センスの意味とは?
最近日本ではカタカナ外来語が盛んに使われています。政治家や官庁の役人などが「マニフェスト」だとか「イノヴェーション」などというカタカナ外来語を乱発して、意味がよくわからないこともあります。
この記事では「センス」というカタカナ外来語を取り上げます。このセンスという外来語は上に挙げたマニフェストやイノヴェーションなどとは違って、かなり前から日本の社会に定着している外来語です。
センスという外来語の原語は英語の「sense」です。この英語には大きく分けて2つの意味がありますが、日本語のセンスもこれと同じく2つの意味の使い方がありますので、以下にセンスの2つの意味を順にご紹介します。
意味①
センスの意味の第1は「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」、あるいは「良いものを選び取る能力」という意味です。「あの人のセンスは良い」とか「センスの良いインテリアを頼みたい」などという風な使い方の時の意味で、「感受性」とか「感覚」という言葉で置き換えられます。
意味②
センスの意味の第2は「物事の善し悪しや価値などを判断する能力、あるいは認識する能力」という意味です。
英語の「コモンセンス(common sense)」は常識と訳されますが、ここに使われている「センス」の意味です。例えば「人の命は大切にすべきだ」というように誰もが共通に持っている判断あるいは認識を意味します。
またフランス語の「ボン・サンス(bon sens)」は良識と訳されますが、ここに使われている「サンス(センス)」の意味です。フランスの哲学者、ルネ・デカルトはこのボン・サンスを「物事の善悪を区別し、正しく判断する能力」として自分の哲学の出発点としました。
センスの類語
上にセンスというカタカナ外来語の2つの意味をご紹介いたしました。この章ではこのセンスというカタカナ外来語の類語をご紹介いたします。センスに2つの意味があるのですから、当然センスの類語にもその2つの意味に応じて2つの類語が考えられます。
類語①
センスというカタカナ外来語の類語の第1番目に挙げるのは「感覚」という言葉です。これはセンスの第1番目の意味、すなわち「「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」、あるいは「良いものを選び取る能力」という意味に対応した類語で、「感受性」と言い換えることもできます。
類語②
センスというカタカナ外来語の類語として第2番目に挙げるのは「判断力」という言葉です。これはセンスの第2番目の意味、すなわち「物事の善し悪しや価値などを判断する能力、あるいは認識する能力」という意味に対応した類語で、認識力と言い換えることもできます。
センスの使い方・例文
初めの章でセンスというカタカナ外来語の2つの意味をご紹介いたしました。この章ではセンスというカタカナ外来語の使い方を例文を挙げてご説明いたします。
センスに2つの意味があるなら、当然センスという言葉の使い方にも2つの意味に応じて2つの異なる使い方があります。以下にそれぞれの意味に応じた例文を2つずつご紹介いたします。
例文①
センスの使い方の例文として第1番目に挙げるのは「あの人のファッションのセンスはとても良いので、いつも素敵なおしゃれをしている」という例文です。
これはセンスの第1の意味、すなわち「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」、あるいは「良いものを選び取る能力」に対応した使い方の例文です。
例文②
センスの使い方の例文として第2番目に挙げるのは「あの人の家はセンスの良いインテリアが施されているので、いつも居心地が良い」という例文です。
これもセンスの第1の意味、すなわち「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」、あるいは「良いものを選び取る能力」に対応した使い方の例文です。
例文③
センスの使い方の例文として第3番目にご紹介するのは「アインシュタインの非凡な才能は常人を超えた数学と物理学のセンスに裏付けられている」という例文です。
これはセンスの第2の意味、すなわち「物事の善し悪しや価値などを判断する能力、あるいは認識する能力」に対応した使い方の例文です。
例文④
センスの使い方の例文として第4番目にご紹介するのは「社会性のセンスに欠けている人は社会人として受け入れられない」という例文です。
これもセンスの第2の意味、すなわち「物事の善し悪しや価値などを判断する能力、あるいは認識する能力」に対応する使い方の例文です。
センスとスキルの違い
上にセンスといカタカナ外来語の意味や使い方についてご説明いたしました。ところでセンスと似た場面で一見同じように使われる言葉に「スキル」というこれもカタカナ外来語があります。この章ではこのスキルとセンスの違いについてご説明いたします。
