「腑に落ちる」の意味とは?
物事に納得したときに「腑に落ちる」という言葉を使うことがあります。ただ、一般的に「腑に落ちる」よりも「腑に落ちない」の方がよく聞く言葉でもあります。今回は、「腑に落ちる」の意味や使い方について詳しく解説していきましょう。
この他にも、「腑に落ちる」の類語と対義語についても意味と使い方をご紹介していきます。最後には英語表現についても触れていくので、「腑に落ちる」について、正しく理解するために最後までしっかりと読んでみてください。
意味「納得がいく」「合点がいく」
「腑に落ちる」は、もっぱら「腑に落ちない」の否定形として使われてきました。「納得できない」「合点がいかない」「釈然としない」という意味で使うことがあります。「腑に落ちる」は、誤用と捉える見方もある言葉です。
ただ、「腑に落ちる」は誤用であると言い切れるわけではありません。それは、辞書にもしっかりと「腑に落ちる」の意味が書かれている場合があるからです。
「腑に落ちる」の対義語・類義語
それでは、「腑に落ちる」の類語と対義語の意味や使い方をそれぞれご紹介していきます。言葉の類語や対義語を知ることで、その言葉についてより理解を深めることができます。いくつかあるので、チェックしていきましょう。
「腑に落ちる」の対義語
「腑に落ちる」の対義語をご紹介していきましょう。対義語は類語と反対で、「腑に落ちる」と反対の意味をもつ言葉となります。使い方についてご紹介していくので、確認していきましょう。対義語を知ることで、より「腑に落ちる」への理解を深めていくことができます。
対義語「釈然としない」
「腑に落ちる」の対義語「釈然としない」の読み方は「しゃくぜんとしない」といいます。意味は「迷いや疑いが晴れずもやもやする様子」です。「釈然」の語源は、熟語を分解することでわかります。
「釈」には「解く」「解き明かす」という意味で「然」は「その通り」という意味になります。この2つの漢字をあわせて「釈然」という言葉には「迷いや疑いが晴れる」「解き明かされて気持ちがすっきりする」という意味になります。
「しない」で打ち消しの言葉となって「すっきりしない」「もやもやしている」という意味になったとされています。
使い方は、「何度も説明を聞いていますが釈然としません」「釈然としない気持ちが残ったが、とりあえず、その場を丸く収めることにしました」「本当にこの決断でよかったのか釈然としないまま、過ごしました」となります。
対義語「解せない」
「腑に落ちる」の対義語「解せない」の読み方は「げせない」です。意味は「理解できない」「納得できない」です。使い方は「なんとも解せないなあ」「解せない話です」「彼がその案に同意したというのは解せない話です」「彼女の言い分は、いくら考えても解せない」という例文になります。
対義語「怪訝」
「腑に落ちる」の対義語「怪訝」の読み方は2つあって「けげん」「かいが」です。意味は「事情が分からず納得がいかないさま」です。「怪訝」の「怪」には「疑問に思う」「怪しむ」「疑わしい」「信用できない」という意味があって「訝しい」の意味には「怪しく思うさま」「疑わしい」です。
どちらも「疑わしい」という意味で同じ意味の漢字を重ねた熟語です。「怪訝」は、今では「けげん」が一般的な読み方ではありますが、古くは「かいが」と読まれていました。
どちらの読み方でも意味は同じです。「かいが」は昭和初期頃まで文学で使われていました。「そんなことはあるはずがないと怪訝する」という風な使われ方です。「怪訝」の使い方として「怪訝な顔」「怪訝な表情」「怪訝に感じた」があります。
「腑に落ちる」の類語
では早速、「腑に落ちる」の類語の意味や使い方をチェックしていきましょう。類語を知ることで、「腑に落ちる」の言い換え表現として使うことができます。「腑に落ちる」では、使い方としてふさわしくない場合に、言い換え表現として使えるので大変便利です。
類語「了解する」
「腑に落ちる」の類語「了解する」の意味は「理解する」です。丁寧語にすると「了解しました」です。「了解」の「了」の漢字には「はっきりわかること」という意味で、「解」には「問題を解く」「わかる」「わからせる」という意味があります。
