社会でも重きを置かれる存在です。「自己の感情」をコントロールすることはビジネスシーンにおいてもとても大切な要素で、「内省」はその現代のニーズにも深く関わりをもつ言葉です。
内省の特徴
では「内省」という行為は、具体的にどのような特徴を指すのでしょうか?日常生活で「内省」的であることを見極めるために、特徴をピックアップして見てみます。
以下の特徴を自分自身や身近な他人に当てはめて見て、「自分は内省的か?」「この人は内省的だ」と判断材料になれば幸いです。
自分を理解し大切にしている人
「内省」的な人の特徴として最初にあげられるポイントは「自分自分を理解し、大切にしている」というところです。「内省」とは先述の通り、自分自信の行為や考えを鑑みることです。そこには深い洞察力が働きます。それにより自己分析力が培われることになります。
上記のような自己分析力を持つということは、自分のキャパシティが自分で測れるということです。「これ以上は無理だな」とか「これは自分の得意分野だ」とか日常生活やビジネスシーンでそれぞれが自分にできるかどうかを測れることにもつながる要素となります。
例えばビジネスシーンで、「価格折衝」などの業務が発生したとします。自分自信を理解し、大切にする人はその業務が自分に合ってると判断したならば、率先して価格折衝をすることが可能です。また、リスクを負うような方法に頼ることはなく、正攻法で折衝することができます。
一つの物事にこだわる人
「内省的」な人の2つ目の特徴としては。「一つの物事にこだわる人」が挙げられます。「内省」することができるこということは、「とことん考える」という思索が働くケースもあるのです。
一つのことを納得し、次に進むのが特徴で、あまり何も考えずにコミュニケーションをとる人とは違いがあります。このように「考えて、しみじみ納得する」ことが必要なため、安易な妥協は許しません。しかし、いったん納得すればその納得した物事のスキルには目を見張るものがあります。
例えば「物づくり」などの業務では、一つの物事にこだわる人は一つの業務(作品)に注力します。他の業務との掛け持ちなどはしませんが、その業務を完遂するまでの集中力、遂行力、そして、業務内容のレベルの高さは優れたものがあります。
自分に厳しく向上心が強い人
「内省」的な人の3つ目の特徴としては、「自分に厳しく向上心が強い人」が挙げられます。自分自身の考えや行為について深く鑑みるということは、自分の過去の行動、考えをチェックしていることです。良い部分だけではく、悪い部分にも目を背けることはしません。
そのようにセルフチェックをし、自分自身を律して、常により良い物を良いパフォーマンスを追求するので、他人からはストイックで、信頼のおける人として尊敬されるケースが多々あります。
ビジネスのシーンなどでも、目先だけのパフォーマンスで終わりにせず、常に検証するPDCAがしっかりしていることもその特徴の一つに挙げられます。つまり、P(Plan)計画し、D(Do)行動し、C(Check)検証し、A(Act)改善する一連のサイクルが確立しています。
上記のような人は企業などでも有益な人材として重宝されます。常に向上心を忘れないため、外形的な実績のみならず、仕事に取り組む姿勢は率先垂範として見習われる存在たり得ます。
自分に自信が持てず不安を感じやすい人
「内省」的な人の4つ目の特徴としては、「自分に自信が持てず不安を感じやすい人」が挙げられます。「内省」する行為は自分の考えや行動を深く鑑みることであるので、自己洞察力が強いことは先述しました。
「自分に自信が持てず不安を感じやすい人」は自己洞察力だけではなく、感受性も強い人によく起こりうる特徴と見做されています。
つまり、自分自信の過去の行動や考えの過ちに気付いてしまったために、これからの行動や考えにも疑念が働き、自信や安心感を得られないことにつながります。
ビジネスの世界はシビアな一面もあり、外形的な結果を重んじます。たとえ自己分析をすることができても、自分のウィークポイントに目が行ってしまい過ぎて、今後のパフォーマンスにつなげられず、思うように結果が伴わない人がいることも事実です。
しかし、感受性が豊かであることは、そもそも人間性が豊かである証拠です。業務によっては、その深い「内省」がこの上ないパフォーマンスに結実します。
例えばアーティスティックなどのクリエーティブな業態では、そんな負の側面も作品に昇華できるので、一概にデメリットとは言えません。
内省の反省の違い
「内省」と似たような言葉に「反省」という言葉があります。「内省」と「反省」この両者の違いはどこにあるのでしょうか?まずはそれぞれの意味を確認していきます。
「内省」は先述した通り、自分自信の考えや行動を深く鑑みることです。これに対して「反省」は自分の行動や考えの良くなかった点を意識し、それを改めることを意味します。「内省」と「反省」という2つの言葉は、それぞれの意味を比べて見るとその違いが見えてきます。
「内省」については、自分の考え・行いを鑑みる範囲は、良い面、悪い面問わず全てに及びます。一方「反省」については、自分の考え・行いを鑑みる範囲は、悪い面に限定していることが上記の意味を見比べた際にわかります。
一見同じような意味に捉えがちな「内省」と「反省」ですが、「反省」は「内省」と違い、鑑みる範囲が限定されていることが明らかになりました。
実際、学校や職場などで反省文を書く際、その内容は「行為や考えの過ち」と今後「再度同じことをしないための心構え」を書くことになるように、あくまで、過去を鑑みる際は悪い点だけです。今後「内省」と「反省」の言葉が出てきた際は意識して、上手に使い分けしてみてください。
内省と内製も違う
