「原則として」の意味とは?
「原則として」という言葉は、一般に「基準となるルールは決まっているけれども、条件によっては、例外を認めることがある」という状況で使われます。ただし、例外を認めるための条件がはっきりと明言されている必要があります。流動的なご都合主義で例外を認めるのではないことに注意しましょう。
「原則として」の対義語・類語
日々の生活の中で「原則として」の「原則」は「基本となるきまり」という意味での使い方をされます。「原則として」という言葉を使うときの注意点がわかりやすくするために「原則として」「原則」の対義語と類語にはどんなものがあるか見てみましょう。
対義語
「原則として」の対義語は「例外として」です。守るべき規則の基本とその他とを区別するとき「原則として」と「例外として」は存在します。
「原則としてこの規則を守りましょう」の対義をそのまま言うと「この規則以外を守りましょう」となります。つまり、「原則」という言葉自体の意味が「条件によっては例外を認める」という意味を含んでいます。対義語が「例外」であっても、認める例外が原則以外すべてであるわけではないのです。
類語
「原則として」の類語は「原則」の類語、つまり、「原理」「規則」「基本」「基準」「きまり」などです。
どの言葉も根底に、変わらない、従うべきルールという意味がありますが、個々にはその言葉が使われる分野や状況によって違いがあります。
「原則として」の使い方・例文
例外のあるなしによって信ぴょう性が疑われる「原則として」という言葉は、但し書きの持つ力に注目することが大切です。
絶対破ってはいけないと主張したいときに威圧的に使われている場合もあるこの言葉で不利益を招かないようにしなければなりません。どのような場合に、この「原則として」が使われているか、例文で見てみましょう。
例文①
学校・園において、例年、6月の末頃に配布される「体育の授業時におけるプール水泳の注意事項」のプリントには「プール授業時は、原則として、水泳帽着用のこと」と書かれる場合があります。
この「原則として」はどの児童生徒のご家庭も、なくても良い場合があるとは捉えず、水泳帽を忘れたら、プールに入れないと理解するのではないでしょうか。集団生活においては「原則」と称されても「例外」を期待せず、絶対的なきまりと捉えられることが多いことを示す例文です。
例文②
「入試当日は原則公共交通機関を利用すること」という文言がある場合、多くの受験生は、マイカーによる送迎はだめだという理解をするでしょう。
これは「原則」とあるから、絶対ダメというわけではないと捉えることも考えられます。子供は、規則は守るものと教えられていて、ダメなものはダメという姿勢を持つ子が多いですが「別に迷惑を掛けなければいいのだから送ってあげよう」と例外を予想して言うのは、親の方かもしれません。
例文③
企業の会議において「既定の方針を原則として目標達成を目指すように」と発言されたら「我が社の営業方針を遵守して、手を抜いたり、勝手にルールを変えたりしてはいけない」ということを意味しているでしょう。
けれども、結果として、成績向上につながったルールの逸脱は、おそらく認められることもあるのではないでしょうか。この使い方は、但し書きがなくても結果オーライになる「原則として」の例文です。
例文④
「原理原則」と強く発言されることがあります。たとえば仕事がはかどらない時「そんなもの、原理原則として進めれば、簡単にできるものだ」と、げきを飛ばされることがあるでしょう。
この「原理原則」は「原理」と「原則」を一度に使うことによって「絶対守るべきこと」「変更の余地がない」という強い言葉です。
先ほどの言葉は、守るべきことを守らないからそうなるのだと指摘しているのです。「原則として」にある但し書きによって例外を認める余地があるという余裕のない例文です。
「原則として」と「原理」の違い
「原則として」の「原則」と「原理」という言葉は「原」という漢字を含む二字熟語でよく似た意味です。「原則」と「原理」の類似点と意味と使い方の違いはどういうところでしょうか。比較してみましょう。
「原理」は根本的な不変の理論という意味
「原理」は「物事が成立する根本的な不変の理論」です。「原理」を骨として成り立っているので、事情や条件によって流動的に変わるものではありません。
