はいさいの意味
沖縄の方言の定番として知られる「はいさい」。今ではテレビなどの影響で、沖縄以外の地域でも意味が知られるようになりました。「はいさい」は沖縄で使われる標準的な挨拶のひとつで、「どうも」という程度の意味になります。
標準語での挨拶は、おはよう、こんにちは、こんばんは、という風に、時間帯に合わせて使い分ける必要がありますが、沖縄では時間帯にかかわらず、「はいさい」ひとつで挨拶として通じるという違いがあります。
また、沖縄以外の地域ではあまり知られていないことですが、「はいさい」は沖縄ではいわゆる男性言葉として知られており、女性が使う場合には「はいたい」という形になります。「はいさい」は昔からある方言ですが、テレビや歌謡曲などの影響で今では全国的に知られる方言になりました。
はいさいの由来
「はいさい」は沖縄ではよく使われる挨拶のひとつですが、標準語とはリンクする部分がないため、まったく意味を知らなければ使い方さえわからず、戸惑ってしまうかもしれません。「はいさい」の意味と使い方を正しく理解するためには、沖縄(琉球)の歴史からさかのぼる必要があります。
沖縄がまだ日本の領土ではなく、琉球王国だった時代、琉球王国は日本の文化とは切り離されたかたちで、独自の文化をつくりあげてきました。そうした流れのなかで生まれ、複雑化したのが琉球弁です。
ちなみに、「はいさい」のように戦後以降に生まれた沖縄の方言を「やまとうちなーぐち」といい、純粋な琉球弁と言われている「やまとぐち」とは区別されています。やまとうちなーぐちのほうは標準語のエッセンスが取り入れられているため、沖縄以外の地域でも伝わりやすくなっています。
はいさいと合わせて覚えたい沖縄方言の実例
「はいさい」は沖縄以外の地域でも意味が広がっているポピュラーな方言ですが、「はいさい」以外にも覚えておきたい沖縄の方言はまだまだあります。出張や観光で沖縄を訪れる際にぜひともおさえておきたい沖縄の方言についていくつかまとめてみました。
めんそーれ(ようこそ)
「はいさい」と合わせて使いたい沖縄方言として、めんそーれがあります。「はいさい」と同様、めんそーれもまたテレビドラマなどでよく使われる沖縄方言であり、沖縄以外の地域でも意味が伝わりやすい方言と言えます。
めんそーれも「はいさい」と同じく、挨拶として使われる方言ですが、めんそーれには「いらっしゃいませ」という意味があり、「はいさい」とは違って外部からきた初対面の人に対して使う、というニュアンスが込められています。
にひゃーでーびる(ありがとう)
にひゃーでーびるもまた、「はいさい」と同じく全国的に意味が広まっている沖縄の方言です。にひゃーでーびるの意味は標準語でいう「ありがとう」ということであり、地元でも日常的な挨拶として使われています。
ただ、琉球言葉は本来、沖縄の北部と南部でわかれており、同じ方言であってもそれぞれの地域で表現と使い方がまったく異なっている、という場合があります。にひゃーでーびるは主に沖縄の南部で使われる方言であり、北部や離島では「たんでぃがーたんでぃ」という方言になります。
はいさいのように、沖縄の方言の中には地域によって意味や使い方ががらりと変わってしまうものが少なくありませんので、観光や出張などで沖縄を訪れる際にはそのあたりも事前にチェックしておきましょう。
なんくるないさ(どうにかなるさ)
「はいさい」以上にポピュラーな方言として知られているのが「なんくるないさ」です。なんくるないさとは「どうにかなるさ、心配ないさ」という意味で、なんくるないさぁ、と伸ばして使うのが沖縄では基本とされています。
沖縄を舞台にしたドラマや映画でも、シリアスなシーンや大切な場面で「なんくるないさぁ」というセリフが出てくるとどこか心がやわらぎます。最近では東京でも「なんくるないさTシャツ」が人気になるなど、はいさいとともに沖縄の方言の市民権が次第に拡大しつつあります。
なんくるないさ、は自分自身の不安をやわらげるために使われることもありますが、壁にぶつかっている相手に対して激励の意味で使うこともあり、使い方の幅が広い方言でもあります。
コビル(おやつ)
コビルは沖縄でもかぎられたエリアで使われている方言であり、ドラマや映画でもあまり出てこないため、沖縄以外の地域では意味や使い方がわかりにくいかもしれません。コビルは漢字で(小昼)と書き、標準語で言うところのおやつという意味があります。
沖縄でも午後3時がおやつの時間であり、コビルの時間にはそれぞれの家庭で作業や仕事を中断し、おばあやお母さんがつくってくれたおやつを家族そろって食べるのがひとつの伝統となっています。
沖縄のおやつというと、観光名物でもあるちんすこうやサーターアンダギーが思い浮かびますが、このふたつ以外にも、小麦粉と水を混ぜ合わせて生地をつくったポーポーやポーポーに黒糖をプラスしたちんびんなど、伝統的なお菓子が数多くあります。
ちゅらさん(美人)
NHK朝ドラのタイトルにもなっている「ちゅらさん」は、標準語で美人という意味です。ちゅら、というのが美しいという意味で漢字では美らと書き、さんをつけることで関西でいうべっぴんさんのようなニュアンスになります。
ちゅらさんにはただ単に美人という意味だけでなく、人柄も含めて魅力的な人、という意味も含まれており、幼い子どもへの褒め言葉としても使われます。ちなみに、美ら海というのはきれいな海、という意味です。
はいさいはあのネタのルーツだった?
