「翻弄」の意味
「翻弄」という言葉を記事や本などに書かれた字面を見ただけでは、読み方も意味もわからないという人は意外に多いものです。ですが読み方がわかれば、実は意外に何度も聞く言葉だというのがわかります。とはいえ、物語や他人の話で聞くことはあっても、自分の人生を語る時などにはほぼ使われない言葉です。
つまり「翻弄」という言葉はかなり限定して使われる言葉だということです。そんな「翻弄」という言葉について、まずはその意味からご紹介していきます。
思いのままに相手をもてあそぶ意味
それでは「翻弄」の意味をご紹介していきます。まず一つ目は「思いのままに相手をもてあそぶ」という意味です。「思いのままに」はともかく「相手をもてあそぶ」というと悪いイメージの意味になります。「思いのままに相手をもてあそぶ」などひどく悪い印象の言葉と言えますが、その通り「翻弄」はあまり良い意味がある言葉とは言えません。
「翻弄」の意味の一つ目としてまず「思いのままに相手をもてあそぶ」を覚えておいてください。
なぶりものにする意味
「翻弄」の意味の二つ目は「なぶりものにする」です。こちらも「思いのままに相手をもてあそぶ」という意味と同じく、悪いイメージの意味です。「なぶりものにする」と言われてもぴんと来ない人もいるでしょう。「なぶり殺しにする」という言葉なら意味がなんとなく分かる人も多いはずです。
「思いのままに相手をもてあそぶ」に「なぶりものにする」と、「翻弄」の意味は悪いイメージがつきまという意味であると言えます。
「翻弄」の読み方
次に「翻弄」の読み方についてご紹介します。「翻弄」と書いて「ほんろう」と読みます。この読み方がわかれば「あぁ、聞いたことがある」という人も多いでしょう。「翻弄」の「翻」の読み方は「ほん」で「弄」の読み方は「ろう」で、「翻弄」の読み方は「ほんろう」になります。
「翻弄」の字面を見ても読み方はわからなかったという人も、読み方がわかれば何となく聞いたことのある言葉だと感じる程度には、「翻弄」はそう聞き慣れない言葉ではありません。
「翻弄」の読み方の次は、「翻」と「弄」のそれぞれの文字の意味についてもご紹介していきましょう。
「翻弄」の「翻」の意味
まず、「翻弄」の「翻」の意味についてご紹介します。「翻」の読み方は先ほどご紹介したとおり「ほん」で、「翻訳」という言葉で最も親しまれている漢字だと言えます。「翻」は「翻す(ひるがえす)」という意味を持つ漢字で、「翻す」は「予想外の動きをする」などといった意味です。
「スカートのすそを翻す」などという使い方もされますが、「約束を翻す」というと「約束を破る」といった意味になるなど、「翻」の文字ひとつでもあまり良いイメージのある言葉とは言えません。
「翻弄」の「弄」の意味
次に「翻弄」の「弄」の字の意味についてご紹介します。「翻弄」の「弄」の読み方は「ろう」で、「弄ぶ(もてあそぶ)」という意味の漢字です。他には「策を弄する(さくをろうする)」などといった使い方もします。どちらにしてもやはり「翻」と同じく、あまり良い意味を持たない文字だと言うことができます。
「翻弄」の類語
あまり良い意味を持たない「翻弄」という言葉ですが、「翻弄」の類語と言える言葉は意外にたくさんあります。日本語には、良い意味を持つ言葉にもたくさんの類語と言える言葉がありますが、悪い意味を持つ言葉にも意外にたくさんの類語があります。「翻弄」は少し難しい言葉ですが、それでもちゃんと類語はいくつも存在します。
あまり日常生活の中では使われない「翻弄」という言葉の類語について、いくつかご紹介していきます。
自分の思った通りに行動させる意味
「翻弄」の類語としてまず「自分の思った通りに行動させる」意味を持った言葉が挙げられます。。「翻弄」というのは「思いのままに相手をもてあそぶ」「なぶりものにする」なので「自分の思った通りに行動させる」という意味を持った言葉はすべて「翻弄」の類語と言うことができます。
手玉に取る
「翻弄」の類語一つ目は「手玉に取る」です。「手玉に取る」という言葉は、昔から伝わっている「女の子が遊ぶおもちゃ」のひとつ「お手玉」を自由自在に操るさまを表す言葉で「自分の思った通りに行動させる」意味を持ちますので、「翻弄」の類語であると言うことができます。
「手玉に取る」はスポーツ中継などで「相手を手玉に取るようなプレイ」などと言うこともありますので、そう悪い印象を持たない人も多いですが、悪い意味でも使われますので使い方には注意が必要です。
