「相殺」の意味とは?
普段の生活では馴染みがないかもしれない「相殺」という言葉。しかし例文にしてみると、自分も知らないうちに「相殺」していたと分かります。ではどのようなシーンで使われているのでしょうか。「相殺」の意味と読み方を学び、実際の使い方や類語も紹介していきます。
「相殺」の読み方
「相殺」の読み方には2種類あります。「そうさい」と「そうさつ」です。2種類の読み方があるということは、2種類の意味があるということです。
世界の言語で一番難しいといわれる日本語では、読み方によって別々の意味が存在している言葉が多数あります。「相殺」もそのひとつです。しっかりと覚えて間違った使い方をしないようにしましょう。
「相殺」そうさいの意味
「相殺」を「そうさい」と読む場合の意味は、損得や貸し借りを帳消しにしてゼロにすること。互いに影響しあい、相反することによって長所や利点が同じになることを意味します。
様々なビジネスシーンで耳にしたり、文書でみたりした経験があることでしょう。特に経理に携わっている方はよく知っている言葉のはずです。
法律用語においても「相殺」を「そうさい」の読み方で使います。意味としては、互いに債権を負担していて、尚且つ互いに返済時期にあった場合、一方の意思表示により対等の金額で債務が消滅することを表します。
「相殺」そうさつの意味
「相殺」を「そうさつ」と読む場合の意味ですが、「ころしあう」という意味合いになり非常に物騒です。例えば舞台の演劇で、演出上において演者同士が決闘をおこない、結果相討ちになった場合は「そうさつ」と読んだりしてもよいです。
しかし、「そうさい」という意味で使ったつもりが、「そうさつ」と読むのは危険です。相手側をびっくりさせたり、失礼な印象を与えてしまう可能性があるからです。
「相殺」の類語
「相殺」の類語は、使用する場合の様々なシーンやシチュエーションよってそれぞれ異なります。お金に関する要素がつよい言語であったり、日常生活で実際に言葉に出して使ったことがある場合など、使いどころによって言い回しがあります。
一体「相殺」にはどのような類語があるのでしょうか。シーンやシチュエーションが想像ができるように、例文を交えながら紹介していきます。
棒引き
「相殺」の類語で「棒引き」という言葉があります。読み方は「ぼうびき」になります。帳簿に書かれている項目に線を引いて、記録から消すことが語源です。
賃借関係などを終わりにして、ゼロにする意味合いになります。例えば「親からの借金を棒引きしてもらった」というように、お金に関するシーンで使うことが多い言葉です。
埋合せ
「相殺」の類語で「埋合せ」という言葉があります。足りないものや事柄などに付け加えることを意味します。
例えば「急用で行けなくてごめんなさい。この埋合せは必ずさせてください」や「自分の才能のなさを努力で埋め合わせる」といったシチュエーションでつかいます。
マイナスで始まったことに対して、あとからの行動でプラスマイナスをゼロにするという意味合いになります。
打ち消す
「相殺」の類語には「打ち消す」という言葉があります。マイナスであることに対して、行動や感情によってゼロにする意味合いになります。
主に人間の感情に由来した使い方が多いのが特徴です。「試合の不安を打ち消すために一生懸命に練習した」や「先生の言葉が試験への不安を打ち消してくれた」というようなときに使われます。
チャラ
「相殺」の類語で挙げられるのが「チャラ」です。ビジネス上や文章ではほとんど使いませんが、「相殺」よりも身近で馴染みのあるフーズではないでしょうか。日常会話において使う言葉でもあり、映画やドラマなのでもよく聞くセリフです。
「今回はお互い様だね、じゃあチャラってことで」や「昼食をご馳走してくれたから、ここは自分が払ってチャラにしましょう」など、友人のように親しい間柄でふんわり軽い感じで使用されます。
そのため、上司などの目上の方や、取引先との懇親会などのビジネスシーンにおいては使用しないよう注意してください。
「相殺」の使い方・例文
「相殺」の意味や類語について知ることができました。「相殺」には2つの読み方があります。ほとんどの場合、「そうさい」の読み方でつかうことが多いのが現状です。
それでは「相殺」を「そうさい」と読む場合の使い方や、実際のビジネスシーンでの使い方を日常生活でありそうな例文を挙げて紹介していきます。
例文①
