営利目的の意味とは?
営利目的という言葉を見ること、聞いたりすることはありませんか?大よその意味を知っているという方が多い言葉ではありますが、その定義や範囲、使い方について正確にご存知でしょうか。今回は、知っておいて損はない「営利目的」という言葉について解説します。
まずは「営利目的」の意味について解説しましょう。言葉を分解すると「営利」と「目的」に分けられます。「目的」に関しては意味も使い方も説明不要でしょうから、「営利」についてだけ解説します。
「営利」の意味は、財産上の利益や金銭的な利益などを得ることを意味しています。つまりは何らかの行為の結果、お金が儲かることと定義されます。
つまり「営利目的」は、お金を儲けることを目的としている行為を指しています。企業が商取引を行って利益を獲得することも営利目的の動きということになりますし、企業だけでなく、個人が何らかの行動をとる際、お金儲けを目的に動くことも営利目的となります。
例えば個人がメルカリなどに物を出品する行為も、その商品を市場に出し、その商品を欲しがる誰かに買ってもらうことで利益を得ようということになりますので、この行動も営利目的の行動になります。
営利目的の定義と範囲
営利目的とは、要するにお金儲けをすることだということを解説しました。では、何らかの行為が「営利目的と判断される」か、それとも「営利目的とは判断されない」かはどのように異なるのでしょうか。その点を解説するため、まずは「営利目的」の定義を考えてみましょう。
営利目的の定義①「公共性のない金銭授受があるか」
「営利目的」とはお金を儲けることを目的としていますので、「相手と金銭の授受がある行為」は営利目的の行為と考えられます。しかし、単純に金銭の授受があるだけでは営利目的とは言えません。ポイントは「公共性」にあります。
ここで、新たに出てきた「公共性」という言葉について解説すると、公共性とは「教育や文化、芸術など、広く社会一般に教授される性質を持った事柄で、その金銭を受け取るのが自治体の場合」を指します。
「公共性」がある場合は「営利目的」には当たらないと考えられます。つまり、金銭授受が発生していたとしても、その金銭が社会一般に還元されるようなことの為に使われている場合は、営利目的ではないと考えられるのです。
しかし、特定の企業、特定の人のために金銭授受が発生した場合は、その行為に公共性はありませんので「営利目的」の行為になります。
違いが分かりやすい事例が「市民ホールや公民館の使用料」の支払いです。利用者は使用料を費用として支払い、その使用料は自治体の収入になります。自治体があくまで市民の為のサービスとして場所の提供を行っていることから、営利目的という解釈はされません。
営利目的の定義②「授受した金銭で費用以外に利益を得ている」
先ほどの「市民ホールや公民館の利用料」の例のとおり、単にお金を支払ってもらうという行為を求めるだけでは営利目的とは言えないということになります。
もう少し分かりやすく説明すると、利用料として授受した金銭が、その施設を運営するにあたって必要な費用だけに支出されていれば営利目的とは言えないということになります。つまり、徴収した利用料はその施設の運営費だけに使われているため営利目的ではないとなるのです。
一方、同じ施設を使って催し物を開催する場合、その利用料以上の参加費用を徴収する場合は目的の費用以上の金銭を授受することになり、その場合、その行為は「営利目的」であるということになるのです。
「営利目的」の範囲
市民ホールや公民館を利用したいと考えた際、それぞれの施設の利用規約を確認すると「営利目的での使用は禁止」と書かれている場合があります。こう書かれている場合、営利目的がどの程度の範囲を指しているのかを判断することはとても難しいことです。
例えば有料でセミナーを開催する場合、どの程度のお金を集めたら営利目的と判断されるのかは施設によって大きな差があります。会場に対しても当日会費を集める場合、事前振込の場合など、様々な支払方法があります。
実施しようとしているセミナー等が営利目的に該当するか否かを判断しにくい時は、その施設を管理している事務所に問合せてみましょう。
営利目的にあたらない仕事の種類やケース
営利目的の意味は何となくわかるものの、どの範囲で金銭授受が発生した場合に営利目的と判断されるのかは、ケースバイケースで判断しにくいという事が分かりました。
一方、その活動が必ず営利目的ではないと判断される仕事やケースが存在するのも事実です。営利目的の範囲はイマイチ曖昧ではあるものの、まずは「これならば営利目的ではない」と判断される仕事やケースについて学んでみましょう。
営利目的にあたらない仕事
それでは最初に、その仕事そのものが営利目的にあたらないと判断される仕事を紹介しましょう。企業体にはいくつかの種類があります。最も一般的なのは「株式会社」ですが、他にも有限会社、一般社団法人や学校法人など、様々な種類の企業があります。
その中で、この形態をとっている企業は営利目的にあたらないと判断できる団体がいくつかあります。ここでは、それらを営利目的にあたらない仕事、として紹介します。
営利目的にあたらない仕事①「NPO団体」