掌の上で踊らせる
「翻弄」の類語二つ目は「掌の上で踊らせる」です。「掌の上で踊らせる」は「相手を意のままに操る」といった意味を持ちますので、「翻弄」の類語であると言えます。「掌の上で踊らせる」は主に「踊らされる」といった使い方をされる場合が多いですので「翻弄される」と同じ意味になります。
「誰かが誰かを掌の上で踊らせる」といった言い方は、悪意を持った誰かが何も知らない誰かを意のままに操るというさまを表します。こちらも良いイメージはなく悪いイメージの強い言葉ですので、使い方や使う場面には気をつけましょう。
弄ぶ
「翻弄」の類語三つ目は「弄ぶ(もてあそぶ)」です。「弄ぶ」という言葉は「翻弄」の中にも入っていますので、同じ意味を持つ類語であると言うことができます。「弄ぶ」は「猫がネズミを弄ぶ」など「女が男を弄ぶ」などといった使い方をすることができますので、「翻弄」に極めて近い類語と言えます。
「翻弄」ほどではありませんが、「弄ぶ」というのもやはりあまり良いイメージを持った言葉とは言えません。なので「あなたはあの男に弄ばれている」などと言いたい場面であっても、あまり使わない方が良い言葉です。
手のひらで転がす
「翻弄」の類語四つ目は「手のひらで転がす」です。「手のひらで転がす」は先にご紹介した「掌の上で踊らせる」に極めて近いと言える言葉なので、「翻弄」の類語であると言えます。「掌の上で踊らせる」も「手のひらで転がす」も、文字は違いますが同じ「てのひら」を表す言葉です。
「男を手のひらで転がす女」などという風に使われる言葉で、女にいいように振り回される男が容易に想像できます。手のひらで実際に豆などを転がす様子を想像すると、この言葉の意味はとても分かりやすいです。
物事の動向に関わる重要な性質を持つ意味
次にご紹介する「翻弄」の類語は「物事の動向に関わる重要な性質を持つ」という意味を持つ言葉です。「物事の動向に関わる重要な性質を持つ」などというと何やらとても堅苦しくわかりにくいですが、簡単に言うと「運命」などのように人生を大きく左右するものです。人間には抗えない力に人生を左右されるといった場合に使う言葉ということです。
それでは「物事の動向に関わる重要な性質を持つ」という意味を持つ、「翻弄」の類語をご紹介していきましょう。
運命を握る
「翻弄」の類語五つ目は「運命を握る」です。「運命を握る」というととても恐ろしいイメージですが、要するに誰かの人生を左右することの決定権を他の誰かが握っているといった場合に使われます。その「誰か」は人ではないこともあります。気候に左右される場合、天候の悪化が運命を握ることもあります。ちょっと抽象的な「翻弄」の類語です。
「彼女が彼の運命を握る」や「株価の上下が会社の運命を握る」など、人にも使えますし人でないものにも使うことができます。
命運を握る
「翻弄」の類語六つ目は「命運を握る」です。先に「運命を握る」という類語をご紹介しましたが、それとほぼ同じ意味の類語です。こちらもやはり、誰かの人生を左右するようなことを他者あるいは天候や状況などが握っているといった意味になります。「運命を握る」も「命運を握る」も大差ありませんので、どちらを使っても構いません。
こちらも「運命を握る」と同じように、人にも使えますし人ではないものにも使うことができます。
行方を左右する
「翻弄」の類語七つ目は「行方を左右する」です。こちらも時折使われる言葉で、「この勝負の行方を左右するのは」などといった使われ方をします。人生における大切な場面などで時々使われる言葉で、「あなたの努力があなたの人生の行方を左右する」などというように使います。
また、「新商品の売り上げが会社の行方を左右する」というように、人ではないものに使うこともできますので、覚えておきましょう。
ゆだねられる
「翻弄」の類語八つ目は「ゆだねられる」です。こちらは少々ニュアンスが違い、「上司から大切な仕事をゆだねられる(まかされる)」などといった使い方もされます。これを「運命に身をゆだねる」といった使い方をすると「翻弄」に近い言葉になりますので、「翻弄」の類語だと言うことができます。
他に「周囲の流れに身をゆだねる」といった使い方も「翻弄」に近い言葉になります。「ゆだねられる」「ゆだねる」はその対象によって「翻弄」の類語になるかそうでないか変わってきますので、使い方に注意が必要です。
「翻弄」の使い方・例文
