作業療法士の年収は300~500万円
一般的に、特定の職種の平均年収は、年齢、役職、地域によって大きく変化します。基本的には年齢が上がるにつれてベースの年収も底上げされていく傾向にあり、また、年齢とともに役職が重くなれば相乗作用によって収入はよりいっそうアップしていきます。
もちろん、作業療法士の年収も例外ではなく、20代の新人よりも40代、50代のベテラン職員のほうが基本となる年収が高くなります。また、作業療法士にも階級があり、現場を離れるほど基本となる年収が上がっていく、という傾向があります。
このセクションでは、作業療法士をこれから本気で目指す、という方のために、「作業療法士という職業はどの程度の年収が見込めるのか」、「年代別の年収の推移はどのような形なのか」ということについて具体的にお伝えしていきます。
平均年収は420万円程度
厚労省の発表した統計データによると、日本の作業療法士の平均年収は大見出しにもあるように、作業療法士の全国的な年収はおおよそ300万円から500万円の間で推移しています。
ただ、これは単純に新人職員から退職間際のベテランスタッフの年収の上限、下限を取ったもので、必ずしも実態をリアルに反映しているとは言えません。
厚労省の発表した統計データによると、日本の作業療法士の平均年収は420万円程度であると言われており、月収換算では約35万円前後であることがわかります。
しかしながら、これはあくまでも平均であり、比較的高給なベテランスタッフによって全体が引き上げられているため、20代のうちは月収20万円以下、ということもあるようです。
作業療法士では生活できないって本当?
社会的なニーズの高い専門職として知られる作業療法士ですが、国家資格でありながら年収が右肩上がりにはならず、特に年齢の若い、20代、30代のうちは「作業療法士だけでは生活できない」とまで言われています。
この点について平均データをもとに冷静に考えてみると、20代の作業療法士の平均年収は300万程度であり、月収に直すと25万円から30万円の範囲内、ということになります。
確かに、このレベルの平均年収では単身ではなんとか暮らしていけたとしても結婚して子供を育てる年齢になるとどうしても不足が出てしまいます。これこそがつまり、「作業療法士は食べていけない」と言われる理由なのです。
ただ、結婚すると平均年収も底上げされますから、共働きであれば作業療法士の年収であっても充分に家庭を支えることができる、という見方も成り立ちます。
作業療法士の年齢別の年収の違い
年功序列が浸透している日本では、基本的に、勤続年数が長くなるほどベースの年収も底上げされていく仕組みになっています。作業療法士の場合、年齢が上がるごとに年収がどの程度アップするのでしょうか。作業療法士の気になる年収事情について年齢別に詳しく見ていきましょう。
年齢に応じて給与は上がっていく
作業療法士も基本的には年功序列の世界であり、年齢が上がるほど平均年収もアップしていく仕組みになっています。具体的な平均年収を男性にかぎって年齢別に見てみると326万から395万(20代)、431万から468万(30代)となっています。
30代以降は年収面での大きな変化は見られず、50代後半になって管理職などになれば700万円前後の年収をキープすることも不可能ではありません。700万円というと、月収としてもそれ相応に余裕が持てるレベル、とイメージすることができます。
ただ、作業療法士はリハビリやライフスタイルの改善など、基本的には現場で利用者と直に対面してプランを組み立てていく職種のため、希望すれば誰でも年齢に応じて管理職になれる、というわけではなく、多くの作業療法士が退職時まで年収500万円以下、という世界のようです。
ボーナス・昇給は勤務先によって異なる
平均年収だけが仕事のやりがいではないといっても、毎年のボーナスはやはり長く働きつづけるうえで気になるところです。特に、平均の給与水準が比較的低い作業療法士の場合、毎年のボーナスを計算に入れたうえで生活設計を組み立てるというケースもめずらしくありません。
作業療法士のボーナスについては地域や職場によっても大きく左右されるため、明確な統計データによって数字を示すことはできません。ただ、一般的にボーナスは給与の2倍から2.5倍程度であるとされていますので、平均年収や月々の給与からおおよそのボーナス水準を推測することは可能です。
作業療法士としてキャリアアップするには?