営利目的にあたらない仕事として、最初に思い浮かぶのがNPO団体ではないでしょうか。NPOは英語を略した名称で、正しい英語名称は「NonProfit Organization」もしくは「Not-for-Profit Organization」となります。
profitという英語は「利益」という意味で、organizatioinという英語は「組織」という意味です。つまりNonProfit Organizationという英語全体では「利益を求めない組織」という意味になりますので、正に名前のとおり「営利目的」ではないということになります。
NPO団体には様々な団体がありますが、いずれも社会に利益をもたらすために活動している団体と定義されます。NPO団体の中でも有名なのは「国境なき医師団」や「市民活動センター」などです。
これらの団体に所属することで得られる給料は、平均年収が約160万円となっています。一般企業と比較してもかなり安い給与なので、NPO団体の給与だけでは生活できないため、他の仕事と掛け持ちで活動している人が多いようです。
営利目的にあたらない仕事②「一般社団法人」
一般社団法人という名称を耳にすることがありますが、一般社団法人は何らかの事業内容の為に設立される非営利団体法人と定義されています。一般社団法人を設立する為には2名以上の社員が必要で、事業内容は自由です。必ずしも公益事業でなければいけない訳ではありません。
一般社団法人としてよく見かける事業に、介護事業、資格認定機関などが挙げられます。他にも、「日本クレジット協会」はクレジットカードを安心して使えるような支援を、電気事業の発展を目的にした「電気通信事業者協会」なども挙げられます。
営利目的にあたらない仕事③「一般財団法人」
他にも一般財団法人も営利目的にあたらない仕事にあたります。財団法人の目的も、それぞれの団体の自由に定義することができ、一定基準の財産があれば誰でも設立できます。
設立にあたっては特に国への許可も必要なく、手続きが簡単という特徴があります。一定条件と言っても、設立者が30万円以上の財産を持ち合わせていることが条件とハードルは低く、設立後2年連続で300万円を下回った場合は強制解散になります。
営利目的にあたらない仕事④「社会福祉法人」
他にも「社会福祉法人」も非営利団体としての扱いになります。社会福祉法人は、運営の元になる資金が無ければ設立する事はできず、施設等を運営する事業を行う場合は土地・建物の準備ができてからでなければ設立できません。
また、社会福祉法人を名乗るためには必要書類を提出する必要があり、社会福祉法人は許認可制度による基準をクリアしなければなりませんが、その内容は不明瞭な部分があるため、各自治体の行政担当によって基準がマチマチになるという課題もあります。
設立には時間を要することが多く、NPO法人として設立後に社会福祉法人に変えるケースが多いのが実情です。県や市が社会福祉を目的に設立した団体が多くあるのも特徴の一つで、障害者支援などの為に設立されているケースが多いようです。
営利目的にあたらないケース
営利目的にあたらない仕事について紹介しましたが、団体の法人形態と関係なく、その行為に関しては営利目的ではないと判断されるケースがいくつかあります。ここでは、それらのケースについて紹介します。営利目的という言葉の意味の理解を深めるため、確認しておきましょう。
営利目的にあたらないケース①「公民館の使用料を払う」
各地域には公民館と呼ばれる施設があります。最近ではシビックホールという名称が付けられていることもありますが、災害時の避難場所になったり、地域行事が催されるときに使用されたりします。地域行事に関しては、参加にあたり使用料を徴収されることがあります。
これら、公民館の使用料や町会費などの費用は、徴収した団体が、年度末に収支報告を行っています。そして、繰越損益があった場合は、処分案を提示したうえで諾否採決をとらなければなりません。これらのケースは公共性および公平性を持ち、営利目的でないと判断されます。
ケース②公民館で会費を募って活動をする
では同じ公民館を使ったとして、例えば元教師の方が地域住民を集め、会場費とテキスト代込の会費制による勉強会を開催するケースはどのように解釈されるのでしょうか。
この催しを開催するには、元教師の方の日当、公民館を使用にあたっての使用量や経費が発生します。また、講義内容によってはテキスト代も発生することになります。この場合、勉強会という目的に対してある程度妥当な金額で実施する場合は営利目的とは判断されません。
一方、開催する内容が会費制による教室などの場合はどうでしょうか。例えば、子供を対象にした学習塾を開く場合などです。このケースでは活動目的が学習塾運営にあると判断され、単に場所が公民館であるというだけと判断されますので、このケースは営利目的となります。
ケース③公民館で無料体験モニターを開催
それでは、公民館で近隣住民に対する商品の無料モニター体験会を開催するというケースではどうなるのでしょうか。来場者から参加費は徴収せず、体験会の主催が民間企業であるというケースです。
