介護保険料とは?
介護保険は1997年から始まった社会保険制度です。少子高齢化にともなう今後の介護費用の増加と若い世代への負担増を見越して、高齢者サポートに特化した制度として制定されました。介護保険においては、中高年世代から高齢者本人まで、おもに介護リスクが発生する年齢の人が高齢者の介護費用を負担することになります。
この介護保険の運用のために徴収されるお金が介護保険料で、税金と同じく「一定以上の年齢の国民が必ず支払わなければいけないもの」です。納付方法や納付金額にはいくつもの段階があり、年齢や収入によってどの段階になるか決まります。
ところで、介護保険料で運営されている介護保険とはどのような保険なのでしょうか。次の項で少しくわしくみていきましょう。
安心して介護サービスを利用する為の保険
介護保険は、介護サービスを利用するうえで欠かせない制度です。一定の年齢に達した人は、すべてこの介護保険に加入して介護保険料を納めることが義務付けられています。
被保険者(介護保険料を支払っている人)に介護サービスが必要になると、介護保険から費用がまかなわれ、本人の金銭的負担を軽減します。
介護保険は、加入者が軽い負担で高度な介護サービスを受けることを可能にして、安心して暮らせる環境をつくるというシステムなのです。
介護保険は医療保険の1つと考えることができます。健康保険と同じように、介護保険で運営されるサービスを受けるとかかった介護費用に対してその何割か(通常は9割)を助成してもらえます。同じ社会保険でも、年金のような現金で受給するものではないので注意してください。
介護保険料はいつからいつまで払うの?
前述のとおり、介護保険は介護だけに特化した保険なので、保険料を負担する被保険者も介護のリスクがある年齢に限られてきます。
ただし、いつからそのリスクが発生するかは人それぞれ。できるだけ多くの人数で高齢者を支える意味もあり、いつから被保険者になるかはかなり余裕をもって決められています。
介護保険は超高齢化社会に対応するためにとても重要な制度。きちんと機能してほしいものですが、その財源である介護保険料は具体的にはいつからいつまで払うものなのでしょうか。
介護保険料を払う年齢は?
介護保険料はいつからいつまで支払うのでしょうか。「いつから」ははっきりした基準がありますが、「いつまで」は何歳までということはできません。支払い開始時期が「40歳から」ときっちり決まっているのに対し、支払終了についてはいつまでという限度がないからです。
介護保険は、たとえば年金のような「何歳まで支払い、何歳からもらえる」という区切りが設けられたシステムではありません。介護保険を受給する側になっても、支払いの義務は続きます。
つまり収入がある限り、いつまで経っても介護保険料は支払わなければならないのです。「いつまで」という年齢による明確な区切りはありません。
つまり介護保険は、加入者が生涯にわたってずっと支払いの義務を負う保険です。したがって、介護保険料を払う年齢は「40歳からいつまでも」ということになります。
介護保険料は正確には40歳のいつから?
以上のように、介護保険料の支払い開始年齢は40歳と決まっています。しかし、ひとことで「40歳」といっても、考え方はさまざまです。40歳になったその日から、と考える方もいれば、40歳になった年の1月、ととらえる方もいるでしょう。年度で考えて40歳になった年の4月と思う方もいるかもしれません。
いったい「40歳」とは、正確にいうといつからなのでしょうか?介護保険料を支払うのは40歳のいつからになるのでしょうか?
40歳になる誕生日の前日
実は、正解は「40歳になる誕生日の前日」です。法律上では「満××歳」というときは、「××歳になる誕生日の前の日」から××歳になったとみなすことになっています。意外に知られていないことですが、知っていると便利なのでぜひ覚えておいてください。
介護保険料を支払うのは月ごとなので、40歳になる誕生日の前日がある月が正確な支払い開始時期となります。
さて、ここで迷ってしまうのが、誕生日が1日の方です。こういうときは、誕生日の前の日の月が該当します。たとえば9月1日生まれの場合、誕生日の前の日は8月31日になるので、8月に介護保険への加入義務が生じます。したがって、40歳になる年の8月ぶんから介護保険料の支払いが始まります。
40歳~65歳の介護保険料の納付方法は?