それでは次に「翻弄」という言葉の使い方と例文についてご紹介します。「翻弄」という言葉を人生の中で使う人はそうたくさんいません。というのは「翻弄される」ような状況になる人はそう多くないからです。波乱の人生が描かれた小説やドラマの中では時々使われますので、使い方自体はそう難しくないと言えます。
なので「翻弄」という言葉の使い方や例文は意外にわかりやすいと言うことができます。「翻弄」の使い方と例文をいくつかご紹介してきます。
彼氏が好き過ぎて翻弄される
「翻弄」の使い方と例文の一つ目は「彼氏が好き過ぎて翻弄される」です。「彼氏のことが大好きで、彼の一挙手一投足が気になって振り回されている」という状況を表す「翻弄」の使い方と例文です。ポイントは「彼氏が好き過ぎる」というところにあります。「翻弄される」のは「彼氏が好き過ぎる」という彼女の状態のせいです。
「彼氏が好き過ぎる」ために彼氏に振り回されているという時に「彼氏が好き過ぎて翻弄される」という使い方をすることができます。これは「翻弄」の例文として、かなり分かりやすい使い方です。
この例文を参考にして「今の彼氏に翻弄されてるの」などという言い方をすることができますので、この例文は日常生活でも使える例文だと言えます。
周りの環境の変化に翻弄される
「翻弄」の使い方と例文の二つ目は「周りの環境の変化に翻弄される」です。「周りの環境の変化」は「会社の方針の転換」や「社内での異動」などを当てることができます。車内で部署が変わったことにより、振り回されているなどという時に「翻弄」を使うことができるという例文です。
「会社で総務部から営業部に回されて、やるべきことが何もかも変わってしまって翻弄されている」などといった「翻弄」の使い方ができます。こちらもかなり分かりやすい使い方ですので、日常生活の中でさりげなく使うことができます。
波乱万丈な人生に翻弄される
「翻弄」の使い方と例文の三つ目は「波乱万丈な人生に翻弄される」です。「翻弄」が良く使われるのはこういった「人生にかかわる場面」です。「波乱万丈な人生に翻弄される」というのは誰にでも使える例文ではありません。運命にもてあそばれるような人生を送ってきた人に使うことができる例文だと言えます。
例えば生まれた時から不幸続きで、運命にもてあそばれているとしか思えないような人も確かにこの世に存在します。そういう人には「波乱万丈な人生に翻弄される」という例文を使うことができます。
翻弄される人の特徴
ここまで「翻弄」という言葉の意味や類語、使い方や例文などをご紹介してきましたが、次に「翻弄される人」の特徴をご紹介しましょう。他人や状況に「翻弄されやすい」という人は少なからず存在しています。「翻弄されやすい」人には性格的に共通する、ある種の特徴を持っています。
「翻弄」の意味からすると「翻弄される」というのはあまり良いイメージがありません。そんな「翻弄される人」の特徴についてご紹介します。
優しすぎる
「翻弄される人」の特徴一つ目は「優しすぎる」ということです。単に「優しい」のではなく「優しすぎる」というのがポイントです。他人からのお願いなどに対して何でも「いいよいいよ」と言ってしまうタイプの人など、優しすぎる人と言える人は意外に多いものです。そしてそんな優しすぎる人は他人に「翻弄される人」だと言えます。
「優しすぎる人」は「お人よしな人」とよく言われますので、「お人よしな人」も「翻弄される人」だと言うことができます。
流されやすい
「翻弄される人」の特徴二つ目は「流されやすい」ということです。他人に言われたことに対して逆らわず、「うん、そうだね」と従ってしまうタイプの人は「翻弄される人」だと言うことができます。流されやすい人というのは、自分の意見を強引に押し出すようなことをしません。そのため他人の意見に従って流されてしまいます。
このように自分の意見を通そうとしない「流されやすい」タイプの人は他人に「翻弄される人」だと言うことができます。
大人しい
「翻弄される人」の特徴三つ目は「大人しい」ということです。「優しすぎる人」や「流されやすい人」には「大人しい人」と言われるタイプが多いものです。大人しくて人の意見に流されやすく、自分のことより人のことをまず考えるタイプの人は、他人に振り回されて「翻弄される人」になりがちです。
「大人しい人」と言われる人がすべて自分より人のことを考えるというわけではありませんが、自分の意見をハッキリと言うことができないため、結果的に他人に従う破目になり「翻弄される人」になってしまうことが多いです。
感情の揺れが大きい
