「そちら」って敬語で使いこなせますか?
日本語は難しいものです。日本人として日本語を使っていても、気づかないうちに間違った日本語を使っている場合があります。特に敬語の使い方は難しいと考える人が多いのではないでしょうか?敬語の使い方の間違いは、相手に対してたいへん失礼に当たります。
そもそも敬語を使うべき目上の人に対して、失礼に当たります。正しい使い方をしていきましょう。今回取り上げる「そちら」という言葉の使い方をきちんと理解していると言えるでしょうか?「そちら」という言葉は意外に難しいものです。
「そちら」に「様」を付ければ敬語になります。「そちら様」は丁寧な言葉ですが、敬語として相手に敬意を払う場合は、簡単に使わないほうがいい場合が少なくありません。
こうした敬語の使い方や、敬語に関する違いについて、例文を挙げて説明していくとわかりやすいかもしれません。「そちら」を使う上で、注意点はどういったことがあるでしょうか?
「そちら」を敬語で使う場合の注意点を挙げていきます。「そちら」は普通の会話でも使いますが、電話やメールでも敬語で使います。電話やメールでの敬語での使い方や、使い方の違いについても見ていきましょう。
「そちら」の使い方を正しく知るためには、例文を挙げて説明すると、いちばんよく理解できるのではないでしょうか?「そちら」が敬語であっても失礼な言葉になる場合も、敬語として正しい使い方をするためにも、例文を挙げて説明する必要があるでしょう。
さらに「そちら」に似た言葉として「こちら」の使い方も見ていきましょう。「そちら」と「こちら」はどのような違いがあるのでしょうか?
「こちら」を敬語で正しく使う場合はどのような注意点があるのでしょうか?「こちら」と「こちら」の敬語についても、例文を挙げて見ていきましょう。
また「こちら」のように「そちら」に似た言葉に「その」があります。「そちら」と「その」の違いは何なのでしょうか?「そちら」と「その」の違いの他、「その」はどういう時に使うことができる言葉でしょうか?
「そちら」と「こちら」同様に、「その」も例を挙げて説明していきましょう。このように「そちら」と「そちら」の敬語に関して使い方や注意点があります。
他の言葉との違いを、例文を挙げて説明していきます。あなたも今日から「そちら」や「そちら」の敬語を使いこなしていきましょう。
敬語のように「そちら」の意味
日本語で「そちら」という言葉は、どういう意味なのでしょうか?「そちら」とは、漢字で「其方」と書きます。「そちら」とは、どのような言葉で、どういう使い方をするのでしょうか?「そちら」とは、「その方向」という意味があります。
もう1つの意味は、「その方向」に当たる物のことです。例文を挙げると、「そちらを購入させてください」といったものがあります。また、「そちら」とは文法の上で、意味がいくつかあります。1つ目の意味は、中称の指示代名詞です。
2つ目の意味は、二人称の人称代名詞です。3つ目の意味は、三人称の人称代名詞です。こう羅列しただけではわかりにくいかもしれません。そもそも、指示代名詞や人称代名詞とはどういった意味の言葉なのでしょうか?
指示代名詞も人称代名詞も、あまり聞きなれない言葉かもしれません。「英語の文法の授業で聞いたことがある」という人もいるのではないでしょうか?
指示代名詞の「そちら」と人称代名詞の「そちら」はどういった意味で、どういった使い方をするのでしょうか?例文と共に見ていきましょう。
指示代名詞
「そちら」の意味の1つ目は、中称の指示代名詞です。この中称の指示代名詞とは、話し手よりも、聞き手に近いほうにある物、場所、方向を示します。例文を挙げてみましょう。「〇〇がいる事務所はそちらでございます」というものです。
この場合、事務所は聞き手に近い方にあり、その方向を指さします。「北国はまだまだ寒いですが、そちらはいかがですか」という例文もあります。この例文では話し手は北国に住んでいます。「そちら」とは聞き手のいる場所を指す言葉です。
「そちらの品は大変美味しいですよ」といった例文もあります。聞き手の近くにある美味しい食べ物を指しています。こうしたものが中称の指示代名詞となります。中称の指示代名詞は他に、「それ」「そこ」「こちら」「どれ」「どちら」といったものがあります。
人称代名詞
「そちら」の意味の2つ目は二人称の人称代名詞です。人称代名詞とは、人を指す代名詞で、話し手は一人称で、聞き手が二人称となります。英語の時間に、「I」は一人称、「You」は二人称と習ったのではないでしょうか?
