遺族年金の金額は65歳以上になると減る?いくらもらえるのか調査!

遺族年金の金額は65歳以上になると減る?いくらもらえるのか調査!

遺族年金、65歳以上になるともらえる金額はどうなるのでしょうか。遺族年金に関しては国民年金などに比べて比較的話題になりにくい現実にあります。でも、その時になってあわてないように、65歳以上になったらもらえる金額がどうなるかなどをしっかり学んでおきましょう。

記事の目次

  1. 1.遺族年金・2種類の制度
  2. 2.遺族年金・国民年金受給者が65歳以上の時の金額
  3. 3.遺族年金・厚生年金受給者が65歳以上の時の金額
  4. 4.遺族年金・いくらもらえる?
  5. 5.遺族年金・妻の金額の参考例
  6. 6.遺族年金・遺族給付制度
  7. 7.遺族年金・支給要件
  8. 8.遺族年金の金額は65歳以上で減額の可能性もある

遺族年金・2種類の制度

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「もしもの時」という言葉は死亡保険などを勧誘するときに使われる常套句(じょうとうく)ですが、「もしもの時」はどの夫婦にも必ず訪れます。その時残された遺族の頼りの綱が「遺族年金」なのです。

しかしながら、「遺族年金」に関して正しい知識を持っている人はさほど多くありません。連れ合いが亡くなることを前提とした考え方に抵抗を感じることに加えて、「遺族年金」の制度そのものが大変複雑だからです。

まずは、「遺族年金」にはどのような種類があるのかから見ていきましょう。「遺族年金」には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の二つがあります。

①遺族基礎年金(国民年金)

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日本国民であれば全員「国民年金」に加入する必要があります。「遺族基礎年金」は、この「国民年金」に基づく「遺族年金」の一つです。「国民年金」の加入者が亡くなったときに、加入者に生計を維持されていた配偶者や子に支給される年金です。

配偶者には18歳未満の子(18歳を超えていても、18歳になった年度末まではOK)がいる必要があります。つまり、「遺族基礎年金」は子供の養育のための遺族年金制度だといえます。

「遺族基礎年金」は定額部分に子の人数分が加算されます。亡くなった方の収入などは関係ありません。

②遺族厚生年金(厚生年金)

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「遺族厚生年金」は厚生年金に加入している一般のサラリーマンが亡くなったときに、その大黒柱に生計を維持されていた遺族に支給される「遺族年金」です。「遺族基礎年金」より支給対象が広いのが特徴です。

「遺族厚生年金」の受給対象者は、妻や子だけでなく、孫、夫、父母、祖父母も含まれます。妻には子がいなくても対象になります。子のいる配偶者は「遺族基礎年金」と併せて受給できます。

「遺族基礎年金」と異なり、支給額は死亡した人の収入によって変わります。なお、公務員が対象だった「遺族共済年金」は、平成27年10月以降この「老齢厚生年金」に一本化されています。

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遺族年金・国民年金受給者が65歳以上の時の金額

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「遺族年金」受給者は亡くなった自分の配偶者が「国民年金第1号被保険者」「国民年金第2号被保険者」のどちらなのかを考える必要があります。「国民年金第1号被保険者」は個人事業者や学生、農業従事者などが対象で「国民年金」だけに加入しており、いわゆる一階建て分の「老齢年金」をもらいます。

一方「国民年金第2号被保険者」は一般のサラリーマンが対象で「厚生年金」に加入しています。「厚生年金」加入者は自動的に「国民年金」にも加入しており、将来いわゆる二階建ての「老齢年金」をもらえます。

まずは、亡くなった自分の配偶者が「国民年金第1号被保険者」だった場合を見てみましょう。自分が65歳になったらもらえる年金は減額されるのでしょうか。

①65歳以上からは2つの年金から選択

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「国民年金第1号被保険者」の妻は夫が亡くなったら基本的に「遺族基礎年金」をもらうことになります。子のいない妻は「遺族基礎年金」をもらえませんが、その代わり「寡婦(かふ)年金」をもらうことができます。「寡婦年金」受給者の場合は後で触れます。

