「にべもない」語源と意味を解説!使い方も例文で分かりやすくチェック!

「にべもない」語源と意味を解説!使い方も例文で分かりやすくチェック!

「にべもない」。日常会話ではあまりなじみのない言葉です。どんなニュアンス?そもそも「にべ」って?語源をたどりつつ、正確な意味や使い方を紹介します。一見変わった響きの言葉ですが、語源を知れば、「にべもない」のニュアンスが見えてきます。

記事の目次

  1. 1.「にべもない」の意味とは?
  2. 2.「にべもない」の語源
  3. 3.「にべもない」の英語表現
  4. 4.「にべもない」の使い方
  5. 5.「にべもない」の注意点
  6. 6.「にべもない」は「相手を受け入れない」という意味

「にべもない」の意味とは?

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「にべもない」。日常会話の中では耳にしたり、言ったりする機会があまりないのではないでしょうか。言葉の意味や語源、どんなニュアンスで使うのか、などなど、よくわからない言葉だと思っている方もあるかもしれません。

「にべもない」は、「愛想がない」、「そっけない」、「取りつく島もない」といった意味があります。話しかけられたり、厚意を示されたのに、それに応じない、答えない、拒絶するといった状況を表わす言葉です。

「にべもない」の直接の語源は「魚がない」こと

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「にべもない」の直接の由来は魚です。「にべ」というのは魚の名前で、ちなみにスズキ目のやや大ぶりの魚です。そして「にべもない」の「も」は、「犬も猫もいる」などの「も」ではなく、打消しの語と否定語と結びついて強い否定を表わす関係助詞です。

つまりストレートな意味としては、「にべなどない!」といったニュアンスになります。なぜ、魚がないことが、転じて「不愛想」や「取りつく島もない」などの意味で使われるのか、それについては、次のトピックで、由来や語源とともに解説します。

「にべもない」の語源

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では、「にべもない」の由来と語源を解説しましょう。「にべ」は魚名であると解説しましたが、「にべもない」の「にべ」は、魚そのものではなく、「にべ」から取る「膠(にかわ)」に由来しています。

膠とはいわゆるゼラチンのことで、古くから建築物や細工物を作る際の、接着剤として利用されてきました。にべは、浮き袋を煮ると、粘着力の強い良質のゼラチンが取れるため、膠の原料として広く利用されました。

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そのうちに、魚の「にべ」は膠の代名詞として使われるようになります。そして、膠のべたべた粘着する性質から、転じて「にべ」という魚名は、人と親しくかかわったり、親密に接触することの語源になりました。

そこから、逆に、人との接触を拒絶するとか、愛想がないといった意味で、「にべ」がない、「にべもない」と使い方が転じていったのです。

もともと「にべ」の語源は膠から

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「にべもない」の語源や成り立ちを解説しましたが、そもそも「にべ」という魚名の語源自体が、実は膠に由来しています。和歌山から三重の一帯では、魚の浮き袋のことを「へ」と呼び、膠を取るために「へ」を煮ることから、「にべ」という名前になったとされています。

「にべ」は漢字で書くと「鰾膠」。「鰾(浮き袋)」と「膠(にかわ)」が組み合わさった字です。「にべもない」の由来、語源を考え合わせると、この魚と膠の強いかかわりがわかります。

膠の歴史と語源

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接着剤として動物から取ったゼラチンを使う歴史は古く、紀元前5000年前のメソポタミアに由来するともいわれます。膠は動物の皮や骨を煮て作りますが、膠の語源は「皮」を「煮る」ことともいわれます。「にべ」の語源と共通点が見られます。

日本には中国を経て6世紀頃伝わりましたが、しかし日本では、動物の肉をあまり食べないという食生活の関係から、動物よりも、前述のように魚を使ってゼラチンを取る方法が主流になって行ったようです。

ちなみに、ゼラチンといえば現在はゼリーなど食材としてのほうがよく知られていますが、食用になった歴史は驚くほど浅く、1800年代にヨーロッパで一般化したのがはじまりのようです。なお余談ですが、ゼラチン料理を普及させたのはかのナポレオンであるとか。

「にべもない」の同義語とその語源

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「にべもない」と同じような意味、使い方のできる同義語を、いくつか紹介します。「けんもほろろ」は「人の頼み事や相談事などを無愛想に拒絶するさま」です。「けん」はキジの鳴き声、「ほろろ」は羽音と言われており、キジが鳴いてぱっと飛び去る様子が語源になってるようです。

「歯牙にもかけない」は「無視して相手にしない」、「問題にしない」という意味です。「歯牙」は口のことで、論じるまでもないというのがもともとの意味です。

「すげない」は「愛想がない」、「思いやりがない」という意味です。もとは「ゆかりがない」を意味する「よすががない」という形でした。

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また、「にべもしゃしゃりもない」という言葉もあり、これは同義語ではなく、「にべもない」を強調した言葉です。「しゃしゃり」は「さっぱりしていること」。

粘り気もないし、代わりにさっぱりしたところもない、というのが語源で、そこから、愛想も何もない、まったく取りつく島もない、のような意味になります。

「にべもない」の英語表現

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英語には、「にべもない」にそのまま相当する言葉はありません。「にべもない」は「走る」のように行為を表わす語ではなく、状態を表わす語なので、表現したい内容に応じて、「そっけない」、「愛想がない」など、別の語に言い換えてから訳す必要があります。

「にべもない」に相当する英語と語源

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「彼はにべもない返事をした」。これは、「そっけない返事」または「ぶっきらぼうな返事」というニュアンスになりますので、「He answered curtly.(彼はそっけなく答えた)」です。「curtly」はもともと短い、とか、簡略な、という意味です。

