奨学金を返せない場合の対処法一覧
奨学金は、勉強したくとも経済的に厳しい環境にある学生にとって、非常に有益な手段であり、大学に進学する2.6人に1人の割合で利用しています。その一方で、大学は卒業したものの、奨学金を返せない人も少なくありません。もちろん、奨学金の踏み倒しなど、あってはならないことです。そこで、奨学金を返せない場合の対処法の概略について解説します。
返還期限猶予制度
奨学金を返せない場合の対処法の一つに「返還期限猶予制度」があります。文字どおり、奨学金の返還期限を猶予する制度ですが、無条件ではありません。また、元金や利息が減額されたり、免除されるものでもありません。あくまでも、疾病や災害、失業といった、経済困難に陥る正当な理由があった場合に、一定期間、返済期限を猶予する制度です。
減額返還制度
「減額返還制度」も奨学金が返せない場合の対処法の一つです。この制度の特徴は、奨学金を申請する際に設定した、月々の返済額を一定期間、半分に減額できる点です。もちろん、支払総額は変わりありませんから、返済期間は必然的に伸びることになります。延長された期間にかかる利息は国庫金から支払うので、奨学生に大きな負担はありません。
債務整理
債務が返済できない場合に用いられるのが債務整理です。利用される割合は少ないものの、奨学金が返せない場合の対処法としても有効です。債務整理には任意整理や特定調停、個人再生、自己破産といった方法があります。現在の債務者の収入状況や借入残高などに応じて、どういった方法で債務を整理するのかか決まります。
なお、債務整理は裁判所に様々な資料を提出する必要があるため、手続きが非常に煩雑です。そこで、一般的には弁護士や司法書士に対応を依頼することとなります。
奨学金を返せない時のリスク一覧
大学に入学する際、奨学金を返せない状況になることを予測できる人の割合は、極めて小さなものです。大半の人は大学を卒業すれば、順調に返済できると思っているものです。しかし、大学卒業後、正規雇用となった人の割合は約7割です。
つまり、正規雇用となれない人の割合は3割にも上りますから、奨学金が返せないリスクは、決して低くないと言えるのです。そこで、奨学金を返せないで、踏み倒した場合のリスクについて紹介します。
遅延金の発生
奨学金の返済は債務となりますから、期限までに返せないと延滞金が発生します。延滞金の利息は、その種類(第一種奨学金と第二種奨学金)及び貸与終了年度によって異なりますが、一般的には延滞している割賦金に対して、2.5~5.0%の割合の延滞金が付加されます。
奨学金の返済が遅れれば、奨学生と保証人に対して、日本学生支援機構(もしくは債権回収代行会社)から、電話もしくは書面で督促の電話がかかってきます。口座への残高不足などであれば、その旨を伝えれば何ら問題はありません。
ただし、踏み倒しが疑われるケースでは、「いつまでに払えるか」が確認され、その期日に遅れると、さらに自宅や職場に督促の電話がかかってきます。踏み倒しだと誤解されないためにも、約束した期限は必ず守りましょう。
個人信用情報機関のブラックリスト入り
延滞金の督促に応じないで、3か月以上滞納し続けていると踏み倒しと見なされ、個人信用情報機関の「信用情報」に事故情報として登録されます。これが、いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものです。ここに登録された信用情報は、個人信用情報機関に加盟している金融機関で共有されますから、思わぬところで様々なデメリットが生じます。
ブラックリスト入りのデメリット
ブラックリスト入りしてしまうと、キャッシングや新規のクレジットカードが発行できないばかりか、住宅ローンや自動車ローンなどの利用もできなくなります。また、スマートフォンの機種変更や契約にも影響が出る場合もあります。
なお、ブラックリストに掲載される期間は概ね5年程度ですが、奨学金の返済を踏み倒したり、自己破産という形で債務整理を行うと最長で10年程度はクレジットやローンが利用できません。
一括払いの要求
再三にわたる督促を無視し、ブラックリストに登録された状態が続くと、返済を踏み倒したとみなされ、「期限の利益の損失」といった事態に陥ります。これは、分割返済が認められていた債務が、滞納行為や踏み倒しにより、その権利が失われることを意味します。したがって、一括払いを要求されることになるのです。
一括払いが要求されるまでの期間