作業療法士としての年収や毎月の給与水準を継続的にアップさせるためには、若い年齢からのスキルアップが不可欠です。日々の業務の中でノウハウを蓄積し、フィードバックすることでプロとしてのスキルが上がっていきますし、何よりも自分の自身にもつながります。
関連資格を取得することもスキルアップの早道です。作業療法士の仕事は、身体的なリハビリやカウンセリングだけではありません。リハビリを通してその人の性格やライフスタイルを把握し、より負担の少ない筋肉の動かし方や姿勢保持の方法などをアドバイスすることも重要な職務です。
上記の職務をしっかりと果たし、着実なキャリアアップにつなげるためには、リハビリの専門資格はもちろんのこと、心理面を的確にサポートするためのカウンセリングの知識など、幅広いスキルとノウハウが求められます。
作業療法士の役職別の年収の違い
作業療法士も年代が上がるにしたがって役職が上がる世界であり、役職に応じて平均年収や月々の給与、ボーナスが引き上げられていく仕組みになっています。
作業療法士にはどのような役職があるのでしょうか。役職別の年収水準とともに、役職ごとの具体的な役割、職務内容について詳しく見ていきましょう。
役職別年収の違い
作業療法士の世界には、総合職、一般職、技術職があります。平均年収が最も高いのは総合職で、年収水準は579.2万から679.2万円。技術職は375.4万円~475.4万円、一般職では385万円~485万円の範囲で推移していると言われています。
次に、管理職の年収や給与水準について見ていきましょう。作業療法士の管理職としては係長、主任、課長、部長があり、この順番に年収の水準もアップしていきます。
具体的な年収は係長(549.7万円)、主任(671.6万円)、課長(768.1万円)、部長(805万円)となっており、部長になれば年収の面でもゆとりが出ることがわかります。
なお、作業療法士の年収や給与水準、ボーナスについては年度ごとに推移していきますので、つねに最新の統計データを参照し、現状を把握しておきましょう。
役職別ボーナスの違い
基本的な年収や給与水準について見てきたところで、ここからは作業療法士の役職別ボーナスの違いについて検討していきましょう。ボーナスもまた、年功序列で上がっていくのでしょうか。
役職別ボーナスの金額について見てみると、係長(145.8万円)、主任(178.1万円)、課長(203.7万円)、部長(213.6万円)というデータとなっており、おおよそ給与の2倍から2.5倍程度の水準になっていることがわかります。
職域別で考えてみると、やはり総合職、技術職、一般職の順にボーナスの水準がアップしていく体系になっており、作業療法士としてしっかりとした年収、ボーナスを確保するのなら早い段階で総合職の部長を目指すのが早道であると言えます。
作業療法士の年収の違い
作業療法士の年収や給与の水準は、「どこで働くか」ということによっても大きく左右されます。都市部と地方ではどの程度違いがあるのでしょうか。ここでは、作業療法士の地域別、職種別、環境別の年収データについて詳しく見ていきましょう。
地域別の年収の違い
作業療法士の年収や給与水準については、地域間格差も無視できません。大まかにいうと、東京、神奈川などの大都市圏と中部、九州地方などの地方都市では平均年収やボーナスなどの面で大きな開きがあり、都市部に行くほど平均年収が高くなる、という傾向がデータからも読み取れます。
関東エリア以外の地方都市では平均年収が300万円~350万円の範囲内で推移しており、「どこの地域で働いても一律の年収やボーナスが保障されるとはかぎらない」という現実がうかがえます。
また、平均年収が高いとされている大都市圏の中でも収入の格差があり、東京(500万円)、神奈川(430万円)、大阪(410万円)と、東京が最も年収の面で恵まれているという見方もできます。
勤務先は医療系が多い
作業療法士の強みのひとつとして、「勤務先の幅が広い」という点が挙げられます。作業療法士の主な勤務先としては病院などの医療施設があり、入院患者や外来患者のリハビリを継続的に担当するのが主な業務となります。
