これを機にの意味とは?
「これを機に」という言葉をご存知ですか?「機って何?」「よく聞く言葉だけど詳しくは知らない」など本来の意味までは詳しく知らない場合も多々あります。
「これを機に」は、ビジネスシーンや、日常生活で使われている言葉です。アスリートなどの言動でも、「これを機に」という言葉がよく聞かれたりします。
「これを機に」とは、「このことをきっかけに」という意味です。こんな意味を持つので、上記のシーンなどでよく見聞きする言葉なのです。
「これを機に」は「このことをきっかけに」という意味なので、何かがきっかけになっている出来事が前段に存在しています。「これを機に」はまさしくビフォーアフターの分水嶺たる言葉であります。
今回はそんな「これを機に」について徹底紹介。「これを機に」の類義語から、使い方、他の語との違い、注意点、由来・歴史、英語表現、漢字表現を順に紹介していき、「これを機に」を深く堀り下げていきます。
これを機にの類義語
「これを機に」の意味が理解できたところで、類義語にはどんな言葉が存在しているのでしょうか?「これを機に」の類義語を理解することは、より「これを機に」の意味付けが明確になります。
類義語も「これを機に」と同じような慣用表現とすると、同じ位置関係で比較衡量しやすい条件が整います。以下に紹介する類義語も「これを機に」同様現在でも使われている現役の言葉です。ご参照の上ご活用いただければ幸いです。
これを好機と捉え
「これを機に」の類義語として上げられる言葉に「これを好機と捉え」があります。類義語「これを好機と捉え」は「このことをちょうどよい機会としてつかまえて」という意味になります。
「新天地に赴任することになり、これを好機と捉え新しいことにチャレンジしていく」などの例文で類義語「これを好機と捉え」を使う事ができます。
類義語「これを好機と捉え」は「これを機に」と同義として使うこともできますが、「好機」という「またのない機会」「チャンス」という肯定的な意味が後に続く内容に入りますので、後段にマイナスの内容が入る事はありませんので、ご留意ください。
この機に乗じて
「これを機に」の類義語として上げられる言葉に「この機に乗じて」があります。類義語「この機に乗じて」は「好都合の状況をうまく利用して」という意味になります。
「学校が臨時休校になった。この機に乗じてやり残しの宿題を片付けてしまおう」などの例文で類義語「この機に乗じて」を使う事ができます。
類義語「この機に乗じて」も「これを機に」と同義として使うこともできますが、「乗じて」という「勢いに任せて利用する」というニュアンスの内容が後段に入るケースが多い特徴的な言葉です。
これを機にの使い方・例文
では「これを機に」は実生活でどのように使うことができるのでしょうか?私たちの暮らす生活は、さまざまな出来事が目まぐるしく変化しています。
そんな取り巻く状況の中で、「これを機に」はその意味で、先述したビジネスシーン、日常生活、習い事などさまざまなシーンで使う事ができる言葉です。
「これを機に」という言葉は日常生活において汎用性がある語なので、今後もますます頻出してくる可能性があります。特にビジネスシーンで「これを機に」を使用する場合はその実用性を鑑みて「敬語表現」も意識していく必要性があります。
上記を踏まえて「これを機に」の例文を下記にケース別でご紹介しますので、その使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「これを機に」の使い方の1つの例文として、会議などのビジネスシーンが上げられます。ミーティングなどで「これを機に」が使われています。
「あたらしい企画が立ち上がりました。不勉強な部分も多々あるので、これを機にマスターして、新企画の成功に貢献していきたいと思います」このような営業ミーティングで「これを機に」という用語を使うケースです。
「これを機に」はビジネスシーンとは特に親和性が高い言葉です。ビジネスは市場の動向にフレキシブルに対応する必要がある分野だからです。「これを機に」はそんな流動性がある業界に新たな開拓をもたらすきっかけになる言葉です。
このケース「これを機に」を使うシーンには敬語が使われています。ビジネスなどで使う場面である以上、敬語は切っても切れない表現です。丁寧語「ました」「ます」という敬語が使われている事がわかります。
