「泰然自若」の意味とは?
座右の銘として挙げられることの多い四字熟語の一つに「泰然自若」という言葉があります。「泰然自若」とは、落ち着いていてどんなことにも動じない様子を表す言葉です。つまり、心が揺さぶられるような状況に遭っても、冷静沈着で気丈に振舞っているような人のことを「泰然自若」と表現します。
この記事では「泰然自若」の正しい読み方や意味、使い方を例文とともに解説しています。その他にも、対義語や類義語、英語表現などについても紹介しています。次の項目では「泰然自若」の読み方についてご説明します。
「泰然自若」の読み方
「泰然自若」は「たいぜんじじゃく」という読み方をします。「泰然」(たいぜん)は落ち着いて物事に動じない様、「自若」(じじゃく)はどんなことにも対しても慌てたり、驚いたりせず、落ち着いている様のことを意味します。
このように「泰然」も「自若」も「落ち着いている」や「動じない」という意味を持つ熟語であり、類似した意味合いを持つ熟語を掛け合わせることで「泰然自若」はよりその意味を強調した言葉であると言えます。
「泰然自若」は「落ち着き払って物事に動じない」という意味
冒頭でもすでにご説明した通り、「泰然自若」とは「落ち着き払って物事に動じないさま」を表す言葉です。自身を取り乱すことなく、どんな状況の中でも落ち着いて堂々とした言動である様子を表現する際に使われる言葉です。
「泰然自若」の正しい使い方や例文は後の項目で詳しく説明しています。次の項目では、「泰然自若」の類義語、対義語にどのような言葉があるかについて解説します。
「泰然自若」の対義語・類義語
「泰然自若」の正しい読み方や意味を理解したところで、「泰然自若」の対義語や類義語にどのような言葉があるかについてご説明します。
次の項目で挙げる対義語、類義語の中で初めて触れる言葉があれば、この機会に日常やビジネスシーンで使えるよう知識の一つとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
「泰然自若」の対義語
「泰然自若」の対義語として「周章狼狽」が挙げられます。読み方は「しゅうしょうろうばい」と読み、「慌てふためき、どうして良いか分からずにうろたえること」を意味します。例文を挙げれば「病院からの父が倒れたという突然の電話に、周章狼狽する。」のような表現が可能です。
二つ目に「右往左往」という言葉があります。読み方は「うおうさおう」で、「あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、慌てて混乱した状態」のことを表します。例文を挙げるとすると「山登りの最中で方向を失い、右往左往する。」のような表現ができます。
最後に「戦々恐々」という言葉も「泰然弱」の対義語として挙げられます。読み方は「せんせんきょうきょう」で、「恐れていて、怖気づいているさま」を意味します。例文を挙げると「勢いで大役を引き受けてしまったが、内心は戦々恐々である。」のような表現に使用できます。
「泰然自若」の類義語
「泰然自若」の類義語として「神色自若」が挙げられます。読み方は「しんしょくじじゃく」で、「重大事でも顔色一つ変えず、物事に動じないさま」を意味する言葉です。例文を挙げると「銀行の支店長ということもあって、祖父は神色自若としていつも皺一つないスーツを着こなしていた。」
二つ目に「意気自如」という言葉があります。読み方は「いきじじょ」で、「心の持ち方がいつも通り平静なさま」を意味します。例文を挙げるとすると「この大不況の中、政府の意気自如とした対応に国民も落ち着きを取り戻した。」のような表現に使用することができます。
最後に「余裕綽綽」という言葉が「泰然自若」の類義語として挙げられます。読み方は「よゆうしゃくしゃく」で、「ゆったりとしていて、焦らず落ち着いているさま」を意味する言葉です。例文を挙げると「初めての舞台にも関わらず、余裕綽綽と役を務めた。」のような表現ができます。
「泰然自若」の使い方・例文
こちらの項目では「泰然自若」の使い方と例文についてご説明します。どんな状況においても冷静に対応することはビジネスシーンで多く求められるため、「泰然自若」を使用するに相応しい場面の一つであると言えます。
他にも「泰然自若」はあらゆるシーンで使うことができますが、いずれのシーンにしても状況にかからず一貫とした精神や態度を表現する際に用いられます。具体的にどのように使うことができるか「泰然自若」の使い方について例文を挙げて解説します。
例文①
例文①の項目ではビジネスシーンでの「泰然自若」とした態度や姿勢に関する例文を挙げています。「取引先からの理不尽なクレームにも、泰然自若な態度で対応する。」「繁忙期は多くの業務を同時並行に進めなければならず、気持ちが焦りがちになるからこそ常に泰然自若な構えが重要である。」
