11月の季語と異名
暦には1月から12月までの各月に季語と異名があることをご存じでしょうか。春夏秋冬と季節や天候が変わるのが日本の気候ですが、季節によって周りの環境が移り変わり、私たちの生活も変わってきます。
夏になれば暑さに適した生活をし、冬になれば寒さに適した生活をします。それと同様に季節によって表現する言葉を季語といい、その月を別名で表現することを異名(異称)と言います。
では、11月の季語や異名はどのように表現されているのでしょう。11月の時候の挨拶に使用するための季語や異名を挙げてみます。
11月の季語の一覧
11月の時候の挨拶で使用する季語にはどのようなものがあるのでしょうか。秋から冬に移り変わる11月には、秋を示す季語と冬を示す季語があります。以下ではそれぞれの季語をご紹介します。
時候の挨拶の代表的な季語は霜降・晩秋・暮秋・小雪・落葉・枯葉・紅葉・向寒などがあります。また、動物では鷹(わし)・隼(はやぶさ)・鷲(たか)・鼬(いたち)です。
イベントや植物に関する季語であれば、酉の市・文化祭・七五三・九州場所・大根・菊花・牡蠣・山茶花(さざんか)・銀杏・イチョウなどもあります。また、12月が近づくという意味を込めて師走や年賀はがきなどを使用しても良いでしょう。
11月の異名の一覧
古くから月を表現する名称(異名)があります。現在は11月といった何月で言われるのが主体となっていますが、11月の異名にはどのようなものがあるのでしょうか。時候の挨拶では季語の他に異名を使用する場合もあるので意味も含めてご紹介します。
よく耳にする代表的な異名は霜月(しもつき)です。寒さも増し、霜が降りる季節になってくるのが11月ということから霜月との異名を持ちます。
その他にも、神帰月(かみかえりづき)は10月(神無月)に全国の神が出雲大社に集い1年を話し合った後に、神が国に帰って来る月を表します。また、神楽月(神楽月)は、11月は神前で歌や舞を奉納する事が盛んに行われる月であることからこのような異名を持ちます。
11月の時候の挨拶と手紙の書き出し文例・例文
SNSの普及によって手紙を使用するという機会が減っているのが現代社会です。しかしながら、社会人になると何かと手紙や挨拶文などに時候の挨拶を添える場面があります。ただし、時候の挨拶と言っても桁違いな挨拶文を添えても相手方には失礼にあたってしまいます。
時候の挨拶はその季節に合った季語が入った文章を使用しますが、11月にはどのような挨拶や書き出しが的確となるのでしょう。時候の挨拶のルールを知ることが社会人としてのマナーとなります。
11月に使用する時候の挨拶を季語を使用した例文とともに挙げてみましょう。受け取った相手が気持ち良く読める手紙を書くためにも以下の文例を是非参考にしてください。
11月の時候の挨拶の一覧
11月の時候の挨拶は単純に季語だけを使用するわけではありません。季節を表す季語の後に「~の候」、「~のみぎり」、「~の折」といった言葉を組み合わせて使用します。では、どうような言葉を使用すればよいのでしょうか。
特にビジネスやかしこまった相手の場合には、暮秋の候・晩秋の候・初雪の候・初雁の候などが良いでしょう。親しい間柄の場合であればかしこまった表現をしてしまうよりは少し砕けた時候の挨拶でも失礼には当たりません。
例えば、11月の季節を表現し、秋も一段と深まり・枯葉舞い散る季節となりました・朝夕の冷え込む季節となりましたといった挨拶があります。秋の深まりにより寒さを感じることで相手を体調などを気遣う表現が良いでしょう。
11月の書き出しの文例・例文
11月の時候の挨拶文の書き出しのルールとしては、時候の挨拶の後に安否の挨拶を付け加えるのがより丁寧な書き出しになります。手紙の書き出文しとは、その手紙にとっての第一印象であるので受け取った相手が不快な気持ちにならないように心がけることが大切になります。
まず初めに目上の人やビジネスなどの丁寧な文面に使用する時候の挨拶を使用した例文をご紹介します。「晩秋の候、皆様にはますますのご清祥のこととお喜び申し上げます」・「初雪の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などの文例があります。