「期限の利益の損失」となるのは、概ね9か月以上滞納や踏み倒しを続けた場合です。このとき、日本学生支援機構の顧問弁護士名で、奨学金の一括払いの要求を内容とした、期限付きの督促状が送付されてきます。ここで一括払いに応じなければ、ますます踏み倒したと見なされ、厳しい対応に迫られることになります。
家族など連帯保証人への請求
奨学金を利用する際、奨学生はこれから大学生となる未成年ですから、家族を連帯保証人とする割合が高くなります。奨学生が債務整理を行ったり、債務を踏み倒した場合、連帯保証人が債務を負うことになります。
しかし、連帯保証人も支払不能に陥ってしまうと、本人だけでなく、連帯保証人までもが債務整理を行わなくてはなりません。したがって、奨学金が返せない状況になったら、速やかに連帯保証人に連絡しましょう。
差し押さえでの財産の没収
日本学生支援機構から、期限付きの督促状が到着しても返済できない、もしくは債務を踏み倒した場合、債権差押命令の申立がなされます。裁判所では、奨学生のもつ借金の残額が明確にされるとともに、奨学生に対して差し押さえ判決が出る割合が高くなります。
差し押さえ判決が出ると、日本学生支援機構は債務者の財産を差し押さえる(=強制執行)ことができます。差し押さえの対象となるのは不動産や自動車、家財道具など、高額財産になりますが、加えて給与が差し押さえられる割合が高くなります。さらに、奨学生の財産だけでは完済できない場合、連帯保証人の財産も差し押さえとなります。
また、差し押さえの段階になると、延滞金も高額に膨れ上げっており、さらには裁判費用も債務者である奨学生が負担することとなりますから、本来の返済額を大きく上回ることになります
奨学金返せない時には①返還期限猶予制度
奨学金が返せない時の対処法の一つに「返還期限猶予制度」があります。これは、一定の理由のもとに、返還期限の猶予を可能とする制度です。適用されれば、当面の返済に追われることはありませんから、ブラックリストに登録されたり、督促されることもありません。
また、返済猶予の期間にかかる利息については、免除されるのが大きなメリットです。ここでは、返還期限猶予制度の内容や適用となる理由、手続き方法などを詳しく解説します。
災害・病気・失業時に返済期限を延長する制度
返還期限猶予制度は、誰にでも適用されるものではありません。疾病や災害、失業といったやむを得ない理由により、奨学生が経済的に困難に陥った場合に限り、一定期間、返還期限を猶予する制度です。
したがって、猶予期間内において利息は発生しないものの、元金や利息が免除、減額されるものではありません。なお、猶予期間は、経済状況に応じて通算で最長10年となっています。
返還期限猶予の条件
返還期限猶予制度利用する上でポイントとなるのが、どの程度で「経済困難」であると認められるかといった点です。その条件は日本学生支援機構で定められていますが、その事由によって異なりますので、制度を利用したい場合はホームページなどでチェックしましょう。
例えば、災害を理由とする場合だと年収ベースで300万円以下、自営業者の場合だと200万円以下となります。また、傷病を理由とする場合だと、年収ベースで200万円以下、自営業者の場合だと130万円以下となります。また、本人の被扶養者について1人につき38万円、親等へ生活費補助については38万円が控除できます。
返還期限猶予の手続き
返還期限猶予制度を利用するためには、日本学生支援機構に奨学金返還期限猶予願(略称:猶予願)及びマイナンバー提出書に返還困難な事情の証明書を添付して提出します。猶予願の提出期限は、猶予を希望する月の前々月末となります。
なお、猶予願に添付する、返還困難な事情の証明書については、経済困難に陥った理由によって異なります。例えば、災害であれば市町村長・消防署長が発行した傷罹災証明書が、傷病であれば診断書(最近2か月以内発行)が必要です。したがって、制度を利用する場合は、日本学生支援機構のホームページで確認して、必要な証明書を用意しましょう。
奨学金返せない時には②減額返還制度
返還期限猶予制度と並んで、奨学金が返せない際の対処法として有効なのが、減額返還制度です。返還期猶予制度が、一定期間において奨学金の返済が猶予されるのに対し、減額返還制度は、一定期間、月々の返済額を半分に引き下げる制度です。
返還期限猶予制度と同様に適用されれば、ブラックリストに登録されることもありませんし、家族など周りの人に迷惑をかけることもありません。ここでは、減額返還制度の内容や適用条件、手続き方法などを詳しく解説します。
月々の返済額を一定期間半分にする制度
