オーバーアロットメントとは?仕組みやメリットなど分かりやすく解説!

オーバーアロットメントとは?仕組みやメリットなど分かりやすく解説!

「オーバーアロットメント」はIPOの際使われる専門用語です。株式を売り出す場合に需要と供給のバランスをとるために使われるテクニックです。今回は「オーバーアロットメント」の仕組みだけでなく、投資家や証券会社、株主のメリットについても解説します。

記事の目次

  1. 1.オーバーアロットメントとは?
  2. 2.ブックビルディング期間とは?
  3. 3.オーバーアロットメントの仕組み
  4. 4.グリーンシューオプションとシンジケートカバー取引
  5. 5.オーバーアロットメントのメリット【投資家】
  6. 6.オーバーアロットメントのメリット【証券会社】
  7. 7.オーバーアロットメントのメリット【株主】
  8. 8.オーバーアロットメントはメリットの多い画期的な制度!

オーバーアロットメントとは?

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「オーバーアロットメント」とは何のことでしょう。IPOという言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。IPOとは株式公開のことで、株式を公開して一般の投資家に自社の株を買ってもらうことによって資金を調達することです。

一般的にIPO株は抽選で購入することになります。投資家はIPO株を購入したい場合、定められた一定の期間内に担当する証券会社に抽選の申し込みを行い、当選者だけがその株を購入する権利を得るのです。

「オーバーアロットメント」はこのIPOの際、株式の需要と供給を調整して市場を安定させるための仕組みです。証券会社は勿論ですが、投資家や株主にとっても大変重要な仕組みです。まずは「オーバーアロットメント」とはどういうことなのかから見ていきましょう。

株価の急騰を防ぐ制度

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株式の売り出しをする場合、予想以上に人気が出て供給より需要の方が大きくなることがあります。そのまま放置すると、需要が過熱して株式市場が混乱してしまいます。「オーバーアロットメント」はこのような需要の加熱を冷まし、株式の高騰を防ぐためにとられる措置のことです。

需要の加熱を押さえるためには株式の供給を増やす必要があります。このため「オーバーアロットメント」では売り出し予定株式の15%を上限に追加の売り出しが行われます。

日本では2002年1月からこの「オーバーアロットメント」が認められるようになり、近年では実施されるIPOの半分以上でこの「オーバーアロットメント」が行われるようになってきています。

ブックビルディング期間とは?

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株式の売り出しをする場合、その株式がどれ位の需要があるか予測する必要があります。需要がない株式を売り出しても意味がないからです。この需要をもとに株式の売り出し価格が決定されます。この株式需要予測のことを「ブックビルディング」といいます。

「ブックビルディング」は「需要積み上げ方式」と呼ばれることもあります。ビルディングのように投資家からの需要を積み上げていって需要全体を予測するのです。IPO株を取得するためには必ずこの「ブックビルディング」に参加する必要があります。

IPO株の需要申告期間のこと

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投資家による株式の需要申告である「ブックビルディング」には申告期間が設定されています。この需要申告期間のことを「ブックビルディング期間」といいます。

「ブックビルディング」に参加しなければIPO株の取得はできませんので、IPO間近の情報がある会社の「ブックビルディング期間」は必ずチェックしておきましょう。

「ブックビルディング期間」は担当する証券会社によって定められますが、通常IPO手続き全体が非常にスピィーディなので、この「ブックビルディング期間」も短期間に設定されるのが一般的です。通常は1週間程度と考えておきましょう。具体的には各証券会社のHP(ホームページ)などを確認しておく必要があります。

オーバーアロットメントの仕組み

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「オーバーアロットメント」とは何か理解できたところで、「オーバーアロットメント」の具体的な仕組みをこれから見ていきましょう。どのような場合に「オーバーアロットメント」が適用され、どのような形で追加の株式が売り出されるのでしょうか。

「オーバーアロットメント」は証券会社だけなく、投資家や株主にとっても非常に重要な仕組みですから、関連する「グリーンシューオプション」や「シンジケートカバー取引」などとともに、その仕組みをしっかりと理解しておきましょう。

株式数を超える申し込みがあった場合に適用

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「オーバーアロットメント」は「ブックビルディング」において当初の予想を超える需要があった場合に適用されます。つまり予想以上に投資家の人気が出そうな株式に適用されるのです。