この場合、その催し物の中での金銭授受は発生無いものの、無料でもらった商品が気に入れば、その方がその後に商品購入に至る可能性があります。また、主催者もその効果を見込んで無料体験会を実施しているというのが実態と考えられます。
そのため、この催し物は営利目的であると捉えられます。また、例えば自分のアート作品を展示するだけであれば営利目的とは解されませんが、作品を商品として価格をつけて購入できるというケースでは営利目的と解釈されることになります。
営利目的と非営利目的の違い
先ほど、営利目的にあたらない仕事を紹介しましたが、営利目的と非営利目的とではそれぞれどのような違いがあるのでしょうか。また、企業が非営利目的の団体を設立することにはどの様な意味があるのでしょうか。ここでは、営利目的と非営利目的の違いを紹介します。
営利目的を持った組織は、組織内部の利益などを関係者に分配することが特徴です。株式会社が最も分かりやすい組織の代表で、株式を発行することで投資家から資金を調達し、決算後(企業によって配当日は異なります)に利益に応じた配当を受け取ります。
このように、業績を向上させるための資金調達と、生み出した利益を保有株式の範囲に応じて投資者に配分するようなことが行われるため、投資者のためにも企業としては利益を生み出さなければならないのです。これが営利目的の企業ということになります。
一方で非営利目的の組織は、利益などの財産を関係者に分配しません。非営利目的の組織には投資家が存在しないのです。株式という概念もありませんし、投資する意味も利益を求めるという意味ではありません。なお、利益を上げたとしても分配しないのが非営利目的組織です。
非営利目的団体のメリット
では、非営利目的団体のメリットはどこにあるのでしょうか。営利目的組織には投資家がいることがほとんどなのですが、株主は依然と異なり「物を言う」ようになっています。経営に関することや、利益を追求することなどが求められるようになっています。
この点が非営利組織のメリットと考えられます。各種運営上の方針に対する口出しがないということです。場合によっては低収益事業でも、自分達が考えるコストの範囲内で実行することができ、寄付金や会費などをによってコストを補うこともできます。
非営利目的団体のデメリット
一方、非営利団体にもデメリットがあります。まず、設立時の基準が各種設定されており、それらがクリアにならないと設立できず、時間がかかるというデメリットがあります。
また、非営利目的団体は利益追求する団体ではないために税制優遇を受けることができるケースがあります。この税制優遇を期待して設立するケースもありますが、必ずしも優遇されるとは限らないということもあります。
また、設立そのものは誰でも簡単に設立できるため、信用が低いこともデメリットとして挙げられます。社会の信用が低いという事は、銀行等との折衝においてデメリットを感じること多く、職員を含めてデメリットを感じる機会があるかもしれません。
営利目的の使い方(著作権の法律規定)
著作権という言葉があります。英語ではcopyrightと言いますが、商品やイラスト、アニメーションや漫画、写真などの表現物等に発生する権利のことを著作権と呼び、英語のcopyrightのcを取って、〇の中にcが書かれたマークで記載されているのが著作権です。
この著作権に関し、営利目的で使用するのか、または非営利目的で使用するのかによって扱いが変わってくるので、営利目的という言葉の意味の使い方を学ぶうえで、著作権の範囲についても一緒に学んでおきましょう。
仕事をしていると、自分の扱っている商品をPRするために様々な表現を使いたいと思うものです。例えばテレビに出ているタレントの写真を使いたいなど。しかしその写真にも写真を撮った人の権利がありますし、もちろんタレントにも権利があります。
それらの権利の範囲をしっかりと認識し、範囲を超えた使い方をしてしまうと権利侵害で訴訟を起こされる可能性もありますので、自分の身を守る意味も含めて、それらの定義をしっかり認識しておきましょう。
営利目的の使い方(著作権とは)
知的財産という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。知的財産は大きく2つに分けられ、1つが「産業財産権」もう1つが「著作権」です。「産業財産権」は特許権や実用新案権、「著作権」は、文化的な創作物を保護する権利と定義されます。
著作権の範囲は広く、文芸、アート、音楽など個人の思想を表現した作品などが、著作権として定義される文化的な創作物の範囲に含まれます。
産業財産権は登録制ですが、著作権は手続きなしで権利が発生し、著作者の死後50年間はその権利が保護されます。これら著作権が発生する表現物は営利目的使用が禁止されており、権利料を支払うことで許諾を得て使うという使い方をする必要があります。
著作権がある表現物の使い方
このように、著作権が発生している表現物に関しては、そもそも使用することが出来ないというのが基本です。何年かに1度くらいのペースで、広告作品や新開発のロゴが何らかの表現物に類似しているという話題がテレビで放送されることがあります。