「内省」と同じ読み「ないせい」でも意味の違いがある言葉が「内製」です。この「内製」はよく「社内内製化」などの言葉でビジネスシーンで使われる言葉です。「内製」と「内省」との違いにも触れておきます。
「内製」は「自社の内部で製造すること」を意味する言葉です。例えば、自動車の部品製造など、今まで外部委託していた商品を自社で製造することにより、外注費のコストカット、短納期、提供価格の見直しが期待できます。
「内製」は英語ではインソーシングという言葉で表され、アウトソーシング(外部委託)の対となる言葉です。「内省」との違いのみならず、「内製」という言葉をビジネスシーンなどでお目にかかる際は是非参考にしてください。
内省のメリット
ビジネスシーンでも注目されている「内省」。この「内省」にはどんなメリットがあるのでしょうか?次は「内省」の具体的なメリットに触れていきます。
ビジネスシーンにおいて、「内省」とは「リフレクション(self-reflection)」という言葉で捉えられます。この「リフレクション」とは自分自身の業務から離れて見て、一度業務に対する行動や考え方を客観的に振り返ることを指します。
「リフレクション」は人材育成という分野においても、自分を客観視し、気づきを経て、次のより良い行動につなげる契機になる点で効果的で効率的であるという評価をされている方法論です。今回は実際の日常生活に役立ててもらえるように「内省」のメリットを挙げていきます。
経験則に照らした行動ができる
「内省」のメリットの1つとしては、「経験則に基づいた行動ができる点」が挙げられます。「内省」することは先述の「リフレクション」で触れたように、自分を客観視して、良い面、悪い面を分析する俯瞰的な目を養うことにつながります。
自分を客観視することは、過去の行動を記憶の中で留めるだけではなく、未来の行動につなげる契機させることができます。この経験の積み重ねがより適切な行動として結びついていきます。
この経験はリスクヘッジという観点からの重要なファクターです。先述した「自分を理解し大切にしている人」でも触れたように、危険を避け、出来るだけ会社に不利益となる可能性のある「危ない橋は渡らない」判断を下すこともできるのです。
人に優しく謙虚な姿勢を保てる
「内省」的である2つ目のメリットとしては、「人に優しく謙虚な姿勢を保てる」ことが挙げられます。自分の考えや行動を俯瞰的に鑑みることは、自分のウィークポイントを知ることにあります。
先述の「自分に厳しく向上心が強い人」でも触れたように、自分のウィークポイントに目を背けず、しっかり目つめることができ、自分が至らない部分を経験として今後の反省材料として痛みを伴い記憶しています。
結果、他者の過ちも自分が過去経験した痛みとして理解し「人の痛みがわかる」優しさが備わった人格になり得ます。
また、自分のウィークポイントを知っているので、今の自分のキャリアに安住せず、常に謙虚で物事に取り組む人である場合が多いのも特徴です。
新しい分野を吸収し成長する
「内省」的である3つ目のメリットとしては、「新しい分野を吸収し成長」する事が挙げられます。先述したように、「内省的」な人は常に謙虚に物事を捉えることができるので、未知の分野に取り組む際は、自分の物となるように貪欲に知識、技術を吸収しようとします。
また、先述したように「一つの物事にこだわる人」が多いのも特徴的で、一つの物事にしみじみ納得し、とことん掘り下げをしていきます。その物事へのこだわりが新しい技術や知識を吸収し、成長する原動力たり得るのです。
内省を行う上での注意点
今まで、「内省」の意味、他の類語との違い、特徴、メリットを紹介してきましたが、「内省」を行う場合はメリットだけでは無く、デメリットにも目を配る必要があります。
今回は「内省」を行う場合の注意点を見ていきます。どんな方法でも「内省」すれば良いわけでは無いのです。「内省」を行う際、どのような方法に注意すれば良いのか紹介していきます。実際に「内省」を行う際の参考にしていただき、正しい方法論で「内省」を行うようにしてください。
ネガティブな部分だけに固執しない
「内省」を行う上で大切なことの1つに自分自身の「ネガティブな部分だけに固執しない」ことが挙げられます。「内省」は考えや行動を鑑みることですが、その過程には「良い面」も「悪い面」も含まれています。
「内省」をする際、その「悪い面」のみをクローズアップしてしまうと、自己否定や自信喪失につながりますので、「内省」をする方法としては間違いです。
正しい「内省」の方法としては、「良い面」「悪い面」を分け隔てなく、客観的に分析することです。自分の中の「良い面」を認めつつ、「悪い面」を改善するバランスこそが、効果的な「内省」をする方法となります。
できる事とできない事を峻別する
「内省」を行う上で、もう1つ大切な事は「できる事とできない事を峻別する」ことです。これは意識的に「内省」を行う上で挫折しない方法となります。
例えば「内省」を行った結果、多くの「悪い点」が発見されたとします。今現在の自分の技術、経験、知識と照らし合わせて見て、全てを次回までの改善すべき課題として、消化できればいいですが、そうもいかないことも多々あります。
そういう場合は、無理のない程度に「できない事」を次回以降に廻し、「できる事」をピックアップする事も一つの方法論です。
こういう方法であれば無理ない「内省」が行われることにつながり、次回の「内省」へのステップアップになります。
内省は自分を鑑みるという意味
今まで内省の意味、類語との違い、特徴、メリット、注意点を見てきました。「内省」は簡潔に言うと「自分を鑑みる」ことで、そこには「良い面」「悪い面」がどちらも必ず含まれます。
正しい方法で「内省」を行えば、たくさんのメリットを享受することができるのです。ビジネスシーンや日常生活で「内省」を是非取り入れてみて下さい。