対外的ではない社内ミーティングでも敬語を交えた文章で「これを機に」を使用することにより、よりスムーズな人間関係を構築する事ができます。
例文②
「これを機に」の使い方の1つの例文として、栄転などのビジネスシーンが上げられます。移転先などで「これを機に」が使われています。
「この度、新しく〇〇支店に着任することになりました。これを機に自分のスキルアップに努め、微力ながら〇〇に貢献できるよう精進していく所存です。」このようなビジネスシーンの移転先の挨拶などで「これを機に」という用語を使うケースです。
このケースにも「これを機に」を使うシーンも敬語が使われています。丁寧語「ました」「です」の他に謙譲語「所存」という自分の行為を謙って、相手の立場を上げる敬語が使われています。
例文③
「これを機に」の使い方の1つの例文として、得意先挨拶のビジネスシーンが上げられます。新しく担当になる場面などで「これを機に」が使われています。
「この度株式会社〇〇様の担当させて戴くことになりました〇〇です。まだまだ未熟者ですが、これを機に御社にますます貢献できるよう精一杯努めて参りますので、よろしくお願い申し上げます」このように新担当としての得意先への挨拶で「これを機に」という用語を使うケースです。
今回の「これを機に」を使うシーンにも敬語が使われています。丁寧語「ました」「お願い」「ます」の他に謙譲語「参る」「申す」の敬語が使われています。
例文④
「これを機に」の使い方の1つの例文として、新規開拓などのビジネスシーンが上げられます。開拓先への挨拶メールなどで「これを機に」が使われています。
「この度は弊社のサービスへのご発注ありがとうございました。これを機に貴社との関係性をより深く構築できればと願う所存です。今後とも弊社を何卒よろしくお願い申し上げます」このような営業メールで「これを機に」という用語を使うケースです。
このケースにも「これを機に」を使うシーンも敬語が使われています。丁寧語「ました」「お願い」「です」「ます」や謙譲語「所存」「申す」の他に相手の行為に対する敬語である「ご発注」「ござる」の尊敬語を使用しています。
また、自分の会社を謙っている「弊社」、相手の会社を敬っていう「貴社」という言葉をつかっていることもポイントです。一種の敬語表現で、前者は謙譲表現、後者は尊敬表現になります。
また「貴社」と同じ意味の「御社」がありますが、話し言葉なので、メールなどの書き言葉では使用せず「貴社」を使っていることもご留意ください。
例文⑤
「これを機に」の使い方の1つの例文として、アスリートなどが自分の目標を発信する場合が上げられます。インタビューを受ける場合などで「これを機に」が使われています。
「今回悪天候だったにも関わらずアンダーパーでラウンドを終える事ができ予選通過できたので、これを機に3日目から優勝争いできるように頑張ります」このようなラウンドを終えた際のインタビューで「これを機に」という用語を使うケースです。
「これを機に」はアスリートがさらなる実力のステップアップをする意識を発信する場面でよく使われる言葉でもあります。記録更新や勝利を至上とするビジネスなどで「これを機に」の言葉とは相性が良いです。
例文⑥
「これを機に」の使い方の1つの例文として、辞職などのビジネスシーンが上げられます。個人的な都合を理由に退職をする場合に「これを機に」を使う事ができます。
「親族の介護をする必要がでてきまして、本意ではないのですが、これを機に退職させていただきたいと思います」上司や人事などへの話し合いで「これを機に」という用語を使うケースです。
上記のように、「これを機に」の後に続く内容は、話してにとっても聞き手にとってもプラスの内容だけが来る場合だけではありませんのでご留意ください。
このケースにも「これを機に」を使うシーンも敬語が使われています。丁寧語「です」「ます」の他に自分を謙って相手の立場を上げる謙譲語「いただく」を使用しています。
例文⑦
「これを機に」の使い方の1つの例文として、著名人の不祥事が上げられます。雑誌やウェブニュースなどで「これを機に」が使われています。