では、プライベートで親しい間柄への11月の時候の挨拶の書き出しはどのようにすればよいか例文をあげてみましょう。ビジネスで使用するような文面になると固すぎてぎこちなくなってしまうので、柔らかい表現をすることが的確な書き出し文となります。
文例としては「陽だまりの恋しい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか」・「七五三をお祝いする家族連れを見かける時期になりましたが、お変わりありませんか」といったように親しい間柄でも時候の挨拶の後に安否の挨拶を付け加えることで丁寧な書き出しにすることができます。
書き出しに使える季語
11月の季語は初めにもご紹介しましたが、11月の時候の挨拶の書き出しで使用できる季語はその他にもあります。丁寧な文面であれば、霜秋・前寒・立冬・夜寒などがあります。
また、11月のイベントを時候の挨拶として表現するのであれば、ボジョレーヌーボー解禁・文化勲章などの行事を季語としてを取り入れるのもベストになります。受け取る相手の趣味や嗜好などを季語として使用するとフランクな表現ができます。
文例としては「鍋のおいしい季節が近づいてきましたが」、「紅葉が美しい季節になってきました」などの後に相手の安否を気遣う書き方が良いでしょう。
11月の時候の挨拶と季語の注意点
11月の時候の挨拶といっても、季語や異名をそのまま使用すればいいという訳ではありません。11月という季節の中にも上旬・中旬・下旬によってそれぞれ気候が変化します。
気候が変化することにより装いや生活感も変化するのと同じく、手紙を書く日付によって季語を使い分けななければいけません。時候の挨でははその時期に合った表現を使用することがマナーになります。マナーを無視して使用してしまうと折角の文面が台無しになってしまいます。
こちらでは季語の意味を含めながらその時期に合った時候の挨拶をご紹介します。意味を知っておくことがマナー違反にならないポイントになります。
上旬にしか使えない時候の挨拶
11月の上旬は11月6日頃までのことを言い、1年を24分割した二十四節気の中で秋も深まり早朝に霜が降りる時期として霜降と言われます。11月上旬にしか使用できない時候の挨拶は以下のようになります。
よく使用されることが多い季語を使用した時候の挨拶が「晩秋の候」です。意味は「秋の終わりが近づく頃」を示しています。実際には11月の終わり頃が秋の終わりですが、二十四節気では10月中旬から11月初旬が秋の終わりになります。
植物を使用した季語の「菊花の候」や「残菊の候」は11月の中旬くらいまでが、「菊の花がまだ咲きほこっている時期になりました」という意味があります。また、口調系での文例では「日ごと秋が深まる季節となりましたが」や「日だまりを恋しいと思う季節になりました」などがあります。
中旬にしか使えない時候の挨拶
11月中旬は二十四節気で立冬を迎える11月7日頃から21日頃までの事を言います。11月中旬の季語を使った時候の挨拶はどのようなものがあるのでしょう。「向寒の候」は「寒い冬が訪れる頃」を意味しており、暦の上では立冬を迎えそろそろ冬へと近づいてきた時期であることを示します。
また、冬の訪れと共に冷たい雨が降るようになってきたという意味を込められている冷雨という季語を使用してした「冷雨の候」も11月中旬に適した時候の挨拶になります。
フランクな表現の文例としては「暦の上では立冬を迎えましたが、 穏やかな秋晴れの日が続いております」があり、冬が近づく中でもまだ秋を感じる季節であるという表現が適しています。
下旬にしか使えない時候の挨拶
11月22日以降の11月下旬は、二十四節気の中では小雪と言われています。立冬を過ぎ秋を惜しみながらも、いよいよ冬本番を目前にした11月下旬ではどのような時候の挨拶が適するのでしょう。
特に使用される時候の挨拶では「霜」という季語が多く使用されます。「霜寒の候」は「霜が降り寒さを感じるようになる頃」を意味し、秋が終わりを告げより一層寒さを感じるようになってきたことを表しています。
11月も終わりに近づき1年の最後の12月も間近に迫っているという意味を込め「師走」という季語を使用するのも11月下旬の時候の挨拶としてはよいでしょう。例文では「師走に向け何かと忙しい季節になりましたが」などがあります。
11月の時候の挨拶と手紙の結びの文例・例文