この「遺族基礎年金」をもらっている妻が65歳になったら、自分の「老齢基礎年金」をもらえるようになります。では、この場合夫の「遺族基礎年金」と自分の「老齢基礎年金」の両方をもらえるのでしょうか。

残念ながら、そのような美味しい話はありません。この場合には、年金が減額されないように、夫の「遺族基礎年金」と自分の「老齢基礎年金」のどちらか高い方を選択しなければなりません。年金事務所に提出する「年金受給選択申出書」にある「年金額が高い方を選択する」を選んでおけば、それまでより年金が減額されることはありません。

②65歳以上の妻は寡婦年金の受給資格が無くなる

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「寡婦年金」は「国民年金第1号被保険者」の夫が亡くなったとき、子のいない妻が受け取れる年金です。いわば「遺族基礎年金」を受け取れない妻を救済するための制度といえます。もちろん、10年以上の婚姻関係や生計の同一性など一定の条件があります。

「寡婦年金」の受給資格は60歳から65歳と定められていますので、自分自身が65歳になって自分の「老齢基礎年金が」もらえるようになると、この「寡婦年金」の受給資格を失います。

つまり、65歳になった際、「遺族基礎年金」をもらっている妻は夫の「遺族基礎年金」か自分の「老齢基礎年金」か高い方を選べるのに対して、「寡婦年金」をもらっている妻は自分の「老齢基礎年金」しか選べないのです。「寡婦年金」は夫の「老齢基礎年金」の3/4ですから、年金額が減額になる可能性もあります。

遺族年金・厚生年金受給者が65歳以上の時の金額

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「国民年金第1号被保険者」だった夫が亡くなった際、妻が受け取れる年金について見てきました。では、亡くなった夫が「国民年金第2号被保険者」つまり公務委員や会社員だった場合はどうなるのでしょうか。結論からいえば、夫がサラリーマンの「国民年金第2号被保険者」だった場合の方が有利だといえます。

①65歳以上・国民年金と厚生年金の受け取り方が違う

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「遺族年金」を受け取る妻が「国民年金」だけの加入者だったか、自分自身も会社などで働いていて「厚生年金」の加入者だったかによって、受け取る年金が変わってきます。

「厚生年金」の加入者は自動的に「国民年金」の加入者にもなりますので、「国民年金」だけの加入者がいわゆる一階建ての年金しか受け取れないのに対して、こちらはいわゆる二階建ての年金を受け取る権利があります。

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妻は自分が65歳になったら、自分の「老齢基礎年金」を受け取ることができます。自分が「国民年金」だけの加入者だった場合は、夫の死後受け取る年金はこの自分の「老齢基礎年金」に夫の「遺族厚生年金」をプラスしたものになります。

もし、自分が「厚生年金」の加入者だった場合は、自分の「老齢基礎年金」にプラスして受け取る部分が二者択一になります。夫の「遺族厚生年金」をそのまま受け取るケースと夫の「遺族厚生年金」の2/3+自分の「老齢厚生年金」の1/2を比較して、多い方を受け取ることになるのです。

②65歳以上・遺族年金の中高齢寡婦加算が貰えない

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当然ですが自分が65歳になるまで自分の「老齢基礎年金」はもらえません。妻が65歳前に夫が亡くなった場合、夫の「遺族基礎年金」も自分の「老齢基礎年金」ももらえないケースを救済するために「中高齢寡婦加算」という制度があります。

妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合か、「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」の両方をもらっていた子のいる妻で、子が成長したため「遺族基礎年金」をもらえなくなった場合に「中高齢寡婦加算」がもらえるのです。

この「中高齢寡婦加算」は妻自身が65歳になって自分の「老齢基礎年金」をもらえるようになると、打ち切られます。制度の趣旨からいって当然ですが、それまで当然のようにもらっていたものがなくなり、場合によってはもらえる年金が減額になる可能性がありますので、注意が必要です。

③65歳以上・経過的寡婦加算を受けられる事も

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妻が65歳になれば「中高齢寡婦加算」はもらえなくなりますが、一定の条件が満たされれば「経過的寡婦加算」をもらえることがあります。昭和31年4月1日より前に生まれた人で、「中高齢寡婦加算」を受給できる条件を満たした人が対象です。

制度上、この条件の人は自分自身の「老齢基礎年金」が「中高齢寡婦加算」より少なくなる可能性があるため、年金が減額されないように設けられた救済措置です。当然、「老齢基礎年金」が「中高齢寡婦加算」より少なくなる人しかもらえません。

この辺りは非常にややこしいですが、サラリーマンの妻は年金が大きく減額しないように、しっかり理解して、もらえるものはもらいましょう。

遺族年金・いくらもらえる?