減額返還制度とは、奨学金を利用する際に設定した毎月の返還金額を、一定の期間において半額に減額して、完済までの期間を延長する制度です。減額できる期間は、1回の提出につき12か月、最長15年(180か月)となります。なお、その間の利息は発生しませんので、実質、返還総額が変わらないのも大きな魅力です。
減額返還制度を受ける条件
減額返還制度の適用条件も、返還期限猶予制度と同様に日本学生支援機構で定められており、年収ベースで300万円以下、自営業者の場合だと200万円以下が基準です。ただし、この基準を超えた場合であっても、本人の被扶養者1人につき38万円、さらに、減額返還適用者は一律25万円を収入・所得金額から控除して審査されます。
さらに、奨学金の返済に本人名義の口座(リレー口座)が設定してあることが条件となります。手続きを行う時点で、リレー口座を設定していなくとも、返済方法を月払いに変更して開設すれば問題ありません。
ちなみに、リレー口座の由来は、奨学金にかかる返還金が、後輩奨学生のための原資となることから来ています。
減額返還制度の手続き
減額返還制度を利用するためには、日本学生支援機構に奨学金減額返還願(略称:減額願)及びチェックシート、マイナンバー提出書に減額返還証明書類などを添付して提出します。減額願の提出期限は、猶予を希望する月の前々月末となります。
なお、減額願に添付する減額返還証明書は、申請事由別に異なります。例えば、災害が理由であれば市町村長・消防署長が発行した傷罹災証明書が、傷病が理由であれば診断書(最近2か月以内発行)が必要です。したがって、制度を利用する場合は、日本学生支援機構のホームページで確認して、必要な証明書を用意しましょう。
奨学金返せない時には③債務整理
借金の返済ができなくなった際、一般的に行われる措置が債務整理です。奨学金が払えない奨学生の中でも、他にも借金を抱えている人は、トータルで対処しなくてはならないことから、債務整理を選択する割合が高くなります。債務整理には、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産方法があり、債務の残高や奨学生の支払能力によって決まります。
いわゆる、多重債務に陥っている場合、奨学金を踏み倒しにはできませんから、早い段階で債務整理を検討することが重要になります。ここでは、多重債務によって奨学金が返せない時の債務整理の内容や特徴、手続きの方法などについて解説します。
任意整理
任意整理とは、債権者と交渉して元本の総額は変更せず、過払金の清算を行なった上で利息分だけ免除してもらい、3〜5年の間で返済する方法です。弁護士や司法書士が個々の債務者と交渉を行いますから、任意整理の対象とする債務を選択することができます。
債権者には支払計画を提出して交渉しますから、奨学生に一定の収入がないと承認されません。任意整理は、元本は全て返済しますから、連帯保証人に迷惑をかけることもなく、裁判所への申請も必要ありませんから、リスクの少ない対処法です。
一般的には、奨学金を踏み倒しにはできませんから、任意整理の対象から外し、その他の債務を任意整理します。したがって、奨学金はこれまでどおり返済を続けることとなります。ただし、大学卒業直後だと、奨学生の収入も安定していないことが多いので、ややハードルの高い債務整理の方法だと言えます。
特定調停
特定調停とは、任意整理と同様に債権者と交渉して、過払金を清算した上で、元本を3年から5年の間で返済する方法です。任意整理との相違点は、特定調停は弁護士や司法書士ではなく、簡易裁判所が債権者との仲介役となることです。
したがって、特定調停は奨学生本人が手続きを行うこととなり、弁護士などの費用がかからないといったメリットもあります。ただし、手続きが煩雑になることや、特定調停に否定的な債権者もいるため、利用する人の割合は年々減少しています。
個人再生
個人再生とは、奨学金を含む全ての債務について、過払金清算を行なった上で、債務者の収入状況に応じて、債務を圧縮して3〜5年の期間で完済する対処法です。手続きは個人でも可能ですが、とても煩雑になるため、一般的には弁護士や司法書士に委任します。
任意整理や特定調停とは異なり、裁判所が個人再生の可否を審査することとなりますから、再生計画が大きなポイントです。奨学金を加えた債務の金額が多くなるほど、この制度を利用する人の割合は高くなります。
個人再生のデメリット
個人再生のデメリットは、5~10年の間は個人信用情報機関に登録されるため、クレジットカードが新規に作れない上、各種ローンが利用できないことです。また、官報にその事実が掲載されることもデメリットとなります。ただし、個人再生は借金をゼロにする制度ではないので、財産を残すことができますし、連帯保証人に迷惑を掛けることもありません。