使い方としては、同僚や目下の人に言われたことを「理解して受け入れました」という場合に使う「わかりました」というカジュアルな敬語でもあります。「了解しました」はビジネスシーンでは目上の人に対しては使わない方がいい表現です。
目上の人には、謙譲語表現として使うことができます。「する」の謙譲語「いたしました」を使うといいでしょう。「了解いたしました」という言い換え表現になります。
「承知しました」ではあまりにも堅苦しいと感じた場合や距離を感じる場合に、「了解いたしました」を使うことができます。それぞれの意味は、「了解しました」は「理解しました」で、「承知しました」は「内容を理解して聞き入れること」です。
類語「合点承知」
「腑に落ちる」の類語「合点承知」の意味は、「心得た」「任せておけ」という意味があります。「合点承知の助」という表現とすることで「心得た」「任せておけ」の江戸っ子言葉にすることができます。「合点」も「承知」も「承知」「承諾」したさまという意味の言葉です。
類語「目から鱗」
「腑に落ちる」の類語「目から鱗」の読み方は「めからうろこ」です。意味は「まったく新しい発想を得る」です。いろはかるたの読み札としてもお馴染みのことわざで、あるきっかけで急に大きな発想の転換が起きたり、新しい知識を得たりすることをいいます。
「知らなかった」という感情を表す意味です。日常会話では「目から鱗が落ちました」「目から鱗が落ちたような思いです」という使い方をします。「目から鱗」と省略して使われることもあります。カタカナで「目からウロコ」と表記することも少なくありません。
それまで、「気にも留めなかった日常の小さな発見」「前々から不思議に思っていた疑問が解消された場合」「人生観を変えてしまうような大きな気付きを得た瞬間」に使うことがあります。由来には、新約聖書の「使徒行伝」にある一節とされています。
使い方は、「はっきりと指摘してもらったので、目から鱗が落ちました」「防災アプリがいざというときに使えないことがわかって、たくさんの人は目から鱗が落ちる思いを味わいました」「その事実を知って、まさに目から鱗が落ちる思いでした」です。
英語表現は、「The scales fall from one’s eyes.」「eye-opener」「The story was an eye-opener to her.」となります。
ちなみに魚の鱗というと日本人は、「タイ」「アジ」のような海水魚の固くて大きいものを想像しますが、新約聖書の「使徒行伝」が書かれた時代の魚の鱗は「川魚」だったのではないかといわれています。
類語「膝を打つ」
「膝を打つ」の読み方は、「ひざをうつ」で、意味は、「急に思いついたときや感心したときの動作」です。簡単に表すと、「感心した」「思いついた」という意味で使うことができます。
「膝を打つ」の由来についてお話します。あなたは、人の話を聞いていて「お!それはすごいな!」と思ったときや、「その考えはいい!」と思わず膝をポンッと叩いてしまったことはないでしょうか?「膝を打つ」の由来は、この動作からきているとされています。
「膝を打つ」の使い方は、「このところ、仕事のやり方に悩んでいました。それを先輩に相談したところ、効率的に仕事をする方法を教えてもらいました。先輩の話を聞いて思わず膝を打ちました」です。
この場合は、先輩の話を聞いて「なるほどな」と自分の悩んでいた答えにすっぽりとはまったような回答をもらったことで、「膝を打つ」場面での使い方になっています。
もう1つの例文をご紹介しましょう。「何日も悩んでいたレポートが、シャワーをしていたら、ふと、考えがまとまって思わず膝を打った」です。自分で考えていることが、何かの拍子でひらめいた場合の使い方です。
「腑に落ちる」の使い方・例文
「腑に落ちる」の使い方を分かりやすく例文を使ってご紹介していきましょう。一般的には「腑に落ちない」で使う言葉ではありますが「腑に落ちる」での使い方をチェックしていきましょう。
「腑に落ちる」の例文を見ることで、使い方を正しく理解していくことができます。4つの例文をみていきましょう。
例文①
「腑に落ちる」の使い方例文①として「彼は、彼女の出生の秘密を知り、彼女の言動が腑に落ちた」というものがあります。彼女の出生の秘密を知ったことで、彼女の言動の意味が心からすんなりと理解できたという意味での使い方となります。