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何度聞いてもよくわからないといわれる「遺族年金」について、その仕組みを見てきました。確かに制度は複雑ですが、自分や夫が加入している年金制度別に理解すればわかりやすくなります。ここからは、実際にもらえる年金額はどのくらいになるのか、具体的に見ていきましょう。

①遺族基礎年金

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加入している年金制度に関係なく、子のある配偶者がもらえる「遺族基礎年金」について見てみましょう。「遺族基礎年金」は定額部分と子の人数によって変動する部分があります。平成31年4月1日現在で、定額部分は780,100円です。子の加算部分は第一子・第二子が224,500円で第三子以降が74,800円です。

子が「遺族基礎年金」をもらう場合は、この金額を子の数で除した金額をそれぞれがもらえることになります。

②遺族厚生年金

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「遺族基礎年金」に比べると、「遺族厚生年金」の計算は非常に複雑です。亡くなった夫の過去の給与月額と賞与額をもとに定められている標準的な報酬の月額と、厚生年金への加入期間をもとに計算されますが、基本的には夫がもらっていた(もらう予定の)「老齢厚生年金」の3/4をもらえると理解しておきましょう。

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遺族年金・妻の金額の参考例

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「遺族年金」の仕組みは非常に複雑であるため、間違った認識で将来もらえる年金を考えている場合があります。大黒柱が亡くなったら、残された妻や子は生活に不安を覚えるはずです。将来を見据えて、実際にもらえる「遺族年金」の正しい理解が必要不可欠です。

ここでは、誤解が生じやすいサラリーマン所帯における実際の事例をもとに、間違いがちな「遺族年金」の計算例と正しい計算例を見ていきます。

①間違った認識の金額計算

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サラリーマン世帯が受け取る年金を考えてみます。夫が67歳で22歳から62歳まで「厚生年金」に加入していたとすると、受け取る「老齢年金」は月額約185,000円です。サラリーマンである夫の妻は「国民年金第3号被保険者」として「国民年金」に加入しますので、65歳以上の妻は月額約65,000円の「老齢基礎年金」を受け取ることになります。

夫婦合わせると月額約25万円の「老齢年金」を受け取ることになります。この状態で夫が亡くなったとすると、妻は夫の「老齢年金」の3/4である月額約14万円の「遺族厚生年金」と自分の「老齢基礎年金」を合わせて月額約20万円程度の年金で生活できると考えがちです。

月額20万円あれば妻一人の生活としてはまずまずの生活が可能ですが、残念ながらこれは間違いです。子がいないか、成長している場合、妻がもらえるのは夫の「遺族厚生年金」のみで、「遺族基礎年金」部分は受け取れないのです。

②実際に支払われる金額

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上の事例で妻が貰えるで正しい年金額を見てみましょう。妻自身の「老齢基礎年金」月額約6万5千円は保証されます。問題は夫の「遺族年金」部分です。妻が実際にもらえるのは夫の「老齢年金」月額約185,000円の3/4ではなく、夫の「老齢厚生年金」部分である月額約12万円の3/4なのです。

そうすると、実際に妻が貰える年金の総額は月額約155,000円となり、見込みより減額します。一人生活とはいえ、月15万円少々で生活するのは少し窮屈といわざるをえません。

遺族年金・遺族給付制度

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我が国の年金制度には「遺族給付制度」というものがあります。「遺族給付制度」は「国民年金第1号被保険者」限定の制度です。自営業者や農業従事者である夫は基本的に「国民年金第1号被保険者」として「国民年金」に加入します。