「歌手の〇〇の今回の不祥事が発覚したのは先月。これを機に今後予定していたイベントや新作品の発表は全てキャンセルになる見込み」など記事の中で「これを機に」という用語を使うケースです。
上記も例文⑥のように「これを機に」の後に続く内容が、話してにとっても聞き手にとってもプラスになる内容にはなっていないケースになります。
これを機にとこの期に及んでの違い
「これを機に」の意味、類語、使い方を先述しましたが、「これを機に」に代用できそうな表現に「この期に及んで」があります。この「この期に及んで」は「これを機に」の代用語として機能するのでしょうか?似た意味を持つ両者であるがゆえにその使用には注意が必要です。
この期に及んではいまさらという意味
「この期に及んで」は表題でも示しているように「何かがいよいよ差し迫った時になっても」「いまさら」という意味です。
「この期に及んで逃げる気だな」「この期に及んで往生際が悪い」「この期に及んで止めるなんてだめだ」などの例文が上げられます。
上記例文からもわかるように「この期に及んで」はマイナスであったり、ネガティブな表現が後に続くだけではなく、「この期に及んで」自体の表現もマイナスの意味合いが含んでいるのが特徴です。よって「これを機に」とは意味合いが異なったニュアンスになります。
両者の違いを例文で示してみると、「これを機に頑張ります」を「この期に及んで」を使って表現してみると「この期に及んでですが頑張ります」となり、前者は「これをきっかけとして頑張ります」に対して、後者は「いまさらですが頑張ります」となり、意味合いの違いが理解できます。
これを機にを使う際の注意点
「これを機に」に使う際の注意点はどんな点が上げられるのでしょうか?「これを機に」はその言葉の後には良い内容が続くイメージですが、例文で紹介したように「悪い内容」も続くことは先述しました。
これは「機」はあくまで「きっかけ」を示しているからで、きっかけは良いきっかけだけとは限らず、悪いきっかけも有り得るからです。
ではこの他に「これを機に」は使い方において、どんな注意点が上げられるのでしょうか?「機」という言葉に着目して以下にてその注意点をご紹介いたします。
これを期にでは使えない
「これを機に」の「機」は「期」に代用することはできないのがポイントです。「期」は限られた日数や時間の終わりを表す語の性質を持ちます。
「期」は形声文字で、偏は音符の其(読み方:キ)から成り、旁はひとめぐりする「月」を表します。この語源から一か月、一定の時間、時を示し合う、「ちぎる」意味が生まれ、「再開を期す」などの表現が今でも使われています。
このように、由来でご紹介した「機」は上記の意味を持つ「期」で代用することはできず、「これを期に」は誤用ですので、その使い方にご留意ください。
これを機にの由来・歴史
「これを機に」の意味、類義語、他の語との違い、使い方がわかったところで、「これを機に」の由来はどこにあるのでしょうか?
「これを機に」は例文などでご紹介したように、ビジネスシーンを始め、多くのジャンルで使う事ができる汎用性がある語です。そんな使い勝手のよい語なので、日本では古くから使用されてきた可能性があります。
上記を踏まえて「これを機に」の語源と「これを機に」が日本で使われていた使用時期を辿っていき、「これを機に」の由来と歴史を深堀していきます。
由来
まずは「これを機に」の語源です。「これを機に」は単語ではなく、句であり「これ」「を」「機」「に」と分解することができます。
それぞれの語の由来を紐解いていきます。まずは「これ」は代名詞で、その名称を用いずに直接に指し示す意味があります。「使い方」で先述したようにそれぞれ前段の内容を受け、「これ」という代名詞を用いているのです。次の「を」は助詞で「機に」につなげる働きをしています。
そして「機」ですが、形声文字で、木の偏と、音符の幾(読み方:キ)とから成ります。昔の戦などで使用した石弓の石を発射させる道具、「からくり」の意味が語源です。そこから、「はた」「細かい仕組み」「かなめ」「きざし」「きっかけ」という意味が派生していきます。
最期の「に」は助詞の働きで時間、空間的な意味のある格助詞です。つまり「「これ」「を」「機」「に」は「このことをきっかけにして」という意味になります。
歴史
