身が引き締まるの意味とは?
「身が引き締まる」という言葉は普通「思い」という言葉をつなげて「身が引き締まる思い」という形で使われます。それが使われる場面と言えば結婚式の終わりの新郎の挨拶とビジネス社会において就任や転勤、昇格などの際の当事者の挨拶などが多いです。
そういう場面での「身が引き締まる思い」の意味は「これから身を引き締めて頑張ります」という決意の表明です。結婚式での新郎新婦の挨拶にしても、ビジネス社会での当事者の挨拶にしても、目上の来賓や上司に対する敬語表現の意味もあります。
身が引き締まるの類語
身が引き締まる思いとは結婚や就任、転勤、昇格などの転機に臨む場面でその当事者が「これから頑張ります」という決意表明を意味する言葉ですから、同様の意味を持つ表現はいろいろあります。
結婚式の新郎の挨拶の場面でも、またビジネス社会での転機の場面でも「身が引き締まる思い」というのは言わば決まり文句ですが、当事者の頑張りますという決意を表す言葉であればいいわけです。そのような類語表現を以下に2つご紹介します。
類語表現①
身が引き締まるの類語表現として最初に挙げるのは「初心に返って」という言葉です。これは「出発点に戻って」とか「一から出直すつもりで」頑張りたいという固い決意を表明する意味の言葉です。この意味から言うと、敬語表現的なニュアンスは欠けている言葉です。
「出発点に戻って」とか「一から出直すつもりで」ということですから、結婚式の新郎の挨拶には相応しくありません。また、新入社員の入社の挨拶としても相応しくありません。どちらかと言うと、ある程度キャリアを積んだ人が転勤や昇格などの際の挨拶に相応しい言葉です。
類語表現②
身が引き締まるの類語表現として2番目に挙げるのは「思いを新たにする」という言葉です。文字通り「新しく出発するという気持ちで頑張ります」という決意の表明を意味する言葉です。
これは上の「初心に返って」と少し似てはいますが、まったく新たな出発をする人が使ってもおかしくありません。またこの言葉には敬語的なニュアンスも備わっています。従って結婚式の新郎の挨拶にも、また新入社員の入社の挨拶でも使える類語表現と言えます。
身が引き締まるの使い方・例文
「身が引き締まる思い」という言葉の意味は、結婚やビジネス社会での入社、転勤、昇進など新しい環境に臨む場面で「これから真剣に頑張ります」という気持ちを表す言葉です。その使い方としては、目上の人を前にした挨拶でよく使われる敬語表現的なニュアンスがあります。
以下に「身が引き締まる思い」の使い方の例文として、結婚式での新郎の挨拶、新入社員の入社の際の挨拶、転勤で新しい職場に来た時の挨拶、会社で昇格した時の挨拶の例文を挙げます。
例文①
「身が引き締まる思い」の使い方の例文として最初に挙げるのは、結婚式の披露宴の終わりで新郎が述べる挨拶の例文です。目上の来賓たちに対する敬語的表現のニュアンスを帯びています。
「人生の先輩である来賓の皆様から数々の温かい励ましのお言葉をいただき本当にありがとうございます。二人共に身が引き締まる思いで拝聴いたしました。これから二人で明るい幸せな家庭を築いて行く決意を固めております。」というものです。
例文②
「身が引き締まる思い」の使い方の例文として2番目に挙げるのは、新入社員の代表が入社式の終わりに述べる挨拶の言葉です。社長や会社の幹部の人たちに対する敬語表現的なニュアンスを帯びています。
「只今、社長をはじめ会社の幹部の方々からいただきました入社の訓示をたいへん有難く、また身が引き締まる思いで拝聴いたしました。私たち新入社員一同、この会社に入社できたことを誇りに思い、精一杯努力する覚悟でおります。」という例文です。
例文③
「身が引き締まる思い」の使い方の例文として3番目に挙げるのは、転勤した人が新しい勤務地の職場で初めに述べる挨拶の言葉です。これも転勤先の上司や同僚に対する敬語表現的なニュアンスを帯びています。
「この度私は、この優れた業績を挙げている職場に身が引き締まる思いで転勤して参りました。ここの上司や同僚の皆様のご指導を仰ぎながら精一杯励む積もりでおります。どうぞよろしくお願いいたします。」という例文です。
例文④
「身が引き締まる思い」の使い方の例文として4番目に挙げるのは、会社で昇格した人が社内で上司や同僚、部下を前にして述べる挨拶の言葉です。この場合は上司に対する敬語的表現と同僚や部下に対する謙譲的表現両方のニュアンスを備えています。
「この度私は、この責任あるポストを身が引き締まる思いでお受けいたしました。未熟ではございますが皆様のご協力をいただいて何とか重責を果たすべく精一杯努力する決意を固めております。」という例文です。