この夫が亡くなった際その妻は「遺族基礎年金」をもらいますが、「遺族基礎年金」は子のある配偶者しかもらえません。また、子が成長して一定の年齢に達した場合も打ち切られます。「遺族給付制度」はこのようなケースを救済するための制度で、年金が掛け捨てにならないように配慮された制度でもあります。

寡婦年金・死亡一時金の支給

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自営業者や農業従事者である夫が亡くなった場合、残された妻はたちまち生活に困窮します。一定の年齢以下の子がいなければ「遺族基礎年金」をもらえず、65歳にならないと自分の「老齢基礎年金」ももらえませんので、収入源がたたれてしまいます。このようなケースを救済する「遺族給付制度」として「寡婦年金」と「死亡一時金」が用意されています。

「寡婦年金」と「死亡一時金」は同じ人が同時にもらうことはできません。どちらかを選択することになります。どちらが減額になるか一概にはいえません。どちらも選択しなければ両方とももらう権利を失いますので、慎重に判断しましょう。

①寡婦年金

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「寡婦」とはいわゆる夫の死後も再婚していない「未亡人」のことです。「寡婦年金」は「国民年金第1号被保険者」である夫が亡くなった際、残された妻が60歳から65歳の間に支給される有期の年金のことです。妻が自分自身の「老齢基礎年金」を受け取ることができるようになるまでのつなぎの年金と理解することができます。

②死亡一時金

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「死亡一時金」も「国民年金第1号被保険者」限定の制度です。自営業者や農業従事者である夫が「遺族年金」を受け取ることなく亡くなった場合に、遺族に支払われる給付金です。「死亡一時金」は年金ではなく給付金です。

「寡婦年金」と同様残された遺族の救済措置としての位置づけですが、「国民年金」保険料が掛け捨てにならないようにとの配慮が強く意識されています。

「遺族基礎年金」を受け取ることができない遺族が受給の対象になりますが、「寡婦年金」とは異なり、妻に限らず生計を同じくする配偶者、子、父母、祖父、孫、兄弟も受給権利者になります。実際の受給者は優先順位の高い順に決定されます。

遺族年金・支給要件

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少し重複する部分もありますが、ここで「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の支給要件を整理しておきましょう。支給要件をしっかり抑えておかないと、もらえると思っていた「遺族年金」がもらえなくなる可能性があります。年をとってからしまったと思っても後の祭りになることもありえますので、注意しましょう。

遺族基礎年金・支給要件

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「遺族基礎年金」は「国民年金」に加入していた配偶者などが亡くなったときに支給されますが、亡くなった人の「老齢基礎年金」受給資格期間が25年以上必要です。さらに保険料納付済期間も加入期間の2/3以上必要です。

令和8年4月1日以前においては、65歳未満で死亡し、死亡月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければ「遺族基礎年金」を受給できる特例が設けられています。

遺族厚生年金・支給要件

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「遺族厚生年金」はいわゆるサラリーマン所帯の遺族が受給できますが、支給要件は「遺族基礎年金」と少し違います。

「遺族厚生年金」は「厚生年金」加入者が死亡したとき又は「厚生年金」加入中に初診日がある傷病で初診日から5年以内に死亡したときに支給されます。ただし、「国民年金」の納付済期間が加入期間の2/3以上必要です。また、「老齢厚生年金」の受給資格期間が25年以上ある場合も無条件に支給されます。

遺族年金の金額は65歳以上で減額の可能性もある

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「遺族年金」の制度は非常に複雑で、何度聞いても理解できないといわれます。遺族が65歳になると自分自身の「老齢基礎年金」がもらえるようになりますので、それまでもらっていた「遺族年金」が減額され、場合によってはトータルで受け取る金額が少なくなることもあります。

一方で、理解不足から本来もらえるものがもらえなくなったり、年金が大きく減額になることも起こりえます。しっかりと制度を理解することが老後の生活を安定させるために重要です。

土居
ライター

土居

公務員、大学教員をリタイヤ後ライターをやり始めました。これまでの山歩きと日帰り温泉に加えて、今は孫と過ごすことが楽しい毎日です。ビジネスや経済関係に強いと自負していますが、最近はエンタメや生活関連のような柔らかいものにもチャレンジしています。宜しくお願いします

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