例文②
例文②ではリーダーとなる立場の人の「泰然自若」とした対応や振る舞いについて例文を挙げています。「上司は突然のトラブルにも泰然自若に対応するため、部下からの信頼も厚い。」「将軍の泰然自若とした振る舞いは、配下の武将たちに安心感と信頼感を与えた。」
例文③
例文③では重大事の状況の中「泰然自若」としている様子を例文として挙げています。「大きめの余震が続き周りが騒然となる中、彼女は泰然自若として顔色一つ変えなかった。」「コンクールが間近に迫っているにも関わらず、彼は泰然自若として少しも焦る様子がなかった。」
例文④
例文④ではその人の個性や性格で「泰然自若」とした様子に関する例文を挙げています。「娘は、まだ幼さが残る顔つきには似合わない、泰然自若とした品格の持ち主だった。」「父は、どんな時も泰然自若としたその厳かな表情を、少しも曇らせたことがない人だった。」
「泰然自若」と「冷静沈着」の違い
「泰然自若」と類似した言葉について『「泰然自若」の類義語』の項目で解説しましたが、そこで列挙した言葉の他に「冷静沈着」も同様の意味合いを持つ言葉として挙げられます。「泰然自若」と類義語であるため、「冷静沈着」に言葉を置き換えても大きく意味合いに違いはありません。
但し、あえて類義語の違いを述べるとしたら言葉のどのような点に注目したらよいのでしょうか。言葉の語源や漢字の意味に焦点を充てると、類似した言葉でも異なったニュアンスや意味合いを知ることができます。
「冷静沈着」は「感情に動かされることなく、理性的に判断に従う」という意味
「冷静沈着」とは「本能や感情に動かされることなく、冷静に理性の判断に従う様子」を意味する言葉です。「冷静」は感情的にならずに理性的で、心静かな様子を、「沈着」は心乱れることなく物事に動じない様子を表しています。
『「泰然自若」の読み方』でもご説明した通り、「泰然」は落ち着いて物事に動じない様、「自若」はどんなことにも慌てたり、驚いたりせず、落ち着いている様のことを意味します。これらを踏まえると、「泰然自若」と「冷静沈着」の違いは「理性的」な様子を表しているか否かだと言えます。
「泰然自若」はあくまで落ち着いた態度で物事に動じないさまを表しているのに対し、「冷静沈着」はさらに理性的であるさまを表しています。理性的とは、つまり道理によって物事を判断する心の働き、論理的に思考する能力を言います。
「泰然自若」の英語表記
「泰然自若」を英語で表現するとどのような言葉があるでしょうか。簡潔に短く英語で表現する場合は“keep cool” “be steady” “peace and calm”など、他には “imperturbable” “as if nothing happened” “with great presence of mind”などの英語表現があります。
“imperturbable”とは「容易に動じることなく、落ち着いた様子」を表す単語です。例文を挙げると “He awaited his diagnostic result with imperturbable calm”「彼は泰然自若と診断結果を待った。」
“as if nothing happened”は「平然と、しれっとしている様子」を表す単語です。例文を挙げれば “She fell over, but then started walking again as if nothing had happened. ”「彼女は転んだが、泰然自若と(何事もなかったかのように)また歩き始めた。」
“with great presence of mind”は「平然として、落ち着いて」という意味の単語です。例文を挙げると “I called the police with great presence of mind.”「泰然自若と(落ち着いて)警察に電話した。」
「泰然自若」は「落ち着き払って物事に動じない」という意味
「泰然自若」という言葉の正しい意味や使い方、類義語、対義語、英語表現などを解説しました。「泰然自若」はどんな状況においても、心乱れることなく平静を保っているさまを意味する言葉であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
人生において自身を見失わず、落ち着いた言動ができることは理想であり、必要不可欠な要素でもあります。そのため「泰然自若」は座右の銘としても選ばれることの多い言葉です。とは言っても実際に常に平常心を保って行動することは決して簡単なことではありません。
失敗やリスクを恐れず、様々なことに挑戦することで経験が蓄積されます。その経験こそが自信となり、私たちの自尊心を高め、「泰然自若」な態度となって表れるのではないでしょうか。