「相殺」を使った1つ目の例文です。「ビジネス上の赤字を、株式売買で得た利益では相殺できないことを知った」この場合は、事業によって発生した赤字を、株の利益で帳消しにはできないことを知ったという意味です。
例文②
2つ目の「相殺」を使った例文です。「炭水化物をいくら我慢しても、甘いお菓子を食べてしまってはすべて相殺されてしまいます」ご飯やパンをぐっと我慢しても、甘いお菓子を食べてしまっては、体形は元通りという意味合いです。
例文③
「相殺」を使った3つ目の例文です。「迅速な対応で対処した結果、昨日のミスを相殺することができた」この場合は、ビジネス上などでミスをしてしまっても、その後の対応によってミスを帳消しにできたという意味です。
例文④
4つ目の「相殺」を使った例文です。「分量を間違ってしまったが、新たに食材を加えて塩味を相殺できた」この場合は、調味料の分量を多く入れてしまったが、食材を足すことによって濃くなった味を元に戻せたという意味になります。
「相殺」と「差引」の違い
「相殺」と同じような言葉で「差引」という言葉があります。しかし「相殺」と「差引」には大きく違う意味が含まれています。同じように扱ってしまいがちな2つの言葉には、どのような違いがあるのか説明をしていきます。
「差引」は「ある数量から他の数量を引く」という意味
「差引」はある数量から他の数量を引くという意味です。例えば「給与から健康診断のオプション検査分が差引かれていた」という文章の場合、元々の給与分から、健康診断の時におこなった別診療分の費用が引かれていたことが分かります。
給与から色々な経費が差引かれてたとしても、常識的に考えれば給与がすべてゼロになるほどではないはずです。
「相殺」は互いに帳消しになったり、チャラになったりゼロになる意味に対し、「差引」は必ずしもゼロになる意味ではないのです。
「相殺」を使う際の注意点
「相殺」はビジネスでも使う用語で、読み方によって意味も異なることが分かりました。類語も存在しており、例文によってより理解が深まったはずです。
では、実際に「相殺」の言葉を使う場合、注意しなくてならない点はあるのでしょうか。どのようなことを注意すればよいか説明をしていきます。
「差引」という意味では使えない
「相殺」と「差引」の違いでも説明したように、「差引」は結果が必ずしもゼロになるとは限りません。少し残るかもしれないですし、大幅に余る可能性だってあります。もちろん相殺と同じようにジャストゼロのぴったり合う場合だってあるのです。
結果がゼロになるのか、そうではないのか分からないのが「差引」です。なぜなら対象になる数量と、差引かれる数量によって誤差が生じてしまうからです。
そのため、帳消しになったり、チャラになる意味合いがある「相殺」と同じような使い方では使用できないのです。
「相殺」の由来・歴史
「相殺」の言葉にはどのような由来や歴史があるのでしょうか。言語には様々な由来や歴史があります。内容を深く知ることで自分自身の幅がより広がります。声に出して使うときや、文章に入れ込む際には、相手の心にも響くようになるでしょう。
由来
「相殺」の由来は中国語になります。漢字の「殺」をさつと読むところが由来となっている部分です。「そうさつ」と読むことができますが、一般的には「そうさい」の意味で使われていることがほとんどです。
歴史
「相殺」の歴史はローマ法まで遡ります。東ローマ帝国で作られ発展し、東ヨーロッパにおいて法制度の基礎となったのがローマ法です。このローマ法の中で「法律上当然の相殺」という解釈概念がすでに存在しているのです。
ローマ法は紀元前443年から530年までの、1000年以上も続いた歴史があります。「相殺」の概念は、気が遠くなるほどはるか昔から存在していたことが分かります。
「相殺」の英語表記
「相殺」の英語表記は「offset」になります。読み方は「オフセット」です。「offset」は2つのものが互いに打ち消しあって帳消しにする、プラスマイナスゼロにするという意味です。そのため「相殺」と同じ意味で使うことができる英単語になります。
「相殺」は帳消しという意味
「相殺」はビジネスシーンでもよく使われる言葉で、互いの属性を打ち消しあって帳消しにするという意味です。もう一つ別な読み方もありますが、読み方を間違うと全く別な意味になってしまいます。
そのため、読み方と意味をしっかりと理解したうえで使用した方がいいでしょう。はるか昔から「相殺」の概念は存在しています。正しい意味を理解したうえで、読み方や使い方を分けることが重要です。