身が引き締まると気が引き締まるの違い
上に「身が引き締まる」という言葉の意味とその類語や使い方の例文などについてご説明しました。ところでこの「身が引き締まる」とよく似た言葉に「気が引き締まる」という言葉があります。
この二つの言葉の意味は本質的に変わりがないのですが、微妙なニュアンスの違いがあり、従って使う場面にも違いが出て来ます。それらの点について以下にご説明します。
「気が引き締まる」は「緊張して事に当たる」という意味
「気が引き締まる」は緊張感をもって事に当たる気持ちを表す言葉です。その意味では「身が引き締まる」という言葉と本質的には同じ意味と言えます。
但し「気が引き締まる」にはそれを言う相手に対する敬意が欠けているニュアンスがあり、ただ自分の緊張感を主張しているような感じがあります。従って目上の人に対する敬意を表す場面には相応しくない言葉になります。
身が引き締まるを使う際の注意点
上に「身が引き締まる」という言葉の意味や類語表現、使い方の例文などについてご説明しました。この言葉には「畏まって申します」と相手に敬意を表するニュアンスが伴っているので、それを使う際には注意が必要です。その点について以下にご説明します。
2人称や3人称では使えない
「身が引き締まる思い」という言葉は「自分が頑張ります」という決意を表明する言葉ですが、そこには「畏まって申します」とか「謹んで申します」という風に、それを言う相手に対する敬意が伴ったニュアンスがあります。
従って「あなたは身が引き締まる思いです」とか「彼は身が引き締まる思いであった」という風に2人称や3人称で使うとおかしなことになってしまいます。
身が引き締まるの由来・歴史
以上に「身が引き締まる」という言葉について、その意味、使い方、類語表現、それを使う際の注意点などをご説明しました。
今度はこの言葉の由来や歴史について検討します。この言葉のルーツを辿り、それはいつ頃から使われて来たのかという歴史を辿ってみます。
由来
さて「身が引き締まる」という言葉は何に由来するのかと言うと、これは心と身体の自然な連携に由来しています。
心が緊張すると自然に視聴覚の神経も筋肉も緊張します。例えば空手や剣道で相手に向かい合って構えの姿勢を取る時を思い起こすと、目は鋭く輝いて神経は張りつめ、全身の筋肉も張りつめています。こういう状態を「身が引き締まる」と表現するようになりました。
歴史
「身が引き締まる」という言葉の歴史を辿ります。一体この言葉はいつ頃から使われて来たのでしょうか?
「引き締まる」という言葉を心身が「緊張する」という意味で使う用例は江戸時代以前の文語の時代には見当たりません。
明治時代になると「引き締まる」という言葉の「緊張する」という意味の用例が出てきます。それは作家、幸田露伴が1891年に出版した小説「いさなとり」の中で「引き締まった考えも持たず」という形で使われています。因みに「いさなとり」とは「捕鯨」のことです。
身が引き締まるの英語表記
さて、今度はこの「身が引き締まる」の英語表記を検討してみます。日本語の「身が引き締まる」は一種の慣用句として定着していますが、英語でそれにちょうど当てはまるような慣用句というものは見当たりません。意味を考慮した英語訳を2例ご紹介します。
英語表記①
「身が引き締まる」の英語表記として最初にご紹介するのは、「I will do my best」です。日本語に訳すと「私はベストを尽くします」となります。
「身が引き締まる」の意味は「私は頑張ります」という決意を表明する言葉ですから、確かにそれからはずれた意味ではありません。しかし「身が引き締まる」に伴う敬語的なニュアンスは残念ながら伝わりません。
英語表記②
「身が引き締まる」という言葉の英語表記として2番目にご紹介するのは「I will work even harder」というものです。
これを日本語に訳すと「私はますます一生懸命働きます」となります。これも「身が引き締まる」の意味から外れてはいませんが、やはり敬語表現的なニュアンスは伝わりません。
身が引き締まるは気を張りつめて頑張るという意味
結婚式の終わりに行われる新郎の挨拶やビジネス社会で入社、転勤、昇進などの場面で当事者がする挨拶において「身が引き締まる」という言葉がよく使われます。
この言葉の意味は「これから気を緩めず頑張ります」という決意の表明です。この言葉の類語表現、使い方、使う際の注意点、由来と歴史、英語表現などについてご紹介しました。