二人称とは、「あなた」や「君」といった言い方をしますが、「そちら」という言い方もします。1つ例文を挙げてみるとわかりやすいかもしれません。
「それではそちらの御意見をお聞かせください」というものです。この「そちら」は聞き手を指しています。または聞き手側を指しています。またこの場合の「そちら」は敬語の意味があります。敬語でない場合は「そっち」になります。
「そちら」の意味の3つ目は、三人称の人称代名詞です。一人称が英語では「I」であり、「私」や「僕」と言ったものを指し、二人称が英語では「You」であり「あなた」や「君」を指します。
三人称は英語で「He」や「She」、「They」であり、「彼」や「彼女」、「彼ら」といった意味があります。例文を挙げてみましょう。
「そちらがあなたの弟さんですか?」というものです。聞き手のすぐ側にいる人を指す言葉です。この場合の「そちら」も自分より目上の人に対して使う丁寧語です。
「そちら」の意味と敬語としての注意点
ここまで「そちら」の意味について見てきました。例文を見ればわかる通り、「そちら」は目上の人に対して使うことが多い言葉です。また、接客業の人が客に対してよく使う言葉です。「そちら」は丁寧な言葉と言えるでしょう。それでは「そちら」という言葉は敬語なでしょうか?
「そっち」の丁寧な表現
「そちら」という言葉は、「そっち」という言葉を丁寧に表現した言葉です。例文を挙げてみましょう。「あの本はそっちにあります」という例文より「あの本はそちらにあります」という例文のほうが丁寧であることがわかるでしょう。
「そちら」とは、「こそあど言葉」と言われるものの1つです。こそあど言葉とは「こっち」「そっち」「あっち」「どっち」という表現です。このこそあど言葉を丁寧に表現すると、「こちら」「そちら」「あちら」「どちら」になります。
敬語ではない
「そちら」という言葉は、人や物を指す代名詞です。代名詞とは「それ」とか「どれ」とかいったもので、代名詞そのものが敬語となることはありません。「そちら」を敬語で言いたい場合はどういった注意点があるのでしょうか?
「そちら」を敬語で表現したい時の言い方として、「そちら」に「様」を付けるという方法があります。「そちら様」という表現は、聞き手や聞き手側の人に対する敬意を表す、敬語ということができます。
「それ」との違い
「そちら」は、こそあど言葉と呼ばれます。こそあど言葉は先述した通り、「これ」「それ」「あれ」「どれ」といった言葉です。「そちら」と「それ」の関係は、「それ」を丁寧にした言葉が「そちら」なのでしょうか?ここにちょっとした注意点があります。
「そちら」は、物や場所を指し示す他、人を指し示すことができます。しかし、「それ」という言葉は、人を指し示すことはできません。物や場所を指し示す言葉にとどまるといった注意点があります。「そちら」と「それ」の違いに注意しましょう。
敬語表現として使われる場合
「そちら」を敬語表現にしたい場合はどういった注意点があるのでしょうか?人を意味する「そちら」の敬語は「そちら様」となります。これは、物や場所を表す言葉とは違い、人を表す言葉なので、「様」が付いています。
いっぽう「それ」は人を意味する言葉と違い物を意味するため、敬語表現としては「そちら」を使用するということが注意点と言えます。敬語にしたい「そちら」が物なのか人なのかの違いで敬語表現が変わってきます。ここが大きな注意点になります。
この場合、敬語にしたいからと「そちら様」を使うことはできません。物に対する敬語は人と違い「様」は付けません。「そちら」と「それ」の敬語表現を比べた時、示すものが「人」なのか「物」なのかという違いが出てきます。
「そちら」という言葉自体に、「それ」の丁寧語という意味があるので、「そちら」は「それ」の敬語表現として考えることができます。以上の敬語表現の違いや注意点を踏まえて、「そちら」を使用していきましょう。
「そちら」の敬語的な使い方
「そちら」は「それ」や「そっち」といった物や場所を丁寧にした言い方になります。「そちら」を人に対して使う時のみ、敬語表現として「そちら様」という言い方を使うことができます。
人である「そちら」に「様」を付けることで、その人や、その人側の人に対して、高い敬意を表すことができるのです。
会話中の「そちら」
人と人とが、面と向かって会話している時、「そちら」の敬語表現はどういったものになるのでしょうか?直に会話している時、「そちら」を敬語での使い方をしたい場合はどうすればいいのでしょうか?