介護保険料の納付方法は、年齢によって異なります。より具体的にいえば、65歳を境にして納付方法が切り替わるのです。
介護保険では、介護保険に加入する年齢の40歳から年金受給資格が発生する65歳までを一区切りと考え、65歳以上の被保険者と区別しています。まずは、この年代から納付方法についてみていきましょう。納付方法は健康保険の種類によっても違ってきますので、その点についてもくわしく解説します。
第2号被保険者(40歳~65歳未満)
40歳から65歳までの被保険者のことを、第2号被保険者といいます。納付金額は被保険者の収入に応じて変動します。
この世代では介護の必要性が生じるケースはあまりなく、おもな役割は高齢者を支える財源の担い手として、また将来の自分への備えとして保険料をきちんと納めることです。特定の疾病にかかった場合を除いては、介護保険サービスを受けることはできません。また、扶養家族にも介護保険への加入の義務が生じますが、保険料の支払いは免除されます。
第2号被保険者が介護保険に加入する際、保険料の納付方法は2種類あります。どちらの納付方法になるかは、加入している医療保険の種類で決まります。
医療保険と同時に納付
納付方法の1つは健康保険と一緒に納めるというものです。会社経由で組合けんぽなどの健康保険(健保)に加入している人は、この納付方法になります。
もともと給料から健康保険を差し引かれている会社員の場合、手続きはとくに必要ありません。被保険者の年齢が40歳になった時点で自動的に健康保険に上乗せされ、今まで通り給料からの天引きとなります。第2号被保険者においてはもっとも一般的な納付方法です。
国民健康保険加入者の場合
会社員以外の職業に就く人が加入するのが国民健康保険(国保)です。農林水産業を含む自営業やフリーランスで仕事をする人、短期派遣など就業場所が一定ではない人も国民健康保険の加入者になります。
健康保険の加入者の場合は40歳になった段階で会社側が手続きをしてくれますが、国民健康保険の場合税務を代行してくれる会社が存在しないので、介護保険納付の手続きも自分ですることになります。
といっても、自発的に加入時期が来たことを申告する必要はありません。年齢が40歳になった時点で、お住まいの市区町村から通知が送られてきます。しっかり確認したあと、すみやかに納付しましょう。
納付書や口座振替サービス
国民健康保険を支払っている方なら、介護保険料の納付方法を理解するのは簡単なことです。介護保険の支払いは、原則的には国民健康保険と変わらないからです。
40歳になって介護保険に加入した方には、各市区町村など介護保険を運営する自治体から専用の納付書(自治体によっては納入通知書ということもあります)が送られてきます。それを利用して銀行や郵便局などの金融機関で支払いをすることになります。
納付書にはいつまでに支払いをしなければいけないかが明記されていますので、しっかり確認して期限内に支払うようにしましょう。また所定の手続きをとれば、銀行口座から引き落としになる口座振替サービスも利用できます。
国民健康保険の加入者の場合、支払いはあくまでも自己責任。自発的な動きが要求されます。うっかり忘れないように、よく気を付けましょう。
65歳以上の介護保険料の納付方法は?
40歳から64歳までの第2号被保険者の保険料納付方法をみてきました。65歳以上になると、それまで会社で健康保険に加入していた人が退職して国民健康保険の加入者になったり、年金を受給するようになったりと家庭経済に大きな変化が生まれます。そんな65歳以降の介護保険の納め方はどのような形になるのでしょうか。
第1号被保険者(65歳以上)
65歳以上のすべての加入者は第1号被保険者となります。第2号被保険者から第1号被保険者への変更は自動的に行われますので、申請する必要はありません。
第1号被保険者になると、特定の疾病だけでなく介護を必要とするすべての人に介護保険の受給資格が与えられます。平たくいうと、払う側から使う側へ変わるということです。
といっても、保険料が免除されるわけではありません。介護保険は、高齢者自身も参加して高齢者を支えようというシステムです。介護保険を利用する立場になっても、年金などの所得額に応じていつまでも相応の保険料を納めなければなりません。また、第1号被保険者になると扶養家族にも保険料支払いの義務が生じます。
年金の額によって変わる
第1号被保険者になっても働き続ける方もいますが、たいていの方は年金で生活することになります。その際ももちろん、介護保険料は支払い続けることになります。
収入が減ってもいつまでも介護保険料を支払いつづけなければならないことに不安を感じる方もいるかもしれませんが、保険料は収入の額に合わせて設定されています。収入が減れば保険料も減りますので、それほど心配することはありません。
現在は、年金の額によって9段階の保険料が設定されており、それぞれの収入に見合った額が徴収される仕組みになっています。この保険料の設定をはじめ、介護保険のシステムは3年ごとに見直しをすることになっています。将来年金のシステムに変更があったとしても、それに対応する柔軟性が期待できます。
年金が年間18万円以上はいつから?
