反面教師の意味とは?
「反面教師」という言葉をご存知でしょうか。「教師」とつくからには何かを教えてくれる人、ということはわかりますが「反面」とあるように「正しくないこと」や「見習いたくないこと」を教えてくれるという意味になります。
「反面教師(はんめんきょうし)」の意味とは、悪い意味での手本となる人や物事を指す言葉です。それを見て、自分は同じようになってはいけないと反省するための材料となることでなくてはなりません。
その言動や物事が、そうしてはいけないという反対の面から「反面教師」という言葉を使うため、たとえ悪い意味での手本であっても同調してしまう人は「反面教師」という言葉を使いません。
反面教師の対義語・類義語
「反面教師」の意味について理解はできましたが、同じような意味を持つ類語や反対の意味を持つ対義語はあるのでしょうか。「反面教師」の対義語・類語とその意味についてそれぞれ解説していきます。
反面教師の対義語と意味
「反面教師」という言葉は「悪い意味での手本」という意味があります。この言葉の反対の意味を持つ言葉はあるのでしょうか。対義語として挙げられる言葉には、「手本」や「模範」があります。
また、「反面教師」という言葉から「教師」が対義語と思うかもしれませんが、「反面教師」は自らが教師として教えてくれるわけではないので対義語として「教師」という言葉は妥当ではありません。
反面教師の類義語と意味
反面教師は悪い手本として見習うべきものという意味がありますが、類語はあるのでしょうか。反面教師と同じような意味を持つ類語には「他山の石(たざんのいし)」や「人を以て鑑と為す」、「人の振り見て我が振り直せ」などがあります。それぞれの類語の意味を解説していきます。
他山の石
中国最古の詩篇である詩経から、「他山の石、以って玉を攻がくべし(たざんのいし、もってぎょくをみがくべし)」という言葉が由来となっています。
「他山の石(たざんのいし)」という言葉は、他の山に転がっている粗末な石でも、自分の玉を美しく磨くのには役立つということから、「他人の間違った言葉や行いでも自分のためになること」という意味になります。「反面教師」の類語として使用できる意味を持つ言葉です。
人を以て鑑と為す
こちらは唐書より生まれた言葉です。中国、唐の太宗が名臣である魏徴の死によって鏡を失ったと嘆いた言葉からきています。鏡は鑑のことで、手本や模範を意味します。
このことから「人を以て鑑と為す」という言葉には、「他人の言動を自分にあてはめて考え、間違った生き方をしないよう慎むこと」という意味があります。「反面教師」には「自分の心が相手に映る」という意味はないので意味合いは異なりますが、類語のため同様の使い方ができます。
人の振り見て我が振り直せ
「反面教師」の類語のひとつである「人の振り見て我が振り直せ」は、ほかの類語よりも聞き慣れた言葉なのではないでしょうか。この言葉は、相手の欠点や間違いを批判するのではなく、我が身を振り返って知徳を積むための手がかりにしましょうという意味のことわざです。
「他人の失敗を生かす」や「人の経験から学ぶ」といった意味と理解しても間違いではありませんが、より謙虚に「この機会に改めよう」という自戒の意味もあります。また、「振り」は踊りの振り付けではなく、人の動作を指す振る舞いを意味します。
反面教師を使う際の注意点
これまでは「反面教師」の意味や類語などについて解説してきましたが、この言葉を正しい意味で使うために誤用しないよう注意が必要となります。「悪い見本」という意味を持つ言葉をなぜ誤用してしまうのか、その理由を解説していきます。
「悪い見本」以外の意味では使えない
「反面教師」の類語として「他山の石」について解説しました。その意味は「他人の間違いも自分を磨く材料となる」という意味でした。しかし、「他人の良い行動や言動を見て学ぶ」という意味に取り違えている方もいるようです。
あるいは反面教師を誤用して「相手の良い部分を見て学ぶ」という意味にとらえてしまっている方もいるようです。「反面教師」も「他人の石」も同様の意味を持つ言葉なだけに、誤用しないよう注意しましょう。
反面教師の使い方・例文
「反面教師」の意味や対義語・類語について理解が深まったところで、ここからは「反面教師」という言葉の使い方を例文を交えて解説していきます。