「にべもなく断られた」。これは、「取りつく島もなく断られた」とか「けんもほろろに断られた」というニュアンスです。「My request was flatly refused.(要求はきっぱりと断られた)」。

「flat」は平らなどの意味が基本ですが、拒否の文に使うと、「きっぱりと」といった意味になります。拒否を強調するので、「にべもない」にいちばん近い語といえるかもしれません。

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「彼女は彼に対してにべもなかった」。彼を無視して問題にしていない、歯牙にもかけない、というニュアンスです。英語で言うと、「She paid no attention to him.(彼に注意を払わなかった)」や「She just ignored him.(彼を無視した)」となります。

「にべもない」はいろいろなニュアンスを含んだ言葉なので、英語で言おうとすると、少し意味がずれることがあることに注意してください。

「にべもない」の使い方

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同義語からもわかるように、「にべもない」は、使う状況によって、「愛想がない」、「相手にしない」、「強く拒否する」など、ニュアンスが少しずつ変化します。いろいろな状況を設定し、そうした状況では「にべもない」がどのようなニュアンスで使われるのか、使い方を紹介しましょう。

例文①

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まずは、「愛想がない」や、「そっけない」、「ぶっきらぼう」などの意味での使い方です。例文としてはこのようになります。「彼は普段から愛想がない。今朝も『おはよう。』とこちらから挨拶してみたが、『うん。』と言ったきり、にべもなかった。」

「にべもない」はどちらかというと重たい言葉ですが、この使い方は、シンプルに、相手の様子や態度がそっけない、ということを表わすニュアンスになります。

例文②

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一方、同じ「にべもない」でも、使い方によっては、人間関係に齟齬(そご)が起きている状況を表現することもできます。たとえば以下のような例文。

「昨日のことを謝ったが、こちらを一瞥しただけで、にべもない態度だった。」これは、「無視する」というニュアンスがあります。

「彼女を食事に誘ってみたけれど、返事はにべもなかった。あきらめた方がよさそうだ。」またこの例文の場合は、「相手にしない、軽視する」といったニュアンスの表現です。

例文③

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冒頭で述べたように、「にべもない」は、相手からの働きかけを断ったり、拒絶するといった意味が基本です。また、相手を軽んじるといった意味も潜在的に含まれますので、拒否、拒絶の状況で「にべもない」を使うと、かなり強い、または厳しいイメージの文になります。

「思い切って父にお金を貸してほしいと言ってみたが、にべもない言葉が返ってきた」、「何とか話し合いだけでもと思い、電話をしたが、にべもない様子で切られた」などです。

例文④

このように、いろいろな意味、ニュアンスを含んだ「にべもない」ですが、4つ目は、それらのいろいろな意味のほとんどを含んだ例文を紹介します。中里介山の長編小説「大菩薩峠4巻 三輪の神杉の巻」に登場する一文です。

主人公、机竜之介は剣術の達人ですが、虚無的な内面を持ち、各地を放浪しながら辻斬りをくり返している男です。あるとき、旅籠に泊まった竜之介は、隣の部屋に入った武士たちが、二部屋使いたいので隣の客(竜之介)をよそへ移してくれ、と言っているのを耳にします。

やがて女中さんが来て風呂をすすめ、ついでに、隣の部屋がうるさくなるので、別の部屋を案内します、と申し出ます。しかし竜之介は、「風呂はまだいい」、「部屋はここでいい」、「うるさいのはにぎやかでよろしい」と突っぱねます。

ここで、中里介山は竜之介の応対を「にべもない言葉」と書いていますが、確かに竜之介の態度には「にべもない」のいろいろなニュアンスがまとめてこもっています。まず、女中さんが、事を荒立てないようにやんわりと申し出たのをぴしゃりとはねつけるのは「取りつく島もない」態度です。

また、竜之介は前述のような人間なので基本的に不愛想、勝手な申し出に気分を害しているようので、答え方も自然とそっけなくなります。そして、剣の腕が立つので、隣室の武士たちの都合ははじめから軽視している、無視している様子もうかがえます。

実際、このあと直接部屋に来て、部屋を譲るように申し出た武士たちを、竜之介は「気狂い」呼ばわりし、刀を引き寄せて斬り捨てる様子さえ見せます。これなどは、「にべもない」が行くところまで行き着いた例文といえるでしょう。

「にべもない」の注意点

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「にべもない」は、何度が解説しているように、「相手の働きかけを断る、拒絶する」というのが基本的な由来です。そのため、言葉や態度、気持ちなど、相手からの働きかけがまずあって、それを拒否する、というのが、正確な使い方です。

たとえば「泣く」のように、自分一人だけで行う行為、状況には「にべもない」は使うことはできません。また、「怒る」のように、こちらから相手に積極的に行為を行っているような状況の場合も、「にべもない」を使うと不自然になります。

「にべもない」は「相手を受け入れない」という意味

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そっけない、歯牙にもかけないなどの意味を持つ「にべもない」ですが、根本的な意味は、何度も述べてきたように、相手から向けられた厚意や言葉、行為を拒否することです。

これは、それだけではなく、相手を受け入れない、ということにもつながりますので、かなり険悪な態度、ということになります。よほどのことがない限り、「にべもない」態度は取らないほうがよいでしょう。

李孟鑑
ライター

李孟鑑

WEBライター歴は6年ほどです。 色々なお仕事を通じて、執筆できるジャンルを広げていけたらと思っています。

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