11月の時候の挨拶では主文の最後に結び文を使用して、受け取る相手を思いやる気持ちの文を添えて手紙を締めくくります。結びの文でも季節に沿った季語を使用しますが、手紙を送る相手やシーンによって季語を使用しない場合もあるので注意しなくてはいけません。
通常、「敬具」などで結びとなりますが、季語を使用することで必ずしもそういった文面でなくても結びの文とすることができます。では、11月の時候の挨拶を締めくくるにはどのような結び文が適切なのか、例文をあげるので参考にしてください。
11月の結びの挨拶の文例・例文
まず始めに改まった相手に向けた時候の挨拶の結び文の文例をご紹介します。「夜寒の節、くれぐれもご自愛ください」・「師走に向け何かとご多忙と存じますが、体調を崩されませぬようご自愛ください」などといった季節を11月を表現する季語を加えた文が適しています。
親しい間柄での時候の挨拶の場合の例文では、「天候不順な季節ですが、お体にお気をつけてお過ごしください」・「暖房が欲しくなる季節です。風邪などには十分にお気をつけておすごしください」等になります。
改まった季語ではなく季節感を表現すると同時に相手の体調などを気遣った表現をすると柔らかく締めくくることができます。
ビジネス文書では季語・季節を表す結びを使わないことに注意
時候の挨拶の結びでは必ずしも季語を使用しなければいけない訳ではありません。特にビジネス文書では相手方の繁栄や活躍を祈る気持ちを込めて結ぶ事が適しています。
季語を含めて締めるよりは相手との信頼関係をき築くためにも、失礼のないように「末筆ながら皆様のご健勝をお祈りいたします」や「何卒引き続きご指導、ご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます」といった結び文にするようにしましょう。
11月の手紙に適切な話題・行事
11月の時候の挨拶ではその季節にあった季語を使用するのがルールですが、自然を表現する季語だけではなく11月に行われる行事や話題を季語として使用することもできます。
かしこまったビジネス文書ではあまり適しませんが、親しい間柄での時候の挨拶では11月に適した風物詩や話題などを取り込むとより柔らかな表現ができます。
11月ならではの恒例行事などを盛り込む事によって、時候の挨拶を書いた事がなくどんな表現をすれば良いのかわからないという方にも上手に11月という季節を表現することができます。
11月の恒例行事
11月の時候の挨拶に適している恒例行事と言っても、手紙を書く日付によって変わってきます。11月の恒例行事だからといってむやみに使用してしまうと受け取った相手に失礼になってしまいます。上旬・中旬・下旬にわけてご紹介します。
下旬では勤労感謝の日(11/23)や大嘗祭(11/23)があります。恒例行事を時候の挨拶に使用する時もその時期の意識も必要になります。また、受け取る相手の住む地域などでも恒例行事が変わってくることがあるので相手の住まいなどを意識する事も思いやりのひとつとなります。
11月の祝祭日
11月の祝祭日といえば11月3日の「文化の日」と11月23日の「勤労感謝の日」になります。「文化の日」を季語とするのであれば、学園祭などの話題を盛り込んで、旧友へ学生時代の懐かしい思い出などを伝える事ができます。
また、「勤労感謝の日」を季語として使用するのであれば、勤労感謝の日を迎えることで11月も終わりに近づいていることを伝える表現として使用することができます。
祝祭日を使用した例文は「勤労感謝の日とは名ばかりで、家族へのサービスに忙しい一日でした」などがあります。
11月の季語と時候の挨拶は紅葉関係が多い
11月といえば秋も深まり冬支度が始まる時期でもあります。10月の終わりから山々などの緑も紅葉へと変わり、紅葉シーズンとして休日などには行楽地が賑わう季節にもなります。紅葉狩りを兼ねた温泉旅行などの思い出などを手紙などで伝えるにはとても良い時期にもなっています。
また、紅葉が過ぎ落葉や木枯らしなどを感じる時期でもあり、1年を締めくくる12月が近づいているという意味で11月の時候の挨拶では紅葉が季語として多く使われることがあります。
親しい相手や疎遠になってしまっている相手にも秋の深まりを伝えながら、久しぶりに手紙を書いてみるとより一層相手との絆の深まりにもなります。