「乞うご期待」の意味とは?
「乞うご期待」という言葉はテレビドラマの次回予告編や近日公開の映画の紹介などでよく見かけます。しかし、「乞うご期待」と聞いても何となく過ごしているのが普通です。
では改めて「乞うご期待」とはどういう意味かと聞かれると、明確に答えられるでしょうか。意外と答えられない人が多いようです。
「乞うご期待」の意味は「期待しているように相手に求める、呼びかけの言葉」です。分かりやすく言うと、「期待してください!」といった意味合いでしょうか。
「乞うご期待」の対義語・類語
「乞うご期待」はドラマや映画の紹介で「ぜひご期待ください!」という意味で使われることが多い表現です。この「乞うご期待」の対義語や類語にはどのようなものがあるのでしょうか。
「乞うご期待」は「乞う」と「ご期待」とが合わさった複合語です。つまり、「乞うご期待」自体の対義語や類語というのはありませんが、反対の意味を示す言葉や、「乞うご期待」の別の言い回しがそれぞれ対義語・類語に当てはまります。
対義語
「乞うご期待」の「期待」は前向きな場合に使われる言葉です。なので、「期待」の対義語はその期待を裏切った結果となる「失望」となります。
「期待」が非常に高かった場合は、「絶望」に結びつtくことにもなります。これは期待が大きかったがために生じる感情なので、「乞うご期待」を使うのは、期待に応えられるだけの根拠がある場合だけにしたいものです。
類語
「乞うご期待」は少々堅い言葉です。なのでテレビなどで目や耳にすることはあっても、自分からこの言葉を使うことはまずありません。
類語としてよりも少し柔らかい言い回しを紹介した方が、実際に話し言葉としての使い方ができるようになるので、それらの表現について紹介します。
具体的には「どうぞ期待して待っていてください」、「楽しみにしていてください」などの表現が話し言葉としてはしっくりするでしょう。また、子供向けの毎週放送されるテレビアニメなどでは「来週もお楽しみに!」という表現が類語として一般的です。
「乞うご期待」の使い方・例文
「乞うご期待」という言葉は日常会話で口にすることはほとんどないと紹介しましたが、テレビなどではたびたび耳にするので、実際にどのような時に使われているのかを、いくつか例を挙げて紹介します。
次に挙げる例文を頭の隅に置いておくと、同じような使い方をされているのを耳にした時、今まで以上に「乞うご期待」という言葉が印象深くなるでしょう。
例文①
「ドラマの撮影も順調に進んでいます。完成作品に乞うご期待!」などは最も一般的な使い方でしょう。現在、順調に物事が進んでいるので、結果にも大いに期待することができるということを強調し、ぜひ見て欲しいと願う時に使います。
例文②
「乞うご期待あれ」、この例文は日常会話でも使えないこともない表現です。意味としては「期待していてください」となります。
これは「乞うご期待」に「~あれ」がついた言葉で、「~あれ」は命令形ではあるのですが、この場合には丁寧な表現として使われます。
例文③
「乞うご期待ですね」という使い方も会話の中でできる表現です。敬語ではありませんが、これはある程度距離が近い人手あれば、目上の人でも使って良い表現です。
「乞うご期待ですね」を分解すると、「乞うご期待」、「ですね」の2つに分けることができます。「乞うご期待」は今まで説明した通りの意味で、これに「ですね」をつけることで、「次に期待することができますね」と「次回」を意識したニュアンスになります。
例文④
もうひとつ、会話の中でも使えそうな表現を紹介します。それは「今まで頑張ったのだから、結果は乞うご期待といったところですね!」という例文です。
相手の今までの努力を認める思いを込めた使い方です。使う相手は親が子に、会社などでは上司が部下に対してが基本です。目上の人に使う時には状況を考えて、注意して使わなければ、上から目線になり兼ねないので、相手に不快感を与えることになります。
「乞うご期待」と「ご期待に沿えるように」の違い
「乞うご期待」は確信があるとき、相手にぜひ期待して欲しいという思いがあるときに使う言葉です。これに似た表現に「ご期待に沿えるように」というのがあります。
これは「乞うご期待」に比べて確信の度合いが低い場合に使われます。これだと努力はするが、結果についてはもしかすると期待に沿えないかも、というちょっと消極的な表現になります。
「ご期待に沿えるように」は「最大限の努力をします」という意味
「乞うご期待」に対して「ご期待に沿えるように」はやや消極的なニュアンスを含んだ言葉ですが、思いとしては「最大限の努力をします」という強い気持ちが含まれています。
消極的といいながらも、うまくいかなかった場合の逃げ道に使われるのではなく、あくまで自分の最大限の努力を相手に伝えるために使われる表現です。
