鷲と鷹の違いって知ってる?
鷹と鷲は、見た目にはほとんどその違いが判らないといえます。もともと鷹と鷲は、生物学的には猛禽類の中のタカ目タカ科に属しているので、同じ区分になります。鷹と鷲は、慣例上、大きさや模様などの違いによって名前の違いがあると考えられます。
猛禽類の頂点に立つ鷹や鷲という名前は知っていますが、鷹と鷲の詳しい違いについてはほとんど知らないといえます。ここでは、鷹と鷲の違いと見分け方のポイントについて詳しく解説します。
鷲と鷹の違い①大きさで区別
鷹と鷲の違いは、大きさだけで、小さい方を鷹、大きい方を鷲とされています。大きさの違いは、45cmから70cmを鷹、85cmから100cmを鷲として区別しています。ただ、種類によっては、大きさだけでは区別できないことがあり、鷹と鷲の違いは大きさだけではないこともあります。
ここでは、鷹や鷲と同じ猛禽類である鳶や隼との違いについて解説します。また、鷲と鷹の違いは、大きさだけではないという例を紹介します。
鳶や隼も大きさで区別
基本的に鳶は、鷹や鷲と同じタカ目タカ科に属しています。そのため、鳶の見分け方のポイントも、鷹や鷲と同じように大きさの違いということになります。隼は、ハヤブサ目ハヤブサ科に属しているので、鷹や鷲、鳶とは違う鳥になります。
隼の大きさは、35cmから50cmなのでかなり小さくなります。また、日本鳥学会では、隼は猛禽類と違い、雀などと同じ仲間と規定されています。
鳶は、大きさが約60cmで、羽を広げると150cmから160cmほどになります。また、尾の中央部に切れ目があります。「ピーヒョロロ」という鳴き声が、特徴的です。鳶の鷲や鷹との違いは、大きさだけではなく、鳴き声などの違いがあります。
鷹より小さな鷲もいる
沖縄県の石垣島と西表島に生息するカンムリワシは、大きさが50cmから60cmなので鷹よりも小さいのですが、鷲と呼ばれています。その理由は、生息している石垣島や西表島には、カンムリワシよりも大きい猛禽類が、生息していないからといわれています。
体長70cm以上の大きな鷹も
北海道から本州に生息する「クマタカ」は、鷹という和名がついていますが、その大きさは70cm以上あります。大きさの違いでは、鷲と区分されてもおかしくないといえます。実際、クマタカは、日本とは違い海外では「鷲」と呼ばれています。
日本に生息するクマタカは、日本固有の種で、とても希少な鳥とされています。このクマタカが、和名で鷹と呼ばれるようになった理由のひとつに、クマタカの生息地とクマタカよりも体の大きいオオワシの生息地が、ほぼ同じということが考えられます。
オオワシは、猛禽類の中でも頂点に立つといわれるほど大きな鳥です。大きさの違いで考えるならば、オオワシよりも小さいクマタカは、鷲ではなく鷹といえます。
鷲と鷹の違い②見分け方のポイント
鷹と鷲の見分け方は、大きさの違いといわれていますが、大きさだけでは鷹と鷲を見分けることができないことがあります。じつは、鷹と鷲を見分けるポイントには、大きさの違いのほかに、尾の形の違いや模様の違い、飛び方の違いがあります。
ここでは、鷹と鷲の見分け方のポイントである、尾の形の違い、模様の違い、飛び方の違いについて詳しく解説します。
尾の違い
鷹と鷲は、それぞれ尾の形に違いがあります。鷹の尾の形は、扇状に広がっている個体が多いといわれています。鷲の尾の形は、鷹の尾の形とは違い直線になっており、広がっている尾は少ないといわれています。そのため鷹と鷲の違いのひとつは、尾の形といえます。
模様の違い
鷹と鷲の見分け方のポイントのひとつに、模様の違いがあります。鷹には、鷹斑(タカフ)と呼ばれる独特の模様があります。鷲には、この鷹斑と呼ばれる模様は、入っていることはないということです。そのため鷲と鷹の違いのひとつは、鷹斑の有無といえます。
飛び方の違い
鷹と鷲の違いには、空中での飛び方があります。鷲は、大きく羽を羽ばたいて飛びます。鷹は気流に乗って飛行するので、ほとんど羽ばたくことなく、飛ぶことができます。空を飛んでいる鳥が、鷹なのか鷲なのかは、飛び方の違いを確認することで見分けることができます。
鷲と鷹の違い③生態
日本で生息する鷹の中で、最も多く見ることができるのが、オオタカです。また日本に生息する鷲の中で、最も大きいのがオオワシになります。ここでは、日本を代表する猛禽類であるオオタカの生態とオオワシの生態について詳しく解説します。