これは、それらの作品やロゴが、過去に誰かしら別の人が発表していた作品等に類似していることが指摘されているケースがほとんどです。過去に発表した作品は、その時点で著作権(または意匠権)が発生しており、知ってても知らなくても類似していることが問題なのです。
これにより、過去の作品の権利を持っている人が、著作権を侵害されたとして権利を主張することが出来るということになるのです。
これは、その作品を知っていても知らなくても主張されてしまう権利なので、何らかの作品を世に出す際には、幅広い範囲で類似性のある作品が無いかを確認する必要があるということになりますし、作品中の一部表現においても権利主張される可能性もあります。
特徴的な表現を自分の作品に取り込むような表現の使い方は避けた方が良いでしょう。使い方を誤ると、取り返しのつかない賠償が求められる可能性もあります。
著作権に抵触しない範囲での使い方
ではここで、著作権が発生している表現物を使う際、どの範囲でどの様な使い方をすれば抵触しないと定義されているのかを解説しておきます。
安易な表現の使い方をしてしまうことがリスクであると解説しましたので、リスクの無い使い方をまずは理解してください。その範囲内での使い方をしていただきつつ、全体に共通する定義を覚えておいていただければ、各種リスクを低減することが可能です。
著作権に抵触しない範囲での使い方①「私的使用のために複製する」
まず、あくまでも個人で著作物を使うためにコピーを取ることは問題ないとされています。例えば、テレビの番組に関しても著作権が発生していますが、それを自宅のブルーレイレコーダーで録画することがこの例の範囲に入ります。
録画したものを友人に貸してしまうと違反になりますし、許可を得ずに店舗等で集客のためにスポーツの試合等を放映することも厳密にいえば違反行為に当たります。後者は特に営利目的の使用になるのでなおさらです。
著作権に抵触しない範囲での使い方②「図書館でコピーする」
本や各種資料にも著作権は発生していますが、自治体が運営している図書館など、政令で定められた図書館に関しては、その貯蔵書をコピーしても問題ないとされています。ほとんどの図書館にコピー機が設置されていますが、大抵の場合は注意書きがあります。
そこに書かれているルールに則ってコピーをする分には、著作権侵害には当たらないことになりますので、コピーを取る際は十分注意しましょう。
著作権に抵触しない範囲での使い方③「自分の著作物に引用」
ビジネス書や論文を読んでいると、他人の本に書かれている内容を引用して記載しているケースがよくあります。この引用に関しては、一定の条件を満たすことで著作権侵害に当たらないと定義されています。
条件に付いては、①引用する必然性がある、②報道、批判、研究など正当な目的があること、③引用部分を自分の文章とわかりやすく区別すること(カッコ書き等)、④引用した書籍や論文の題名、著作者、出版社、掲載ページ数を示す。以上が条件になります。
著作権に抵触しない範囲での使い方④「教育機関で複製する」
学校などで使用される教書などの教材、学校に通う生徒が、授業で発表などをするために著作物をコピーする事は著作権侵害に当たらないとされています。ただしこれらは、全生徒が共通で使用するための教材が該当し、ドリルなどの個別購入する教材は範囲外になります。
著作権に抵触しない範囲での使い方⑤「非営利目的か無料で使用」
先ほど、飲食店でのスポーツ中継を例に挙げましたが、結局のところ、営利目的で著作物を使用する事が禁止されているのです。
どうしても特定の著作物を使って演奏や上演、上映などを行いたい場合は、入場料を無料にすることで回避することができます。また、演奏等を行う場合は出演者に対しても金銭の支払いが禁止されていることには注意が必要です。
営利目的の英語表現
それでは最後に、営利目的という言葉の理解をより深めていただきつつ、日本語と英語で意味が違ってくるのかを確認する意味でも、営利目的という意味を持つ英語表現を例文を交えて解説します。例文は勉強の様な雰囲気がありますが、最後まで読んでください。
営利目的の英語訳
まずは、営利目的という言葉をそのまま英語に訳した場合にどうなるのかを確認しましょう。そのままの意味で英語に訳すとcommercial enterpriseとなります。
enterpriseという英語は「企て、事業、企業」という意味があり、commercialという英語は「商業の」という意味があります。これらを組合わせると商業的な企て(事業)となりますので、営利目的という日本語での使い方と同じ意味になります。
また、これが営利目的(のために)という表現をしたい場合は、(for)commercial purposesという英語を使うと良いでしょう。purposeは「目的」という意味を持つ英語なので、「商業的な目的のために」という訳になります。
営利目的はお金を儲ける目的の行為という意味
いかがでしたか。営利目的という言葉の意味や、非営利目的との違いについてはご理解いただけたでしょうか。日頃の生活でよく出てくる言葉ではないかもしれませんが、何かのきっかけで目にすることもあるかもしれませんので、是非覚えておきましょう。