この表現もまた、基本的には個人で使うことは少なく、むしろ「乞うご期待」よりもビジネスシーンで使われることが多い表現です。
「乞うご期待」を使う際の注意点
「乞うご期待」という言葉の使い方で、一番目につく間違いは「乞うご期待ください」という使い方です。これは間違った使い方なので、どう間違っているのかを説明します。
「人に何かをお願いする」という意味で、言い換えれば「~ください」となるので「乞うご期待ください」は「ください」が重なった表現になってしまいます。
「ください」という言葉を付け加えることで、「乞うご期待」を敬語表現のつもりで使っているようですが、これは誤りのため注意が必要です。
「乞うご期待」は敬語では使えない
「乞うご期待」には「ご期待」と敬語表現が含まれているため、敬語として使われそうですが、これは間違いです。
「乞うご期待」という言葉は少々堅い表現を言いましたが、言い換えれば「期待していてくださいね!」という意味なので、目上の人に敬語として使うのは適当ではありません。
同じ意味の敬語表現としては「どうぞご期待ください」が適当です。日常ではあまり使うことのない「乞うご期待」という言葉ですが、同じ意味で目上の相手に使う場合には注意が必要です。
「乞うご期待」の由来・歴史
ここでは「ご期待ください」という意味で使われる「乞うご期待」という言葉がどのようにして生まれたのか、そしてどのような歴史を経て現在に至っているのかなど、その由来や歴史的な背景について紹介します。
由来
「乞うご期待」は熟語や単語ではなく「乞う」と「ご期待」の複合語と紹介しました。なのでこの言葉自身ができた由来というのは特にありません。
ではこの言葉はどのようにして生まれ、どのようにして一般に広まったのでしょうか。広く言われているのは映画館で使われたのが始まりということです。
今でも映画館ではお馴染みの、次回の上映映画の予告編が紹介されます。昭和30年台に一通り紹介が終わると、そのあとに「〇月△日上映開始!乞うご期待!」という言葉が画面に大きく映し出されます。
観客はこれを見て、また次回も面白そうだから見に来ようという気になり、効果は抜群でした。この「乞うご期待」という言葉の与えるインパクトが大きく、次第に広く使われるようになり、一般にも普及したのだと言われています。
歴史
インパクトのある「乞うご期待」という言葉は当時、宣伝効果は抜群でしたが、次第に広まるにつれ、そのインパクトもなくなり、今ではあまり使われなくなってきました。
テレビの普及によって、映画館よりもお茶の間で見ることが多くなってきました。映画館では外国映画などは「全米ナンバー1」などの方がインパクトが強く、「乞うご期待」という言葉は次第に消えていきました。
ただ、言葉としては残っていて、また、少し言い回しを変えてビジネスシーンでも使われるようになりました。テレビでも使われることが少なくなってしまったため、ちゃんとした意味を知らない人も増えてきたようです。
「乞うご期待」の英語表記
「乞うご期待」に当てはまる英語は主に"Don't miss it."や"stay tuned"があります。ただ、日本語では同じ「乞うご期待」でも、使われるシーンによって当てはまる英語も違ってきます。
これまで紹介した一番よく使われる意味の「立派な作品ドラマ!乞うご期待!」のような場合には前者の"Don't miss it."になります。この英文の意味はもちろん「乞うご期待」ですが、「見逃すな!」という意味も込められているので、ドラマなどぜひ見て欲しい時にはピッタリです。
もうひとつの"stay tuned"はテレビの場合などはよく使う言葉で言えば、「チャンネルはそのままで!」の意味に近い英文です。「他に注意をそらさない」という意味から派生した言葉です。
この他にも「乞うご期待」の意味の英語表現には、「近日公開」の”coming soon”や「期待していても良いです」の意味の”look forward to it”などがあります。
「乞うご期待」は「相手に期待することを望む」という意味
「乞うご期待」について、意味をはじめ使い方、敬語を含めた別の表現などについて紹介しましたが、お分かりいただけたでしょうか。
日常会話ではそのまま使うことはありませんが、テレビドラマやアニメ、映画の予告など、様々な場面ではよく使われます。それは「乞うご期待」が「相手に期待することを望む」という思いがもっとも強く表現できる言葉であることに由来します。
中には誇張した使い方をするものもありますが、「乞うご期待」には自信作にぜひ期待して欲しいという思いが込められているので、この言葉を耳にしたらちょっと期待してみるのも良いかもしれません。