「そちら」は「改まり語」と呼ばれ、丁寧な言い方になります。しかしビジネスシーンで面と向かって話をする時には、敬語であっても冷たい印象を与えてしまいます。例文を挙げてみましょう。
「そちらにとってはあまりいい話ではないかもしれませんが、ご提案させていただきます」という使い方です。一見、敬語になっているようですが、相手を思っての提案であっても、上から目線に感じれることが否めません。敬語といっても相手への敬意が伝わりにくいです。
目下や同等の者にはこのような使い方ができますが、目上の人に対しては「そちら」ではなく言い換えをするほうが敬語表現として相応しくなります。たとえば「そちらの会社」ではなく、「御社」と言い換える使い方にしましょう。
「そちら様」の場合も「お客様」と言い換える敬語の使い方が無難です。どうしても「そちら様」を使いたい場合は、「失礼ですが」といったクッション言葉を付けるようにする敬語の使い方をするといいでしょう。
電話での「そちら」
それでは面と向かった会話ではなく、電話での応対の時の「そちら」を使う注意点はあるでしょうか?電話では「そちら」の敬語表現となる「そちら様」を使うシチュエーションが出てきます。例文を挙げてみましょう。
電話で相手に再度電話をする旨を確認する場合「それではそちら様のご都合のよろしい時に、改めてお電話させていただきます」という敬語表現です。また「そちら様もお変わりないようで何よりです」といった敬語の例文もあります。
このように電話では「そちら様」を使ってもあまり失礼に当たらない場合が多いです。しかし、上から目線にならないようにといった注意点を守るなら、「御社」や「〇〇様」といった言い換えをしたほうが敬語としていい場合もあります。
メールでの「そちら」
同じく、面と向かわないやり取りとして、メールでのやり取りが挙げられます。メールの文面において、敬語の「そちら様」という言葉はよく出てきます。
メールを送る相手が取引先などの場合、メールでも敬意を表する必要があります。そんな場合に「そちら様」を使用することができます。
そちらの敬語表現例文
「そちら」という言葉の使い方や、使う上での注意点がわかったところで、「そちら」を使った例文を見ていきましょう。「そちら」には、物や場所を示した使い方があります。また、「そちら」が人を指す人称代名詞である場合もあります。
メールなどで「そちら」を使う場合は、「そちら」が人を指す二人称の人称代名詞になります。また、三人称の人称代名詞の場合もあります。以下にいくつか例文を挙げるので、使う時の参考にしてみてください。
メールで「そちら」を用いる場合
メールで「そちら」を使う場合は、ビジネスメールが多いのではないでしょうか?ビジネスメールで「そちら」を使う場合は、「そちら様」や「そちらの方」といった敬語で使うのが一般的です。例文を挙げてみましょう。
「そちら様のご都合のよろしい時に、返信をいただけたらと思います」という敬語表現があります。また、「そちら様のご都合でお決めください」といった敬語の例文もよく使用されます。
次に「そちらの方」という敬語の例文を挙げてみましょう。「そちらの方とご相談の上、再度ご連絡いただけたらと思います」といった敬語表現です。「そちらの方のご都合もおありでしょうから、事前にお知らせ願えればと存じます」といった敬語の例文もあります。
三人称の例文
次に、「そちら」の3つ目の意味である三人称の人称代名詞として使う場合の敬語の例文を見ていきましょう。「そちらの方でしら、先日お会いしたばかりです」といったものです。
この場合の「そちら」は話し手より聞き手に近い位置にいる人を敬語で指しています。また「そちらはお顔が似てらっしゃいますが、ご兄弟でしょうか?」といった敬語の例文もあります。
さらに「そちらの方を私にも紹介してください」といった敬語の例文もあります。三人称の人称代名詞の「そちら」を丁寧に敬語で表現する場合は「そちらの方」と言うようにしましょう。
似た言葉の敬語表現
「そちら」という言葉は、こそあど言葉です。「この」「その」「あの」「どの」や「こちら」「あちら」「どちら」「こっち」「そっち」「あっち」「どっち」といったがあります。この、こそあど言葉は、どれも似たような言葉に思われるかもしれません。