自己破産
自己破産とは、奨学金を含む全ての債務について、過払金清算や所有する財産を精査した上で、財産を没収する代わりに残額の返済義務を免責する制度です。個人再生と同様に、裁判所がその可否を審査することとなります。
また、手続きは非常に複雑で、専門的な知識や経験が必要であることから、弁護士や司法書士に委任するのが一般的です。任意整理や個人再生では返済ができない場合、最後の手段として自己破産を選ばざるを得なくなります。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは、個人再生と同様に5~10年の間は個人信用情報機関に登録され、クレジットカードや各種ローンが利用できないことです。そして、何といっても自宅や車といった高額な財産が没収されることは大きなデメリットです。
さらに、職業によっては、裁判所における自己破産の審査が終了するまでの間、業務停止になる場合があります。また、官報にも掲載されるため、周囲の人に自己破産の事実が知られてしまうことになります。
さらに、奨学生が自己破産した場合、連帯保証人に債務の支払義務が発生します。そのため、連帯保証人に迷惑が掛かるばかりか、連帯保証人も債務が返済できない場合、自身が債務整理を行わなければなりません。
債務整理の注意点
債務整理は、債務者と支払方法の変更を交渉する「任意整理」「特定調定」と、裁判所の審査によって、支払方法の変更や支払義務が免責される「個人再生」「自己破産」に大別されます。このうち「任意整理」「特定調停」は、債務者との交渉になりますから、周囲に知られるリスクが低く、連帯保証人にも迷惑とはなりません。
対して、「個人再生」「自己破産」は、裁判所に審査を依頼するものであり、弁護士などへの経費が発生し、官報にも掲載されます。そして、自己破産において、何より厳しいのが、連帯保証人に、支払義務が発生することです。
したがって、債務整理を行う際の注意点としては、自分で決めてしまうのではなく、連帯保証人に事前に連絡した上で、しっかりとコンセンサスを得た上で行動に移すことです。
奨学金の返済が免除になるパターン
奨学金の返済について、踏み倒しは絶対にできませんが、死亡や精神・身体の障害といった理由によって残額の全て、又は一部が免除免除されるパターンがあります。また、大学院での成績が著しく良い場合にも特例として奨学金が免除になることがあります。そこで、奨学金の返済が免除になるパターンについて解説します。
本人の死亡
奨学生本人が死亡した場合、連帯保証人を含め奨学金の返済は免除されます。この理由の場合、日本学生支援機構に対して、奨学生の相続人又は連帯保証人が「奨学金返還免除願」及び「本人死亡の事実を記載した戸籍抄本、個人事項証明書又は住民票等の公的証明書」を提出する必要があります。
精神・身体の障害により労働力が低下
奨学生が、精神・身体の障害といった理由により、就業が困難になった場合や労働能力が著しく低下した場合、奨学金の返済は免除されます。この理由の場合、日本学生支援機構に対して、本人と連帯保証人が「奨学金返還免除願」や「返還することができなくなった事情を証明する書類」及び「診断書」を提出する必要があります。
特に優れた業績による返還免除
大学院において、特に優れた業績をあげた奨学生は奨学金の返済が免除されます。これは、大学院で第一種奨学金を返済している奨学生の30%を上限として適用されるものであり、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。
「特に優れた業績」については、専攻分野における顕著な成果や発明・発見といった理由のほか、文化・芸術・スポーツにおける成果やボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価されるものであり、大学からの推薦が必要です。
「特に優れた業績による返還免除」は非常にハードルの高い制度ですが、奨学金の返済が免除されることは、奨学生の将来設計においても大きな影響を与えますから、奨学生のモチベーションを向上させるといった理由からも、非常に有益な制度であると言えます。
奨学金を返せない大学生は多い
テレビや新聞といったメディアで、奨学金を返せない大学生が多いことが報じられる機会が増えてきました。日本学生支援機構が平成29年に調査したところ、延滞者は約334千人にも上ることがわかりました。
もちろん、延滞者の全てが踏み倒しているわけではありませんが、深刻な事態であることに変わりありません。ここでは、奨学金が返せない人の平均返済額や返せない理由と割合について解説します。