投資家が需要申告すなわち「ブックビルディング」に参加するためには、その会社の経営状況などの情報を公開してもらう必要があります。この情報公開プロセスのことを「ロードショー」といいます。「オーバーアロットメント」はこの「ロードショー」を踏まえた「ブックビルディング」が予想以上に盛り上がり、需要が過熱しそうなときに適用されるのです。

オーバーアロットメントによる売り出し

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「オーバーアロットメント」といっても株式の売り出しには変わりがありませんので、売り出す株式をどこかから調達する必要があります。では、「オーバーアロットメント」によって追加的に売り出される株式はどのようにして調達されるのでしょうか。

株価はIPO後に変動しますので、IPO時の株価より市場価格が高くなるか低くなるかで「オーバーアロットメント」によるオペレーションは変わってきます。この辺りは結構専門的で難しい部分ですが、しっかり仕組みを理解しておくことが重要です。

証券会社が既存株主から一時的に借りた株を売り出す

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「オーバーアロットメント」において追加売り出しされる株式は既存の株主から一時的に借り受けます。借りたものは返さなければなりません。市場における株式の変動に対して、株式を貸した株主や借りた証券会社が著しく不利益を被らないように、「グリーンシューオプション」や「シンジケートカバー取引」のような仕組みが設けられています。

「オーバーアロットメント」によって株主から借りた株式は当然弁済する必要があります。証券会社は申し込み期間終了日の翌日から30日以内に株主に弁済する必要があります。

グリーンシューオプションとシンジケートカバー取引

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株価は市場で変動します。「オーバーアロットメント」は「冷やし玉効果」として株価の高騰を抑えるために実施されますが、これを安定的に機能させるための幾つかの仕掛けがあります。ここでは「オーバーアロットメント」に関わる代表的な仕組みである「グリーンシューオプション」、「シンジケートカバー取引」とは何かについて解説します。

グリーンシューオプションとは?

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株価が当初売り出し価格より値上がりした場合、証券会社は「オーバーアロットメント」で株主から借りた株式を値上がりした株式で返そうとすると損失を被る可能性があります。これを防止するため、あらかじめとられる措置が「グリーンシューオプション」です。

「グリーンシューオプション」では、証券会社と株式を借りる株主との間で、証券会社があらかじめ定められた価格で買い上げる契約を結びます。証券会社は定められた株式の価格に加えて、所定の手数料を借りた株主に支払うことになります。

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このとき買い取る株式の価格は売り出し価格より低く抑えられますので、証券会社は支払う手数料を加味しても一定の利益を確保することができ、基本的に株式の値上がりによって損失を被ることはないようになっています。

「グリーンシューオプション」では、証券会社が株式の第三者割当増資を受けることによって取得した株式を借りた株主に弁済するケースがあります。この場合は増資になり、いわゆる「株式の希薄化」が起こり株価の下落を招くことがありますので、注意が必要です。

シンジケートカバー取引とは?

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もし株式の市場価格が当初価格より値下がりした場合は、証券会社は借りた株式の返済に必要な株式を市場から買い付けて弁済に充当します。これが「シンジケートカバー取引」といわれる仕組みです。

証券会社は株主から借りた際の株価と市場から買い付けた株価の差額を利益として確保することができます。「シンジケートカバー取引」では市場に出回る株式数を減少させることになりますので、株価の下落を下支えする効果があります。なお「シンジケートカバー取引」が出来るのは上場から30日以内とされています。

オーバーアロットメントのメリット【投資家】

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「オーバーアロットメント」はなぜ実施されるのでしょうか。それはやはりメリットがあるからです。メリットは投資家、証券会社、株主それぞれに発生します。ここでは三者それぞれごとにメリットを見ていきますが、留意する必要があることもありますので気をつけましょう。まずは投資家におけるメリットから見てみましょう。

IPO株の取得可能性が高まる

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投資家にとって「オーバーアロットメント」のメリットは、当然株式の取得可能性が高まることです。15%という上限があるにしても、売り出される株式が増えるわけですから当選確率は確実に上がります。IPO株は中々取得しにくいものです。「オーバーアロットメント」は投資家にとって大変ありがたい制度なのです。

「オーバーアロットメント」がある株式は「シンジケートカバー取引」の仕組みによって下支えされます。過度に下落することがないのです。これは投資家にとっては非常に安心感がもてる株式投資につながります。