例文②
「腑に落ちる」の使い方の例文②をご紹介していきます。「社長から、解雇の理由を聞いて腑に落ちた」という例文となります。社長から解雇の理由を聞いたことで、どうして自分が解雇になったのか、納得したという意味の例文となります。
例文③
「腑に落ちる」の使い方の例文③は、「彼は、腑に落ちるような説明をしないから、2人の溝が深まるばっかりです」という例文になります。彼の説明を聞いても、彼女には納得できないものばかりなので、2人の溝が深まっていることを意味する使い方です。
例文④
最後に「腑に落ちる」の使い方の例文③をご紹介していきます。「警察から事件の真相が聞けたので、やっと腑に落ちた」という例文になります。警察から事件の真相を聞いたことで、今まで分からなかった真相を理解し、すんなりと心から理解できたという意味になります。
「腑に落ちる」を使う際の注意点
「腑に落ちる」は、納得いかなかったことが、すっきりとした場合に使います。なんとなく分からなくてもやもやとしていたことが、説明を受けたことで、すっきりとする場合に使います。ですが、説明を受ける前からすっきりとしていたのであれば使えません。
「腑に落ちる」はストンと納得していない場面では使えない
例えば、ドラマなどでよくあるシーンで、「あの人のアリバイには、何か腑に落ちない」と刑事がいうシーンがあります。アリバイは成立していて、表向きは正しくでも、刑事には裏があるようで納得できていない場合の使い方です。
さらに、お話が進んで説明を受けたことで刑事が「これでやっと、腑に落ちた」といいます。アリバイが崩れて、真実が明らかになったことがストンと心の中で落ちたというイメージです。
このように、モヤモヤしていたものがスッと心にスムーズに入ってきた場合に、「腑に落ちた」を使います。ですので、どうにかして納得しようと努力をしているのであれば、「腑に落ちた」は使えません。
「腑に落ちる」の由来・歴史
「腑に落ちる」の由来についても、みていきましょう。物事をすんなりと納得できた場合に「腑に落ちた」というような使い方をする言葉ではありますが、「なんだか腑に落ちないなあ」という使い方をします。
「腑に落ちる」の由来とはどんなものがあるのでしょうか。「腑に落ちる」の由来をチェックしていきましょう。
由来
「腑に落ちる」の「腑」には「はらわた」という意味があります。内臓的なことを、由来する意味です。昔は、「はらわた」のことを人間の「考え方」「心」が宿る場所であると考えられていました。
ここから、物事の考え方や内容がすんなりと心にはまることが、由来となったのです。ここから、「腑に落ちる」の由来は、「人の考え方」が「納得できる」ということになります。由来を知ることでよりその言葉への親しみが湧いてくるでしょう。
歴史
「腑に落ちる」という言葉は、明治時代くらいから使われていた言葉が由来でもあります。「腑に落ちる」の「腑」には、「心の奥底」という意味があって「落ちる」は、「納得する」という意味です。
この2つの言葉が一緒になって「納得する」「合点する」という意味の言葉が由来として広まったとされています。
「腑に落ちる」の英語表記
「腑に落ちる」の英語表記はいろいろあります。いくつかご紹介するので、使い分けるようにしてみてください。「It make sense to me.」「That makes sense to me!」「Yea! You said it.」があります。「ストンと落ちる」という英語表現として「the coin has dropped」もおすすめです。
「腑に落ちる」は「納得がいく」「合点する」という意味
「腑に落ちる」の意味や使い方をご紹介してきました。「腑に落ちる」の類語や対義語には、たくさんのものがあり使い分けることができます。「腑に落ちる」は「腑に落ちない」の方が、ポピュラーな使い方とされていて、「腑に落ちる」は誤用と考える人もいます。
しかし、辞書にもしっかりと表記されていて、誤用とは言い切れません。ぜひ今回の記事を参考にして「腑に落ちる」を使ってみてください。実際に使うことで、その言葉のもつ意味がより明確にしていくことができるでしょう。