「翻弄される人」の特徴四つ目は「感情の揺れが大きい」ということです。「感情の揺れが大きい」という人は、先にご紹介した「優しすぎる人」「流されやすい人」「大人しい人」とは少々異なります。優しすぎもしなくても流されやすくなくても大人しくなくても「感情の揺れが大きい人」は「翻弄される人」になりがちです。
「感情の揺れが大きい人」はさっきまで自信を持っていたのに、ちょっとしたきっかけで急に自信をなくすなど、自分自身の感情に振り回されてしまうことが多いため「翻弄される人」になってしまいます。
「翻弄」の英語表現
次に「翻弄」の英語表現についてご紹介します。「翻弄」という言葉は複数の意味を持ちますので、「翻弄」に対応する英語も複数存在します。デリケートな日本語を英語にする場合、多少ニュアンスが変わってきたりしますが、意外なことに「翻弄」には直訳できるような英語があります。
ひとつの英文で「翻弄」と訳することができるものもありますので、そんな「翻弄」の英語での表現をいくつかご紹介していきます。
toss about
「翻弄」の英語表現の一つ目は「toss about」です。「toss about」という英語にはいくつも意味がありますので、英語から日本語に訳する際にも結構たくさんの意味に訳することができます。「toss about」の意味には「翻弄する」「弄ぶ」の他に「混乱させる」「激しく動揺させる」といったものもあります。
また「寝返りを打つ」「転げまわる」といった意味もありますので、かなり多岐にわたる意味を持つ英語ですが、「翻弄する」と直訳することのできる英語なので「翻弄」の英語表現の一つ目に挙げることができます。
play with
「翻弄」の英語表現の二つ目は「play with」です。「play with」は目にした通り「~で遊ぶ」という意味を持ちます。したがって「もてあそぶ」という意味になり、「翻弄」の英語表現であると言えます。「play with」の後に続く目的格によって、「翻弄」という意味の英語として使うことができます。
「play with」は「Don't play with your food(食べ物で遊ばないで)」などという使い方をする英語で、「もてあそぶ」と言っても対象は「物」で使われることが多いですので、そこをポイントとして押さえておくと良いです。
play fast and loose with
「翻弄」の英語表現の三つ目は「play fast and loose with」です。「play fast and loose with」も「もてあそぶ」という意味ですが特に「人の愛情などをもてあそぶ」という時に使われる英語です。「翻弄」という言葉は、人の心をもてあそぶという時にも使われますので、「play fast and loose with」は「翻弄」を意味する英語だと言えます。
翻弄という言葉のその他の使い方
ここまで「翻弄」という言葉の意味や使い方などをご紹介してきましたが、それらは主に対象が「人物」や「人生」の場合の「翻弄」の使い方でした。ですが「翻弄」という言葉が使われるのはそれだけではありません。「翻弄」という言葉は、自然などに対しても使うことができます。
「人」や「人生」など以外のものを対象とした「翻弄」という言葉の使い方についてご紹介します。
翻弄という言葉は自然などにも使われる
「翻弄」という言葉を「人」や「人生」以外を対象にして使うことはそう少なくありません。登山家が山で遭難したりした時に「大自然の力に翻弄される」といった使い方をする時も案外良くあります。自然の力というのはとても大きく、いくら科学が発達しても人間の力ではとても抗うことができないことが多いです。
登山のように自ら危険な所に行かなくても、自然の力に「翻弄」されることは多々あります。地震や水害などといった「天災」も、「大自然の力に翻弄される」といった言い方で表現されます。
自然災害の前では人間は無力で、まるでもてあそばれているかのように感じることが多いものです。このように「翻弄」は、自然に対して使うこともできます。
「翻弄」は『思いのまま相手をもてあそぶ』意味!正しく使おう
「翻弄」という言葉の意味や類語、使い方や例文をご紹介してきましたが如何でしたか?「翻弄」という言葉の主な意味は「思いのまま相手をもてあそぶ」という意味です。日常生活の中で「翻弄」を使う機会はあまり多くありませんが、使うことができる場面には間違うことなく正しく「翻弄」を使いましょう。