奨学金を返せない人の平均返済額
奨学金が返せないで延滞している大学生などの人数は、返済者4,259万人に対して、1日以上の延滞者が33.6万人、割合にして7.9%となります。さらに、3か月以上の延滞者となると、15.7万人、割合にして3.7%です。
ここで問題となるのが、返済できない金額となりますが、平均で約157万円になります。奨学金の平均貸付金額が約288万円ですから、割合として約55%が延滞されていることになり、中には踏み倒しとなっているものもあります。
奨学金が返せない理由と割合
大学に入学する際に、奨学金が返済できない事態に陥ると予測している人は、ほとんどいません。しかし、割合にして約8%もの奨学生が、奨学金を返せない事態に陥っているのには、いくつかの理由があります。
日本学生支援機構が実施したアンケート(2つまで回答可)によると、奨学金が返せない理由としては、収入減が72.9%、支出増が34.5%と高い割合を占めています。大学を卒業しても就職できず、非正規社員やアルバイトで当面の生活を凌いでいる人も少なくありません。
また、返済が長期化するため、結婚などの大きな支出も出てきます。そのため奨学生にとって、その返済は大きな負担であり、返せない事態に陥ってしまう大きな理由になっているのです。その他には、傷病による入院や事故・災害といった理由によるものが18.1%と高い割合となっています。
奨学金を踏み倒しとしないための対処法
奨学金の延滞や踏み倒しは、大きな社会問題となりつつあり、日本学生支援機構では、返還期限猶予制度や返還額減額制度の条件緩和など、大学生を支援する対策を積極的に行なっています。
しかし、大切なのは、奨学金が返せない事態に陥らないよう、奨学金の貸付を受ける際に、しっかりとした対策を練っておくことが大切です。そこで、奨学金を踏み倒しとしないための対処法を紹介します。
大学で必要なお金を計算する
奨学金が支払えない原因の一つに、大学にかかるお金が高額であることがあげられます。大学を卒業するまでにかかる学費は、大学や学部によっても大きく異なりますが、平均すると200万円〜500万円です。さらに、実家から出て大学に通う場合には、生活費がかかることも忘れてはなりません。
奨学金が返済できない人の多くは、学費や生活費に対する見込みが甘く、大学に入学すれば「何とかなる」と思っています。しかし、現実は甘くありません。まずは、入学時に一括して必要なお金と、毎月必要な生活費などは、しっかりと計算しておくことが大切です。
毎月の返済額や完済までの期間を想定する
奨学金を利用している奨学生の返済総額は288万円です。この金額には奨学金の返済が免除されている人も含まれていますから、それを除くと324万円になります。毎月の返済金額を無利息で1万5,000円とすると、完済まで18年かかる計算となります。
奨学金の返済は、一般的に大学を卒業してからになりますから、実に40歳まで支払い続ける計算になります。その間には、結婚や子供が生まれるなど、お金を必要とする場面が多々訪れます。つまり、奨学金にかかる毎月の金額は1万5,000円でも、将来的には多くの支出があることを忘れてはなりません。
完済までの将来設計を考える
大学に必要なお金がわかれば、必然的に奨学金で貸付を受ける金額や、毎月の返済額、完済するまでの期間が決まります。また、大学を卒業して就職したと仮定すれば、毎月の給与や年収を想定することができますから、繰り上げ返済を利用するなど、完済までの将来設計を立てることができます。
奨学金の貸付を受ける時点で、ここまで考えておけば、毎月の使えるお金も想定できますし、無駄遣いができないことも理解できます。奨学金を払えない理由に収入減や支出増が上げられますが、そこを想定しておくことで、十分にリスクを回避することができます。
奨学金の踏み倒しはリスクが大きい
大学を目指す、経済的に苦しい人にとって、奨学金はとても有益な制度です。しかし、しっかりと将来設計を立てておかないと、返済が延滞したり踏み倒しの状況に陥る可能性があることを忘れてはなりません。
万が一、奨学金の踏み倒しをしてしまうと、個人信用情報機関のブラックリストに入ってしまい、各種ローンが利用できないばかりか、社会的な信用を失ってしまうなど、非常にリスクが大きいので注意が必要です。
奨学金が返済できない理由には収入減や支出増があげられますが、日本学生支援機構に返還期限猶予もしくは減額返還制度の利用を届出することで、リスクを回避できます。できる限り、早い段階で届出を行い、債務整理にならないよう対処しましょう。