この似たようなこそあど言葉の中でも、「そちら」と似ているのが「こちら」と「その」です。最後に「そちら」とよく似た「こちら」と「その」の意味と敬語表現について見ていきましょう。
「こちら」
「そちら」と似た言葉の1つ目の「こちら」の敬語表現について見ていきましょう。「そちら」と比べると「こちら」との違いは、「そ」か「こ」かの違いです。そのために、「こちら」の敬語表現は「そちら」と変わってきます。
まず「こちら」の意味から見ていきましょう。「こちら」は漢字で「此方」と書きます。まず1つ目の意味は近称の指示代名詞です。「こちら」は「こっち」より丁寧な言葉になります。話し手のいる方向かそれに近い方向や方角を指します。
例文を挙げてみましょう。「こちらに来てください」という例文があります。「鬼さん、こちら、手のなる方へ」といった例文も有名です。2つ目の意味は、ここにあるものです。例文としては「こちらでよろしいですか」というものです。
また、この場所という意味があります。「こちらにあるもので最後です」といった例文があります。次に一人称の人称代名詞の意味があります。話し手の側にあるもの、あるいは自分の側にあるものです。
「そんなことこちらの知ったことではありません」という例文があります。最後に三人称の人称代名詞の、かたわらにいる同等以上の人を指す意味あります。「こちらが有名な〇〇先輩です」「こちらの方を紹介していただけませんか」といった例文があります。
「こちら」の敬語表現は「こちら様」になります。「こちら」に様を付ける場合は、自分の側にいる人で、自分より目上の人に対して使う言い方になります。「そちら」と「こちら」の大きな違いは何でしょうか?
「そちら」は相手側で「こちら」が自分側ということになります。「そちら様」が相手側を敬う敬語であるのに対し、「こちら様」は自分の側にいる目上の人を敬う敬語です。「こちら様」を使用する場合、どういった注意点があるのでしょうか?
ビジネスシーンで取引先に対して自分の上司を紹介する時、「こちら様」は使いません。上司はあなたより立場は上ですが、取引先の人にとっては上司ではないので、敬語を使うと違和感が生まれます。
取引先の人から上司が「そちら様」と言われることはあります。「そちら様」は相手に対してしょっちゅう使用する機会があるでしょう。いっぽうで「こちら様」は使用が難しい言葉であると言えるでしょう。
「その」
「そちら」と似た言葉の2つ目の「その」について見ていきましょう。「その」は漢字で「其の」と書きます。「その」の1つ目の意味は、空間的、あるいは心理的に聞き手に近い人や物のことを指します。例文を挙げてみましょう。
「その男性は誰ですか」といったものがあります。また「そのアクセサリーは素敵ですね」といった例文もあります。「その」の2つ目の意味は、聞き手が直面している場面や事柄のことです。「今の」といった意味です。例文を見ていきましょう。
「その本を読み終わったら、私に貸してください」というものです。「その調子で頑張ってください」といった例文もあります。3つ目の意味は、話に出ていること、あるいは話に出たばかりのことです。
「その日は私も忙しかったんです」といった例文があります。「その話はまだ私は聞いていないですよ」といった例文もあります。
4つ目の意味は、全体をいくつか分けた中のある部分のことです。「その1、その2、その3と見ていきます」といった例文があります。「その話だけは、勘弁してください」といったものです。
次に「その」を使った慣用句や熟語を見ていきましょう。1つ目は「その足で」という言葉です。これは、ある場所に行き、そこからそのまますぐに別の場所に行く様子を指す言葉です。
2つ目は「その気になる」というものです。これは、そうしようという気になるという意味です。3つ目は「その罪を憎んでその罪を憎まず」というものです。これは、罪は憎むべきではあるけれど、罪を犯した人を憎んではいけないという慣用句です。
「そちら」の敬語表現を正しく使おう
「そちら」という言葉を敬語で使う場合は、いくつかの注意点があります。「そちら様」という敬語の場合、人に対してしか使うことができません。物や場所を指す時は「それ」の敬語表現が「そちら」になります。敬語は間違いやすいので正しく使いましょう。