「反面教師」には「教師」という言葉がつくことから、自分よりも上の教える立場の人を指す言葉です。用例としては親や上司など目上の人に対して使われることが多い言葉ですが、どういった使い方をするのでしょうか。
使い方としては、「こんなことは見習いたくないな」と思うことをやってしまう人を見て、自分を注意することを表現する際に使われます。
例文①
親に限らず、すぐに怒る人が身近にいる方もいるでしょう。そういう人を見たり、自分が理不尽に怒られたりしたときに、あなたは「すぐ怒るのは良くない。自分は人にやさしくするぞ」と思うか、「自分も同じように怒ってやろう」と思うか、どちらでしょうか。
「反面教師」は悪い意味での手本を意味する言葉なので、例文としては「親はすぐ怒るから、反面教師として自分は人にやさしくしよう」といった使い方をします。
例文②
資格試験や受験など、子供のころはもちろん大人になっても勉強はつきものです。先人の生き方を見て自分に省みることも時にはあるでしょう。今回は試験を例に「反面教師」の使い方を解説します。
例文の通り、試験勉強をせずに遊んでばかりいた先輩がいたとします。その先輩は勉強をしていなかったために、試験に落ちてしまいました。
それを見た自分は真面目に勉強をしようと戒めようという意味で、例文として「遊んでばかりいて試験に落ちた先輩を反面教師にして、自分は真面目に勉強します」といった使い方をします。
例文③
「反面教師」は相手だけでなく、自分の失敗などを誰かに語る際に使うこともあります。「反面教師」の使い方として「この件を反面教師として、君は気を付けてほしい」といった使い方を紹介します。
例えば、自分の不注意で交通事故を起こしてしまった、先ほどの例文の先輩にあたる人物が自分だったなど、自分が大きな失敗をしたということもあるでしょう。
「部下や後輩にはこういった思いをしてほしくない」という悪い見本という意味を込めて「この件を反面教師として、君は気を付けてほしい」といった使い方をして、伝えてみるのはいかがでしょうか。
例文④
こちらは「反面教師でもいいから、何かを得てほしい」と、少し謙虚な使い方となります。自分も含め人は誰もが失敗をしない完璧な人間ではありません。
自分を悪い見本としてでもいいから、という思いから「反面教師でもいいから、何かを得てほしい」といった使い方をすることもあります。
反面教師の由来
反面教師の由来は、中国共産党中央委員会主席の毛沢東が発案した言葉です。「間違った指導者がいた方が、反面教師として大きな効果が期待できる」と言ったことから生まれた言葉とされています。そのため現在の中国でも「反面教師」や「反面教員」という言葉は、だいたいの意味が通じます。
誰かと比較することで、自分をより良い未来の行動を決めることが、「反面教師」の基本にある考え方なのです。
反面教師の英語表記
「反面教師」を英語で表現すると、どういった英語を使い、どういう意味になるのでしょうか。英語では「bad example(悪い例)」、「negative example(反対の例)」、「an example of how not behave(見習うべきでない例)」といった表現になります。
各英語の意味としては「example」は「例」、「bad」や「negative」は「悪い、良くない」という意味があり、「behave」は「振る舞い」という意味があります。
「behave」に打消しの意味がある「not」が付くことで「良くない(見習うべきでない)振る舞い」という意味になります。英語での表現としては、「反面教師」というよりは、「悪い例」や「見習うべきでない例」といった意味として英語で伝えることができます。
反面教師は「悪い見本」という意味
今回は「反面教師」の意味や使い方、対義語・類義語、英語での表現について解説してきました。特定の人物を「悪い見本」として同じ失敗をしないよう戒めるという意味を持つ言葉です。しかし、結果として同様の失敗をしてしまうこともあります。
そういったことがあった際に、自分を「反面教師」と見て立ち直るか、見本となった人と同じような道をたどるかは自分次第です。また、自分も誰かの「反面教師」となることもあります。
他人の粗探しだけが人生ではないので、良い部分は吸収し、悪い部分は「反面教師」として学び、より良い人生を送りましょう。