沖縄の方言として全国的に知られつつある「はいさい」ですが、実は、沖縄ブームが巻き起こるずっと前にあの有名大御所芸人がネタに取り入れていたのです。その大御所芸人とは、ドリフターズで有名な志村けんさん。
皆さんは沖縄の歌謡曲「はいさいおじさん」を御存知でしょうか。喜納昌吉さんが歌ってヒットした歌謡曲なのですが、志村けんさんにも「変なおじさん」というネタがあります。神出鬼没の奇妙なおじさんが突然踊り出すというコントで、当時大人気でした。
変なおじさんのメロディと「はいさいおじさん」のメロディがよく似ていることから、志村けんさんのほうが沖縄文化にインスパイアされたのでは、と言われているのです。皆さんもぜひふたつのメロディを聞き比べて、本当に似ているかどうか確かめてみてください。
はいさい以外にも?沖縄方言の意外なトリビア
生まれ育った土地以外の方言について深く知るのは楽しいですし、教養にもつながります。観光や出張で沖縄を訪れる機会にそなえて、沖縄(琉球)の方言にまつわる意外な背景やトリビアについておさえておきましょう。
東京だと、日常の挨拶は時間帯に合わせて使い分けるのが普通ですが、沖縄では時間帯を問わず、「はいさい」ひとつで挨拶が成立します。「どうも」から「御機嫌いかがですか」まで、はいさいにはいろいろなニュアンスが含まれており、使い方もさまざまです。
また、「はいさい」は比較的エリアが広く、沖縄であればどの地域でも挨拶の言葉として通用しますが、方言によっては局所的に使われているものもあり、北と南では通じる方言がまったく違う場合がありますので、観光や出張の際には注意が必要です。
はいさいの使い方
沖縄の方言は他の方言と比べてやや特殊なため、具体的な例文を通して使い方をシミュレーションしておくのが近道です。実践的な例文を通して、はいさいのリアルな使い方と意味について詳しく見ていきましょう。
例文①
「はいさい、しらんちゅの家に間違って入って、あふぁーだったよー」。標準語では、「こんにちは、この前知らない人の家にうっかり入っちゃって気まずかったよ」という意味になります。しらんちゅは知らない人、あふぁーが気まずい、という意味です。
例文②
「はいさい、ウンジュのアンマー、チビラーサンねー」。ウンジュはあなた、アンマーはお母さん、チビラーサンは素敵な人、という意味になります。つなげると、「こんにちは、あなたのお母さんは素敵な人ね」ということになります。
例文③
「はいさい、いー・うゎーちち・でーびる」。標準語では、「こんにちは、いいお天気ですね」となり、沖縄でも一般的によく使われる日常の挨拶です。親しい間柄であればここから長話に発展していくこともあるようです。
例文④
「はいさいおじさん」の大ヒットをきっかけに、沖縄以外の地域でも琉球地方の方言が広く知られるようになりました。明るいメロディが特徴的な「はいさいおじさん」ですが、実は暗い歴史の中で生み出された曲なのです。この曲に登場するおじさんとは、戦争から帰ってきた軍人さんのこと。
長くつらい戦争によって心身ともに傷つき、仕事も家族もすべて失って社会の底辺に落ちてしまったおじさんと、戦後に生まれ、明るい未来に満ち溢れた子どもとの対比を日常の会話によってあざやかに描き出した名曲。それが「はいさいおじさん」の真実だったのです。
はいさいの注意点
沖縄以外の地域の人が「はいさい」を使う際にはまず、相手との関係性に注意する必要があります。「はいさい」は本来、身分が同等の関係同士で使われる挨拶であり、目上の相手に対して使うのは非礼にあたる場合があります。社長に「どうも」と挨拶するイメージでしょうか。
ただ、最近では本来の意味が薄れつつあり、地域によってはむしろ目上の相手にこそ「はいさい」を使わなければ失礼になってしまう場合もありますので、例文を通して細かい使い方を把握しておきましょう。
また、はいさいはもともと男性言葉とされており、女性が使う場合には「はいたい」となりますので、女性の方はうっかりはいさいと言わないように注意しておきましょう。
はいさいは沖縄の方言で「どうもこんにちは」という意味
はいさいは沖縄の方言で、標準語では「どうも、こんにちは」という意味で、時間帯を問わず日常の挨拶として使われます。はいさいは本来男性言葉であり、女性の場合は「はいたい」を使うのが伝統とされています。
はいさいのほかにも沖縄の魅力が感じられる方言はまだまだたくさんありますので、具体的な例文を通してそれぞれの使い方を把握し、皆さんも「うちなー」として沖縄文化を存分に楽しみましょう。