語の由来が理解できたところで次に、「これを機に」は日本でどのくらいの前から使われていたのか?その「歴史」となる使用時期の由来を辿ってみます。
上記の点を辿る資料として「これを機に」は過去の文献でも確認することができます。その1つ目は小説家の吉川英治が「読売新聞」に1939年(昭和14年)から連載スタートした「新書太閤記:04 第四分冊」という作品です。下記の一説を紹介します。
「それを機ッかけに、その日の小銃戦はまた始まった。いま歌っていた兵、いま踊っていた兵が朱にそまって、ばたばたと傷つき始める。」
これを「それを」としていたり、機にを「機ッかけに」としていますが、現在の「これを機に」と同じ意味として使われています。今から80年以上の戦前には「先般」は使われていたことが確認できます。
「これを機に」の使用時期の由来を辿る2つ目の文献としても、小説家の吉川英治が「中外商業新報(現:日本経済新聞)」に1939年(昭和14年)かた連載スタートした「三国志」という作品があげられます。下記の一説を紹介します。
「魏延はあやうく鞍輪をつかんで落馬をまぬかれたが、鮮血はあぶみを染めて朱にした。これを機に、魏延は、駒をかえして、葭萌関の内へ駆けこんでしまった。馬岱は、ひとたび崩れだした味方を立て直して、また、関門の下へ潮の如く襲せ返した。」
このように「これを機に」は少なくても昭和初期の戦前には使われていたことが吉川栄治の2作品によって確認することができます。
「これを機に」の使用時期の由来を辿る3つ目の文献として、フランス文学者の酒井健が雑誌「ちくま新書」に1996年(平成8年)に発表した「バタイユ入門」という作品があげられます。下記の一説を紹介します。
「バタイユはそこに、国家主義へのフランス国民の選択を読み取ったことだろう。これを機に彼は、政治の実践的次元に立って西欧を撃つことをやめる。」
このように「これを機に」は平成になっても使われていたことが酒井建過去の作品によって確認することができます。
これを機にの英語表記
「これを機に」は日本語だけでなく、英語でも表現する事ができます。「Taking this opportunity」という表現です。この表現は英語圏でも日本語圏同様、ビジネスシーンなどの日常会話で広く使用されています。
例えば「Taking this opportunity, He has become active in concerts around the world.」この場合は「これを機に彼は積極的に世界中のコンサートを精力的にこなすことになった」などで表現することができます。
「opportunity」は英語で「機会」という意味です。前段の文章を受けて、本文の前に「Taking this opportunity」とつけるだけで「これを機に」という表現をすることができます。
これを機にの漢字
「これを機に」を漢字で表現するとどんな漢字があてはまるのでしょうか?この表現は「機」がこの句では意味を構成する上で大切な要素となっています。
「機」は「きっかけ」と先述しましたが、「きっかけ」を漢字で表すと「切掛」と表現する事ができます。「切掛」は「ものを作る際、材料を切り始める事」意味しており、また「その切り掛けた部分」を指す言葉です。
上記の語源から、「ものごとが始まる原因、動機、理由」を指す言葉となりました。「切掛」を「切欠」とする表現がありますが、「切欠」は日本の地名(東京都あきる野市)で、「切掛」とは全然違う意味なのでご注意ください。
また「切欠」は「切り欠き(きりかき)」と表現することもでき、この場合は材料を接合するために生じる開口部分という意味になります。
これを機にはこのことをきっかけにという意味
「これを機に」の意味、類義語、使い方、他の語との違い、由来・歴史、英語表記、注意点を順を追ってご紹介してきました。「これを機に」は「これをきっかけに」の意味で、ビジネスシーンなどで敬語表現と一緒に前向きな意味で使われる言葉でも有ります。
しかし、すべての表現が前向きになる場合だけでなく、マイナスな表現でも使われるということ、また他の言い換えた表現「これを期に」や「切欠」などは誤用である表現であることなど、使い方にはある程度の注意が必要な語でもあります。
「これを機に」の言葉の使い方が「これを機に」ビジネスシーンなどで有効活用されるようになれば非常に幸いです。