作業療法士は決して単独で成立する職種ではなく、ドクターや看護師、時には家族とも緊密な連携を取りながら個々人に合ったリハビリのプランを長期的に組み立てていくスキルが求められます。
病院以外の勤務先としては、特別養護老人ホームなどの介護施設や地域のヘルパーステーションなどがあり、高齢化がますます進む日本では作業療法士の社会的役割が高まりつつあります。
条件別の年収の違い
一般的には、中卒よりも高卒、高卒よりも大卒と、学歴が上がるにしたがって平均年収や月々の給与水準が上がっていく仕組みになっています。作業療法士の世界も例外ではなく、学歴によって年収やボーナスのレベルが変わっていくため、注意が必要です。
作業療法士の学歴別平均年収は、高卒(495.7万円)、短期大学(582.4万円)、大卒(774.5万円)となっており、やはり大卒が最も年収や給与、ボーナスなどの面で有利になることがわかります。
なお、ここで挙げた年収のデータはあくまでも平均値であり、年代や地域、職場環境によってもばらつきがありますので、詳細な給与体系についてはいくつかの統計データを参照なさってください。
男女の年収の違い
日本的な年功序列の給与体系がしっかりと守られている作業療法士の世界でも、男女別で年収やボーナスに違いがあるのでしょうか。大まかなデータを見ると、同じ年代で比べても男性のほうが女性よりもやや年収や給与が高い傾向が読み取れます。
つまり、単純に年収の面で考えると女性のほうがやや不利になってしまう、という現実があり、このあたりからもまだまだ日本では「女性は結婚して早期退職するもの」という固定観念が根づいていることがうかがえます。
作業療法士になる方法
ここまでは作業療法士という職種について年収の面から比較してきましたが、ここからは作業療法士として実際に働くためのプロセスについて具体的にお伝えしていきます。作業療法士になるのは果たして、難しいのでしょうか?
国家試験を受験する
作業療法士になるためにはまず、「作業療法士国家試験」を受検し、合格することが絶対条件です。そして、国家試験を受けるためには作業療法士養成校に一定年数通い、養成課程を修了する必要があります。
つまり、作業療法士を目指すなら作業療法士養成校に通う必要があり、そのうえで卒業間際に国家試験を受け、合格して初めて作業療法士としての資格が与えられます。
養成校は全国に128校あり、3年制のところもあれば4年制のところもあります。合格率は年度によって多少ばらつきがありますが、社会人よりも現役のほうが合格しやすい傾向がありますので、ぜひ、現役合格を目指しましょう。
作業療法士と理学療法士は異なるリハビリの専門家
作業療法士と同じく、リハビリを専門的に担当する職種として、理学療法士があります。どちらも、リハビリの専門家、という点では共通していますが、現場において担うべき役割は大きく異なります。
理学療法士の場合、高齢者や障害者の筋肉の状態を把握し、筋肉や姿勢を正しい形にととのえることで日常の動作を無理なくスムーズに行えるように導きます。
一方、作業療法士は日常のより細かい動作や作業の専門家であり、食事、着替え、買い物など日常生活を送るうえで不可欠な作業を負担なく行えるようなリハビリ、およびアドバイスを行うのが仕事です。
職域に違いはあるものの、作業療法士も理学療法士もリハビリの専門家であり、ハンディキャップを背負った人がハンディを気にすることなく暮らしていけるよう、専門的にサポートするプロフェッショナルなのです。
作業療法士に求められる資質は?
作業療法士に求められるいちばんのスキルは、コミュニケーション能力です。作業療法士は人と直に接する職種であり、患者さんとつねにコミュニケーションをはかりながら本質的なニーズを深掘りしていくスキルが求められます。
作業療法士は大卒平均よりは高い傾向がある
作業療法士の年収や給与水準については、年齢や性別、地域によってばらつきがあります。基本的には年功序列であり、男女ともに年齢が上がるにつれてベースの年収も底上げされるような仕組みになっています。
大卒の新卒採用で比較すると、作業療法士の年収のほうが平均的にはやや有利になるというデータがありますが、全体としては目に見えて昇給が期待できる職種ではなく、年収以外の強いやりがいがなければ長く続かない職業と言えるかもしれません。