第1号被保険者の保険料の納付には第2号被保険者と同じく2種類の方法があり、それぞれ「特別徴収」「普通徴収」と呼ばれます。納付方法が特別徴収になるか普通徴収になるかは年金の額で決まります。自分で納付方法を選ぶことはできません。1年間で受け取る年金の総額が18万円以上の人は、特別徴収になります。
特別徴収から半年~1年の準備期間の後
特別徴収とは、年金から天引きの形で介護保険料を納める方式です。ちょうど第2号被保険者における健保加入者と同じで、自分で手続きをしなくても自動的に保険料が支払われるシステムになっています。
納め忘れがなく便利な方法ですが、65歳になってすぐにはこの納付方法は選択できません。自治体では特別徴収を行う前に、ある程度の準備期間を必要とします。準備期間の間は、次項でご説明する普通徴収という方法で介護保険料を納めることになります。
準備期間は各自治体によって差がありますが、おおむね半年から1年で特別徴収に移行します。手続きにいつまでかかるか心配な方は、事前に自治体に確認しておきましょう。
なお、この場合も積極的な手続きをする必要はありません。移行は自治体側で行われ、完了後に被保険者に通知される仕組みになっています。
年金が年間18万円以下はいつからどの様に?
前項では特別徴収で介護保険料を納付する方法をご紹介しましたが、それ以外の、受け取る年金が1年で18万円に満たない方はどのような方法で介護保険料を納めるのでしょうか。
年金が年間18万円以下の方については、普通徴収といわれる方法がとられます。これは第2号被保険者の中でも国民健康保険に加入している方の納付方法と同じく、納付書によって納めるという方法です。
6月から翌年3月までの年10回の普通徴収
6月になると、各自治体から被保険者のもとへ介護保険納付書が送られてきます。1年間の介護保険総額を10で割った金額の納付書が10枚入っていますので、記載された期限内に金融機関に持ち込み、保険料を支払います。
納付書は10枚(1年ぶん)がいっぺんに送られてきます。1年間しっかり管理して、なくさないように気を付けましょう。
第2号被保険者の場合と同様に、こちらも口座振替サービスを利用することができます。うっかり忘れや1年ぶんの納付書の置き場所を確保する手間を避けるには、口座振替にするのがオススメです。
介護保険サービスはいつから使える?
介護保険に加入するのは40歳からです。つまり、介護保険の支払いが始まるのが40歳からということになります。だからといって、介護保険で運営されているサービスを40歳から受けられるというわけではありません。同じ介護保険加入者でも、65歳未満の第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では役割に明確な区別があるのです。
基本的に65歳以上から
第2号被保険者は、一部の例外を除き介護保険サービスを受けることはできません。サービスを利用できるのは、第1号被保険者になってからです。つまり年齢でいえば、65歳からです。
サービスを利用できないのに介護保険料を支払わなければならないことに、不満をもつ方もいるかもしれません。けれども、今は介護保険サービスを支える立場の方も、いつかは第1号被保険者になるときがきます。介護サービスを受けるようになったときを考えて、保険料はきちんと納付しましょう。
必要な人は認定を受けなければいけない
加齢や病気などで介護が必要になった場合、介護保険サービスを利用するためにまず要介護認定を受けます。これは、どのような介護サービスがその人に必要かを自治体が判断するためのものです。
要介護認定では被保険者からの申請、そして自治体職員による訪問調査が行われます。申請書の情報と訪問調査の結果、主治医の意見書などをもとに、介護保険サービスを運営する自治体の介護認定審査会が被保険者の状況を見積もり要介護度を決定します。
要介護度には、状態に応じて要支援1~2、要介護1~5の合計7種類のカテゴリーがあります。もっとも程度が軽いものが要支援1で、もっとも重いのは要介護5になります。それぞれ、介護サービスを利用できる時間や介護用品レンタル料などの限度額が異なります。
介護保険サービスの認定はいつから受けられる?