スキルは後天的に身に着ける能力という意味
スキルというカタカナ外来語は練習、トレーニング、勉強などによって後天的に身に着ける技能を意味する言葉です。例えば「プログラミングのスキルを身に着けた」とか、「高度なピアノのスキルを持っている」などという具合に使われます。
スキルは先天的な才能がなくても努力によって身に着けられるものです。ところがセンスは持って生まれた才能と同じく努力して身に着けることはできません。先天的に持っている感受性のようなものです。センスとスキルの違いは努力によって後天的に身に着けられるか否かの違いなのです。
もちろんセンスも良いものを見たり聞いたりすることによって発達させることはできます。また才能も練習や勉強などによってさらに一層伸ばすことはできます。「玉磨かざれば光なし」と言う通り、センスも才能も磨くことはできます。しかしセンスや才能を努力で獲得することはできません。
センスを使う際の注意点
センスという外来語には、例えば上に挙げたスキルのように一見似た場面で使われますが、実は意味が違うものがあります。センスというカタカナ外来語を場違いの場面で使うとおかしなことになってしまうので注意しなければなりません。
練習で獲得するものでは使えない
センスは持って生まれた感受性の類ですから上に挙げたスキルなどとは違って、後天的に練習や勉強などによって獲得することはできません。練習や経験を積むことによって磨きをかけることはできますが、獲得はできないのです。従って後天的に獲得する技能の類にはセンスという言葉は使えません。
センスの語源・歴史
さてこの章ではセンスというカタカナ外来語の語源は何か、またその語源からセンスというカタカナ外来語がどのような経緯を経て日本の社会に定着して使われるようになったかということ、つまりセンスという言葉の歴史を辿ってみます。すなわちセンスのルーツを振り返ってみます。
語源
センスというカタカナ外来語の直接の語源はもちろん英語の「sense」です。その意味は日本で使われているカタカナ外来語のセンスと同じく、感覚と判断力という2つの意味を持っています。
しかしさらに英語の「sense」の語源を辿ると15世紀頃にフランス語の「sens」がその直接の語源となっています。さらにフランス語の「sens」の語源はと言うとラテン語の「sentire」がその語源ということになります。このラテン語の意味は「感じる」という動詞です。
歴史
ここではセンスに限らず一般にカタカナ外来語が日本社会に定着して行く歴史を辿ってみます。外来語が本格的に日本に入って来るのは明治時代の文明開化からです。
明治時代には外国の固有名詞をかなで表音表記することは行われましたが、普通名詞、特にセンスのような抽象名詞をかなで表音表記することは行われていません。例えば夏目漱石はビスケットという外来語を「乾蒸餅」と漢字で書いてそれに「ビスケット」とフリガナを付けています。
まだその外来語が指しているもののイメージが社会全体にできていないので表音表記だけでは何のことかわからなかかったためです。
大正時代になると、西洋の文物がかなり日本社会に普及して来たので、センスなどの外来語をそのままカナで表音表記することが行われるようになり、芥川龍之介や倉田百三などもセンスという言葉を使っています。
センスの英語表記
カタカナ外来語「センス」の原語は英語の「sense」です。従ってセンスの英語表記と言えばこの「sense」です。英語の「sense」の意味も、感覚、意識、判断能力、(知的、道徳的な)感覚、観念となっていますから、日本で使われている「センス」と同じ意味です。
センスの漢字
カタカナ外来語のセンスには大きく分けて2つの意味がありました。1つは「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」あるいは「良いものを選び取る能力」という意味で、これを表す漢字としては「感覚」が挙げられます。
もう1つの意味は「物事の善し悪しや価値などを判断する能力、あるいは認識する能力」という意味で、これを表す漢字としては「判断力」を挙げることができます。
センスは感覚・判断力という意味
カタカナ外来語の「センス」という言葉には大きく分けて2つの意味があります。1つは「物事の美しさや味わいなどを感じ取る能力」という意味で、「感覚」という言葉で置き換えられます。
もう1つは「物事の善し悪しや価値などを判断する能力」という意味で、「判断力」という言葉で置き換えられます。センスは持って生まれた資質なので一種の才能とも言えます。
センスの類語、使う際の注意点、語源と歴史、英語表記、漢字表記などについて解説いたしました。センスという言葉は大正時代から日本社会で使われて来た馴染みのある外来語です。意味や使い方を正しく知った上で大いに使っていただきたいものです。