鷲(オオワシ)の生態
オオワシは、日本の北海道などに生息する日本最大の猛禽類です。大きさは、オスが全長89cm、メスが102cmとオスよりもメスの方が大きいのが特徴です。羽を広げると240cmにもなるといわれ、とても大きな鷲です。全身が黒い茶色で、羽の前・尾・足に白い羽があります。
この日本最大の猛禽類であるオオワシは、とても希少な鳥といわれています。ここではオオワシの生息地などの生態について詳しく解説します。
鷲(オオワシ)の生息地
オオワシは、おもにロシアのオホーツク海沿岸やカムチャッカ地域に生息し、繁殖しています。この地域だけに生息するとても希少な鳥といえます。日本には、1月頃、越冬するために北海道や本州北部へやってきます。北海道では、流氷とともにやってくるともいわれています。
オオワシの食性
オオワシは、猛禽類なのでサケやタラなどの魚、小鳥やネズミ・ウサギなどの小・中動物も食べます。また、弱った水鳥やアザラシなどの海獣を食べることもあります。オオワシは、サケなどの魚の死骸やアザラシやクジラなど動物の死骸も食べます。
オオワシは、アメリカ合衆国の国鳥であるハクトウワシと同じ海鷲になります。オオワシは、鷹とは違い、勇猛に獲物を狩るわけではないといわれています。狩りをしたり獲物を襲うのは、飢えているときと繁殖期といわれています。
オオワシの繁殖
オオワシの繁殖期は、春です。巣作りは、2月終わり頃から3月初旬にかけて行われ、河川地域や沿岸の高い木の樹上・険しい崖に作ります。オオワシは、4月から5月頃、1個から3個の卵を産み、5月から6月頃に孵化し、8月には巣立ちます。
鷹(オオタカ)の生態
オオタカの大きさは、オスが約50cm、メスが約56cmとオスよりもメスが大きく、カラスとほぼ同じ大きさです。体の大きさから言えば、中型の鷹といえます。
オオタカの名前の由来は、体の大きさではなく、羽の色が灰色がかった青色だったため「蒼鷹」と呼ばれていたことから、「オオタカ」とよばれるようになったといわれています。ここでは、このオオタカの生態について詳しく解説します。
オオタカの生息地
オオタカの生息地は、北海道から本州全域に及んでいます。また、北部九州にも生息しています。日本では、代表的な鷹で、一般に鷹というとこの「オオタカ」をさします。
1984年当時は、国土の開発などでその生息地が減少し、生息数が激減し一時は絶滅危惧種としてレッドリストに載せられています。2020年7月時点では、生態の研究や環境省などが積極的に保護したことにより、生息数が増加しています。2020年7月時点では、レッドリストから外されています。
オオタカの食性
オオタカは、とても狩が上手な鷹です。そのため古くからそのずば抜けたハンター能力を生かし、鷹狩りに使われています。2020年7月時点でも、鷹匠に訓練されて、いろいろな場所で活躍しています。一度狙いをつけたら、狩りが成功するまで追いかけるという習性があります。
オオタカは、体に見合った大きさの獲物を狩ることが特徴です。オスは雀から鳩くらいの大きさ、メスはムクドリくらいの大きさからカラスくらいの大きさまでを捕獲することができ、餌としています。また、リスなどの小型の哺乳類も餌になります。
オオタカの繁殖期は、春になります。巣は、アカマツやスギ、モミノキなどの地上から10mから15mのところにある枝などにつくります。巣の大きさは、1mくらいで、同じ巣を数年使うこともあれば、1年で違う場所へ移動することもあります。
春に産まれた卵は、5月から6月頃に孵化し、8月から9月頃に巣立っていきます。巣立ち後は、1ヶ月から1ヶ月半ほど、巣の近くで過ごしますが、その後は自分の生活する場所を求めて旅立っていきます。
鷲と鷹の大きさ以外の違いを見つけよう!
鷹と鷲の違いは、一般的には大きさといわれています。ただ、大きさの違いだけで鷹と鷲を分類しているのではなく、尾の形や模様の違い、飛び方の違いを鷹と鷲の見分け方のポイントとして区別しています。このほかにも、鷹と鷲の足の大きさの違いもあります。
鷹の足は長めで細く、鷲の足は太くがっしりしているという違いがあります。よく観察すると、鷹と鷲の違いが、このほかにもある可能性があります。