要介護認定は介護保険サービスを受けられるようになる65歳から受けられます。より正確にいえば、65歳になる前の日からです。申請してから実際に要介護度が決定するまでには時間がかかりますので、手続きは早めに行うようにこころがけましょう。
申請してから認定が降りるまでの間に実際に受けたサービスについては、さかのぼって計算できます。申請の際に確認しておくとよいでしょう。ちなみに、申請にはいつまでという上限はありません。必要になったときにはいつでも受けられます。
必要であれば40歳~64歳でも受ける事が可能
基本的に、介護保険のサービスを受けられるのは65歳以上の第1号被保険者に限られます。ですが、65歳よりも前に介護が必要になってしまうケースもあります。そんなときにはどうすればよいのでしょうか。65歳まで待たなければならないのでしょうか?
そんなときのために、介護保険では第2号被保険者でも介護保険サービスを受けられる特別な例外を設けています。
特定疾病の人のみ
おもに加齢によって発症すると考えられる特定の疾病によって日常生活が困難になった場合、第2号被保険者でも介護サービスを受けることができます。麻痺などの後遺障害を残す脳出血や、リウマチなど関節や骨の変形によって歩行が困難になる疾病、64歳以下の若年性認知症、早老性など16種類の疾患が現在特定疾患と認定されています。
介護保険サービスで何ができる?
支払った介護保険料は、どのように使われているのでしょうか。いつまでも元気に過ごすのは誰もが願う夢ですが、実際には私たちの心身は年齢とともに衰えてきます。それをできる限りサポートし、高齢者とその家族の生活を支えるのが介護保険サービスの役目です。
そんな介護保険サービスには、具体的にはどんなものがあるでしょうか。将来のために、今から知っておきましょう。
介護保険サービスの種類
同居の家族だけではケアが難しい場合や、ケアをする側も高齢者といういわゆる老老介護、あるいは家族がいない独居の方などどうしてもサポートが必要な高齢者を、家族に代わってケアするのが介護保険サービスです。
さまざまな環境の高齢者にきめ細かく対応するために、現在の介護保険サービスは多様な形態をもっています。たとえば特別養護老人ホームやデイサービスなどの通所介護施設、自宅での生活や家事を援助するホームヘルパーの派遣や入浴サービスなどの在宅サービスも介護保険料で運営されるサービスです。
介護保険サービスは、わたしたちの身の回りでも目にする機会がたくさんあります。こういった身近なサービスもすべて、介護保険によって支えられているものなのです。
介護保険料を有効に使うために
支払った介護保険料を有効に使うためには、まず何よりも自分にとって適切なケアプランを立てることが大事です。
介護保険に限らず、社会保険はすべて誰かの保険料で支えられているものです。無駄に使うのは、自分の損になるだけでなく社会の損失ともいえるでしょう。意識して無駄を省いた適切な利用計画を立てることが重要です。
必ず専門家と相談を
希望するサービスに対して介護保険が適用されるかどうか微妙なケースもあります。たとえば、医療行為が必要な方が訪問看護サービスを受けた場合、その報酬が医療保険から支払われるのか介護保険から支払われるのか、状況によって異なります。
こういったこまごまとした点についても、ケアマネージャーなど専門家とよく相談して決めましょう。自分の希望と経済状況に合ったケアを選ぶことが、介護保険を上手に使うポイントです。
介護保険サービスには上限がある
介護保険サービスには上限が設けられています。ほとんどの場合は月額でいくら、あるいは何時間までとサービスを受けられる限度が決まっており、オーバーした場合は自己負担になります。
上限は要介護度に応じて変わります。介護保険サービスを利用するときは、どんな種類のケアを受けたいか、それが上限を超えないか、しっかり把握しておくのが大切です。
将来サービスを受けるときに備え、自分がどんなケアを受けたいか、介護保険料を納める年齢になった時点で家族で話し合っておくことをおすすめします。そんな先のことは想像できない、という方でも大ざっぱに将来過ごしたい場所が在宅か施設かだけでも家族に伝えておくとケアプランを考えるときに役に立ちます。
介護保険料をいつから納付するのかをしっかり把握しておこう!
介護保険料をいつから納付するのかを知ることは、とくに国民健康保険に加入する第2号被保険者にとって非常に大事なことです。40歳になって予想外の出費に慌てることのないよう、事前にしっかり準備しておきましょう。
介護保険は高齢化社会を支える大切な保険。将来に向けて、今から備えておくことが大事です。