「原則として」と添えてルールを作るのは人間であるのに対して「原理」は人為的に改変させられないところが「原則」と「原理」の違いです。
けれども「原則」も「原理」も根本規則であることは同じなので「原則」と「原理」は類語と言えるでしょう。ただ「原則として」という言葉は見ますが「原理として」では、例外を認めるという使い方はされません。
「原則として」を使う際の注意点
先に「原則として」という表現は、あらかじめ条件を決めておくことによって例外もありうるということをご紹介しました。それでは、どのような場合に例外があるのでしょうか。また、原則に対して例外のないものとはどのようなものなのでしょうか。
恒久の真理では使えない
「原則として」の原則の表記には必ず「但し書き」が付き、例外を認めるための条件が明記されます。この「但し書き」のない原則であれば、その原則自体が、あってないようなものと考えられるでしょう。「原則として」は、人が作ったり人為的に変えられることについてのみ使える言葉です。
いかなる理由によっても規則が変わることがない自然界の恒久の真理、たとえば地球の自転の向きや、重力や光に関わる科学の法則などのように、都合によって変える余地のないものについてはこの「原則として」という表現は使いません。
「原則として」の由来・歴史
「原則として」という言い方は「原則」と「として」に分けられます。また「原則」は「原」と「則」でできているニ字熟語です。各部分の意味や使い方、日本の歴史上の重要な「原則」について見てみましょう。「原則」と「例外」の関係についてわかりやすくなるでしょう。
由来
「原則として」の「原則」の漢字「原」は「おおもと」「はじめ」を意味します。「則」は「きまり」「掟(おきて)」を意味します。「常に変わらない、容易に変わらないきまり」「容易に変えられない掟」です。「として」は、格助詞と動詞と接続助詞です。「立場において」という意味を添えます。
「原則として」は「ある規定をおおもとのきまりにおいて」「ある約束事を規範と見据えて」という意味になります。いずれも「概して通常はこのように扱います」という約束事を表しています。つまり、通常でない場合を認める前提とともに「原則」と言われるのです。
歴史
日本の歴史上「原則」を含む重要な事柄は「非核三原則」でしょう。1967年以降、我が国は核兵器を製造しない、保有しない、持ち込ませないという日本政府の原則をさすものです。
製造しない・保有しないことについては、原子力基本法で禁止されています。原子力の利用を平和目的に限るとした部分が、但し書きにあたり、原則という言葉が使われています。また、日本に寄港する米軍艦船に核兵器が搭載されていないかの問題もあります。
その後、核拡散条約批准、非核三原則の衆議院参議院での決議で、政府の姿勢が確立されています。この唯一の被爆国として核兵器廃絶に向けての姿勢は、国際社会にも周知されています。
「原則として」の英語表記
「原則として」は、英語で「in principle」と言います。また、「as a general rule」とも表されます。generalは、一般的なという意味で「一般的な決まりとして」という訳になります。
英語の「principle」には、原理、原則、科学上の原理、法則、主義、根本方針という意味があり、日本語で「原則」と「原理」に違いがあるのに対して、英語の「principle」は使い方の範囲が広いようです。
英語の「principle」の類語は「theory」「doctrine」「rule」などがあります。英語「doctrine」は、教義や主義、また国家の公式宣言をさして使われます。「fundamental truth」は根本的真理と訳されます。
「原則として」は「基本となるきまり」という意味
「原則として」は「基本となるきまり」を挙げる時に使う言葉です。類語は「原理」「規則」、対義語は「例外として」、英語では「principle」と表されます。
なんらかの事柄について「通常はこのように扱いますが、例外もあります。例外は、ここに挙げた要件にあたる場合にのみ認められます」という意味で用いられます。
例外の但し書きがあって、初めて「原則として」という言葉の意味が発揮され、但し書きのないきまりについては「原則」と言えません。
法律や、契約で使われる「原則として」という言葉に付く但し書きを重要視し、なんでも簡単に例外を認められるという捉え方をしないように注意しましょう。