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気をつけないといけないのは、「オーバーアロットメント」の恩恵は全ての投資家に与えられるものではないということです。「オーバーアロットメント」で株式を取得するためには、あらかじめ前述の「ブックビルディング」を担当の証券会社に申し込んでおく必要があります。気をつけましょう。

また人気のある銘柄の場合は「オーバーアロットメント」によって受給の調整が図られますので、必ずしも予想されたように株価が上がらない可能性もありますので、投資家としては注意が必要です。

オーバーアロットメントのメリット【証券会社】

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次に「オーバーアロットメント」における証券会社のメリットを見てみましょう。証券会社は株式を売り買いしてその手数料で利益を得ますので、基本的に株式市場が健全でなければ困ります。

株式市場が健全ということは、株式の売り買いが活発に行われて、しかも異常な乱高下がないことです。「オーバーアロットメント」は株式市場の需給安定を目的に実施されるものですから、証券会社にとってはありがたい制度なのです。

利益を上げられる

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「オーバーアロットメント」が実施されると担当の証券会社は当初予定より多くの株式を売り出すことになります。売り出す商品が増えるわけですから当然利益が増えることになります。

また「オーバーアロットメント」では、株価の変動によって証券会社が損失を被らないで一定の利益を確保できるように、「グリーンシューオプション」や「シンジケートカバー取引」といった仕組みも設けられています。

オーバーアロットメント分を引受けた価格よりも安く販売

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IPOによって売り出された株価が当初より値下がりした場合、証券会社は株式市場で売り出し当初よりも安い価格で株式を買い付け、それを借りた株主に返すことが出来ます。そうすればその差額分は証券会社の利益になります。これが「シンジケートカバー取引」です。

「シンジケートカバー取引」は証券会社にとっては一定の利益を確保するためのありがたい仕組みですが、「シンジケートカバー取引」によって証券会社は市場から株式を吸い上げますので、市場に出回る株式が減少することになり、株価の下支えをする効果があります。

グリーンシューオプションによっても利益が出る

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原則として「グリーンシューオプション」は株価が売り出し当初よりも高くなった場合に行われます。証券会社は調達した(借りた)価格より高い価格で株式を販売でき、借りた株主には当初価格分だけ支払えばよいことになりますので、手数料を勘案しても証券会社は利益を確保でき、通常損をすることはありません。

「オーバーアロットメント」は証券会社にとって大変ありがたい制度で、証券会社は株式が当初売り出しよりも上がっても下がっても一定の利益が確保できる仕組みになっているのです。

オーバーアロットメントのメリット【株主】

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株主にとって「オーバーアロットメント」はどうでしょうか。「オーバーアロットメント」はいわゆる「冷やし玉効果」として株価の急騰を防ぐために行われます。これは株価の上昇を抑えることになりますので、一見株主にはディメリットのように見えます。

しかし中長期的に見れば、「オーバーアロットメント」は株主にとっても決して不都合なものではないことがわかります。株式の需給が安定し、過度な加熱も抑えられ株式の下落も下支えされるからです。

受給が安定する

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「オーバーアロットメント」は株価の加熱を抑え、下振れするときは「シンジケートカバー取引」で株価を下支えしますので、株式市場の需給を安定させる効果を持っています。急騰した株式の多くはその後急激に下落します。株主にとっては安定した株価の上昇こそが理想的ですから、株式の需給を安定させる「オーバーアロットメント」は望ましい制度です。

市場価格が「下支え」につながる

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株主にとって株式が下振れすることはもっとも避けたい事態です。「オーバーアロットメント」による「シンジケートカバー取引」は株価の下支え効果が期待できます。証券会社は株主から借りた株式を市場から調達しますので、市場に出回る株式数が減少して、結果株価を下支えすることにつながるのです。

オーバーアロットメントはメリットの多い画期的な制度!

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「オーバーアロットメント」の仕組みや「オーバーアロットメント」に関係する幾つかの用語に加えて、「オーバーアロットメント」のメリットを解説しました。株取引をしない人や仕事上証券関係に縁のないビジネスマンにとっても「オーバーアロットメント」の仕組みを知っておいて損はありません。日常のふとした会話などで役に立つ場面があるはずです。

土居
ライター

土居

公務員、大学教員をリタイヤ後ライターをやり始めました。これまでの山歩きと日帰り温泉に加えて、今は孫と過ごすことが楽しい毎日です。ビジネスや経済関係に強いと自負していますが、最近はエンタメや生活関連のような柔らかいものにもチャレンジしています。宜しくお願いします

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